こんにちは、太宰府アカデミーで広報/完全個別指導コースを担当している後藤です。
このページ、2024年に書いたまま2年近く放っておきました。読み返してみたら、おすすめの大学として挙げていた「東京医科歯科大学」が、いまはもう存在しません。2024年10月1日に東京工業大学と統合して東京科学大学になったからです。数字らしい数字も「合格率は約9割」の1行だけ。これはさすがに読んでくださる方に申し訳ないので、今日ぜんぶ作り直します。
作り直すにあたって、狙いを1つに絞りました。「精神科医になるには、いつ・何を・どれだけやるのか」を、全部そろえて1ページに置くことです。
面談で「精神科医になりたいんです」と言われたとき、そのあとに続く質問はだいたい決まっています。「何年かかりますか」と「どこの大学に行けばいいですか」。この2つに、僕の印象ではなく、厚生労働省と日本精神神経学会が出している数字で答えます。
先に結論を書いておきます。18歳で医学部に入った場合、精神科医になるのは最短で11年後、29歳ごろです。そしてどの科に進むかを決めるのは、医師免許を取った2年後。医学部を選ぶ時点で精神科に決めておく必要は、まったくありません。
この記事の目次
この記事を開いた人が気になっているのは、たぶんこのあたりだと思います。
− 精神科医って、結局なるまでに何年かかるの?
− 精神科は人気がないから、入りやすいんでしょ?
− 精神科医に向いてる人って、どういう人なの?
− 精神科が強い大学ってどこ?そこに行かないとダメなの?
ひとつずつ、数字で見ていきます。
精神科医になるには何年かかる? 答えは最短11年です
精神科医になるまでの道のりは、法律と学会の規定で年数がほぼ決まっています。積み上げると医学部6年+初期臨床研修2年+精神科の専門研修3年=11年。18歳で入学したなら、29歳ごろに精神科専門医になる計算です。

| 段階 | かかる年数 | 医学部入学からの通算 | 年齢の目安 | 中身 |
|---|---|---|---|---|
| 医学部 | 6年 | 6年 | 18→24歳 | 6年制。卒業しないと医師国家試験を受けられない |
| 医師国家試験 | ― | 6年 | 24歳 | 第120回(2026年2月)は受験9,980人・合格9,139人で91.6%。新卒だけなら94.7% |
| 初期臨床研修 | 2年 | 8年 | 24→26歳 | 医師法で必修。内科・外科・小児科・産婦人科・精神科・救急・地域医療を回る。ここではまだ科を決めない |
| 精神科の専門研修(専攻医) | 3年以上 | 11年 | 26→29歳 | 常勤(週32時間以上)で3年以上。ここで初めて「精神科医」になる |
| 精神科専門医 | ― | 11年 | 29歳ごろ | 研修修了+学会発表1回以上+学術総会参加1回以上で修了判定を受け、試験に合格する |
| 精神保健指定医(申請) | ― | 11年 | 29歳ごろ | 医師5年以上・うち精神科3年以上。専門医とほぼ同時期に申請できる |
この表でいちばん見てほしいのは、3段目の「初期臨床研修」で科を決めていないところです。初期臨床研修の2年間は医師法で必修とされていて、内科・外科・小児科・産婦人科・精神科・救急・地域医療をひととおり回ります。精神科を選ぶのは、その2年が終わったあと。つまり医学部に入る=何科になるかを決める、ではありません。18歳の時点で決める必要はないし、決めたところで途中で変わる人もたくさんいます。
もうひとつ。医学部の6年は「通えば終わる」6年ではありません。第120回医師国家試験(2026年2月実施)は受験9,980人に対して合格9,139人、合格率91.6%。新卒だけなら94.7%ですが、既卒は54.6%まで落ちます。数字の出どころは厚生労働省の合格発表です。ここを一度で通れるかどうかで、精神科医になる年齢は1年ずつずれていきます。
精神科は「人気がない科」ではありません。専攻医547人で全国4位
「精神科は人気がないから入りやすい」と言われることがあります。実際の数字は逆でした。
初期臨床研修を終えた医師が「この科で行く」と決めて登録するのが専攻医です。厚生労働省の医師専門研修部会の資料に、19の基本領域それぞれの採用数が載っています。2026年度に精神科を選んだ専攻医は547人で、19領域のうち4番目に多いという結果でした。

| 2026年度の順位 | 診療科 | 2026年度の採用数 | 2018年度 | 8年間の増減 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 内科 | 3,129人 | 2,670人 | +17.2% |
| 2 | 外科 | 996人 | 805人 | +23.7% |
| 3 | 整形外科 | 773人 | 552人 | +40.0% |
| 4 | 精神科 | 547人 | 441人 | +24.0% |
| 5 | 小児科 | 543人 | 573人 | ▲5.2% |
| 6 | 救急科 | 527人 | 267人 | +97.4% |
| 7 | 麻酔科 | 495人 | 495人 | +0.0% |
| 8 | 産婦人科 | 478人 | 441人 | +8.4% |
| 9 | 泌尿器科 | 352人 | 274人 | +28.5% |
| 10 | 眼科 | 341人 | 328人 | +4.0% |
| 11 | 放射線科 | 290人 | 260人 | +11.5% |
| 12 | 総合診療 | 282人 | 184人 | +53.3% |
| 13 | 脳神経外科 | 269人 | 224人 | +20.1% |
| 14 | 耳鼻咽喉科 | 262人 | 267人 | ▲1.9% |
| 15 | 皮膚科 | 259人 | 271人 | ▲4.4% |
| 16 | 形成外科 | 210人 | 163人 | +28.8% |
| 17 | リハビリテーション科 | 129人 | 75人 | +72.0% |
| 18 | 病理 | 91人 | 114人 | ▲20.2% |
| 19 | 臨床検査 | 25人 | 6人 | +316.7% |
| ― | 19領域の合計 | 9,998人 | 8,410人 | +18.9% |
読み取れることを3つ挙げます。ひとつ目、精神科(547人)は小児科(543人)・救急科(527人)・麻酔科(495人)・産婦人科(478人)より多い。内科・外科・整形外科という「大きい3科」の次に来る位置で、少数派ではありません。
ふたつ目、8年前の2018年度は441人だったので、+24.0%。19領域の合計が+18.9%なので、全体の伸びを上回っています。減っている科(病理−20.2%、小児科−5.2%、皮膚科−4.4%)もあるなかでの増加です。
みっつ目、19領域の合計は9,998人で過去最多でした。そのうち5.5%が精神科。医師100人のうち5人強が精神科に進む計算になります。
ちなみに、すでに働いている医師の数で見ても順位は同じです。厚生労働省の令和6年(2024年)医師・歯科医師・薬剤師統計では、主たる診療科が精神科の医師は病院12,364人+診療所4,895人=17,259人で、内科・整形外科・小児科に次ぐ4番目。入り口の人数と、いま働いている人数が、きれいに一致しています。
精神科医に向いている人を、データから3つ挙げます
「向いている人」を性格の話にすると、どうとでも書けてしまいます。ここでは公表されている数字だけを並べて、判断は読んでいる方に委ねます。
1:時間で潰れにくい科ではある。ただし夜間は別の話
厚生労働省が全病院を対象に行った「医師の働き方改革の施行に向けた準備状況調査」(2022年3〜4月)に、診療科別の長時間労働のデータがあります。時間外・休日労働が年1,860時間を超える医師の割合です。

| 診療科 | 所属医師数 | 年1,860時間超の医師 | 割合 |
|---|---|---|---|
| 産婦人科 | 2,128人 | 150人 | 7.0% |
| 脳神経外科 | 1,321人 | 76人 | 5.8% |
| 外科 | 4,883人 | 248人 | 5.1% |
| 救急科 | 1,400人 | 43人 | 3.1% |
| 小児科 | 2,508人 | 70人 | 2.8% |
| 総合診療 | 515人 | 11人 | 2.1% |
| 整形外科 | 2,257人 | 48人 | 2.1% |
| 内科 | 12,340人 | 220人 | 1.8% |
| 麻酔科 | 2,408人 | 41人 | 1.7% |
| 形成外科 | 848人 | 14人 | 1.7% |
| 泌尿器科 | 1,306人 | 21人 | 1.6% |
| 耳鼻咽喉科 | 1,476人 | 18人 | 1.2% |
| 病理 | 635人 | 7人 | 1.1% |
| 精神科 | 1,534人 | 12人 | 0.8% |
| 眼科 | 1,791人 | 11人 | 0.6% |
| リハビリテーション科 | 375人 | 2人 | 0.5% |
| 放射線科 | 2,075人 | 6人 | 0.3% |
| 皮膚科 | 1,602人 | 4人 | 0.2% |
| 臨床検査 | 184人 | 0人 | 0.0% |
| 全体 | 43,718人 | 1,034人 | 2.4% |
精神科は0.8%で、全体の2.4%の3分の1。産婦人科の7.0%と比べると9分の1以下です。「体力勝負で潰れる」タイプの科ではない、とは言えます。
ただし、この数字が拾っていないものがあります。精神科救急の当番、夜間に運ばれてきた患者さんの入院の可否を判断する仕事は、時間の長さでは測れません。あとで出てくる精神保健指定医になると、本人が嫌がっていても入院させるかどうかを決める役割が回ってきます。時間ではなく、判断の重さがかかる科だと考えたほうが実態に近いです。
2:長く続けている人が多い
同じ令和6年の統計で、病院に勤める精神科医の平均年齢は50.4歳でした。病院勤務の医師全体の平均が45.8歳なので、4.6歳ぶん高いことになります。診療所まで含めると精神科医の3割弱(4,895人)が診療所勤務です。体力の落ち方が仕事の限界を決めにくい——数字はそう読めます。医師免許を取ってから40年続ける仕事だと考えたとき、これは小さくない材料です。
3:慢性の病気と、長く付き合うことになる
次の章で詳しく出しますが、精神科の専門研修で経験することが求められる症例は、統合失調症が10例以上といちばん多く、次いで気分(感情)障害と神経症性障害が5例以上ずつです。急性期に一発で治して終わり、という組み立てにはなっていません。年単位で同じ人を診続けることに、しんどさより手ごたえを感じられるか。ここが合うかどうかは、正直、医学部に入る前には分からないと思います。分からないまま入って、初期臨床研修の2年で確かめれば十分です。
精神科専門医の3年間で、何を何例経験するのか
「専門研修3年」と書くと一瞬ですが、中身は日本精神神経学会が「専門研修プログラム整備基準【精神科領域】第4版」で細かく決めています。修了の条件は、日本専門医機構が認定した施設で、指導医のもと、常勤(週32時間以上)として3年以上研修すること。そのうえで、経験すべき疾患と症例数が決まっています。
| 経験すべき疾患・病態 | 必要な症例数 | 中身 |
|---|---|---|
| 統合失調症 | 10例以上 | 精神科でいちばん多く経験する疾患 |
| 気分(感情)障害 | 5例以上 | うつ病・双極性障害など |
| 神経症性障害、ストレス関連障害および身体表現性障害 | 5例以上 | 摂食障害を含む |
| 症状性を含む器質性精神障害 | 4例以上 | 認知症など |
| 児童・思春期の精神障害 | 2例以上 | 摂食障害を含む |
| 精神作用物質および嗜癖行動による精神・行動の障害 | 2例以上 | アルコール・薬物・ギャンブルなど |
| 成人のパーソナリティと行動の障害、広汎性発達障害、多動性障害 | 2例以上 | ― |
| てんかん | 1例以上 | ― |
| 睡眠障害 | 1例以上 | ― |
| 合計 | 32例以上 | このほかに救急・行動制限・地域医療・合併症の症例経験も求められます |
足すと最低32例。これに加えて、精神科救急・行動制限・地域医療・合併症とコンサルテーションリエゾンの症例経験、そして学会での筆頭発表1回以上と学術総会への1回以上の参加まで求められます。3年というのは「3年いれば取れる」年数ではなく、これだけ経験するのに最低3年かかるという意味の3年です。
研修する側だけでなく、受け入れる施設にも基準があります。専攻医を10名受け入れる施設群なら、1年あたり統合失調症200例以上・気分障害100例以上などの診療実績が必要で、入院治療100例・非自発的入院60例以上・外来80例以上という条件も付きます。症例が足りない病院では、そもそも精神科の専攻医を採れません。
精神保健指定医——精神科医だけが持つ、もうひとつの資格
精神科には、専門医とは別にもうひとつ資格があります。精神保健指定医です。1987年(昭和62年)に作られた、厚生労働大臣が指定する資格で、精神保健福祉法に根拠があります。
何をする資格かというと、本人の同意によらない入院(措置入院・医療保護入院)や、一定の行動制限を判断する役割です。厚生労働省の資料には「患者の人権に十分配慮した医療を提供する必要がある」と書かれています。人の自由を制限する判断を、法律が特定の医師にだけ任せている、ということです。
指定を受ける条件は、精神保健福祉法第18条で決まっています。5年以上の診断・治療の経験、うち3年以上の精神障害の診断・治療の経験、一定の症例経験、そして厚生労働大臣が定める研修の修了。症例経験の中身は2019年(令和元年)7月に見直され、いまは5分野5症例です。
| 分野 | 対象になる精神障害 | 必要な症例数 |
|---|---|---|
| F0 | 老年期認知症、症状性または器質性の精神障害など | 1例以上 |
| F1 | 中毒性精神障害など | 1例以上 |
| F2 | 統合失調症など | 1例以上 |
| F3 | 躁うつ病など | 1例以上 |
| F4〜F9 | 神経症性障害/生理的障害/人格・行動の障害/知的障害/心理的発達の障害/小児・青年期の行動および情緒の障害 | いずれかから1例以上 |
| 合計 | 5分野5症例 | うち措置入院と医療保護入院の症例が必須(2019年7月の見直しで追加) |
この見直しで効いているのが、措置入院と医療保護入院の症例が必須になったことです。あわせて口頭試問も導入されました。きっかけは、申請者本人が主体的に関わっていない症例のレポートで指定を受けていた事案が相次いだことでした。2015年に23名、2016年に89名の指定が取り消されています(厚生労働省 医道審議会)。書類だけでは通らない資格になっている、ということです。
年数を数え直すと、医師免許を取ってから5年、医学部入学からだと11年。精神科専門医の研修が終わるのと、だいたい同じ時期です。実際、専門医と指定医を同じころに取る医師は珍しくありません。
精神科医におすすめの大学はあるのか
ここがいちばん聞かれるところなので、正面から書きます。「この大学に行かないと精神科医になれない」という大学はありません。
理由は単純で、精神医学は医師国家試験の出題範囲であり、どの大学の医学部でも6年のあいだに必ず学ぶからです。そして精神科医としての中身が決まるのは、大学の6年ではなく、そのあとの専門研修3年だからです。前の章で見たとおり、経験する症例数を決めているのは大学ではなく、研修する施設群のほうです。
そのうえで、大学を選ぶときに見ておく価値がある数字を2つ出します。1つ目は、精神科の専攻医が、どこの都道府県で採用されているかです。
| 順位 | 都道府県 | 2025年度に採用された精神科専攻医 | 全国540人に占める割合 | 2027年度のシーリング |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 東京都 | 96人 | 17.8% | 対象 |
| 2 | 神奈川県 | 41人 | 7.6% | ― |
| 3 | 大阪府 | 40人 | 7.4% | ― |
| 4 | 埼玉県 | 34人 | 6.3% | ― |
| 5 | 愛知県 | 28人 | 5.2% | ― |
| 6 | 福岡県 | 24人 | 4.4% | 対象 |
| 7 | 兵庫県 | 21人 | 3.9% | ― |
| 8 | 千葉県 | 19人 | 3.5% | ― |
| 9 | 京都府 | 18人 | 3.3% | ― |
| 10 | 北海道 | 16人 | 3.0% | ― |
| 11 | 宮城県 | 13人 | 2.4% | ― |
| 12 | 奈良県 | 10人 | 1.9% | ― |
| ― | 全国 | 540人 | 100% | 10都府県が対象 |
2025年度に精神科の専攻医として採用されたのは全国で540人。そのうち東京都が96人で17.8%、上位5都府県(東京・神奈川・大阪・埼玉・愛知)だけで239人=44.3%を占めます。九州では福岡県が24人で全国6位。地方の県だと1桁のところも珍しくありません。
ここで大事なのが右端の列です。専攻医の採用数にはシーリングという上限が都道府県×診療科ごとにかかっていて、2027年度に精神科が対象になるのは東京・石川・京都・岡山・広島・香川・福岡・佐賀・熊本・沖縄の10都府県。医師が足りていると国が判断した地域では、精神科の専攻医は希望しても枠に限りがあります。福岡が入っているのは、地元の受験生にとって知っておいて損のない事実です。
2つ目は、いま精神科医がどこで働いているかです。
| 順位 | 主たる診療科 | 病院 | 診療所 | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 内科 | 21,865人 | 40,296人 | 62,161人 |
| 2 | 整形外科 | 14,659人 | 7,971人 | 22,630人 |
| 3 | 小児科 | 10,974人 | 7,035人 | 18,009人 |
| 4 | 精神科 | 12,364人 | 4,895人 | 17,259人 |
| 5 | 消化器内科 | 12,216人 | 4,035人 | 16,251人 |
| 6 | 循環器内科 | 11,103人 | 2,493人 | 13,596人 |
| 7 | 眼科 | 4,839人 | 8,597人 | 13,436人 |
| 8 | 外科 | 10,101人 | 2,240人 | 12,341人 |
| 9 | 産婦人科 | 7,123人 | 4,065人 | 11,188人 |
| 10 | 麻酔科 | 10,010人 | 618人 | 10,628人 |
| 11 | 皮膚科 | 3,907人 | 6,136人 | 10,043人 |
| 12 | 耳鼻いんこう科 | 4,027人 | 5,303人 | 9,330人 |
精神科医17,259人のうち、12,364人(約72%)が病院勤務。眼科や皮膚科のように診療所が主戦場の科とは、働き方の分布がまったく違います。精神科は病院、それも精神科病床を持つ病院が中心の科です。
最後に、この記事の前のバージョンで「おすすめ」として挙げていた大学について書いておきます。東京医科歯科大学は2024年10月1日に東京工業大学と統合し、東京科学大学になりました。また、大学名とセットで挙げていた教授の名前は、いずれもすでに異動・退任されています。特定の先生を目当てに大学を選ぶのは、6年後にその先生がいる保証がないという意味で、あまり勧められません。ここは前のバージョンの反省として、はっきり書いておきます。
太宰府アカデミーの視点|精神科を目指す人が、医学部選びで見ておくこと
ここまでの数字を、受験生と保護者の方がどう使えばいいかを書きます。
1つ目。志望科は、医学部選びの理由にしなくていい。精神科に進むかどうかを決めるのは、医師免許を取った2年後です。18歳で「精神科医になりたい」と思っているのは素晴らしいことですが、その気持ちを受験校の選択に反映させる必要はありません。まずは6年で卒業して国家試験に通れる大学に入ることが先で、精神科の話はそのあと8年かけて確かめれば間に合います。
2つ目。数字は出しますが、解釈は決めつけません。年1,860時間超の医師の割合が精神科は0.8%——この数字だけを見て「楽な科だ」と受け取るのは、たぶん違います。措置入院や医療保護入院の判断は、時間の長さでは測れない重さがあります。指定医のケースレポートで措置入院と医療保護入院が必須になったのは2019年7月からで、それ以前に指定の取り消しが相次いだという経緯もあります。数字が語らない部分こそ、この科の中身です。
3つ目。都道府県のデータは、志望校選びより「その先」に効きます。精神科の専攻医は上位5都府県で44.3%が採用されていて、2027年度は10都府県がシーリングの対象です。ただしこれは医学部を出たあとの話なので、いま志望校を絞る材料にはなりません。知っておくと、6年後に慌てずに済むという種類の情報です。福岡で精神科の専攻医を目指すなら枠の争いがある、くらいの理解で十分だと思います。
4つ目。精神科は入りやすい科ではありません。専攻医547人で19領域中4位、8年で+24.0%。医師数でも17,259人で4位です。「精神科なら空いている」という前提で進路を考えるのは、少なくとも数字とは合いません。
そのうえで最後にひとつ。精神科の専門研修で最初に求められる症例は、統合失調症10例以上です。年単位で同じ人を診続けるのがこの科の基本になります。ここに手ごたえを感じられるかどうかは、実際に患者さんと会ってみないと分かりません。だから焦らなくていいのだと、僕は思っています。
まとめ
精神科医になるまでの道のりを、数字で整理し直しました。
・最短11年。医学部6年+初期臨床研修2年+精神科の専門研修3年で、18歳入学なら29歳ごろ
・科を決めるのは医師免許を取った2年後。医学部に入る時点で精神科に決めておく必要はない
・2026年度に精神科を選んだ専攻医は547人で19領域中4位。小児科543人・救急科527人・麻酔科495人より多く、2018年度の441人から+24.0%
・専門研修3年で経験する症例は最低32例(統合失調症10例以上・気分障害5例以上ほか9区分)+学会での筆頭発表1回以上
・精神保健指定医は医師5年以上・うち精神科3年以上+5分野5症例。措置入院と医療保護入院の症例が必須
・「ここに行かないと精神科医になれない」大学はない。東京医科歯科大学は2024年10月に東京科学大学になり、大学名は変わることもある
明日からできることを1つだけ挙げるなら、志望科ではなく、6年で卒業して国家試験に通れる大学を選ぶことです。第120回医師国家試験の合格率は新卒94.7%に対して既卒54.6%。この差のほうが、どの大学の精神科講座が強いかより、はるかに大きく効いてきます。精神科を選ぶ機会は、8年後にちゃんと回ってきます。
あわせて読みたい
医者になるには何年かかる?免許まで6年・専門医まで11年(診療科を問わない全体の道のりはこちらにまとめています)
麻酔科医になるには|医学部6年+研修2年+専攻医4年の最短12年(同じ「診療科の選び方」シリーズです)
研修医になる年齢・医師になるまでの道のりとは?(初期臨床研修の2年をもう少し詳しく)
2年前に書いたこの記事を、教授の名前と印象だけで「おすすめの大学」を並べたまま置き去りにしていたことが、ずっと引っかかっていました。精神科医を目指す人がいちばん知りたいのは、たぶん誰が教えているかではなく、自分がいつ、何を、どれだけやることになるのかだと思います。今回は全部、国と学会が公表している数字で埋めました。
▶ 精神科は、公的調査ベースの勤務医の診療科別ランキングで8位(平均1,230.2万円・2011年調査)でした。全診療科の横並びは「診療科別 医師の年収ランキング2026|勤務医と開業医で順位が逆転」にまとめています。
本日の記事は以上です。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
◆太宰府アカデミーの自己PR
当校は福岡県にある日本で唯一の全寮制医学部受験予備校です。
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◆筆者プロフィール
後藤 登(Goto Noboru)
仕事:総務・広報・完全個別指導コース担当
自己PR:高校・大学ボクシング部。釣りや登山が好き。新卒で当校に勤めて13年目。医学部受験の情報を調べて、ブログやInstagram、Twitterを更新しています。4年前から完全個別指導コースのコース担当。
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