こんにちは、福岡の医学部予備校で総務/広報を担当している後藤です。
本日のブログは、中部・東海で医学部を目指している受験生と保護者の方に向けた回です。これまでに九州・沖縄の11校、関西の12校、関東の24校を同じ物差しで並べてきました。残っていたのが、この中部・東海です。
調べてみると、中部・東海の14校だけを切り出して、入口と出口の両方で比べた表は、うちのサイトに1本もありませんでした。そこで、偏差値・共通テスト・学費・医師国家試験・6年で医師になる割合の5つで、10県の14校を並べ直しました。この地域は国立大学が10校あり、全国の国立医学部42校の23.8%が集まっています。
結果から言うと、1位は物差しによって3校に分かれました。偏差値の1位は名古屋大学、医師国家試験の合格率の1位は福井大学、6年で医師になる割合の1位は金沢大学です。しかも、3つすべてで6位以内に入った大学は1校もありませんでした。「中部・東海の医学部ランキング」に、1本の正解はありません。
− 中部・東海でいちばん難しい医学部はどこ?
− 国家試験に強いのは、どの大学?
− 国立なら、学費はどこも6年で350万円でしょ?
3つめの答えから先に言うと、この地域では、そのとおりです。全国には授業料を国の標準額より高くしている国公立の医学部が8校ありますが、中部・東海には1校もありません。国立10校はすべて6年間349.7万円です。ひとつずつ、河合塾・文部科学省・厚生労働省と、各大学が公表している数字で見ていきます。
この記事の目次
中部・東海の医学部は14校|国立10校は全国の4分の1
先に全体像です。中部9県(新潟・富山・石川・福井・山梨・長野・岐阜・静岡・愛知)に三重県を加えた10県には、医学部が14校あり、国立10校・公立1校・私立3校に分かれます。入学定員を足すと1,641人で、全国9,393人の17.5%にあたります。
三重県を入れているのは、「東海3県(愛知・岐阜・三重)」という日常の呼び方に合わせるためです。先に書いた関西の記事は2府4県(京都・大阪・兵庫・滋賀・奈良・和歌山)なので、この記事と重なっている大学はありません。
| 大学 | 所在地 | 区分 | 定員 |
|---|---|---|---|
| 新潟大学 | 新潟県 新潟市 | 国立 | 140人 |
| 富山大学 | 富山県 富山市 | 国立 | 110人 |
| 金沢大学 | 石川県 金沢市 | 国立 | 117人 |
| 福井大学 | 福井県 永平寺町 | 国立 | 115人 |
| 山梨大学 | 山梨県 中央市 | 国立 | 125人 |
| 信州大学 | 長野県 松本市 | 国立 | 120人 |
| 岐阜大学 | 岐阜県 岐阜市 | 国立 | 110人 |
| 浜松医科大学 | 静岡県 浜松市 | 国立 | 120人 |
| 名古屋大学 | 愛知県 名古屋市 | 国立 | 112人 |
| 三重大学 | 三重県 津市 | 国立 | 125人 |
| 名古屋市立大学 | 愛知県 名古屋市 | 公立 | 97人 |
| 金沢医科大学 | 石川県 内灘町 | 私立 | 113人 |
| 愛知医科大学 | 愛知県 長久手市 | 私立 | 115人 |
| 藤田医科大学 | 愛知県 豊明市 | 私立 | 122人 |
| 合計 | 1,641人 |
ここでひとつ、毎年のように間違われるところを先に書いておきます。「東海大学」は神奈川県の大学で、この記事の14校には入っていません。名前に「東海」と付いていますが所在地は関東です(関東の医学部ランキングの記事に入れてあります)。反対に、山梨・新潟・富山・石川・福井は「中部・北陸」で、関東1都6県には入りません。
| 県 | 校数 | 定員 | 大学 |
|---|---|---|---|
| 新潟県 | 1校 | 140人 | 新潟大 |
| 富山県 | 1校 | 110人 | 富山大 |
| 石川県 | 2校 | 230人 | 金沢大、金沢医科大 |
| 福井県 | 1校 | 115人 | 福井大 |
| 山梨県 | 1校 | 125人 | 山梨大 |
| 長野県 | 1校 | 120人 | 信州大 |
| 岐阜県 | 1校 | 110人 | 岐阜大 |
| 静岡県 | 1校 | 120人 | 浜松医科大 |
| 愛知県 | 4校 | 446人 | 名古屋大、名古屋市立大、愛知医科大、藤田医科大 |
| 三重県 | 1校 | 125人 | 三重大 |
県別に見ると、14校のうち4校(定員446人)が愛知県に集まっています。藤田医科大学・愛知医科大学・名古屋大学・名古屋市立大学の4校で、東海3県では6校・定員681人です。一方で、医学部が1校しかない県が8県あります(新潟・富山・福井・山梨・長野・岐阜・静岡・三重)。地元の国立1校に絞って考えると、選択肢がその1つだけになる地域だということは、早めに知っておいたほうがいいと思います。
もうひとつの特徴が、国立の多さです。14校のうち10校が国立で、これは全国の国立医学部42校の23.8%にあたります。私立は3校(藤田医科・愛知医科・金沢医科)しかなく、公立は名古屋市立大学の1校だけです(全国の公立医学部は8校)。定員は令和7年度(2025年度)の文部科学省の一覧の数字で、2027年度入試の募集人員は大学によってまだ動きます。
中部・東海の医学部を偏差値で並べると|1位は名古屋大学(全国6位)
まず、いちばんよく見られている偏差値です。ここでは河合塾の入試結果調査にもとづく合格者平均偏差値(実際に受かった人の、全統記述模試の英語・数学・理科の平均)で並べました。

| 大学(14校の順位) | 合格者平均 | 全国81校の順位 | ボーダー |
|---|---|---|---|
| 1. 名古屋大学 | 69.7 | 6位 | 67.5 |
| 2. 山梨大学 | 68.6 | 14位 | 67.5 |
| 3. 金沢大学 | 66.6 | 22位 | 65.0 |
| 4. 新潟大学 | 66.0 | 28位 | 65.0 |
| 5. 藤田医科大学 | 66.0 | 30位 | 65.0 |
| 6. 名古屋市立大学 | 65.9 | 32位 | 65.0 |
| 7. 信州大学 | 65.9 | 33位 | 62.5 |
| 8. 三重大学 | 65.7 | 36位 | 65.0 |
| 9. 浜松医科大学 | 65.3 | 39位 | 65.0 |
| 10. 岐阜大学 | 64.9 | 44位 | 65.0 |
| 11. 愛知医科大学 | 64.2 | 53位 | 65.0 |
| 12. 福井大学 | 63.6 | 62位 | 62.5 |
| 13. 富山大学 | 63.4 | 64位 | 62.5 |
| 14. 金沢医科大学 | 60.8 | 78位 | 62.5 |
1位は名古屋大学で69.7。全国81校の中では6位です。2位は山梨大学の68.6(全国14位)、3位は金沢大学の66.6(全国22位)でした。
ここは関東との違いがはっきり出たところです。全国81校の上位10校のうち、中部・東海にあるのは名古屋大の1校だけでした(関東は6校)。そのかわり、65.7〜66.0の帯に5校がかたまっています。上に突き抜けた大学が少なく、中間の層が厚いのがこの地域の形です。
いちばん下は金沢医科大学の60.8(全国78位)で、1位との差は8.9ポイント。関東の24校では15.3ポイント、関西の12校では9.0ポイントでしたから、中部・東海は校数のわりに幅がせまいことになります。
国公立11校の共通テスト|ボーダーは79〜86%
国公立の11校は、共通テストの得点率も大きく効きます。河合塾の2027年度入試のボーダー得点率(前期)と、2026年度入試で実際に受かった人の共通テストの平均(1000点満点に換算)を並べました。
| 大学 | 共テのボーダー | 合格者の共テ平均 | 実質倍率 |
|---|---|---|---|
| 名古屋大学 | 86% | 873点 | 2.46倍 |
| 山梨大学 | 85% | 853点 | 2.34倍 |
| 新潟大学 | 84% | 805点 | 3.34倍 |
| 信州大学 | 83% | 831点 | 2.84倍 |
| 名古屋市立大学 | 83% | 820点 | 2.18倍 |
| 金沢大学 | 82% | 807点 | 2.17倍 |
| 三重大学 | 82% | 828点 | 2.57倍 |
| 浜松医科大学 | 82% | 801点 | 3.38倍 |
| 岐阜大学 | 82% | 810点 | 2.23倍 |
| 福井大学 | 79% | 817点 | 2.97倍 |
| 富山大学 | 79% | 805点 | 3.49倍 |
ボーダーは名古屋大が86%でいちばん高く、福井大と富山大の79%がいちばん低い。差は7ポイントです。受かった人の平均で見ても、名古屋大の873点から浜松医科大の801点まで72点の開きがあります。同じ「中部・東海の国公立」でも、必要な共通テストの点は7ポイントちがいます。
おもしろいのは、ボーダーの順番と、受かった人の平均点の順番がそろっていないことです。たとえば福井大はボーダー79%で下から2番目ですが、受かった人の共通テストの平均は817点あり、ボーダーが82%の浜松医科大の801点を上回っています。ボーダーは「合格の可能性が50%になる線」、平均点は「実際に受かった人の真ん中あたり」で、見ているものが違います。両方を並べて見てください。
右の実質倍率は2025年度入試の数字で、国公立は2.17〜3.49倍です。私立3校はこのあと別に並べますが、7.05〜19.97倍と一桁大きく出ます。ただし、倍率は難しさを表す数字ではありません。私立は1人が何校も受けるので、倍率は大きく出やすいからです。難しさは、上の合格者平均で見てください。
私立3校|合格者平均がいちばん高いのは藤田医科大学
| 私立3校 | 合格者平均 | ボーダー | 実質倍率 |
|---|---|---|---|
| 藤田医科大学 | 66.0 | 65.0 | 7.05倍 |
| 愛知医科大学 | 64.2 | 65.0 | 10.03倍 |
| 金沢医科大学 | 60.8 | 62.5 | 19.97倍 |
私立は3校しかありませんが、中身はかなり違います。藤田医科大学の合格者平均66.0は、14校の中で5位。国公立の7校より上です(→ 藤田医科大学の偏差値は65.0)。愛知医科大学は64.2で11位(→ 愛知医科大学の偏差値65.0)、金沢医科大学は60.8で14位でした。
この表で目を引くのが金沢医科大学です。ボーダーは62.5なのに、実際に受かった人の平均は60.8。ボーダーのほうが1.7ポイント高く、この差は14校でいちばん大きいです。推薦や総合型を含む合格者まで入るとこうなることがあり、「合格者平均はボーダーより高い」とはかぎりません。
倍率の幅も大きく、藤田医科大の7.05倍から金沢医科大の19.97倍まで開いています。くり返しになりますが、この数字は受けた人の数であって、難しさの順番ではありません。
医師国家試験で並べると|1位は福井大学の96.4%(全国12位)
次は出口です。2026年2月の第120回医師国家試験の、大学ごとの合格率で並べました(全体=新卒と既卒の合計)。

| 大学(14校の順位) | 第120回(全体) | 第120回(新卒) | 第119回(新卒) |
|---|---|---|---|
| 1. 福井大学 | 96.4% | 98.1% | 100.0% |
| 2. 浜松医科大学 | 95.8% | 96.6% | 98.2% |
| 3. 信州大学 | 95.5% | 98.1% | 96.0% |
| 4. 藤田医科大学 | 94.7% | 96.4% | 98.1% |
| 5. 三重大学 | 94.7% | 96.1% | 100.0% |
| 6. 岐阜大学 | 93.7% | 96.7% | 99.1% |
| 7. 名古屋市立大学 | 93.4% | 95.3% | 94.9% |
| 8. 山梨大学 | 93.4% | 96.0% | 90.3% |
| 9. 名古屋大学 | 92.6% | 95.6% | 95.7% |
| 10. 新潟大学 | 92.0% | 96.8% | 95.4% |
| 11. 愛知医科大学 | 91.3% | 93.6% | 98.0% |
| 12. 金沢大学 | 89.5% | 92.4% | 100.0% |
| 13. 富山大学 | 89.3% | 93.3% | 98.1% |
| 14. 金沢医科大学 | 84.8% | 86.3% | 94.6% |
1位は福井大学の96.4%です。110人が受けて106人が合格し、全国81校では12位でした。2位は浜松医科大学の95.8%(全国17位)、3位は信州大学の95.5%(全国20位)です。
全国の合格率は91.6%で、中部・東海の14校のうち10校がこれを上回りました。14校中10校ですから、地域としてはかなり高い水準です。
そして、この記事でいちばんお伝えしたいのがここです。合格者平均偏差値では12位だった福井大学が、医師国家試験では1位に立っています。入口の順位と出口の順位が、11位ぶん入れ替わりました。偏差値の表だけを見ていたら、絶対に気づけない動き方です。
同じことは浜松医科大にも言えます。偏差値では9位ですが、国家試験は95.8%で2位。三重大学も偏差値8位から国家試験5位へ上がっています。大学にはそれぞれの教育方針があり、数字だけで良し悪しを語れるものではありません。ただ、入口の偏差値の順番がそのまま出口の順番になるわけではない、ということは表から読み取れます。
一方で、国家試験の合格率は1年で大きく動きます。表の右端は1年前の第119回(新卒)の合格率です。第119回で新卒の合格率が100%だったのは金沢大学・福井大学・三重大学の3校ですが、そのうち金沢大学は第120回では89.5%(新卒92.4%)で、14校の中では12位でした。この表は「どの大学が強いか」を決める表ではなく、1年ぶんの結果として読んでください。志望校を比べるときは、2年以上を並べて見るのが確実です。
6年で医師になる割合で並べると|1位は金沢大学の97.4%(全国81校でも1位)
国家試験の合格率には、見えないものがあります。国家試験を受ける前に、留年や休学で卒業が遅れた人は入っていないのです。そこで、入学した人のうち何割が6年で卒業し、そのまま医師になったかを見ます。2019年度(令和元年度)に入学した人を、文部科学省が6年間追いかけた数字です。

| 大学(14校の順位) | 6年で医師になる割合 | 全国81校の順位 | 6年で卒業した割合 |
|---|---|---|---|
| 1. 金沢大学 | 97.4% | 1位 | 97.4% |
| 2. 三重大学 | 92.8% | 4位 | 92.8% |
| 3. 名古屋市立大学 | 90.9% | 9位 | 95.8% |
| 4. 浜松医科大学 | 89.0% | 18位 | 90.6% |
| 5. 信州大学 | 88.8% | 19位 | 92.5% |
| 6. 富山大学 | 88.3% | 21位 | 90.0% |
| 7. 名古屋大学 | 88.2% | 22位 | 92.2% |
| 8. 岐阜大学 | 87.6% | 24位 | 88.4% |
| 9. 新潟大学 | 87.1% | 27位 | 91.3% |
| 10. 福井大学 | 85.3% | 33位 | 85.3% |
| 11. 金沢医科大学 | 76.6% | 61位 | 81.0% |
| 12. 山梨大学 | 74.4% | 67位 | 82.4% |
| 13. 藤田医科大学 | 73.6% | 70位 | 75.0% |
| 14. 愛知医科大学 | 71.0% | 76位 | 72.4% |
1位は金沢大学の97.4%です。しかもこれは、全国81校の中でも1位でした。入学した116人のうち113人が6年で卒業しています。2位は三重大の92.8%(全国4位)、3位は名古屋市立大学の90.9%(全国9位)、4位は浜松医科大の89.0%(全国18位)です。
この物差しでは、全国の上位10校のうち3校が中部・東海です(金沢大全国1位・三重大全国4位・名古屋市立大全国9位)。偏差値の上位10校には1校しか入っていなかった地域が、この物差しでは3校。入口の表と出口の表は、まったく違う地図になります。
逆の向きに動く大学もあります。合格者平均偏差値で2位の山梨大学は、この物差しでは12位。藤田医科大は偏差値5位でこの物差しが13位、愛知医科大は偏差値11位で14位です。反対に富山大学は偏差値13位から6位へ、7位ぶん上がりました。
ただ、この割合には留年だけでなく、留学や研究、病気などで休学して6年を超えた人も含まれます。数字の低さは「大学が厳しい」とも「学生が苦労した」とも読めるので、入口の偏差値と並べて、入学後の6年間をイメージする材料として使ってください。計算の方法は「6年で卒業した割合 × その年の国家試験(新卒)の合格率」です。1学年ぶんの数字なので、毎年12月に文部科学省の資料が更新されたら入れ替えます。
学費で並べると|国立10校はすべて349.7万円
最後はお金です。ここが、この地域のいちばんの読みどころだと思います。「国立なら6年間で約350万円」が、中部・東海では10校すべてに当てはまります。

| 国公立11校 | 6年間の学費 | 授業料 年額 | 入学料 |
|---|---|---|---|
| 名古屋市立大学 | 354.7万円 | 535,800円(標準額) | 332,000円 |
| 三重大学 | 349.7万円 | 535,800円(標準額) | 282,000円 |
| 信州大学 | 349.7万円 | 535,800円(標準額) | 282,000円 |
| 名古屋大学 | 349.7万円 | 535,800円(標準額) | 282,000円 |
| 富山大学 | 349.7万円 | 535,800円(標準額) | 282,000円 |
| 山梨大学 | 349.7万円 | 535,800円(標準額) | 282,000円 |
| 岐阜大学 | 349.7万円 | 535,800円(標準額) | 282,000円 |
| 新潟大学 | 349.7万円 | 535,800円(標準額) | 282,000円 |
| 浜松医科大学 | 349.7万円 | 535,800円(標準額) | 282,000円 |
| 福井大学 | 349.7万円 | 535,800円(標準額) | 282,000円 |
| 金沢大学 | 349.7万円 | 535,800円(標準額) | 282,000円 |
国立大学の授業料には、国が決めた標準額535,800円と、各大学が独自に設定できる上限642,960円(標準額の120%)があります。国が一律に決めているのではなく、上げるかどうかは大学ごとの経営判断です。近年これを上げる大学が出てきたので、「国立は全国どこでも同じ」はもう成り立ちません。
ここは他ではあまり書かれていないので、はっきり書いておきます。医学部を置く国公立50校のうち、授業料が国の標準額を超えているのは8校です(国立6校=千葉大学・東京大学・東京科学大学・岡山大学・山口大学・熊本大学/公立2校=奈良県立医科大学・横浜市立大学)。そして、その8校は中部・東海に1校もありません。
関東の記事では「国立5校のうち3校が上限額の642,960円で、6年間414万円」と書きました。この地域はその裏返しで、国立10校がすべて標準額のまま。6年間349.7万円(入学料282,000円+授業料535,800円×6年)で横一線です。つまり、中部・東海の国立を受けるかぎり、学費で志望校を選び分ける必要がありません。そのぶん、ほかの物差しに集中できます。
名古屋市立大学の344.7万円は、国公立50校でいちばん安い
この地域で唯一の公立である名古屋市立大学は、少し変わった形をしています。授業料は国の標準額と同じ年535,800円ですが、入学料が市内なら232,000円、市外なら332,000円です。国の標準額282,000円と比べると、市内は50,000円安く、市外は50,000円高いことになります。
その結果、市内の学生の6年間は344.7万円。これは医学部を置く国公立50校の中でいちばん安い金額です(2番目は国立10校の349.7万円。差は5万円)。反対に市外から入ると354.7万円で、国立10校より5万円高くなります。上の表の354.7万円は、ほかの国公立とそろえるために市外の入学料で計算した数字です。
市内・市外の判定は、本人か配偶者か1親等の親族が、入学の日の1年以上前から名古屋市内に住んでいることです。受験のために引っ越しても間に合いません。出願前に必ず要項で確認してください。
私立3校は1,798万円ちがう|同じ石川県で11.3倍
| 私立3校(安い順) | 6年間の学費 | 最も安い大学との差 | 全国31校(安い順) |
|---|---|---|---|
| 藤田医科大学 | 2,152万円 | ― | 4位 |
| 愛知医科大学 | 3,420万円 | +1,268万円 | 16位 |
| 金沢医科大学 | 3,950万円 | +1,798万円 | 30位 |
私立は幅がもっと大きくなります。いちばん安い藤田医科大の2,152万円と、いちばん高い金沢医科大の3,950万円で、1,798万円の差です。
藤田医科大学の2,152万円は、全国の私立31校の中で4番目に安い金額です。反対に金沢医科大学の3,950万円は、全国の私立31校で高いほうから2番目。同じ地域の私立3校が、全国の安いほうの端と高いほうの端に分かれている形です。
そしてこの記事でいちばん驚いたのが、石川県です。同じ石川県に、6年間349.7万円の金沢大学と、3,950万円の金沢医科大学があります。差は3,600.3万円。11.3倍です。県が同じで、通える距離に2つ医学部があっても、6年間に用意するお金は10倍以上ちがうということになります。学費の話を「私立は高い」の一言で済ませられない理由が、ここに出ています。
金額は寮費・諸会費を含まない、大学に納めるお金(学納金)で比べています。私立は大学ごとに奨学金や特待生の制度があり、実際の負担はここから変わります。
物差しを替えると1位は3校に分かれる|14校の順位一覧
ここまでの5つの物差しを、1枚にまとめます。数字はすべて、中部・東海の14校の中での順位です。

入口の順位(偏差値・共通テスト・倍率)
| 大学 | 偏差値 | 共テ | 倍率の低い順 |
|---|---|---|---|
| 名古屋大学 | 1位 | 1位 | 5位 |
| 山梨大学 | 2位 | 2位 | 4位 |
| 金沢大学 | 3位 | 6位 | 1位 |
| 新潟大学 | 4位 | 3位 | 9位 |
| 藤田医科大学 | 5位 | ― | 12位 |
| 名古屋市立大学 | 6位 | 4位 | 2位 |
| 信州大学 | 7位 | 4位 | 7位 |
| 三重大学 | 8位 | 6位 | 6位 |
| 浜松医科大学 | 9位 | 6位 | 10位 |
| 岐阜大学 | 10位 | 6位 | 3位 |
| 愛知医科大学 | 11位 | ― | 13位 |
| 福井大学 | 12位 | 10位 | 8位 |
| 富山大学 | 13位 | 10位 | 11位 |
| 金沢医科大学 | 14位 | ― | 14位 |
入口の3つは、おおむね同じ並びになります。偏差値の上位が共通テストでも上位で、倍率だけは順番がばらばらです(金沢大が2.17倍で最も低く、金沢医科大が19.97倍で最も高い)。くり返しますが、倍率は難しさの順番ではありません。私立が下に来るのは、1人が何校も受けるからです。
出口とお金の順位(学費・国家試験・6年で医師)
| 大学 | 学費の安い順 | 国家試験 | 6年で医師 |
|---|---|---|---|
| 名古屋大学 | 1位 | 9位 | 7位 |
| 山梨大学 | 1位 | 8位 | 12位 |
| 金沢大学 | 1位 | 12位 | 1位 |
| 新潟大学 | 1位 | 10位 | 9位 |
| 藤田医科大学 | 12位 | 4位 | 13位 |
| 名古屋市立大学 | 11位 | 7位 | 3位 |
| 信州大学 | 1位 | 3位 | 5位 |
| 三重大学 | 1位 | 5位 | 2位 |
| 浜松医科大学 | 1位 | 2位 | 4位 |
| 岐阜大学 | 1位 | 6位 | 8位 |
| 愛知医科大学 | 13位 | 11位 | 14位 |
| 福井大学 | 1位 | 1位 | 10位 |
| 富山大学 | 1位 | 13位 | 6位 |
| 金沢医科大学 | 14位 | 14位 | 11位 |
学費の欄で10校が並んで1位になっているのが、この地域の特徴です。そして並べてみて驚いたのは、偏差値・国家試験・6年で医師になる割合の3つすべてで、6位以内に入った大学が14校に1校も無かったことです。九州・沖縄の11校では鹿児島大学が、関東の24校では東京大学が6位以内に入っていましたが、中部・東海は0校でした。
動きの大きい大学をもう一度まとめます。福井大は偏差値12位から国家試験1位へ、11位ぶんの上げ幅で14校の最大です。富山大は偏差値13位から6年で医師6位へ7位ぶん上がり、反対に山梨大は偏差値2位から6年で医師12位へ10位ぶん下がりました。金沢大は偏差値3位・6年で医師1位と両方で上位ですが、国家試験は12位です。
つまり、「中部・東海の医学部ランキング」は、どの物差しで並べるかで1位が入れ替わります。偏差値の表だけを見て志望校を決めると、入学後の6年間と、その先の国家試験という大事な情報を見落とすことになります。
太宰府アカデミーの視点|中部・東海の受験生がこの表をどう使うか
ここまでの数字を、中部・東海で医学部を目指す受験生と保護者の方がどう使えばいいかを書きます。
1. 国立を受けるなら、学費は比較の材料から外していい。この地域の国立10校は6年間349.7万円で横一線です。全国では授業料を上げた国公立が8校ありますが、ここには1校もありません。学費で迷う時間を、偏差値の帯と、共通テストの配点比率と、出口の数字を調べる時間にまわせます。ただし他地域の国立を併願するなら、そちらは1校ずつ確かめてください。
2. 偏差値の表は「入口」、6年で医師になる割合は「出口」の表として分けて見る。偏差値は、受かるために必要な学力の目安です。一方、6年で医師になる割合は、入ったあとの6年間がどう進んだかの記録です。中部・東海の14校では71.0%から97.4%まで開いています。受ける大学を決める前に、両方の表で同じ大学を見比べてみてください。
3. 国家試験の合格率は、2年以上並べる。上で見たとおり、第119回で新卒100%だった3校のうち、翌年も上位にいたのは一部です。1年だけの数字で「強い・弱い」を決めると、翌年には逆になっていることがあります。大学のサイトや厚生労働省の発表で、過去の年の数字も確かめると安心です。
4. 「地元の1校」だけで考えない。この10県のうち8県は、医学部が1校しかありません。その1校が自分の学力の帯や入試科目に合わないとき、地元だけで考え続けると手が止まります。上の表は県をまたいで比べるための表でもあります。富山から金沢、福井から岐阜のように、隣の県まで含めて帯を広げると、受けられる大学は一気に増えます。
5. 2027年度入試の募集人員と学費は、秋から冬に出る学生募集要項で確かめる。2027年度は国が医学部の臨時定員を見直す年で、募集人員が動く大学があります。この記事の定員は2025年度の数字です。学費も、私立の2027年度の金額は大学によって公表時期が違います。出願の前には、必ず最新の要項で確認してください。
ランキングは、志望校を絞るための道具です。どの物差しを重く見るかは、受験生一人ひとりの事情で変わります。学力の目安なのか、入学後の進み方なのか、家計なのか。自分にとって大事な物差しを先に決めてから表を見ると、迷いにくくなります。
中部・東海の医学部についてよくある質問
Q. 中部・東海でいちばん偏差値が高い医学部はどこですか。
A. 名古屋大学です。合格者平均偏差値は69.7で、全国81校の中では6位。次が山梨大学(合格者平均68.6・全国14位)、3番目が金沢大学(66.6・全国22位)です。
Q. 中部・東海の医学部は何校ですか。
A. 中部9県+三重県の10県で14校です。内訳は国立10校(新潟大・富山大・金沢大・福井大・山梨大・信州大・岐阜大・浜松医科大・名古屋大・三重大)・公立1校(名古屋市立大学)・私立3校(藤田医科大学・愛知医科大学・金沢医科大学)で、愛知県だけで4校あります。全国81校の17.3%、全国の国立医学部42校の23.8%がこの地域です。
Q. 中部・東海の国立医学部の学費はいくらですか。
A. 10校すべて6年間349.7万円です(入学料282,000円+授業料535,800円×6年)。授業料を国の標準額より高くしている国公立は全国に8校ありますが、この地域には1校もありません。公立の名古屋市立大学は、市内344.7万円・市外354.7万円です。
Q. 中部・東海でいちばん学費が安い私立医学部はどこですか。
A. 藤田医科大学の6年間2,152万円で、全国の私立31校の中でも4番目に安い金額です。次が愛知医科大学の3,420万円、金沢医科大学の3,950万円と続きます。全国の学費を比べたい方は医学部の学費|国公立350万・私立1,850〜4,550万円をご覧ください。
Q. 医師国家試験に強い中部・東海の医学部はどこですか。
A. 第120回(2026年)では福井大学が96.4%で全国12位、浜松医科大学が95.8%で全国17位、信州大学が95.5%で全国20位でした。全国の合格率91.6%を、14校のうち10校が上回っています。ただし合格率は1年で動くので、2年以上を並べて見てください。全国の一覧は医学部の留年率・進級率・卒業率・国試合格率ランキングにあります。
Q. 中部・東海で入りやすい医学部はどこですか。
A. 合格者平均偏差値でいちばん低いのは金沢医科大(60.8)、次が富山大(63.4)、福井大(63.6)です。ただ、1位と14位の差は8.9ポイントしかなく、この地域は上下の幅がせまいのが特徴です。全国での位置は入りやすい医学部ランキングで確かめられます。
Q. 東海大学は中部・東海の医学部に入りますか。
A. 入りません。東海大学の医学部は神奈川県伊勢原市にあるので、関東側で数えています(→ 関東の医学部ランキング|24校の1位は物差しで2校)。名前に「東海」と付いているので混ざりやすいところです。
まとめ|中部・東海の医学部ランキングで押さえる5点
この記事の要点です。
− 中部9県+三重県の医学部は14校(国立10・公立1・私立3)で、定員は合計1,641人。全国81校の17.3%、全国の国立医学部42校の23.8%がこの地域にあり、愛知県だけで4校です。
− 偏差値(合格者平均)の1位は名古屋大学の69.7(全国6位)。2位は山梨大学68.6、3位は金沢大学66.6で、1位と14位の差は8.9ポイント。全国の上位10校に入るのは名古屋大学の1校だけです。
− 医師国家試験(第120回)の1位は福井大学の96.4%(全国12位)。偏差値では12位の大学が出口で1位に立ち、11位ぶんの入れ替わりが起きています。全国平均91.6%を14校中10校が上回りました。
− 6年で医師になる割合の1位は金沢大学の97.4%で、全国81校でも1位。全国の上位10校のうち3校(金沢・三重・名古屋市立)がこの地域です。3つの物差しすべてで6位以内に入った大学は14校に1校もありませんでした。
− 学費は国立10校すべてが6年間349.7万円。授業料が国の標準額を超える国公立8校は、この地域に1校もありません。名古屋市立大学の市内344.7万円は国公立50校で最安、私立は2,152万円(藤田医科)〜3,950万円(金沢医科)で差は1,798万円。同じ石川県の金沢大学と金沢医科大学で11.3倍ひらきます。
明日からできることは1つです。気になる中部・東海の大学を2〜3校選んで、この記事の順位表でそれぞれ何位かを書き出してみてください。偏差値では近い大学どうしでも、国家試験や6年で医師になる割合で見ると、印象が大きく変わることがあります。
この記事を書いたのは、うちのサイトに、中部・東海の医学部を入口(偏差値)と出口(国家試験・6年で医師)とお金の3つで比べられるページが1本も無かったからです。書いている途中でいちばん驚いたのは、同じ石川県にある2つの医学部で、6年間の学費が11.3倍ちがっていたことでした。これで九州・関西・関東・中部東海と4つの地域がそろい、全国81校のうち61校を地域別に並べたことになります。数字は、こうして資料が更新されるたびに入れ替えていきます。
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本日の記事は以上です。
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後藤 登(Goto Noboru)
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