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中国・四国の医学部ランキング|1位は物差しで3校|2027年度入試

2026年10月01日 更新

こんにちは、福岡の医学部予備校で総務/広報を担当している後藤です。

本日のブログは、中国・四国で医学部を目指している受験生と保護者の方に向けた回です。これまでに九州・沖縄の11校、関西の12校、関東の24校、中部・東海の14校を同じ物差しで並べてきました。今日はその続きで、中国・四国の10校です。

調べてみると、中国・四国の10校だけを切り出して、入口と出口の両方で比べた表は、うちのサイトに1本もありませんでした。そこで、偏差値・共通テスト・学費・医師国家試験・6年で医師になる割合の5つで、9県の10校を並べ直しました。この地域は10校のうち9校が国立で、公立の医学部は1校もありません。

結果から言うと、1位は物差しによって3校に分かれました。偏差値の1位は岡山大学、医師国家試験の合格率の1位は川崎医科大学、6年で医師になる割合の1位は山口大学です。「中国・四国の医学部ランキング」に、1本の正解はありません。

− 中国・四国でいちばん難しい医学部はどこ?

− 国家試験に強いのは、どの大学?

− 国立なら、学費はどこも6年で350万円でしょ?

3つめの答えから先に言うと、この地域では、そうではありません。全国には授業料を国の標準額より高くしている国公立の医学部が8校ありますが、そのうち2校(岡山大学・山口大学)がこの地域にあります。国立9校のうち7校は6年間349.7万円ですが、この2校だけは414万円です。しかも岡山大学の改定は「2027年4月入学者から」。2027年度入試で入る人が、最初の対象になります。ひとつずつ、河合塾・文部科学省・厚生労働省と、各大学が公表している数字で見ていきます。

 

 

中国・四国の医学部は10校|国立9校・公立はゼロ

先に全体像です。中国5県(鳥取・島根・岡山・広島・山口)と四国4県(徳島・香川・愛媛・高知)の9県には、医学部が10校あり、国立9校・私立1校に分かれます。公立は1校もありません。入学定員を足すと1,147人で、全国9,393人の12.2%にあたります。

大学 所在地 区分 定員
鳥取大学 鳥取県 米子市 国立 109人
島根大学 島根県 出雲市 国立 112人
岡山大学 岡山県 岡山市 国立 112人
広島大学 広島県 広島市 国立 120人
山口大学 山口県 宇部市 国立 119人
徳島大学 徳島県 徳島市 国立 111人
香川大学 香川県 三木町 国立 111人
愛媛大学 愛媛県 東温市 国立 115人
高知大学 高知県 南国市 国立 114人
川崎医科大学 岡山県 倉敷市 私立 124人
合計 1,147人

内訳は中国地方が6校(定員696人)、四国が4校(定員451人)です。私立は川崎医科大学の1校だけで、残りはすべて国立大学の医学部になります。全国の国立医学部42校のうち9校(21.4%)がこの9県にあり、「国立中心の地域」という性格がはっきり出ています。

県 校数 定員 大学
鳥取県 1校 109人 鳥取大
島根県 1校 112人 島根大
岡山県 2校 236人 岡山大、川崎医科大
広島県 1校 120人 広島大
山口県 1校 119人 山口大
徳島県 1校 111人 徳島大
香川県 1校 111人 香川大
愛媛県 1校 115人 愛媛大
高知県 1校 114人 高知大

県別に見ると、医学部が2校あるのは岡山県だけ(岡山大学と川崎医科大学)で、残りの8県はすべて1県に1校です。地元の国立1校に絞って考えると、選択肢がその1つだけになる地域だということは、早めに知っておいたほうがいいと思います。

もうひとつ、この地域には珍しい特徴があります。10校の入学定員が、109人から124人のあいだにおさまっていることです(平均114.7人)。全国81校では93人から140人まで開きがありますから、飛び抜けて大きい大学も、極端に小さい大学も無いということになります。定員の差で志望校を考える必要は、この地域ではほとんどありません。

もうひとつ、受験する前に知っておきたいのがキャンパスの場所です。上の表の「所在地」を見ていただくと分かるとおり、10校のうち7校は、県庁所在地ではない街に医学部があります(鳥取大は米子市・島根大は出雲市・山口大は宇部市・香川大は三木町・愛媛大は東温市・高知大は南国市・川崎医科大は倉敷市)。大学名から県庁所在地を思い浮かべていると、下見や受験当日の移動で慌てることになります。定員は令和7年度(2025年度)の文部科学省の一覧の数字で、2027年度入試の募集人員は大学によってまだ動きます。

 

中国・四国の医学部を偏差値で並べると|1位は岡山大学(全国21位)

まず、いちばんよく見られている偏差値です。ここでは河合塾の入試結果調査にもとづく合格者平均偏差値(実際に受かった人の、全統記述模試の英語・数学・理科の平均)で並べました。

中国・四国の医学部10校の合格者平均偏差値ランキング。1位岡山大学67.5、2位広島大学66.5、3位山口大学65.6、10位川崎医科大学55.8
出典:河合塾 入試結果調査(2026年度入試)にもとづく全統記述模試の合格者平均偏差値(英語・数学・理科の単純平均)を太宰府アカデミーが集計。ボーダーは河合塾 2027年度入試難易予想ランキング表(9月版・方式別ランク)
大学(10校の順位) 合格者平均 全国81校の順位 ボーダー
1. 岡山大学 67.5 21位 65.0
2. 広島大学 66.5 23位 65.0
3. 山口大学 65.6 37位 62.5
4. 徳島大学 65.2 40位 62.5
5. 鳥取大学 65.0 43位 62.5
6. 香川大学 64.3 49位 62.5
7. 高知大学 64.3 50位 62.5
8. 愛媛大学 64.2 53位 62.5
9. 島根大学 61.0 77位 62.5
10. 川崎医科大学 55.8 81位 60.0

1位は岡山大学で67.5。全国81校の中では21位です。2位は広島大学の66.5(全国23位)、3位は山口大学の65.6(全国37位)でした。

ここは、ほかの地域と並べるとはっきり差が出たところです。合格者平均偏差値が全国10位以内に入る大学は、中国・四国には1校もありません。同じ数え方で、関東には6校、関西には3校、中部・東海には1校、九州・沖縄には1校あります(全国10位以内は同順位を含めて11校)。この地域でいちばん上にいるのが岡山大の全国21位、次が広島大の全国23位で、全国25位以内に入るのはこの2校だけです。

そのかわり、中の層がとても厚いのがこの地域の形です。国立9校のうち8校が、64.2〜67.5という6.5ポイントの幅におさまっています(岡山大・広島大・山口大・徳島大・鳥取大・高知大・香川大・愛媛大)。偏差値の表だけで志望校を選ぼうとすると、この8校はほとんど区別がつきません。だからこそ、このあとの共通テスト・学費・出口の数字が効いてきます。

その帯から離れているのが島根大学で、合格者平均61.0(全国77位)。国立9校の中では、ここだけ数字が下にあります。いちばん下は私立の川崎医科大学の55.8で、1位との差は11.7ポイントです。

国立9校の共通テスト|ボーダーは79〜84%

国立の9校は、共通テストの得点率も大きく効きます。河合塾の2027年度入試のボーダー得点率(前期)と、2026年度入試で実際に受かった人の共通テストの平均(1000点満点に換算)を並べました。

大学 共テのボーダー 合格者の共テ平均 実質倍率
岡山大学 84% 841点 3.03倍
広島大学 83% 819点 4.12倍
徳島大学 82% 822点 2.38倍
鳥取大学 82% 803点 4.15倍
香川大学 82% 795点 3.64倍
山口大学 81% 825点 2.75倍
高知大学 80% 783点 3.69倍
愛媛大学 79% 784点 3.58倍
島根大学 79% 776点 4.09倍

ボーダーは岡山大が84%でいちばん高く、島根大と愛媛大の79%がいちばん低い。差は5ポイントです。受かった人の平均で見ても、岡山大の841点から島根大の776点まで65点の開きがあります。

おもしろいのは、ボーダーの順番と、受かった人の平均点の順番がそろっていないことです。たとえば山口大はボーダー81%で9校中6位ですが、受かった人の共通テストの平均は825点あり、ボーダーが83%で2位の広島大の819点を上回っています。ボーダーは「合格の可能性が50%になる線」、平均点は「実際に受かった人の真ん中あたり」で、見ているものが違います。両方を並べて見てください。国公立全体のボーダーは国公立医学部の共通テストボーダー|2027年度は78〜90%にまとめてあります。

右の実質倍率は2025年度入試の数字で、国立は2.38〜4.15倍です。いちばん低いのが徳島大の2.38倍、いちばん高いのが鳥取大の4.15倍でした。ただし、倍率は難しさを表す数字ではありません。受けた人の数と、取る人数で決まる数字だからです。難しさは、上の合格者平均で見てください。

私立は川崎医科大学の1校|ボーダーと合格者平均が逆転している

この地域で唯一の私立が川崎医科大学です。ボーダーは60.0なのに、実際に受かった人の平均は55.8。ボーダーのほうが4.2ポイント高く、この差は10校でいちばん大きいです。

推薦や総合型を含む合格者まで入るとこうなることがあり、「合格者平均はボーダーより高い」とはかぎりません。実質倍率も7.76倍と、国立9校(2.38〜4.15倍)より一桁大きく出ています。これは私立で1人が何校も受けるからで、やはり難しさの順番ではありません。この大学だけを詳しく見たい方は川崎医科大学の偏差値は50年で47.5→60.0・国試95.4%の記事をご覧ください。

 

医師国家試験で並べると|1位は川崎医科大学の95.4%

次は出口です。2026年2月の第120回医師国家試験の、大学ごとの合格率で並べました(全体=新卒と既卒の合計)。

中国・四国の医学部10校の第120回医師国家試験の合格率。1位川崎医科大学95.4%、2位岡山大学95.1%、3位徳島大学93.3%
出典:厚生労働省『第120回医師国家試験の合格発表について』(2026年3月16日)学校別合格者状況。合格率は新卒と既卒の合計。右端は新卒との差(ポイント)
大学(10校の順位) 第120回(全体) 第120回(新卒) 差(ポイント)
1. 川崎医科大学 95.4% 97.8% 2.4
2. 岡山大学 95.1% 95.7% 0.6
3. 徳島大学 93.3% 96.4% 3.1
4. 愛媛大学 92.4% 97.1% 4.7
5. 鳥取大学 91.7% 95.5% 3.8
6. 島根大学 91.3% 93.3% 2.0
7. 山口大学 91.1% 92.9% 1.8
8. 高知大学 90.8% 93.3% 2.5
9. 香川大学 87.5% 91.5% 4.0
10. 広島大学 86.9% 94.3% 7.4

1位は川崎医科大学の95.4%です。109人が受けて104人が合格し、全国81校では22位でした。2位は岡山大の95.1%(全国24位)、3位は徳島大学の93.3%(全国40位)です。

ここで、入口との入れ替わりが起きています。合格者平均偏差値では10位だった川崎医科大学が、医師国家試験では1位に立っています。入口の順位と出口の順位が、9位ぶん入れ替わりました。偏差値の表だけを見ていたら、絶対に気づけない動き方です。

全国の合格率は91.6%で、中国・四国の10校のうち5校がこれを上回りました。10校中5校ですから、地域としてはちょうど半分です。

「全体」と「新卒」を分けて読む|広島大学の7.4ポイント差

この表でいちばん大事なのは、実は右の2列です。いちばん左の「全体」には、その年にはじめて受けた人(新卒)と、前の年までに卒業して再挑戦している人(既卒)が、どちらも入っています。既卒の方は一度うまくいかなかった経験がある以上、合格率はどうしても新卒より低くなります。つまり「全体」の数字は、既卒の人が多い大学ほど下がります。

その差がいちばん大きいのが広島大学です。全体では86.9%で10校中10位ですが、新卒だけで見ると94.3%。差は7.4ポイントで、10校の中で最も大きい開きでした。受験者137人も10校でいちばん多く、既卒の人をそれだけ多く受け入れている形になります。反対に差がいちばん小さいのは岡山大の0.6ポイント(全体95.1%・新卒95.7%)です。

「全体の合格率が低い=国家試験に弱い大学」とは読めない、ということです。ストレートで卒業して受けるつもりの受験生にとっては、新卒の数字のほうが自分に近いことになります。大学にはそれぞれの教育方針があり、1つの数字で良し悪しを語れるものではありません。合格率は1年でも大きく動きますので、志望校を比べるときは2年以上を並べて見るのが確実です。全国81校の一覧は医学部の留年率・進級率・卒業率・国試合格率ランキングにあります。

 

6年で医師になる割合で並べると|1位は山口大学の89.3%(全国15位)

国家試験の合格率には、見えないものがもうひとつあります。国家試験を受ける前に、留年や休学で卒業が遅れた人は、そもそも数に入っていないのです。そこで、入学した人のうち何割が6年で卒業し、そのまま医師になったかを見ます。2019年度(令和元年度)に入学した人を、文部科学省が6年間追いかけた数字です。

中国・四国の医学部10校の6年で医師になる割合。1位山口大学89.3%(全国15位)、2位岡山大学87.4%、国家試験1位の川崎医科大学は10位57.4%
出典:文部科学省『医学部医学科の入学状況及び医師国家試験の合格状況等』(2025年12月・令和元年度入学者)をもとに太宰府アカデミー算出(6年で卒業した割合×国家試験の新卒合格率)
大学(10校の順位) 6年で医師になる割合 全国81校の順位 6年で卒業した割合
1. 山口大学 89.3% 15位 94.0%
2. 岡山大学 87.4% 25位 92.3%
3. 鳥取大学 81.5% 41位 86.4%
4. 徳島大学 81.2% 45位 84.2%
5. 高知大学 80.1% 49位 81.7%
6. 愛媛大学 79.3% 52位 88.4%
7. 広島大学 78.1% 56位 82.5%
8. 香川大学 76.5% 62位 84.2%
9. 島根大学 71.1% 74位 76.2%
10. 川崎医科大学 57.4% 81位 65.6%

1位は山口大学の89.3%で、全国81校では15位です。入学した117人のうち110人が6年で卒業し、卒業した割合94.0%も10校で1位でした。2位は岡山大学の87.4%(全国25位)、3位は鳥取大学の81.5%(全国41位)です。全国20位以内に入っているのは、山口大学の1校だけでした。

そして、この記事でいちばんお伝えしたいのがここです。ひとつ前の表で国家試験の合格率が1位だった川崎医科大学は、この物差しでは10位(57.4%)です。入学した128人のうち、6年で卒業したのは84人。卒業した割合は65.6%でした。

これは矛盾ではなく、2つの数字が、別々のことを数えているからです。国家試験の合格率は「卒業できた人」だけを分母にしています。この物差しは「6年で卒業した割合 × その学年の国家試験(新卒)の合格率」で計算していて、川崎医科大学は65.6% × 87.5% = 57.4% という内訳です。割合を下げているのは国家試験のほうではなく、その手前の「6年で卒業する」ところだと分かります。

実際、直近の第120回では新卒の合格率が97.8%ありますから、卒業までたどり着いた人は、高い割合で国家試験に合格しています。合格率の高さは、卒業までの道のりとセットで見る必要があるということです。

だから、この2つの表はかならず並べて見てください。国家試験の合格率だけを見ると「受かりやすい大学」に見え、6年で医師になる割合だけを見ると「厳しい大学」に見えます。どちらも事実で、受験生にとって知りたいのは「入学してから医師になるまで、何年かかりそうか」のはずです。その問いに答えるのは、後ろの表のほうです。

全国の卒業率の平均は85.4%で、これを上回ったのは4校(山口大94.0%・岡山大92.3%・愛媛大88.4%・鳥取大86.4%)でした。なお、この割合には留年だけでなく、留学や研究、病気などで休学して6年を超えた人も含まれます。数字の低さは「大学が厳しい」とも「学生が苦労した」とも読めるので、入口の偏差値と並べて、入学後の6年間をイメージする材料として使ってください。計算の方法は「6年で卒業した割合 × その年の国家試験(新卒)の合格率」で、1学年ぶんの数字です。

 

学費で並べると|「国立は350万円」が9校のうち7校にしか当てはまらない

最後はお金です。ここが、この地域のいちばんの読みどころだと思います。「国立なら6年間で約350万円」は、中国・四国では9校のうち7校にしか当てはまりません。

中国・四国の医学部10校の6年間の学費。国立7校は349.7万円、岡山大学と山口大学は授業料が上限額で414万円、私立の川崎医科大学は4,550万円
出典:各大学の公式サイト・学生募集要項(2026年10月1日確認)。学納金ベース(入学料+授業料等)で寮費・諸会費は含まない。国立は入学料282,000円+授業料×6年。★は授業料を国の上限額に改定した大学
国立9校 6年間の学費 授業料 年額 改定が適用される入学年
山口大学 414万円 642,960円(上限額) 2026年4月入学者から
岡山大学 414万円 642,960円(上限額) 2027年4月入学者から
島根大学 349.7万円 535,800円(標準額) ―
広島大学 349.7万円 535,800円(標準額) ―
徳島大学 349.7万円 535,800円(標準額) ―
愛媛大学 349.7万円 535,800円(標準額) ―
香川大学 349.7万円 535,800円(標準額) ―
高知大学 349.7万円 535,800円(標準額) ―
鳥取大学 349.7万円 535,800円(標準額) ―

国立大学の授業料には、国が決めた標準額535,800円と、各大学が独自に設定できる上限642,960円(標準額の120%)があります。国が一律に決めているのではなく、上げるかどうかは大学ごとの経営判断です。近年これを上げる大学が出てきたので、「国立は全国どこでも同じ」はもう成り立ちません。

ここは他ではあまり書かれていないので、はっきり書いておきます。医学部を置く国公立50校のうち、授業料が国の標準額を超えているのは8校です。そして、そのうち2校(岡山大学・山口大学)が中国・四国にあります。

授業料が標準額を超える国公立8校 区分 授業料 年額 適用
千葉大学 国立 642,960円 令和2年4月以降の入学者
東京大学 国立 642,960円 2025年4月入学者から
東京科学大学 国立 642,960円 2020年4月以降入学(医歯学系・学部)
岡山大学 国立 642,960円 2027年4月入学者から
山口大学 国立 642,960円 2026年4月入学者から
熊本大学 国立 594,600円 令和9年度(2027年度)授業料から・全学年一斉
奈良県立医科大学 公立 642,960円 令和8年度(2026年度)入学者から
横浜市立大学 公立 573,000円 ―

この2校はどちらも上限額いっぱいの年642,960円で、標準額との差は年107,160円。6年間では64.3万円の差になります。6年間の合計で見ると、標準額のままの国立7校が349.7万円、この2校が414万円です。国公立50校の中で414万円は高いほうから2位にあたります(同額が千葉大学・東京大学・東京科学大学を含む5校。いちばん高いのは奈良県立医科大学の466万円)。反対に、標準額のままで6年349.7万円の国公立は37校です。

そして、いま受験を考えている人にとって大事なのは「いつ入学した人から上がるのか」です。山口大学は2026年4月入学者から、岡山大学は2027年4月入学者からと公表しています。つまり岡山大学については、2027年度入試で入学する人が、改定後の授業料が適用される最初の学年になります。岡山大学は、2027年3月の時点ですでに在学している学生は据え置きとしており、募集要項の授業料欄にも改定後の額を適用すると明記しています。6年間で64.3万円多く必要になる、ということを、出願の前に家計の計画に入れておいてください。

なお、国立の授業料は在学中に改定されることがあり、入学時の金額が6年間続くとはかぎりません(実際、上の表にある熊本大学は在学生も含めて一斉に上げる形をとっています)。ここに書いた金額は、2027年度に入学する人にいま適用されると公表されている額で計算したものです。

川崎医科大学の4,550万円は、全国の私立31校でいちばん高い

私立は1校だけですが、金額は全国で最も大きくなります。川崎医科大学の6年間は4,550万円で、これは全国の私立31校の中でいちばん高い金額です。標準額のままの国立7校(349.7万円)と比べると、4,200.3万円の差になります。

さらに、川崎医科大学は学納金のほかに寮費と食費がかかります。うちの資料では寮費80万円・食費36万円などを加えた総費用がおよそ4,740万円です。医学部で寮費が別にかかるのは、全国でもこの大学と昭和医科大学の2校だけなので、ほかの私立と同じ感覚で学費表だけを見比べると、見落とすことになります。上の表の金額は、ほかの大学とそろえるために学納金だけ(寮費・諸会費を含まない)で計算したものです。

同じ岡山県で11.0倍|国公立と私立が1つの県に並んでいる

そして、この記事を書いていていちばん驚いたのが岡山県です。同じ岡山県に、6年間414万円の岡山大学と、4,550万円の川崎医科大学があります。差は4,136万円。11.0倍です。県が同じで、電車で移動できる距離に2つ医学部があっても、6年間に用意するお金は11倍ちがうということになります。

しかもこの県は、国立のほうが2027年度から上がり、私立のほうは全国でいちばん高いという組み合わせです。学費の話を「国立は安い、私立は高い」の一言で済ませられない理由が、この1県に全部出ています。

もうひとつ、表に出てこないお金の話を1つだけ。愛媛大学は、医学部だけ入学時の「その他の経費」が155,800円で、ほかの学部(64,660円)より高く設定されています。学費表の「入学料」「授業料」の欄だけを見ていると落ちる費目なので、志望校が決まったら、大学の学費ページを上から下まで読むことをおすすめします。全国の学費を比べたい方は医学部の学費|国公立350万・私立1,850〜4,550万円にまとめてあります。

 

物差しを替えると1位は3校に分かれる|10校の順位一覧

ここまでの5つの物差しを、1枚にまとめます。数字はすべて、中国・四国の10校の中での順位です。

中国・四国の医学部10校の、偏差値・共通テスト・学費・医師国家試験・6年で医師になる割合の5つの物差しでの順位一覧。3つすべてで6位以内は岡山・徳島・鳥取の3校
出典:河合塾 入試結果調査(2026年度入試)にもとづく全統記述模試の合格者平均偏差値(英語・数学・理科の単純平均)を太宰府アカデミーが集計/厚生労働省『第120回医師国家試験の合格発表について』(2026年3月16日)学校別合格者状況/文部科学省『医学部医学科の入学状況及び医師国家試験の合格状況等』(2025年12月・令和元年度入学者)/各大学の公式サイト・学生募集要項(2026年10月1日確認)。学納金ベース(入学料+授業料等)で寮費・諸会費は含まない。順位は中国・四国10校の中での順位

入口の順位(偏差値・共通テスト・倍率)

大学 偏差値 共テ 倍率の低い順
岡山大学 1位 1位 3位
広島大学 2位 2位 8位
山口大学 3位 6位 2位
徳島大学 4位 3位 1位
鳥取大学 5位 3位 9位
香川大学 6位 3位 5位
高知大学 7位 7位 6位
愛媛大学 8位 8位 4位
島根大学 9位 8位 7位
川崎医科大学 10位 ― 10位

入口の3つは、おおむね同じ並びになります。偏差値の上位が共通テストでも上位で、倍率だけは順番がばらばらです(徳島大が2.38倍で最も低く、川崎医科大が7.76倍で最も高い)。くり返しますが、倍率は難しさの順番ではありません。

出口とお金の順位(学費・国家試験・6年で医師)

大学 学費の安い順 国家試験 6年で医師
岡山大学 8位 2位 2位
広島大学 1位 10位 7位
山口大学 8位 7位 1位
徳島大学 1位 3位 4位
鳥取大学 1位 5位 3位
香川大学 1位 9位 8位
高知大学 1位 8位 5位
愛媛大学 1位 4位 6位
島根大学 1位 6位 9位
川崎医科大学 10位 1位 10位

学費の欄で7校が並んで1位になり、岡山大と山口大だけが8位に落ちているのが、この地域の形です。そして出口の2列を見比べると、川崎医科大が国家試験1位・6年で医師10位という、この地域でいちばん大きな開きが目に入ると思います。

一方で、この地域には「どの物差しでも上位」という大学もあります。偏差値・国家試験・6年で医師になる割合の3つすべてで6位以内に入ったのは、岡山大学・徳島大学・鳥取大学の3校でした。とくに岡山大学と徳島大学は3つとも4位以内です。先に書いた中部・東海の14校ではこれが0校、九州・沖縄では鹿児島大学の1校、関東では東京大学の1校でしたから、中国・四国は上位の顔ぶれが安定している地域だと言えます。

動きの大きい大学をもう一度まとめます。川崎医科大は偏差値10位から国家試験1位へ、9位ぶんの上げ幅で10校の最大です。反対に広島大は偏差値2位から国家試験10位へ8位ぶん、6年で医師では7位へ5位ぶん下がりました(ただし、これは上で見たとおり既卒の方を多く受け入れている影響が大きく、新卒だけなら94.3%です)。山口大は偏差値3位から6年で医師1位へ上がっています。

つまり、「中国・四国の医学部ランキング」は、どの物差しで並べるかで1位が入れ替わります。偏差値の表だけを見て志望校を決めると、入学後の6年間と、その先の国家試験という大事な情報を見落とすことになります。

 

太宰府アカデミーの視点|中国・四国の受験生がこの表をどう使うか

ここまでの数字を、中国・四国で医学部を目指す受験生と保護者の方がどう使えばいいかを書きます。

1. この地域では、国立どうしでも学費を比べる必要がある。ほかの地域の記事では「国立は横一線なので学費は比較の材料から外していい」と書きました。中国・四国はそうではありません。岡山大と山口大は6年間414万円、ほかの国立7校は349.7万円で、64.3万円の差があります。とくに岡山大は2027年4月入学者からなので、いま高校3年生・受験生の方が最初の対象です。併願の組み合わせを決める前に、この差を家計の表に入れておいてください。

2. 国家試験の合格率と、6年で医師になる割合は、かならず2つ並べる。この地域はその理由がいちばんはっきり出ています。国家試験1位の大学が、6年で医師になる割合では10位です。国家試験の合格率は「卒業できた人」だけの数字なので、卒業までにどれくらいの人が足踏みしているかは、合格率には出てきません。両方そろって上位なのは岡山大で、6年で医師87.4%・卒業率92.3%・国家試験95.1%です。

3. 「全体」と「新卒」を取り違えない。ネットの記事やSNSで見かける合格率は、たいてい「全体」の数字です。この地域では、全体と新卒で最大7.4ポイント違いました(広島大学)。ストレートで卒業して受けるつもりなら、自分に近いのは新卒の数字のほうです。大学のサイトや厚生労働省の発表で、両方を確かめてください。

4. 「地元の1校」だけで考えない。この9県のうち8県は、医学部が1校しかありません。その1校が自分の学力の帯や入試科目に合わないとき、地元だけで考え続けると手が止まります。とくにこの地域は、国立9校のうち8校が6.5ポイントの幅に入っているので、県をまたいで比べたほうが、受けられる大学は一気に増えます。瀬戸大橋やしまなみ海道で中国と四国は行き来できますから、上の表は県境をまたいで帯を広げるための表として使ってください。

5. この地域の出身者だけが使える入試がある。川崎医科大学の総合型選抜には「中国四国地域出身者枠」があり、2027年度入試の募集人員は約20名、出願はWebで10月19日から10月30日までと公表されています(1次11月7日・2次11月14日)。専願で、22歳以下であれば評定の基準はありません。この記事を公開した10月1日の時点では、まだ出願前です。国立の地域枠とあわせて、「この地域に住んでいること」が条件になる入試を一度調べてみてください。地域枠の義務年限や修学資金については医学部の地域枠とは?離脱は4.1%・貸与額6.6倍差・義務9〜12年にまとめてあります。日程と募集人員は、かならず最新の学生募集要項で確認してください。

ランキングは、志望校を絞るための道具です。どの物差しを重く見るかは、受験生一人ひとりの事情で変わります。学力の目安なのか、入学後の進み方なのか、家計なのか。自分にとって大事な物差しを先に決めてから表を見ると、迷いにくくなります。

 

中国・四国の医学部についてよくある質問

Q. 中国・四国でいちばん偏差値が高い医学部はどこですか。
A. 岡山大学です。合格者平均偏差値は67.5で、全国81校の中では21位。次が広島大学(合格者平均66.5・全国23位)、3番目が山口大学(65.6・全国37位)です。合格者平均偏差値が全国10位以内に入る大学は、この地域にはありません。

Q. 中国・四国の医学部は何校ですか。
A. 中国5県と四国4県の9県で10校です。内訳は国立9校(鳥取大・島根大・岡山大・広島大・山口大・徳島大・香川大・愛媛大・高知大)・私立1校(川崎医科大学)で、公立の医学部は1校もありません。全国81校の12.3%、全国の国立医学部42校の21.4%がこの地域です。全国の一覧は医学部のある大学は全国81校|都道府県順の一覧にあります。

Q. 中国・四国の国立医学部の学費はいくらですか。
A. 9校のうち7校は6年間349.7万円(入学料282,000円+授業料535,800円×6年)ですが、岡山大学と山口大学だけは414万円です。この2校は授業料を国の上限額642,960円に改定しており、山口大学は2026年4月入学者から、岡山大学は2027年4月入学者から適用されます。6年間の差は64.3万円です。

Q. 川崎医科大学の学費はいくらですか。
A. 6年間4,550万円で、全国の私立31校の中でいちばん高い金額です。これは大学に納めるお金(学納金)だけの金額で、このほかに寮費と食費がかかります(寮費80万円・食費36万円などを含めた総費用はおよそ4,740万円)。寮費が別にかかる医学部は、全国でもこの大学と昭和医科大学の2校だけです。

Q. 医師国家試験に強い中国・四国の医学部はどこですか。
A. 第120回(2026年)では川崎医科大学が95.4%で全国22位、岡山大学が95.1%で全国24位、徳島大学が93.3%で全国40位でした。全国の合格率91.6%を、10校のうち5校が上回っています。ただし、合格率は「卒業できた人」だけの数字です。入学から6年で医師になる割合も必ず並べて見てください。この物差しの1位は山口大学の89.3%(全国15位)です。

Q. 中国・四国で入りやすい医学部はどこですか。
A. 国立で合格者平均偏差値がいちばん低いのは島根大(61.0・全国77位)です。ただ、残りの国立8校は64.2〜67.5の6.5ポイントの幅にかたまっているので、偏差値だけでは差がつきません。共通テストのボーダー(79%〜84%)や2次試験の科目で選ぶほうが現実的です。全国での位置は入りやすい医学部ランキングで確かめられます。

Q. 中国・四国に公立の医学部はありますか。
A. ありません。全国に公立の医学部は8校ありますが、この9県には1校もなく、国立9校と私立1校だけです。公立大学は地元出身者の入学料が安くなることがありますが、この地域ではその選択肢がないということになります。

 

まとめ|中国・四国の医学部ランキングで押さえる5点

この記事の要点です。

− 中国5県+四国4県の医学部は10校(国立9・私立1)で、定員は合計1,147人。公立はゼロ。全国81校の12.3%、全国の国立医学部42校の21.4%がこの地域にあり、2校あるのは岡山県だけで、残り8県は1県に1校です。

− 偏差値(合格者平均)の1位は岡山大学の67.5(全国21位)。2位は広島大学66.5、3位は山口大学65.6。全国10位以内に入る大学は0校(関東は6校)ですが、国立9校のうち8校が6.5ポイントの幅に入る厚い中間層が特徴です。

− 医師国家試験(第120回)の1位は川崎医科大学の95.4%(全国22位)。偏差値では10位の大学が出口で1位に立ち、9位ぶんの入れ替わりが起きています。ただし「全体」と「新卒」は最大7.4ポイント違うので、分けて読んでください。

− 6年で医師になる割合の1位は山口大学の89.3%(全国15位・卒業率94.0%)。国家試験1位の川崎医科大学は、この物差しでは10位(57.4%)です。国家試験の合格率は卒業できた人だけの数字なので、2つ並べて見てください。3つの物差しすべてで6位以内は岡山大学・徳島大学・鳥取大学の3校でした。

− 学費は「国立なら350万円」が9校のうち7校まで。岡山大学と山口大学は414万円で、64.3万円高くなります。全国で授業料が標準額を超える国公立8校のうち2校がこの地域で、岡山大学は2027年4月入学者から=いまの受験生が最初の対象です。私立の川崎医科大学は4,550万円で全国の私立31校の最高額、同じ岡山県で11.0倍ひらきます。

明日からできることは1つです。気になる中国・四国の大学を2〜3校選んで、この記事の順位表でそれぞれ何位かを書き出してみてください。偏差値では6.5ポイントの中にかたまっている大学どうしでも、国家試験や6年で医師になる割合、そして学費で見ると、印象が大きく変わることがあります。

この記事を書いたのは、うちのサイトに、中国・四国の医学部を入口(偏差値)と出口(国家試験・6年で医師)とお金の3つで比べられるページが1本も無かったからです。書いている途中でいちばん驚いたのは、「国立の学費は全国どこでも同じ」が、この地域ではもう成り立っていなかったことでした。これで九州・関西・関東・中部東海・中国四国と5つの地域がそろい、全国81校のうち71校を地域別に並べたことになります。数字は、こうして資料が更新されるたびに入れ替えていきます。

 

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◆筆者プロフィール

後藤 登(Goto Noboru)
仕事:総務・広報・完全個別指導コース担当
自己PR:高校・大学ボクシング部。釣りや登山が好き。新卒で当校に勤めて13年目。医学部受験の情報を調べて、ブログやInstagram、Twitterを更新しています。4年前から完全個別指導コースのコース担当。

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