こんにちは、太宰府アカデミーで広報/完全個別指導コースを担当している後藤です。
「子どもが好きだから小児科医になりたい」——志望理由として毎年必ず出てくる言葉です。同時に「少子化なのに、これから小児科って大丈夫なんですか」という不安もよく聞きます。
この不安に、印象で答えたくありませんでした。そこで国が公表している専攻医の採用数と医師統計を9年分読んで、実際に何人が小児科を選び続けているのかを確かめました。結論から言うと、子どもの数が減り続けるなかでも、毎年500人以上が小児科を選んでいます。
− 小児科医になるには、何年かかるの?
− 少子化で、小児科医は要らなくなるの?
− 女性でも続けられる科なの?
順番にお答えします。
この記事の目次
結論|小児科医になるには最短11年。専門医は29歳ごろ
まず全体の地図です。医学部6年+初期臨床研修2年+小児科の専門研修3年=最短11年。現役で医学部に合格し、留年なしで進めば29歳ごろに小児科専門医になります。

| 段階 | 年数 | 年齢の目安 | この段階で決まること |
|---|---|---|---|
| 医学部(医学科) | 6年 | 18→24歳 | 医師国家試験の受験資格 |
| 医師国家試験 | ― | 24歳の2月 | 医師免許(第120回の新卒合格率94.7%) |
| 初期臨床研修(必修) | 2年 | 24→26歳 | まだ科は決めない。小児科を含む全科を回る |
| 小児科の専門研修(専攻医) | 3年 | 26→29歳 | ここで小児科を選ぶ。19の基本領域から1つ |
| 小児科専門医 | ― | 29歳ごろ〜 | 研修修了後、試験に合格して取得 |
小児科の専門研修は3年で、整形外科・眼科(4年)より短い設計です。初期研修の2年間にも小児科のローテーションが含まれるので、実際に子どもを診る現場を経験してから決められます。
出典:医師法(初期臨床研修2年)/日本小児科学会 小児科専門研修プログラム(3年)。年齢は現役合格・留年なしの目安
ここも他の科と同じで、小児科を選ぶのは医学部入学時ではなく、医師免許を取った後の26歳ごろです。「小児科に強い大学」を探して受験校を絞る必要はありません。どの大学の医学部からでも、この11年のルートは同じです。
少子化と小児科医|専攻医は9年間ほぼ横ばい
いちばん多い不安に、実数で答えます。

| 年度 | 小児科の専攻医採用数 |
|---|---|
| 2018年度 | 573人 |
| 2020年度 | 565人 |
| 2022年度 | 551人 |
| 2024年度 | 532人 |
| 2025年度 | 537人 |
| 2026年度 | 543人(2018年度比 −5.2%) |
2018年度の573人から2026年度は543人。9年間の変化は−5.2%で、ほぼ横ばいと言える範囲です。この間、日本の出生数は減り続けていますから、子どもの数の減り方に比べれば、小児科を選ぶ医師の数はずっと安定していることになります。毎年500人以上が、この科を選び続けています。
出典:厚生労働省 医道審議会 医師分科会 医師専門研修部会 資料1「令和8年度の専攻医採用と令和9年度の専攻医募集について」(2026年7月15日)をもとに太宰府アカデミー集計
もうひとつ、需要の側から見て知っておきたい事実があります。小児科はシーリング(専攻医の採用上限)の対象で、2027年度は東京・長野・京都・兵庫・奈良・岡山の6都府県に上限が置かれます。シーリングは「その地域にその科の医師が足りている」と国が判断したときに設定されるものですから、都市部については小児科医が不足しているわけではないというのが国の見立てです。裏を返せば、地方では引き続き必要とされている、ということでもあります。
数字で見る「小児科」という科の実像
| 指標 | 数字 | 何を意味するか |
|---|---|---|
| 主たる診療科を小児科とする医師 | 18,009人(全体の5.4%) | 診療科別で4番目の規模 |
| 2026年度の専攻医採用数 | 543人 | 19領域中5番目(全体9,998人) |
| 平均年齢 | 51.3歳 | ― |
| 働く場所 | 病院10,974人(約61%)/診療所など7,035人 | 病院・開業のどちらの道もある |
| 女性比率(病院勤務) | 38.4% | 外科9.7%・整形外科7.6%と比べ高い |
| 年1,860時間超の長時間労働 | 2.8%(調査全体2.4%) | 外科5.1%・産婦人科7.0%より低い |
| シーリング(採用上限) | 対象:東京・長野・京都・兵庫・奈良・岡山 | この6都府県は枠の争いがある |
読み取れることが3つあります。①規模が大きい——主たる診療科を小児科とする医師は18,009人で、内科・整形外科・臨床研修医に次ぐ4番目です。②病院と開業の両方の道がある——病院勤務が約61%で、診療所も約39%。街の小児科クリニックという形で長く続ける選択肢が現実的にあります。③極端な長時間労働は多くない——年1,860時間超は2.8%で、外科5.1%・産婦人科7.0%より低い水準です。
出典:厚生労働省「令和6(2024)年 医師・歯科医師・薬剤師統計」表4・表5/医政局「医師の働き方改革の施行に向けた準備状況調査」(令和4年・全病院対象)/医師専門研修部会 資料1(2026年7月15日)
女性医師が38.4%|働き方の選択肢が広い科
「女性でも続けられますか」という質問にも、数字で答えられます。

| 診療科 | 病院で働く医師の女性比率 | 参考:主たる診療科とする医師数 |
|---|---|---|
| 皮膚科 | 57.2% | 10,043人 |
| 産婦人科 | 49.2% | 11,188人 |
| 麻酔科 | 43.3% | 10,628人 |
| 眼科 | 42.9% | 13,436人 |
| 小児科 | 38.4% | 18,009人 |
| 内科 | 22.2% | 62,161人 |
| 外科 | 9.7% | 12,341人 |
| 整形外科 | 7.6% | 22,630人 |
病院で働く小児科医の38.4%が女性です。皮膚科57.2%・産婦人科49.2%・眼科42.9%に次ぐ水準で、外科9.7%・整形外科7.6%とは4〜5倍の開きがあります。ロールモデルとなる女性医師が多く、育児と両立しながら働いている先輩の実例に出会いやすい科だということです。
出典:厚生労働省「令和6(2024)年 医師・歯科医師・薬剤師統計」表5(病院勤務医の女性比率)
ここに、日本とアメリカで事情がまるで逆になるという興味深い事実を添えておきます。アメリカの医師の年収データを見ると、診療科別の年収で下位10のうち7つが小児科系(小児内分泌・小児リウマチ・小児感染症など)で、最高の脳神経外科とは3.25倍の開きがあります。米国で小児科医が不足する構造的な理由がここにあります。
一方日本は、科による年収差がアメリカほど大きくありません。勤務医の平均が1,338万円に対し、最も高い部類の脳神経外科でも1,480万円程度です。つまり日本では、小児科を選ぶことの経済的なハードルが米国よりずっと低い。「子どもが好きだから」という動機を、収入を理由に諦めなくていい制度だ、というのは日本の医療の良さのひとつだと思っています。
太宰府アカデミーの視点|「子どもが好き」を進路に変えるために
1つめ。大学選びで小児科を意識する必要はありません。科を決めるのは26歳で、初期研修の2年間には小児科のローテーションも含まれます。受験の段階では偏差値・配点・立地といった条件で志望校を選んで大丈夫です。ただし配点の相性だけで決めず、必ず過去問で出題形式を確かめてください。
2つめ。11年の最短ルートは「6年で卒業できて初めて」成立します。ここは大学差が大きく、文部科学省の公表データでは、6年でストレートに医師になれる割合は国公立トップの金沢大学で97.4%、第120回医師国家試験で新卒合格率100%だったのは自治医科大学・北海道大学・京都大学の3校でした。志望校を決める前に大学ごとのストレート卒業率ランキングで候補校の数字を確かめておくことをおすすめします。
3つめ。「少子化だから」で進路を狭めないでほしい。確かに子どもの数は減っています。ただ、専攻医は9年間ほぼ横ばいで、医師数は4番目の規模を保ち、都市部にはシーリングが設定されるほどの層があります。数字は「小児科は要らなくなる」とは言っていません。診療科ごとの比較は19診療科を同じ物差しで並べた記事にまとめてあるので、あわせて読んでみてください。
まとめ|小児科医になるには
- 最短ルートは医学部6年+初期臨床研修2年+専門研修3年=11年。現役合格なら29歳ごろに小児科専門医
- 科を決めるのは26歳。どの大学の医学部からでも同じルートで、受験校を絞る必要はない
- 専攻医は9年で573→543人(−5.2%)とほぼ横ばい。出生数が減り続けるなかで、毎年500人以上が選び続けている
- 医師18,009人は4番目の規模。病院勤務約61%・診療所約39%で、開業という道も現実的にある
- 女性比率38.4%は外科9.7%・整形外科7.6%の4〜5倍。長時間労働率2.8%も外科系より低い
- 日本は科による年収差が小さい。米国は小児科系が年収下位10に7つ入るが、日本で小児科を選ぶ経済的ハードルは低い
「子どもが好きだから」という動機は、それだけで十分に強いと思っています。そこに「9年間ほぼ横ばいで、毎年500人以上が選んでいる科」という事実が加われば、少子化への不安に振り回されずに進路を考えられるはずです。そのために、この記事を書き直しました。
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▶ 小児科は、開業医(個人・無床)の診療科別ランキングで3位(損益差額3,281.2万円・令和6年度)でした。全診療科の横並びは「診療科別 医師の年収ランキング2026|勤務医と開業医で順位が逆転」にまとめています。
本日の記事は以上です。
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◆筆者プロフィール
後藤 登(Goto Noboru)
仕事:総務・広報・完全個別指導コース担当
自己PR:高校・大学ボクシング部。釣りや登山が好き。新卒で当校に勤めて13年目。医学部受験の情報を調べて、ブログやInstagram、Twitterを更新しています。4年前から完全個別指導コースのコース担当。
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