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産婦人科医とは?産科・婦人科との違いと医師13,908人の内訳

2026年08月12日 更新

こんにちは、太宰府アカデミーで広報/完全個別指導コースを担当している後藤です。

「産婦人科医と産科医って、何が違うんですか」——進路の話をしているときに、生徒からいちばんよく出る質問のひとつです。

調べれば「産科は出産、婦人科は女性の病気」という説明はすぐ出てきます。ただ、そこから先——資格が別なのか、なるための道筋が違うのか、働き方はどう違うのか——まで数字で書いてあるページが、僕が探した限りではほとんど見つかりませんでした。

そこで今回は、厚生労働省が2年に1度集計している医師の統計と、全病院を対象にした労働時間の調査を直接読んで、この3つの言葉の違いを整理しました。

− 産科医と婦人科医って、そもそも別の資格なの?

− 産婦人科は本当に「きつい」の?

− これから目指して、働く場所はあるの?

順番にお答えしていきます。

結論|「産科医」「婦人科医」という資格は、じつは存在しない

先に答えを書きます。産婦人科医・産科医・婦人科医の違いは、次の3点で説明がつきます。

  • 資格としては「産婦人科専門医」の1つだけ。医師が専門研修で選ぶ基本領域は19あり、そのうちの1つが産婦人科です。「産科専門医」「婦人科専門医」という基本領域はありません。つまり産科医も婦人科医も、資格の上ではどちらも産婦人科医です。
  • 違いが出るのは資格ではなく「何を主に診ているか」。医師は2年に1度、自分の主たる診療科を国に届け出ます。そこで「産科」と答えた医師は全国で502人、「婦人科」は2,218人、「産婦人科」は11,188人でした。
  • 産科と婦人科では、働く場所が逆。産科は8割近くが病院勤務、婦人科は6割が診療所です。平均年齢も産科46.3歳・婦人科56.1歳と、10歳ちがいます。
主たる診療科を産婦人科・婦人科・産科として届け出ている医師数の比較。産婦人科11,188人に対し産科は502人
出典:厚生労働省「令和6(2024)年 医師・歯科医師・薬剤師統計」表4・表5(2024年12月31日現在)をもとに太宰府アカデミー集計
主たる診療科 医師数 平均年齢 病院勤務 診療所など 女性比率(病院)
産婦人科 11,188人 50.0歳 7,123人 4,065人 49.2%
婦人科 2,218人 56.1歳 898人 1,320人 44.1%
産科 502人 46.3歳 383人 119人 47.3%
合計 13,908人 8,404人 5,504人

3つを足すと13,908人。そのうち産婦人科が80.4%を占めます。産科だけ、婦人科だけを掲げている医師は少数派で、ほとんどの医師が妊娠・出産と婦人科疾患の両方を診ている——これが実像です。

出典:厚生労働省「令和6(2024)年 医師・歯科医師・薬剤師統計」表4・表5(2025年12月23日公表/2024年12月31日現在)をもとに太宰府アカデミー集計

そのうえで、この表がもうひとつ教えてくれることがあります。婦人科は5,504人中1,320人、つまり6割近くが診療所勤務で、平均年齢も56.1歳と高い。開業して長く続けている医師が多い、ということです。逆に産科は502人中383人=76.3%が病院勤務で、平均年齢は46.3歳と若い。お産を扱うには設備と当直体制が要るので、病院に集まります。

「産科と婦人科の違い」を診療内容だけで覚えるより、働く場所がまるで違うと押さえたほうが、進路を考えるときには役に立つはずです。

産婦人科は、年1,860時間超の医師が7.0%=調査した20科で最多

産婦人科を考えるなら、いちばん先に知っておいてほしい数字です。

時間外・休日労働が年1,860時間を超える医師の割合を診療科別に比較したグラフ。産婦人科7.0%が最も高い
出典:厚生労働省 医政局「医師の働き方改革の施行に向けた準備状況調査 調査結果」(2022年3〜4月調査・全病院対象)をもとに太宰府アカデミー集計
診療科 所属医師数 年1,860時間超 割合
産婦人科 2,128人 150人 7.0%
脳神経外科 1,321人 76人 5.8%
外科 4,883人 248人 5.1%
救急科 1,400人 43人 3.1%
小児科 2,508人 70人 2.8%
麻酔科 2,408人 41人 1.7%
皮膚科 1,602人 4人 0.2%
調査全体 43,718人 1,034人 2.4%

時間外・休日労働が年1,860時間相当を超える医師の割合を、診療科別に出した調査です。対象となった医師43,718人の全体では2.4%。ところが産婦人科は2,128人中150人=7.0%で、集計された20の診療科のなかで最も高いという結果でした。皮膚科の0.2%と比べると35倍です。

出典:厚生労働省 医政局「医師の働き方改革の施行に向けた準備状況調査 調査結果」(令和4年3〜4月調査・全病院対象)診療科別の集計より

お産は時間を選んでくれません。ここは「やりがい」の話でごまかさずに、数字のまま受け止めておくべきところだと思っています。

ただし、この科を選ぶ人が減っているわけではありません。専門研修に進んだ専攻医の採用数は2026年度で478人、2018年度の441人から+8.4%です。

さらに、進路の自由度という点では有利な材料があります。産婦人科は「シーリング」がかからない6つの診療科の1つです(ほかは外科・救急科・病理・臨床検査・総合診療)。シーリングとは、都市部に専攻医が集中しすぎないよう都道府県ごとに採用数の上限を置く仕組みのこと。国が不足を認めている科には、この上限が設定されていません。東京や大阪で研修したい場合でも、枠の取り合いになりません。

産科医と産婦人科医の仕事内容の違いを徹底解説!

産科医の主な業務内容

産科医は、妊娠、出産、産後ケアを専門とする医師です。

主な業務内容は、妊娠の確認、妊婦健診、分娩介助、帝王切開などの手術、産後ケア、新生児の初期管理などです。

妊婦健診では、超音波検査や血液検査などを用いて母体と胎児の状態を綿密にチェックし、妊娠経過に異常がないかを確認します。

分娩介助では、正常分娩をサポートするだけでなく、緊急事態への対応も求められます。

例えば、胎児の心拍異常や母体の出血など、予期せぬ事態が発生した場合、迅速かつ的確な判断と処置が求められます。

また、帝王切開などの手術も担当します。

近年では、高齢出産の増加や妊娠合併症の複雑化に伴い、高度な医療技術と知識が求められるケースが増えています。

 

産婦人科医の主な業務内容

産婦人科医は、産科医の業務に加え、婦人科疾患の診療も担当します。

婦人科疾患には、月経異常、子宮筋腫、卵巣嚢腫、子宮内膜症、子宮頸がん、卵巣がん、乳がん、性感染症、更年期障害など、多岐に渡ります。

そのため、産科医よりも幅広い知識と技術が必要となります。

具体的には、婦人科系の病気の診断、治療、手術、がん検診、不妊治療などが含まれます。

不妊治療では、排卵誘発剤の使用、人工授精、体外受精など、高度な医療技術を用いた治療を行います。

また、避妊相談や性教育なども重要な役割です。

さらに、女性のライフステージに合わせた健康相談や予防医学的なアプローチも必要となります。

 

業務範囲の違いによるキャリアパスの違い

産科医と産婦人科医のキャリアパスは、それぞれの専門分野の幅広さによって大きく異なります。

産科医は、出産に特化した専門性を深めていく道と、周産期医療(妊娠から出産、産後までの医療)に特化していく道があります。

周産期医療は、高リスク妊娠への対応や新生児集中治療室(NICU)での勤務など、高度な専門性を求められます。

一方、産婦人科医は、産科と婦人科の両分野で専門性を高めていく道、あるいは婦人科の特定領域(例えば、婦人科腫瘍、生殖内分泌など)に特化していく道を選ぶことができます。

専門医資格を取得することで、キャリアの幅はさらに広がります。

専門医資格は、それぞれの専門分野における高度な知識と技術を証明するものであり、専門性の高い医療を提供できることを示すものです。

産科医と産婦人科医の年収・将来性・働き方の違い

それぞれの専門分野における年収の現状と将来性

産科医と産婦人科医の年収は、勤務形態(常勤、非常勤)、勤務先(大学病院、総合病院、クリニックなど)、経験年数、専門性などによって大きく異なります。

公的な統計で診療科別の年収が取れるものは、じつは多くありません。労働政策研究・研修機構が勤務医を対象に行った調査(2012年公表)では、産科・婦人科の平均年収は約1,466万円で、脳神経外科の約1,480万円に次ぐ2番目でした。この調査で1,400万円を超えたのは、この2つの科だけです。ただし公表から10年以上が経っており、いまの水準を示す数字ではありません。実際の額を知りたいときは、各病院の募集要項で確認してください。

大学病院や総合病院では、高い専門性と責任が求められるため、年収も高くなる傾向があります。

しかし、当直や夜勤などの負担も大きくなります。

一方、クリニックでは、年収は若干低くなる傾向がありますが、ワークライフバランスを重視した働き方が可能です。

将来性については、国の資料が1つの答えを出しています。専攻医の採用数に都道府県ごとの上限(シーリング)を置く仕組みがありますが、産婦人科はその対象外です。上限を置かないのは、国が人手不足を認めている診療科だからです。実際に専攻医の採用数も2018年度の441人から2026年度は478人へ、8年で+8.4%になっています。

ただし、医療制度改革や働き方改革の影響を受ける可能性があるため、常に最新の情報を把握しておくことが重要です。

 

ワークライフバランスと勤務環境の違い

産科医と産婦人科医の勤務環境は、勤務先によって大きく異なります。

大学病院や総合病院では、当直や夜勤が多く、長時間労働になることも少なくありません。

そのため、ワークライフバランスを保つことが難しい場合もあります。

一方、クリニックでは、当直や夜勤が少ない場合が多く、ワークライフバランスを重視した働き方が可能です。

しかし、クリニックでは、緊急手術に対応できる体制が整っていない場合もあるため、その点を考慮する必要があります。

近年、医療業界では働き方改革が進められており、産科医・産婦人科医の労働環境も改善されてきています。

しかし、依然として負担が大きいと感じる医師も多いのが現状です。

そのため、勤務先を選ぶ際には、ワークライフバランスと勤務環境をしっかりと確認することが重要です。

産科医と産婦人科医のやりがい・魅力・適性

産科医としてのやりがいと魅力

産科医の大きなやりがいは、新しい命の誕生に立ち会えることです。

母体の健康を守りながら、無事に赤ちゃんを誕生させることは、大きな喜びと感動を与えてくれます。

また、妊娠・出産に関する様々な問題に対応することで、多くの妊婦とその家族を支えることができます。

高度な医療技術を駆使し、難産や緊急事態を乗り越えることで、大きな達成感を得ることもできます。

さらに、出産後の母子のケアを通じて、家族の幸せに貢献できることも、産科医の大きな魅力です。

 

産婦人科医としてのやりがいと魅力

産婦人科医は、産科医のやりがいに加え、婦人科疾患の治療を通じて、女性の健康を守り、QOL(生活の質)の向上に貢献できます。

様々な婦人科疾患の診断・治療に携わることで、幅広い知識と技術を習得でき、専門性を高めていくことができます。

また、不妊治療を通じて、妊娠を望む多くのカップルの夢を叶えるお手伝いができることも、産婦人科医の大きなやりがいの一つです。

さらに、女性のライフステージに合わせた健康相談や予防医学的なアプローチを行うことで、女性の健康増進に貢献できます。

 

それぞれの専門分野に適した人物像

産科医に向いているのは、責任感と忍耐力があり、緊急事態にも冷静に対応できる人です。

また、体力と精神力も必要です。

チーム医療を重視し、他の医療従事者と円滑に連携できる協調性も大切です。

一方、産婦人科医には、産科医に必要な資質に加え、幅広い知識と技術を習得する意欲、そして、様々な女性の悩みに寄り添い、適切なサポートができる共感力が必要です。

また、繊細なコミュニケーション能力も求められます。

 

太宰府アカデミーの視点

この記事を書きながら、いちばん引っかかったのは「産婦人科はきつい」という言葉が、進路の話のなかでどう使われているかでした。

年1,860時間超が7.0%というのは、たしかに集計20科で最も高い数字です。ただ、これは病院に勤めている医師の数字です。今回の統計では、婦人科を主たる診療科にしている2,218人のうち1,320人——6割近くが診療所で働いていました。同じ産婦人科の資格から、病院でお産を担う道と、地域の診療所で女性の健康を長く診る道の、どちらにも出られるということです。

もうひとつ、大学選びの話をしておきます。産婦人科医になるかどうかを決めるのは、大学の医学部に入ってから6年、さらに初期臨床研修2年を終えたあとです。18歳の時点で、どの大学を選ぶかによって産婦人科医への道が閉じることはありません。全国81ある医学部のどの大学を出ても、そのあとに受けられる専門研修は同じです。ここは大学選びで悩んでいる人に、はっきり伝えておきたいところです。

そのうえで、この科にはシーリングがありません。都市部の大学病院で研修したいと考えている人にとって、枠の取り合いにならないというのは実際にはかなり大きい話です。大学病院に残るか市中病院に出るかを、あとから自由に選びやすい科でもあります。

僕は医師ではないので、現場のしんどさそのものを語る資格はありません。ただ、生徒が「なんとなくきつそう」というだけで選択肢を1つ消してしまうのは、もったいないと思っています。数字はここに置いておくので、あとは実際に働いている先生の話を聞いてみてください。大学のオープンキャンパスや病院見学は、そのためにあります。

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まとめ

産婦人科医・産科医・婦人科医の違いを、国の統計で確かめました。押さえるのは次の5点です。

  • 資格としては「産婦人科専門医」の1つだけ。専門研修で選ぶ基本領域は19あり、そのうちの1つが産婦人科です。「産科専門医」「婦人科専門医」という基本領域は存在しません
  • 主たる診療科の届出は、産婦人科11,188人・婦人科2,218人・産科502人の合計13,908人。産婦人科が80.4%を占めます
  • 産科は502人中383人=76.3%が病院勤務で平均46.3歳、婦人科は6割近くが診療所で平均56.1歳。診療内容だけでなく、働く場所と年齢層がまるで違います
  • 年1,860時間超の医師は産婦人科7.0%で、集計20科のなかで最多(調査全体2.4%・皮膚科0.2%)。ここは数字のまま受け止めるべきところです
  • それでも専攻医は2026年度478人で2018年度の441人から+8.4%。シーリング対象外の6科の1つなので、都市部の大学病院で研修したい場合でも枠の取り合いになりません

そして、この記事でいちばん伝えたかったのはここです。産婦人科医になるかどうかを決めるのは、大学の医学部に入って6年、初期臨床研修2年を終えたあと。全国81ある医学部のどの大学を選んでも、その先に受けられる専門研修は同じです。18歳の時点の大学選びで、この道が閉じることはありません。

▶ 産科・婦人科は、公的調査ベースの勤務医の診療科別ランキングで2位(平均1,466.3万円・2011年調査)でした。全診療科の横並びは「診療科別 医師の年収ランキング2026|勤務医と開業医で順位が逆転」にまとめています。

では、本日の記事は以上です。

最後まで読んでいただきありがとうございます!


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◆筆者プロフィール

後藤 登(Goto Noboru)
仕事:総務・広報・完全個別指導コース担当
自己PR:高校・大学ボクシング部。釣りや登山が好き。新卒で当校に勤めて13年目。医学部受験の情報を調べて、ブログやInstagram、Twitterを更新しています。4年前から完全個別指導コースのコース担当。

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