こんにちは、太宰府アカデミーで広報/完全個別指導コースを担当している後藤です。
「手術で人を治せる医師になりたい」——外科を志望する生徒の言葉は、いつもまっすぐです。同時に、周りの大人から「外科は大変だからやめておけ」と言われて迷っている、という相談も受けます。
この分野は、印象で語られることがとても多い領域です。そこで国が公表している専攻医の採用数と医師統計を9年分読んで、実際のところどうなのかを確かめました。結論から言うと、2026年度の外科の専攻医は996人で、この9年間で最多でした。
− 外科医になるには、何年かかるの?
− 「外科離れ」って本当に起きているの?
− 大変だと言われるけれど、実際どのくらい?
順番にお答えします。
この記事の目次
結論|外科医になるには最短11年。専門医は29歳ごろ
まず全体の地図です。医学部6年+初期臨床研修2年+外科の専門研修3年以上=最短11年。現役で医学部に合格し、留年なしで進めば29歳ごろに外科専門医になります。

| 段階 | 年数 | 年齢の目安 | この段階で決まること |
|---|---|---|---|
| 医学部(医学科) | 6年 | 18→24歳 | 医師国家試験の受験資格 |
| 医師国家試験 | ― | 24歳の2月 | 医師免許(第120回の新卒合格率94.7%) |
| 初期臨床研修(必修) | 2年 | 24→26歳 | まだ科は決めない。外科を含む全科を回る |
| 外科の専門研修(専攻医) | 3年以上 | 26→29歳 | ここで外科を選ぶ。規定の修練の修了も要件 |
| 外科専門医 | ― | 29歳ごろ〜 | 専門研修修了後、試験に合格して取得 |
外科の専門研修は満3年以上で、内科と同じ年数です。ただし外科専門医の受験資格には、年数に加えて規定の修練をすべて修了していることが求められます(基幹施設・連携施設それぞれで6か月以上の研修を含む)。手術の経験を積むことが要件に組み込まれているぶん、年数だけでは測れない密度がある研修です。
出典:医師法(初期臨床研修は必修・2年)/日本外科学会 外科専門医制度(外科領域の専門研修は満3年以上)。年齢は現役合格・留年なしの目安
そして他の科と同じく、外科を選ぶのは医学部入学時ではなく、医師免許を取った後の26歳ごろです。初期研修の2年間には外科のローテーションも含まれるので、実際に手術室に立ってから決められます。「外科に強い大学」を探して受験校を絞る必要はありません。
「外科離れ」は本当か|2026年度の専攻医は過去最多の996人
いちばん多い不安に、実数で答えます。

| 年度 | 外科の専攻医採用数 | 参考:内科 |
|---|---|---|
| 2018年度 | 805人 | 2,670人 |
| 2020年度 | 829人 | 2,923人 |
| 2022年度 | 846人 | 2,915人 |
| 2024年度 | 807人 | 2,850人 |
| 2026年度 | 996人(過去最多・+23.7%) | 3,129人(+17.2%) |
2018年度の805人から2026年度は996人へ、+23.7%。しかも996人は9年間で最多です。同じ期間の内科は+17.2%ですから、伸び率では外科が内科を上回っています。
出典:厚生労働省 医道審議会 医師分科会 医師専門研修部会 資料1「令和8年度の専攻医採用と令和9年度の専攻医募集について」(2026年7月15日)をもとに太宰府アカデミー集計
「外科離れ」という言葉はよく聞きますが、専門研修に進む人数という指標では、それは起きていません。むしろ増えています。もちろん、外科医の総数が12,341人にとどまっている点や、手術を担う世代の層の厚さは別の論点です。ただ「若い医師が外科を選ばなくなった」という通説は、採用数のデータとは食い違っている——ここまでが数字で言えることです。
制度面でも追い風があります。外科はシーリング(専攻医の採用上限)の対象外で、全国どこでも枠の制約なく研修先を選べます(ほかに産婦人科・救急科・病理・臨床検査・総合診療の計6科)。国が医師の確保を必要と認めている科だからです。内科は東京・福岡など10都府県が対象なので、研修地の自由度という点では外科のほうが有利です。
数字で見る「外科」という科の実像
| 指標 | 数字 | 何を意味するか |
|---|---|---|
| 主たる診療科を外科とする医師 | 12,341人(全体の3.7%) | 診療科別で9番目 |
| 2026年度の専攻医採用数 | 996人 | 19領域中2番目(内科に次ぐ) |
| 平均年齢 | 53.9歳 | ― |
| 働く場所 | 病院10,101人(81.8%) | 手術設備のある病院が中心。開業は少数 |
| 女性比率(病院勤務) | 9.7% | 外科系はどこも1割未満(眼科42.9%・小児科38.4%) |
| 年1,860時間超の長時間労働 | 5.1%(調査全体2.4%) | 産婦人科7.0%に次いで高い |
| シーリング(採用上限) | 対象外 | 全国どこでも枠の制約なし |
この表で目を引くのは病院勤務81.8%という数字です。

| 診療科 | 病院勤務の割合 | 診療所などの割合 | キャリアの形 |
|---|---|---|---|
| 外科 | 81.8%(10,101人) | 18.2% | 病院組織のなかで長く働く |
| 整形外科 | 64.8%(14,659人) | 35.2% | 病院中心だが開業もある |
| 眼科 | 36.0%(4,839人) | 64.0% | 開業が主流 |
| 内科 | 35.2%(21,865人) | 64.8% | 開業が現実的な選択肢 |
内科が35.2%、眼科が36.0%であるのに対し、外科は8割以上が病院で働いています。手術設備と手術チームがある場所でしか成り立たない医療だからで、開業という選択肢が現実的でないのが外科のキャリアの特徴です。長く病院組織のなかで働くことになる、という前提は知っておいてください。
出典:厚生労働省「令和6(2024)年 医師・歯科医師・薬剤師統計」表4・表5
「大変さ」についても正直に書きます。年1,860時間超の長時間労働の割合は5.1%で、調査全体の2.4%の約2倍。産婦人科7.0%に次いで高い数字です。「外科は大変」というイメージは、この指標では当たっています。周りの大人がそう言うのには根拠があります。
ただし、それでも専攻医は9年で+23.7%です。大変さを知ったうえで選ぶ医師が増えている、というのがこの2つの数字を並べたときの姿です。
太宰府アカデミーの視点|「やめておけ」に数字で向き合う
1つめ。大学選びで外科を意識する必要はありません。科を決めるのは26歳で、初期研修の2年間に外科のローテーションが含まれます。受験の段階では偏差値・配点・立地といった条件で志望校を選んで大丈夫です。ただし配点の相性だけで決めず、必ず過去問で出題形式を確かめてください。
2つめ。11年の最短ルートは「6年で卒業できて初めて」成立します。ここは大学差が大きく、文部科学省の公表データでは、6年でストレートに医師になれる割合は国公立トップの金沢大学で97.4%、第120回医師国家試験で新卒合格率100%だったのは自治医科大学・北海道大学・京都大学の3校でした。志望校を決める前に大学ごとのストレート卒業率ランキングで候補校の数字を確かめておくことをおすすめします。
3つめ。「大変だからやめておけ」と言われたら、数字で返してほしい。長時間労働率5.1%は事実です。でも同時に、専攻医は9年で+23.7%増えて過去最多、シーリングは無く全国で研修でき、伸び率は内科を上回っている——これも事実です。片方だけを見て進路を決めないでください。診療科ごとの働き方を横断で比べた19診療科の比較記事と、内科との比較記事もあわせて読んでみてください。
まとめ|外科医になるには
- 最短ルートは医学部6年+初期臨床研修2年+専門研修3年以上=11年。現役合格なら29歳ごろに外科専門医
- 専門研修の年数は内科と同じ3年以上だが、規定の修練(手術経験)の修了が受験要件に加わる
- 科を決めるのは26歳。初期研修で外科を回ってから決められる。受験校を絞る必要はない
- 「外科離れ」は専攻医の実数では起きていない——2026年度996人は9年間で最多、+23.7%で内科の+17.2%を上回る
- シーリング対象外で全国どこでも研修可能。内科は東京・福岡など10都府県が対象
- 病院勤務81.8%で開業は少数派。長時間労働率5.1%は全体の約2倍——大変さは事実として受け止めて備える
- 受験の段階でできるのは大学選び。6年で医師になれる割合は金沢大学97.4%(国公立1位)など大学差が大きいので、進級・国試のデータまで見て志望校を決める
「外科は大変だからやめておけ」という言葉に、僕は賛成も反対もしません。ただ、その言葉に反論する材料も、納得する材料も、どちらも数字のなかにあります。志望する本人が両方を知ったうえで決められるように、この記事を書き直しました。
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本日の記事は以上です。
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◆筆者プロフィール
後藤 登(Goto Noboru)
仕事:総務・広報・完全個別指導コース担当
自己PR:高校・大学ボクシング部。釣りや登山が好き。新卒で当校に勤めて13年目。医学部受験の情報を調べて、ブログやInstagram、Twitterを更新しています。4年前から完全個別指導コースのコース担当。
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