こんにちは、福岡の医学部予備校で総務/広報を担当している後藤です。
本日のブログは、中学生と、その保護者の方に向けて書きます。「医者になりたい」と思った中学生が、いま何をすればいいのか。
うちのサイトは「医者になるには 中学生」「皮膚科医になるには 中学生」「産婦人科医になるには 中学生」といった検索で、毎月表示されています。ところが、中学生に向けて書いた記事は、うちには1本もありませんでした。そこで、医学部の入試の配点、国の統計、学費のデータを並べて、中学生のうちに決めることを整理しました。
結論から言うと、中学生のうちに決めることは3つです。①英語と数学を取りこぼさないこと、②理系の授業がある高校を選ぶこと、③家族でお金の見通しを話しておくこと。反対に、何科の医者になるかは、まだ決めなくて大丈夫です。診療科が決まるのは、医師になってから、26歳ごろです。
− 中学生から医者になるまで、何年かかるの?
− 医学部の入試では、どの教科がいちばん大事?
− 医者になるには、いくらかかるの?
順番に、国と大学が公表している数字で見ていきます。
この記事の目次
医者になるまでの道のり|中学生なら最短24歳で医師になれる
先に、全体の地図です。中学校から数えると、医師免許を取るまでに最短12年、専門医になるまでに最短で17〜19年かかります。

| 年齢 | 段階 | 年数 | 関門・やること |
|---|---|---|---|
| 12〜15歳 | 中学校 | 3年 | 高校入試。理系の授業がある高校を選ぶ |
| 15〜18歳 | 高校 | 3年 | 医学部の入試(共通テスト・個別試験・面接) |
| 18〜24歳 | 医学部 | 6年 | 4年次の共用試験・卒業試験・医師国家試験 |
| 24〜26歳 | 臨床研修 | 2年 | いろいろな科を回る。医師として働きながら |
| 26〜31歳 | 専門研修 | 3〜5年 | ここで診療科が決まる。修了すると専門医 |
医学部は全国に81校あり、すべて6年制です。18歳で入学すると、最短で24歳の春に医師国家試験に合格して、医師になります。そのあと2年間の臨床研修は法律で決まっていて(医師法第16条の2)、この間にいろいろな科を回ります。何科の医者になるかが決まるのは、そのあとの専門研修に進むときです。
つまり、いま中学2年生(14歳)なら、医師になるまで最短で10年、専門医になるまで最短で15年ほど。長い道のりですが、中学生のうちにやることは、実はそれほど多くありません。
医学部に入れるのは同じ学年の約110人に1人
次に、医学部の入り口の広さです。いまの中学生の学年は1学年約103万6千人。医学部の定員(2026年度9,376人)で割ると、約110人に1人です。40人のクラスが3つあったら、その中で1人くらい、という計算になります。

| 年 | 医学部に入れるのは | もとの数字 |
|---|---|---|
| 1970年 | 約436人に1人 | 18歳人口千人あたり2.29人 |
| 2005年 | 約178人に1人 | 千人あたり5.62人 |
| 2024年 | 約116人に1人 | 千人あたり8.62人 |
| 2050年 | 約85人に1人 | 定員が今のままなら(推計) |
| いまの中学生の学年 | 約110人に1人 | 1学年約1,036,000人÷2026年度の定員9,376人 |
財務省の資料では、医学部に進む人は18歳の人口の約436人に1人(1970年)でした。それが、保護者の方の世代に近い2005年には約178人に1人、2024年には約116人に1人になっています。子どもの数が減ったぶん、医学部の入り口は保護者の世代より広くなっています。
ただし、これからも広がり続けるとは限りません。国は、2027年度の医学部の定員を全体として減らす方向で進めています(2025年の閣議決定と、厚生労働省の検討会の資料・2026年4月)。医学部の定員は2017年度の9,420人をピークに、2026年度は9,376人です。子どもの数と定員の両方が動くので、「将来はもっと入りやすくなる」と決めつけないでください。くわしくは医学部は少子化で入りやすくなるのかに、国が定員を減らす理由は医者は余るのかにまとめています。
医学部の入試で使う科目|英語・数学・理科2科目と面接
医学部の入試は、国公立と私立で形が違います。中学生のうちに知っておきたいのは、どちらも英語・数学・理科2科目が中心だということです。
| 国公立(50校) | 私立(31校) | |
|---|---|---|
| 共通テスト | 6教科8科目(国語・地理歴史/公民・数学2・理科2・英語・情報)が原則 | 使わない大学が多い(産業医科大学は一般選抜で使う) |
| 大学ごとの試験 | 英語・数学・理科2科目が中心(国語を課す大学もある) | 英語・数学・理科2科目が基本形 |
| 面接 | ほとんどの大学で行う | 31校すべてで行う |
国公立の医学部は、まず大学入学共通テストを受けます。国立大学協会の方針で、2025年度入試から「情報」を加えた6教科8科目が原則になりました。そのうえで、大学ごとの試験(2次試験)で英語・数学・理科を受けます。私立は大学ごとの試験だけで受けられる大学が多く、英語・数学・理科2科目が基本形です。そして面接は私立31校すべてで行われます。
高校選びで確かめたい3つ
医学部の入試の数学は、高校の数学Ⅲ・数学Cまで出ます(たとえば岩手医科大学の2027年度入試は「数Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・A・B・C」)。理科は物理・化学・生物から2科目です。高校によっては、理系のコースでも理科の選び方が決まっていることがあります。高校の説明会では、次の3つを聞いておくと安心です。
1. 数学Ⅲ・数学Cの授業があるか(何年生で学ぶか)
2. 理科は物理・化学・生物のうち、どの組み合わせで2科目を学べるか
3. 医学部を受ける先輩が、毎年どのくらいいるか
3つ目は、進学実績の数字を比べるためではありません。医学部を受ける人が毎年いる高校なら、面接や小論文の練習、推薦の情報が学校の中に積み上がっているからです。
入試の配点の半分以上は英語と数学|中学の2教科が土台になる
では、どの教科がいちばん大事なのか。医学部の入試の配点を、大学が公表している2027年度の要項で調べました。英語・数学・理科の配点が分かる私立16校すべてで、学科の点数の半分以上(50〜67%)を英語と数学が占めていました。

| 大学(私立) | 英語・数学・理科 | 学科の満点 | 英語+数学の割合 |
|---|---|---|---|
| 国際医療福祉大学 | 英200・数200・理200 | 600点 | 66.7% |
| 藤田医科大学 | 英200・数200・理200 | 600点 | 66.7% |
| 兵庫医科大学 | 英150・数150・理200 | 500点 | 60.0% |
| 愛知医科大学 | 英150・数150・理200 | 500点 | 60.0% |
| 関西医科大学 | 英150・数150・理200 | 500点 | 60.0% |
| 順天堂大学 | 英200・数100・理200 | 500点 | 60.0% |
| 岩手医科大学 | 英100・数100・理150 | 350点 | 57.1% |
| 杏林大学 | 英100・数100・理150 | 350点 | 57.1% |
| 金沢医科大学 | 英100・数100・理150 | 350点 | 57.1% |
| 東邦大学 | 英150・数100・理200 | 450点 | 55.6% |
| 埼玉医科大学 | 英100・数100・理200 | 400点 | 50.0% |
| 大阪医科薬科大学 | 英100・数100・理200 | 400点 | 50.0% |
| 東北医科薬科大学 | 英100・数100・理200 | 400点 | 50.0% |
| 獨協医科大学 | 英100・数100・理200 | 400点 | 50.0% |
| 聖マリアンナ医科大学 | 英100・数100・理200 | 400点 | 50.0% |
| 近畿大学 | 英100・数100・理200 | 400点 | 50.0% |
国公立も同じです。2次試験で英語と数学の両方を課す国公立47校を調べると、47校すべてで、2次の学科の半分以上が英語と数学でした(50〜100%)。弘前大学・秋田大学・島根大学・徳島大学の4校は、2次の学科が英語と数学だけです。
英語と数学は、中学の内容の上に高校の内容が積み上がる教科です。中学の英文法や、方程式・関数でつまずいたままだと、高校で取り戻すのに時間がかかります。中学生のうちにできるいちばん確かな準備は、学校の英語と数学を、その学年のうちに取りこぼさないことです。理科は高校で物理・化学・生物に分かれてから本格的に始まるので、中学では理科の授業をきちんと理解しておけば十分です。
お金|中学から医学部卒業まで、公立と国立なら約690万円
最後はお金です。文部科学省の「子供の学習費調査」(令和5年度)と、医学部の6年間の学費を足しました。公立の中学・高校から国立の医学部に進むと約690万円、私立の中学・高校から私立の医学部に進むと約2,650万円〜5,370万円です。

| 段階 | 公立・国立に進んだ場合 | 私立に進んだ場合 |
|---|---|---|
| 中学校3年 | 162.7万円 | 468.1万円 |
| 高校3年 | 179.1万円 | 353.8万円 |
| 医学部6年(学費) | 349.7万円 | 1,830万円〜4,550万円 |
| 合計 | 691.5万円 | 2,651.9万円〜5,371.9万円 |
中学・高校の金額は、学校に払うお金に、塾や習い事など学校の外で使ったお金も含めた1年あたりの平均を3年分にしたものです。医学部の6年間は、大学に納める学費だけで、生活費は入っていません。国立は国の標準額で6年349.7万円、私立は国際医療福祉大学の1,830万円から川崎医科大学の4,550万円まで2.5倍の差があります。
ここで中学生のうちに知っておいてほしいのが地域枠です。卒業後に決められた地域で働くことを条件に入学する枠で、2025年度は1,847人、医学部の定員の約5人に1人(19.9%)が地域枠等でした。多くの県が、地域枠の学生に修学資金を貸し出していて、条件を満たせば返さなくてよくなります。地域枠を使うかどうかを決めるのは高校3年生の出願のときですが、自分の県にどんな制度があるかは、中学生のうちに家族で一度調べておくと選択肢が広がります。
何科の医者になるかは、まだ決めなくていい|決まるのは26歳ごろ
「皮膚科医になりたい」「産婦人科医になりたい」と、なりたい科が決まっている中学生もいると思います。その気持ちは大切にしてください。ただ、医学部の入試は、何科を目指していても同じです。科ごとに入試が分かれているわけではありません。
診療科を選ぶのは、医師になって2年間の臨床研修を終えたあと、専門研修に進むときです。専門研修は科によって3〜5年なので、医学部に入ってから専門医になるまでの最短の年数は、科によって少し違います。
| 診療科 | 医学部の入学から専門医まで(最短) | くわしい記事 |
|---|---|---|
| 外科 | 11年 | 外科医になるには |
| 小児科 | 11年 | 小児科医になるには |
| 精神科 | 11年 | 精神科医になるには |
| 救急科 | 11年 | 救急医になるには |
| 麻酔科 | 12年 | 麻酔科医になるには |
| 整形外科 | 12年 | 整形外科医になるには |
| 皮膚科 | 13年 | 皮膚科医になるには |
医学部に入ってから、実習でいろいろな科を見て、考えが変わる人も少なくありません。中学生のいまは、どの科を目指すにしても共通の土台、つまり英語・数学と、医学部に入るまでの道のりに目を向けておけば大丈夫です。産婦人科医については産婦人科医になるにはに書いています。
太宰府アカデミーの視点|中学生のうちにやっておく4つ
ここまでの数字から、中学生のうちにやっておくと、あとで楽になることを4つにまとめます。
1. 英語と数学は、その学年のうちに取りこぼさない。医学部の入試では、配点の半分以上が英語と数学でした。先取りを急ぐより、定期テストで間違えた問題を、その週のうちに解き直せるようにしておくほうが確実です。中学の内容に穴があるまま高校に進むと、高校の授業についていくこと自体に時間がとられます。
2. 高校は、授業の中身で選ぶ。数学Ⅲ・数学Cの授業があるか、理科2科目をどう学べるか。偏差値の数字だけでなく、医学部の入試に必要な授業がそろっているかを、説明会で確かめてください。
3. 家族で、お金の話を一度しておく。国立なら6年で約350万円、私立なら1,830万〜4,550万円と、医学部の学費は進む先で10倍以上違います。国立を目指すのか、私立も考えるのか、地域枠や修学資金を使うのか。高校3年生になってから慌てないように、中学生のうちに見通しだけ共有しておくと安心です。
4. 医師の仕事を、実際に見る機会をつくる。職場体験や、病院の見学イベント、医師が書いた本などで、医師の毎日を知っておくと、高校で勉強がつらくなったときの支えになります。面接でも、なぜ医師になりたいのかを自分の言葉で話すことが求められます。その材料は、中学生のころから少しずつ集めておけます。
医者になる道は長いですが、中学生のうちにやることは、この4つで十分です。とくに1つ目は、明日の授業からすぐに始められます。
中学生から医者を目指すときによくある質問
Q. 医者になれる確率はどれくらいですか。
A. 医学部に入れるのは、いまの中学生の学年で約110人に1人です。入学したあとは、6年で卒業して医師国家試験に合格する人が全国で約8割、2026年2月の医師国家試験の合格率は91.6%でした。入学までの道のりは医学部は何年?医者になるには6年・専門医まで最短11年にまとめています。
Q. 中学の成績(内申)は、医学部の入試に使われますか。
A. 中学の成績は高校入試で使われるもので、医学部の入試には使われません。ただし、高校の成績は、学校推薦型・総合型の選抜で出願の条件になることがあります(評定平均3.8以上・4.0以上など。基準のない大学もあります)。高校1年生からの成績が計算に入るので、高校に入った最初の定期テストから大切です。
Q. 中学生のうちから塾に通ったほうがいいですか。
A. 通うかどうかより先に、学校の英語と数学を取りこぼしていないかを確かめてください。定期テストで間違えた問題を自分で解き直せているなら、中学の段階で急ぐ必要はありません。つまずいている単元があるなら、そこを埋める手段として考えるのが順番です。
Q. 医者に向いているか分からなくて不安です。
A. 国が医師に求めている資質は、知識だけではありません。コミュニケーションや、患者さんを思う気持ちなども含まれます。医者に向いている人|国が定めた10の資質にまとめているので、一度読んでみてください。
まとめ|中学生から医者を目指すなら押さえる5点
この記事の要点です。
− 中学校から医師免許まで最短12年、専門医まで最短17〜19年。医学部6年+臨床研修2年+専門研修3〜5年です。
− 医学部に入れるのは、いまの中学生の学年で約110人に1人。1970年は約436人に1人でしたが、国は2027年度から定員を減らす方向です。
− 入試の配点の半分以上は英語と数学。私立16校・国公立47校のすべてで、学科の半分以上を英語と数学が占めていました(大阪大学・国際医療福祉大学は67%)。
− 中学から医学部卒業までのお金は、公立・国立なら約690万円、私立なら約2,650万円〜5,370万円。地域枠(定員の約5人に1人)という選び方もあります。
− 何科の医者になるかは、26歳ごろに決まる。いまは科にかかわらず共通の土台、英語と数学に集中して大丈夫です。
明日からできることは1つです。この1か月の英語と数学の定期テストや小テストで間違えた問題を、もう一度、何も見ずに解いてみてください。解けなかった問題が、いまいちばん埋めるべき穴です。
この記事を書いたのは、「医者になるには 中学生」で検索したときにうちのサイトが表示されても、それに答える記事がなかったからです。医学部の入試の話はどうしても高校生向けになりがちですが、医学部を目指す気持ちが生まれるのは、中学生のころのことが多いと感じています。その時期に、何を急いで、何を急がなくていいのかが分かれば、遠回りを減らせると思いました。
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本日の記事は以上です。
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