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麻酔科医になるには|医学部6年+研修2年+専攻医4年の最短12年

2026年08月19日 更新

こんにちは、太宰府アカデミーで広報/完全個別指導コースを担当している後藤です。

「麻酔科医になるには」で調べている方に、まず年数から答えます。医学部に入ってから最短で12年です。

そしてもう1つ、麻酔科にはほかの科にない条件があります。「麻酔科」という診療科名を掲げるには、厚生労働大臣の許可がいります。医療法で、許可が必要な診療科名は麻酔科だけです。

今回は国の資料と法令だけを使って、麻酔科医になるまでの道のりを書きます。

この記事を開いた方は、たぶんこんなことを思っています。

− 麻酔科医になるルートって、どうなってるの?

− 麻酔科医って、頭の良さが必要なの?

− 麻酔科に向いてる人ってどんな人?

ひとつずつ答えていきます。

結論:最短12年。しかも「麻酔科」を掲げるには国の許可がいる

先に答えを出します。

  • 医学部6年+初期臨床研修2年+麻酔科の専門研修4年=最短12年。30歳ごろに麻酔科専門医になります
  • 専門研修が4年なのが麻酔科の特徴です。内科・精神科などの3年より1年長くなっています
  • 「麻酔科」を診療科名として掲げるには、厚生労働大臣の許可が必要です。許可が要る診療科名は麻酔科だけです
  • その許可を持つ医師(麻酔科標榜医)は11,236人。麻酔科専門医は7,672人です

科を決めるのは、医学部に入るときではありません。初期臨床研修が終わる26歳のときです。

麻酔科医になるまでの5段階

麻酔科医になるまでの5段階 医学部6年 医師国家試験 初期臨床研修2年 麻酔科の専門研修4年 麻酔科専門医
麻酔科医になるまでの道のり。専門研修は4年(出典:医師法第16条の2/日本麻酔科学会「機構専門医 新規申請」)

1段目から3段目までは、どの科に進む人も同じです。初期臨床研修は医師法第16条の2で義務づけられた2年間で、この間に内科・救急・外科・小児科・産婦人科・精神科・地域医療をひと通り回ります。

麻酔科らしさが出るのは4段目からです。日本麻酔科学会の機構専門医は、初期研修を終えたあと「満4年以上」の研修プログラムを修了することが条件になっています。週3日以上の麻酔科関連業務と、決められた経験症例数も必要です。

段階 かかる年数 年齢の目安 そこで何が決まるか
医学部 6年 18歳 → 24歳 まだ科は決めない。全員が同じ内容を学ぶ
医師国家試験 24歳 合格して医籍登録。ここで「医師」になる
初期臨床研修 2年 24歳 → 26歳 必修。内科・救急・外科・小児科・産婦人科・精神科・地域医療をひと通り回る
麻酔科の専門研修 4年 26歳 → 30歳 ここで科が決まる。19の基本領域から麻酔科を選ぶ
麻酔科専門医 30歳ごろ 書類審査と試験に合格すると名乗れる
麻酔科の標榜許可 +α 早くて26歳以降 医師免許取得後2年以上の修練、または2年以上の業務+全身麻酔300症例以上

この表でもうひとつ見ていただきたいのが最終行の「麻酔科の標榜許可」です。専門医とは別の、国の許可になります。次の章で詳しく書きます。

麻酔科だけは、診療科名に厚生労働大臣の許可がいる

ここが麻酔科という科のいちばんの特徴です。

病院やクリニックが掲げられる診療科名は、医療法施行令で決まっています。内科・外科・小児科・皮膚科・精神科……これらは政令に名前が載っているので、届出だけで掲げられます。

ところが麻酔科だけは政令の一覧に載っていません。その代わり医療法第6条の6第1項が「政令で定める診療科名以外で、厚生労働大臣の許可を受けたもの」という枠を用意していて、麻酔科はそこに入ります。

許可の基準は、医療法施行規則第1条の10に2つ書かれています。

医療法施行規則 第1条の10第2項 どちらか一方を満たせば許可される
第1号 医師免許を受けた後、麻酔指導医の実地の指導のもとで、十分な修練を行うことのできる病院または診療所において2年以上の修練をしたこと
第2号 医師免許を受けた後、2年以上麻酔の業務に従事し、かつ麻酔の実施を主に担当する医師として気管への挿管による全身麻酔を300症例以上実施した経験を有していること

2つめの「全身麻酔300症例以上」という数字が、麻酔科という仕事の性格をよく表しています。知識だけでは足りず、実際に手を動かした回数が問われます。

そしてもう1つ。医療法第6条の6第4項は、麻酔科を広告するときは許可を受けた医師の氏名も一緒に広告しなければならないと定めています。病院の看板や案内に「麻酔科(◯◯ ◯◯)」と医師名が書かれているのは、この規定によるものです。

麻酔科医は何人いるのか|数え方が3つある

「麻酔科医は何人か」への答えは、数え方によって変わります。

麻酔科標榜医11236人 主たる診療科が麻酔科の医師10628人 麻酔科専門医7672人
「麻酔科医」は数え方が3つある(出典:厚生労働省「令和6(2024)年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」表4・表7・表8)

厚生労働大臣の許可を持つ麻酔科標榜医が11,236人。ふだんいちばん多く従事する科として麻酔科を届け出ている医師が10,628人。麻酔科専門医が7,672人です。

標榜医のほうが多いのは、ほかの科を本業にしながら麻酔科の許可を持っている医師がいるためです。

数え方 人数 病院 診療所 平均年齢 何を指すか
麻酔科標榜医 11,236 8,787 2,449 51.3歳 厚生労働大臣の許可を受けて「麻酔科」を掲げられる医師
主たる診療科が麻酔科の医師 10,628 10,010 618 45.9歳 ふだんいちばん多く従事している科として麻酔科を届け出た医師
麻酔科専門医 7,672 6,882 790 49.2歳 日本専門医機構・日本麻酔科学会が認定する専門医

もうひとつ、毎年どれくらいの人が麻酔科を選んでいるかも見ておきます。初期研修を終えた医師が19の基本領域から1つを選ぶとき、2026年度に麻酔科を選んだ専攻医は495人。19領域のうち7番目でした。

診療科 2018年度 2026年度 2018年度比 全体に占める割合
1 内科 2,670 3,129 +17.2% 31.3%
2 外科 805 996 +23.7% 10.0%
3 整形外科 552 773 +40.0% 7.7%
4 精神科 441 547 +24.0% 5.5%
5 小児科 573 543 -5.2% 5.4%
6 救急科 267 527 +97.4% 5.3%
7 麻酔科 495 495 +0.0% 5.0%
8 産婦人科 441 478 +8.4% 4.8%
9 泌尿器科 274 352 +28.5% 3.5%
10 眼科 328 341 +4.0% 3.4%
11 放射線科 260 290 +11.5% 2.9%
12 総合診療 184 282 +53.3% 2.8%
13 脳神経外科 224 269 +20.1% 2.7%
14 耳鼻咽喉科 267 262 -1.9% 2.6%
15 皮膚科 271 259 -4.4% 2.6%
16 形成外科 163 210 +28.8% 2.1%
17 リハビリテーション科 75 129 +72.0% 1.3%
18 病理 114 91 -20.2% 0.9%
19 臨床検査 6 25 +316.7% 0.3%

この表で麻酔科だけ目立つ点があります。2018年度も495人、2026年度も495人で、8年間まったく同じ数です。全体が+18.9%伸びるなかで横ばいという、珍しい動き方をしています。

研修先は大学病院だけではありません

その495人が4年間を過ごすプログラムの中心になるのが「基幹施設」です。福岡県には11の基幹施設があります。

基幹施設(福岡県・2026年度プログラム) 区分
九州大学病院 大学病院
久留米大学病院 大学病院
福岡大学病院 大学病院
産業医科大学病院 大学病院
北九州総合病院 一般病院(北九州市)
北九州市立医療センター 一般病院(北九州市)
小倉記念病院 一般病院(北九州市)
健和会大手町病院 一般病院(北九州市)
JCHO九州病院 一般病院(北九州市)
福岡徳洲会病院 一般病院(春日市)
飯塚病院 一般病院(飯塚市)

大学病院は九州大学病院・久留米大学病院・福岡大学病院・産業医科大学病院の4つで、残り7つは一般病院です。北九州市に5つ集まっているのも特徴で、手術件数の多い病院が基幹施設になりやすいことがうかがえます。出身大学の医局に入ることだけが道ではありません。

「向いている人」「頭の良さ」をデータで考える

「麻酔科医に向いてる人」「麻酔科医 頭の良さ」も、この記事によく来ている検索語です。ただ、正直に書きます。どんな性格や学力の人が麻酔科に向いているかを示した公的なデータは、僕が探した範囲では見つかりませんでした。

医師免許は全科共通の国家試験で取るものなので、「麻酔科だから頭が良くないといけない」「麻酔科なら楽」といった序列は、制度上ありません。代わりに、麻酔科という科の働き方について国のデータで分かっていることを3つ出します。

1. 長時間労働の割合は19領域のうち9番目

時間外休日労働が年1860時間を超える医師の割合 麻酔科1.7%は19領域のうち9番目
麻酔科で年1,860時間超は1.7%(出典:厚生労働省 医政局「医師の働き方改革の施行に向けた準備状況調査」令和4年3〜4月)

麻酔科は1.7%(2,408人中41人)。産婦人科7.0%・外科5.1%より低く、精神科0.8%・皮膚科0.2%より高い、真ん中あたりです。全診療科の順位はこちらです。

診療科 所属医師数 1,860時間超 割合
1 産婦人科 2,128 150 7.0%
2 脳神経外科 1,321 76 5.8%
3 外科 4,883 248 5.1%
4 救急科 1,400 43 3.1%
5 小児科 2,508 70 2.8%
6 総合診療 515 11 2.1%
7 整形外科 2,257 48 2.1%
8 内科 12,340 220 1.8%
9 麻酔科 2,408 41 1.7%
10 形成外科 848 14 1.7%
11 泌尿器科 1,306 21 1.6%
12 耳鼻咽喉科 1,476 18 1.2%
13 病理 635 7 1.1%
14 精神科 1,534 12 0.8%
15 眼科 1,791 11 0.6%
16 リハビリテーション科 375 2 0.5%
17 放射線科 2,075 6 0.3%
18 皮膚科 1,602 4 0.2%
19 臨床検査 184 0 0.0%
全体 43,718 1,034 2.4%

ただし調査の対象は病院勤務医だけで、緊急手術の呼び出しがどれくらいあるかまでは分かりません。「麻酔科は忙しくない」と読み替えるのは行きすぎです。

2. 病院で働く割合は94.2%。開業する科ではない

主たる診療科を麻酔科としている医師10,628人のうち、病院で働いているのは10,010人で94.2%。診療所は618人しかいません。

診療科 医師数 全体に占める割合 平均年齢 病院で働く割合 女性比率(病院勤務)
1 内科 62,161 18.8% 59.3歳 35.2% 22.2%
2 整形外科 22,630 6.8% 52.5歳 64.8% 7.6%
3 臨床研修医 18,257 5.5% 27.7歳 100.0% 34.7%
4 小児科 18,009 5.4% 51.3歳 60.9% 38.4%
5 精神科 17,259 5.2% 52.6歳 71.6% 24.1%
6 消化器内科(胃腸内科) 16,251 4.9% 48.1歳 75.2% 19.4%
7 循環器内科 13,596 4.1% 48.5歳 81.7% 13.8%
8 眼科 13,436 4.1% 53.7歳 36.0% 42.9%
9 外科 12,341 3.7% 53.9歳 81.8% 9.7%
10 産婦人科 11,188 3.4% 50.0歳 63.7% 49.2%
11 麻酔科 10,628 3.2% 45.9歳 94.2% 43.3%
12 皮膚科 10,043 3.0% 51.4歳 38.9% 57.2%
13 耳鼻いんこう科 9,330 2.8% 53.2歳 43.2% 28.4%
14 泌尿器科 8,069 2.4% 49.9歳 73.4% 10.9%
15 脳神経外科 7,574 2.3% 51.5歳 83.4% 8.1%
16 放射線科 7,533 2.3% 48.2歳 92.2% 25.2%
17 呼吸器内科 7,271 2.2% 46.1歳 85.7% 22.8%
18 糖尿病内科(代謝内科) 6,168 1.9% 46.4歳 75.5% 38.1%
19 脳神経内科 5,976 1.8% 47.9歳 87.9% 23.6%
20 腎臓内科 5,832 1.8% 46.0歳 78.3% 31.4%

手術室と集中治療室が主な職場なので、当然といえば当然です。「開業して自分のペースで」という働き方を思い描いているなら、麻酔科はその像とはかなり違います。

3. 女性比率は43.3%で全43区分のうち7番目に高い

病院に勤務する麻酔科医の女性比率は43.3%。皮膚科57.2%・乳腺外科53.4%・産婦人科49.2%に次ぐ高さで、全43区分のうち7番目です。外科系(心臓血管外科7.0%・整形外科7.6%)とは対照的な数字になっています。

平均年齢は45.9歳で、43区分のうち9番目に若い科です。内科59.3歳・眼科53.7歳と比べると、若い世代の割合が高いことが分かります。

太宰府アカデミーの視点|18歳で科を決めなくていい

ここまでのデータを、受験生と保護者の方がどう使えばいいかを書きます。

まず志望校を「麻酔科に強い大学かどうか」で選ぶ必要はありません。医学部6年間のカリキュラムは全国共通の骨格が決まっていますし、専門研修のプログラムは出身大学に縛られず全国から選べます。

次に、麻酔科に興味があるなら、この記事の「300症例」という条件は覚えておいてください。麻酔科は、資格が知識だけでなく経験の量で測られる科です。「どこで研修するか」が、ほかの科より効いてきます。これは大学選びの段階では決められません。

三つめに、専門研修が4年である点は、進路の設計に影響します。内科や精神科より1年長いので、専門医になるのは30歳ごろです。ただ、その1年は将来の選択肢を狭めるものではありません。集中治療やペインクリニックへ進む道も、この研修の先にあります。

最後に。この記事の数字は全国の平均です。勤務先によって働き方はまったく違います。数字は科の輪郭をつかむために使い、最後は実際に働いている人の話を聞いて判断してください。

まとめ

「麻酔科医になるには」への答えをまとめます。

  • ルートは医学部6年+初期臨床研修2年+麻酔科の専門研修4年=最短12年。30歳ごろに専門医です
  • 科を決めるのは医師免許を取った2年後、26歳のとき。18歳の時点では決めません
  • 「麻酔科」を掲げるには厚生労働大臣の許可がいります。許可が必要な診療科名は麻酔科だけです
  • 許可の基準は「2年以上の修練」または「2年以上の業務+全身麻酔300症例以上」。経験の量が問われます
  • 麻酔科標榜医11,236人、麻酔科専門医7,672人。専攻医は2018年度も2026年度も495人で横ばいです
  • 病院で働く割合94.2%、女性比率43.3%(43区分中7位)、平均年齢45.9歳。開業する科ではありません
  • 研修先は大学病院に限りません。福岡県の基幹施設11のうち大学病院は九州大学・久留米大学・福岡大学・産業医科大学の4つで、残り7つは一般病院です

いま高校生で麻酔科に興味がある方は、まず医学部に入ることだけを考えてください。初期研修で麻酔科を回ったときに自分がどう感じるか——それで十分間に合います。

この記事を書いたのは、「麻酔科医になるには」と検索した高校生が、標榜許可や300症例といった制度の中身にたどり着けないまま終わってしまうのがもったいないと思ったからです。年数と条件が分かれば、進路は具体的な計画に変わります。

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本日の記事は以上です。
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後藤 登(Goto Noboru)
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