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医学部の難易度は下がったのか|2010年以降で上がった大学は0校

2026年07月25日 更新

こんにちは、太宰府アカデミーで広報/完全個別指導コースを担当している後藤です。

「医学部の人気は落ちているんですか」「昔より入りやすくなったと聞きました」——保護者の方からよく聞かれます。感覚で答えても仕方がないので、河合塾のボーダー偏差値を1975年までさかのぼって並べてみました。

答えはこうなりました。

私立医学部の偏差値が上がったのは1975年から2010年までの35年間で、平均+14.60。そこから先は横ばいです。2010年と2027年(予想)を比べると、偏差値が上がった大学は0校、下がったのが11校、変わらないのが14校でした。

ただし「人気低下」とも違います。文部科学省の集計では、医学部の受験者は3年で109,944人から121,397人へ+10.4%増えています。

この記事を開いた方は、たぶんこんなことを思っています。

− 医学部の難易度は、結局上がってるの下がってるの?

− 医学部の人気は落ちているの?

− これから難しくなるの、易しくなるの?

ひとつずつ答えます。

 

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結論:難しくなったのは2010年まで。以降は上がった大学が0校

先に答えを出します。

  • 私立医学部のボーダー偏差値は、1975年の51.50から2010年の66.10へ+14.60。この35年で難化しました(全期間そろう同じ25校で計算)
  • 2010年以降は横ばいです。2027年度入試の予想値は64.90で、2010年より−1.20。上がった大学は0校でした
  • ただし受験者は減っていません。文部科学省の集計で3年間に+10.4%、私立の延べ志願者も2026年度入試で+4.8%です
  • これからの材料は「定員が減る方向」です。国の推計では2029年ごろに医師の需要と供給が均衡し、定員はすでに削減の方向で検討されています

 

医学部の偏差値推移|50年で+14.60、ただしピークは2010年

私立医学部25校の平均ボーダー偏差値は1975年51.50から2010年66.10へ上がり以後横ばい
難化したのは1975〜2010年で+14.60。以降は横ばい(出典:河合塾 全統模試のボーダー偏差値をもとに太宰府アカデミー集計。2027年度は予想値)

まず長期の推移です。河合塾の全統模試のボーダー偏差値を、1975年・1985年・1995年・2010年・2015年・2023年度入試・2027年度入試(予想)の7時点で並べました。

比較のために、全期間に数字がそろっている25校だけを使っています。年によって収録校数が違うため、そろえないと「校数が増えただけで平均が動いた」ものを難易度の変化と読み違えます。

時点 ボーダー偏差値の平均(同じ25校) 前の時点との差
1975年 51.50
1985年 51.00 -0.50
1995年 60.30 +9.30
2010年 66.10 +5.80
2015年 65.60 -0.50
2023年度入試 65.60 +0.00
2027年度入試(予想) 64.90 -0.70

1975年の51.50から2010年の66.10まで+14.60。1975年時点では偏差値47.5の大学が複数あり、25校中いちばん高い慶應義塾大学でも67.5でした。それが2010年には最低でも62.5になっています。「昔の私立医学部は入りやすかった」というのは、この範囲では数字として確かめられます。

そして2010年からの17年間は、66.10→64.90でほぼ動いていません。2015年65.60、2023年度入試65.60、2027年度入試の予想が64.90。難化のカーブは2010年ごろで止まっています。

読むときの注意を2つ。1つめ、偏差値は模試の受験者集団のなかでの位置です。集団の顔ぶれが変われば同じ学力でも数字は動くので、50年の比較は目安として読んでください。2つめ、2027年度の数字は予想値で、秋に改定されます。

 

大学別に見ると|上位は動かず、下の帯だけ緩んだ

2010年と2027年予想のボーダー偏差値比較で上位校は変わらず下位が2.5下がった
2010年から上がった大学は0校。上位は動いていない(出典:河合塾 全統模試のボーダー偏差値をもとに太宰府アカデミー集計。2027年度は予想値)

平均だけでは分からないので、大学ごとに見ます。2010年と2027年度入試(予想)の比較です。

上がった大学は0校でした。下がったのが11校、変わらないのが14校です。

変わらなかった14校には、慶應義塾大学72.5、日本医科大学70.0、順天堂大学70.0、大阪医科薬科大学67.5、東京医科大学67.5、関西医科大学67.5、昭和医科大学67.5が入っています。上位の帯は1ポイントも動いていません。

下がった11校は、東京女子医科大学(65.0→60.0)が−5.0で最大、ほかの10校は−2.5です。近畿大学・日本大学・東邦大学が67.5→65.0、久留米大学・北里大学・埼玉医科大学・岩手医科大学・福岡大学・聖マリアンナ医科大学が65.0→62.5、川崎医科大学が62.5→60.0。緩んだのは下の帯だけということになります。

全32校(防衛医科大学校を含む)の推移を出します。

大学 1975年 1995年 2010年 2023年度 2026年度 2027年度(予想) 2010年からの差
慶應義塾大学 67.5 70.0 72.5 72.5 72.5 72.5 +0.0
日本医科大学 60.0 62.5 70.0 70.0 70.0 70.0 +0.0
東京慈恵会医科大学 62.5 67.5 70.0 70.0 70.0 +2.5
順天堂大学 50.0 62.5 70.0 70.0 70.0 70.0 +0.0
国際医療福祉大学 65.0 67.5 67.5
大阪医科薬科大学 57.5 65.0 67.5 67.5 67.5 67.5 +0.0
昭和医科大学 52.5 62.5 67.5 67.5 67.5 67.5 +0.0
東京医科大学 52.5 65.0 67.5 67.5 67.5 67.5 +0.0
自治医科大学 67.5 67.5 67.5
関西医科大学 55.0 62.5 67.5 67.5 70.0 67.5 +0.0
防衛医科大学校 67.5 67.5 67.5
帝京大学 47.5 57.5 65.0 65.0 65.0 65.0 +0.0
愛知医科大学 47.5 60.0 65.0 65.0 65.0 65.0 +0.0
日本大学 55.0 60.0 67.5 67.5 65.0 65.0 -2.5
杏林大学 47.5 60.0 65.0 65.0 65.0 65.0 +0.0
東北医科薬科大学 65.0 65.0 65.0
東海大学 47.5 60.0 65.0 67.5 65.0 65.0 +0.0
東邦大学 55.0 57.5 67.5 67.5 65.0 65.0 -2.5
産業医科大学 67.5 65.0 65.0
藤田医科大学 47.5 60.0 65.0 65.0 65.0 65.0 +0.0
近畿大学 50.0 57.5 67.5 65.0 65.0 65.0 -2.5
久留米大学 55.0 60.0 65.0 65.0 62.5 62.5 -2.5
兵庫医科大学 47.5 60.0 62.5 65.0 65.0 62.5 +0.0
北里大学 47.5 60.0 65.0 62.5 62.5 62.5 -2.5
埼玉医科大学 47.5 57.5 65.0 62.5 62.5 62.5 -2.5
岩手医科大学 52.5 57.5 65.0 62.5 62.5 62.5 -2.5
獨協医科大学 47.5 60.0 62.5 62.5 62.5 62.5 +0.0
福岡大学 47.5 60.0 65.0 65.0 62.5 62.5 -2.5
聖マリアンナ医科大学 47.5 57.5 65.0 62.5 62.5 62.5 -2.5
金沢医科大学 55.0 67.5 65.0 62.5 62.5 -5.0
川崎医科大学 47.5 55.0 62.5 60.0 60.0 60.0 -2.5
東京女子医科大学 55.0 57.5 65.0 62.5 60.0 60.0 -5.0

なぜこうなったのかは、この表からは分かりません。受験者の層、併願の組み方、学費の改定、新設校の登場など、動く要素が多すぎます。医学部入試は隔年で数字が振れることも多いので、この記事では要因を断定しません。ここでは「そういう形になっている」という事実だけを置きます。

 

医学部予備校の寮費はいくら?答えは資料に|太宰府アカデミー(無料)

医学部の人気は低下したのか|受験者は3年で+10.4%

2026年度入試で延べ志願者が増えた大学は獨協医科プラス2484人など私立全体でプラス4994人
私立31校の延べ志願者は+4,994人(指数1.048)(出典:代々木ゼミナール調べ・2026年6月時点)

「医学部 人気低下」という検索でこの記事に来る方が多いので、ここも数字で見ます。

年度 男性 女性 受験者の合計 2023年度との差
2023年度入試 63,891 46,053 109,944人
2024年度入試 67,902 52,363 120,265人 +9.4%
2025年度入試 67,480 53,917 121,397人 +10.4%

文部科学省の集計では、医学部医学科の受験者は2023年度入試の109,944人から2025年度入試の121,397人へ、3年で+11,453人(+10.4%)増えています。この増加分の大半は女性で、女性受験者だけで+7,864人(+17.1%)でした。

私立の延べ志願者も見ておきます。

大学 2025年度 志願者 2026年度 志願者 増減 指数
1 獨協医科大学 4,718 7,202 +2484 1.526
2 帝京大学 9,567 11,196 +1629 1.170
3 埼玉医科大学 5,111 6,315 +1204 1.236
4 東邦大学 2,444 3,393 +949 1.388
5 岩手医科大学 2,375 3,123 +748 1.315
6 日本大学 3,625 4,134 +509 1.140
7 藤田医科大学 2,314 2,757 +443 1.191
8 兵庫医科大学 2,382 2,806 +424 1.178
9 昭和医科大学 4,340 4,614 +274 1.063
10 近畿大学 3,639 3,804 +165 1.045
11 金沢医科大学 5,386 5,516 +130 1.024
12 福岡大学 3,180 3,239 +59 1.019
13 東京女子医科大学 1,068 1,100 +32 1.030
14 愛知医科大学 3,243 3,256 +13 1.004
15 東北医科薬科大学 1,882 1,888 +6 1.003
16 大阪医科薬科大学 3,522 3,494 -28 0.992
17 産業医科大学 2,043 2,007 -36 0.982
18 自治医科大学 1,903 1,856 -47 0.975
19 国際医療福祉大学 3,814 3,692 -122 0.968
20 北里大学 1,891 1,769 -122 0.935
21 東京慈恵会医科大学 1,895 1,755 -140 0.926
22 久留米大学 2,136 1,993 -143 0.933
23 杏林大学 3,254 3,104 -150 0.954
24 関西医科大学 4,186 3,966 -220 0.947
25 慶應義塾大学 1,410 1,182 -228 0.838
26 川崎医科大学 1,324 1,073 -251 0.810
27 東京医科大学 3,504 3,233 -271 0.923
28 順天堂大学 4,444 4,055 -389 0.912
29 日本医科大学 4,087 3,681 -406 0.901
30 聖マリアンナ医科大学 5,229 4,663 -566 0.892
31 東海大学 5,052 4,096 -956 0.811
31校の合計 104,968 109,962 +4994 1.048

私立31校の延べ志願者は104,968人から109,962人へ+4,994人(指数1.048)。増えた大学が15校、減った大学が16校です。増加数の上位は獨協医科大学+2,484、帝京大学+1,629、埼玉医科大学+1,204、東邦大学+949、岩手医科大学+748でした。

つまり「医学部の人気が落ちている」という数字は、少なくともこの2つのデータからは出てきません。ただし延べ志願者は1人が複数方式に出せばその回数だけ数えるので、日程の組み方が変わるだけでも動きます。大学単位の増減を「人気」と読み替えるのは避けてください。

 

今後の医学部|定員は減る方向で、2029年ごろ均衡の推計

最後に、これからの材料を並べます。

年度 医学部の総定員 うち地域枠等 地域枠等の比率
2007年度 7,625人 173人 2.3%
2008年度 7,793人 418人 5.4%
2009年度 8,486人 736人 8.8%
2010年度 8,846人 1,186人 13.6%
2011年度 8,923人 1,242人 14.1%
2012年度 8,991人 1,304人 14.7%
2013年度 9,041人 1,406人 15.8%
2014年度 9,069人 1,462人 16.3%
2015年度 9,134人 1,543人 17.1%
2016年度 9,262人 1,639人 17.9%
2017年度 9,420人 1,657人 17.8%
2018年度 9,419人 1,676人 18.0%
2019年度 9,420人 1,689人 18.2%
2020年度 9,330人 1,690人 18.4%
2021年度 9,357人 1,725人 18.7%
2022年度 9,374人 1,738人 18.8%
2023年度 9,384人 1,773人 19.1%
2024年度 9,403人 1,808人 19.5%
2025年度 9,393人

医学部の総定員は2007年の7,625人から2017年・2019年の9,420人まで増えました。医師不足を受けた臨時定員によるもので、地域枠等は173人(2.3%)から1,808人(19.5%)まで増えています。そして2019年をピークに、増加は止まりました。2025年度は9,393人です。

国の需給推計はこうなっています。

推計のケース 労働時間の前提 需要と供給が均衡する時期
需要ケース2(週60時間に制限) 年960時間の時間外・休日労働=A水準に相当 2029年ごろ・約36万人で均衡
需要ケース3(週78.75時間に制限) 年1,860時間=B・C水準に相当 2032年ごろ・約36.6万人で均衡

週60時間に制限するケースでは2029年ごろ、週78.75時間のケースでは2032年ごろに、医師の需要と供給が均衡すると推計されています。いま高校生の方が医学部に入って医師になるのは、ちょうどこの時期です。

国はすでに定員を減らす方向で検討していて、2026年度の総定員は2024年度の9,403人を上限とし、臨時増員の枠組みを2026年度末まで1年延長するという扱いになっています。定員が減れば、同じ受験者数でも競争は厳しくなります。

ただしこれは「これから難化する」という予想ではありません。需給推計は2020年時点のもので、その後の働き方改革(2024年4月施行)や定員の実績とは前提が少しずれています。言えるのは「緩む材料は見当たらない」ということまでです。

 

太宰府アカデミーの視点|推移を見るより、いま出せる方式を数える

ここまでの数字を、受験生と保護者の方がどう使えばいいかを書きます。

まず「昔と比べて」の話は、受験の準備にはほとんど使えません。1975年より難しいのは確かですが、それを知っても今年の勉強は1ミリも変わりません。使えるのは「2010年以降は横ばい」という部分だけです。つまり、いまの偏差値表は数年前のものとほぼ同じ位置関係で読めるということになります。

次に「人気低下だから狙い目」という考え方はおすすめしません。受験者は増えていますし、志願者が減った大学でも実質倍率が下がるとは限りません。倍率は志願者ではなく、受験者と合格者で決まります。大学ごとの実質倍率は別の記事でまとめているので、そちらを見てください。

三つめに、偏差値が2.5下がった大学があるからといって、そこが「入りやすくなった」わけではありません。河合塾のボーダー偏差値は2.5刻みなので、わずかな変化でも1段階動きます。2.5の差は、同じ帯のなかの誤差に近いと考えたほうが安全です。

四つめに、これから受験する方にとって効く変化は、偏差値の推移ではなく募集人員です。臨時定員の削減で募集人員が「調整中」のまま走っている大学が、2027年度入試で複数あります。秋に学生募集要項が出そろった時点で、志望校の募集人員を必ず確認してください。1校で数人の増減でも、倍率には効きます。

最後に。推移の数字は、志望校を決める材料にはなりません。決めるのは、志望校の配点・科目・日程と、自分の得点の形です。推移は「世の中の話」で、受験は「自分の話」だと思っています。

 

まとめ

「医学部の難易度はどう推移してきて、これからどうなるのか」への答えをまとめます。

  • 私立医学部のボーダー偏差値は1975年51.50→2010年66.10で+14.60(全期間そろう同じ25校で計算)
  • 2010年以降は横ばい。2027年度入試の予想は64.90で、2010年より−1.20です
  • 2010年から偏差値が上がった大学は0校。下がったのが11校、変わらないのが14校でした
  • 上位は動いていません。慶應義塾大学72.5・日本医科大学70.0・順天堂大学70.0は2010年と同じです
  • 受験者は増えています。文部科学省の集計で3年間に109,944人→121,397人(+10.4%)
  • 私立の延べ志願者も+4,994人(指数1.048)。「人気低下」を示す数字は出てきませんでした
  • 定員は2019年の9,420人がピーク。国の推計では2029年ごろに医師の需要と供給が均衡し、定員は削減の方向で検討されています

この記事を書いたのは、「昔より易しくなった」「人気が落ちた」という話が、どちらも数字で確かめられていないまま出回っていると感じたからです。50年分を並べると、難化は2010年で止まり、受験者は増え、定員は減る方向でした。要因は断定できませんが、事実の並びはこうなっています。

2027年度時点の並びは、医学部偏差値ランキング2027(国公立50校+私立31校)にまとめています。難易度の推移とあわせてご覧ください。

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本日の記事は以上です。
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◆筆者プロフィール

後藤 登(Goto Noboru)
仕事:総務・広報・完全個別指導コース担当
自己PR:高校・大学ボクシング部。釣りや登山が好き。新卒で当校に勤めて13年目。医学部受験の情報を調べて、ブログやInstagram、Twitterを更新しています。4年前から完全個別指導コースのコース担当。

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