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医学部は少子化で入りやすくなるのか|受験人口は16年で37%減

2026年08月27日 更新

こんにちは、福岡の医学部予備校で総務・広報を担当している後藤です。

本日のブログは、面談で保護者の方からときどき聞かれるのに、僕がずっとちゃんと答えられずにいた質問についてです。「少子化なんだから、下の子が受けるころには医学部も入りやすくなっていますよね?」というものです。

なんとなく「そうかもしれませんね」と答えていました。でも根拠がありませんでした。その材料が、昨日そろいました。文部科学省が2026年8月26日に「令和8年度学校基本調査」の速報値を公表したからです。これに厚生労働省の出生数を重ねると、これから何人が18歳になるのかは、実はもう決まっていることが分かります。

この記事で答えたいのは、次の3つです。

− 少子化で医学部の受験人口はどれくらい減るの?

− じゃあ医学部は入りやすくなるってこと?

− 下の子の代は、上の子の代より有利になるの?

ひとつずつ、国のデータで見ていきます。

 

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結論|受験人口は16年で37%減ります。ただし易しくなるとは限りません

先に答えを書きます。

①受験人口は確実に、しかも急速に減ります。いま18歳になる世代(2008年生まれ)は1,091,156人ですが、2024年に生まれた世代は686,061人です。16年で37.1%減ります。これは予測ではありません。すでに生まれている人数なので、確定した数字です。

②同学年に対する医学部の枠は、相対的に広がります。医学部の定員が今のままなら、同学年の何人に1人ぶんの枠があるかは、2007年に18歳だった世代の164人に1人から、いまの116人に1人を経て、2042年には73人に1人まで動く計算になります。

③それでも「易しくなる」とは限りません。理由は2つあります。定員の側も減る方向で動いていること。そしてもう1つ、同じことが過去にすでに1度起きていて、そのときは難易度がほとんど動かなかったことです。

順番に見ていきます。

 

いま学校にいる人数は、もう決まっています

文部科学省が2026年8月26日に公表した学校基本調査の速報値は、2026年5月1日時点で学校に何人いるかを数えたものです。この子たちが、順番に受験生になります。

いま学校にいる子どもの1学年あたりの人数。高校生約105.8万人、中学生約103.6万人、小学生約95.3万人、2024年生まれ68.6万人
いまの小学生は、いまの高校生より1学年10万5,200人少ない。出典:文部科学省「令和8年度学校基本調査 速報値」(2026年8月26日公表)
区分 1学年あたり 18歳になるのは 医学部の定員9,393人なら
いまの高校生 約1,058,167人 2027〜2029年 約113人に1人
いまの中学生 約1,036,431人 2030〜2032年 約110人に1人
いまの小学生 約952,967人 2033〜2038年 約101人に1人
2024年生まれ 約686,061人 2042年 約73人に1人

1学年あたりに直すと、高校生は約1,058,167人、中学生は約1,036,431人、小学生は約952,967人です。つまりいまの小学生は、いまの高校生より1学年あたり10万5,200人少ない(−9.9%)ということになります。

もうひとつ、この速報値で目を引くのが減り方の順番です。前年度からの減少率は、高等学校が−0.69%、中学校が−1.46%、そして小学校が−2.72%。下の学年ほど減り方が急です。減少はこれから加速するということを、この3つの数字が示しています。小学校も中学校も、在学者数は過去最少です。

なお、高校の在学者数には専攻科・別科が含まれるため、3で割った値は実際の1学年よりわずかに大きく出ます。この記事の「約」は、そのぶんを含んだ書き方です。

出典:文部科学省「令和8年度学校基本統計(学校基本調査の結果)速報値」(2026年8月26日公表・2026年5月1日現在)をもとに太宰府アカデミー集計

 

さらに先まで見えます|2024年に生まれたのは686,061人

小学校より先は、まだ学校にいません。そこは厚生労働省の出生数で見ます。ある年に生まれた人数が分かれば、その18年後に18歳になる人数がおおよそ分かるからです。

この「おおよそ」がどれくらい確かなのかを、先に確かめておきます。いまの高校生1学年(約1,058,167人)を、その世代の出生数(2007年と2008年の平均で1,090,487人)と比べると97.0%でした。3%ほど目減りしますが、規模を測る代理としては十分に使えます。

生まれた年ごとの出生数の推移。1973年209.2万人から2024年68.6万人へ
2024年は統計上初めて70万人を割った。出典:厚生労働省「令和6年人口動態統計月報年計(概数)」
生まれた年 出生数 18歳になる年 1973年
=100
1973年 2,091,983人 1991年 100.0
1989年 1,246,802人 2007年 59.6
1999年 1,177,669人 2017年 56.3
2008年 1,091,156人 2026年 52.2
2016年 977,242人 2034年 46.7
2020年 840,835人 2038年 40.2
2024年 686,061人 2042年 32.8

2024年に生まれたのは686,061人です(概数)。統計上、初めて70万人を割った年でした。100万人を割ったのが2016年ですから、70万人までは8年しかかかっていません。

第2次ベビーブームのピークだった1973年は2,091,983人でした。2024年生まれは、その32.8%です。いまの大学入試の仕組みができた時代と比べると、同じ学年の人数が3分の1になっている、ということになります。

出典:厚生労働省「令和6年(2024)人口動態統計月報年計(概数)」第1表 人口動態総覧の年次推移。2024年は概数(*印)

 

同学年の何人に1人ぶんの定員があるか|164人 → 116人 → 73人

ここまでの2つを、医学部の定員と並べます。「その世代の人数 ÷ 医学部の入学定員」で、同学年の何人に1人ぶんの枠があるかを出しました。過去はその年度の実際の定員、これからは「定員が今のままなら」で置いています。2014年生まれはいまの小学6年生、2020年生まれはいまの6歳です。

同学年の何人に1人ぶんの医学部定員があるか。2007年に18歳の世代は164人に1人、2026年は116人に1人、2042年は73人に1人
定員が今のままなら35年で2.2倍に広がる計算。出典:厚生労働省と文部科学省の公表資料をもとに太宰府アカデミー集計
18歳になる年 その世代の人数 医学部の定員 何人に1人
2007年
1989年生まれ
1,246,802人 7,625人 164人に1人
2017年
1999年生まれ
1,177,669人 9,420人 125人に1人
2026年
2008年生まれ
1,091,156人 9,393人 116人に1人
2032年
2014年生まれ
1,003,609人 9,393人
今のままなら
107人に1人
2038年
2020年生まれ
840,835人 9,393人
今のままなら
90人に1人
2042年
2024年生まれ
686,061人 9,393人
今のままなら
73人に1人

2007年に18歳だった世代は、定員が抑制されていた時期と重なり、同学年164人に1人ぶんの枠しかありませんでした。それがいまは116人に1人、2042年には73人に1人。35年で2.2倍に広がる計算です。

ただし、この数字を「合格率」と読まないでください。3つ理由があります。

1つめ。医学部を受けるのは現役生だけではありません。既卒生も再受験の方も同じ枠を目指します。分母は「その学年の人数」であって「受験者数」ではありません。

2つめ。同学年のうち医学部を目指す人の割合が上がれば、この数字が広がっても競争は緩みません。実際、今回の速報値では18歳人口が減っているのに大学の在学者数は3,000,542人で過去最多です。人口が減っても、進学する人の割合が上がれば総数は増えます。

3つめ。定員の側が動きます。次の章で見ます。

出典:出生数=厚生労働省 人口動態統計/入学定員=厚生労働省「医学部臨時定員について」および文部科学省の公表資料をもとに太宰府アカデミー集計

 

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定員の側も動きます|過去最多は2017年度の9,420人

分母(受験人口)だけを見て難易度を語ることはできません。分子(定員)も動くからです。

医学部の入学定員の推移。2007年度7,625人から2017年度9,420人の過去最多を経て2025年度9,393人
過去最多は2017年度と2019年度の9,420人。出典:厚生労働省「医学部臨時定員について」/文部科学省の公表資料
年度 医学部の入学定員 できごと
2007年度 7,625人 閣議決定で抑制されていた水準
2010年度 8,846人 医師不足を受けた臨時増員のさなか
2017年度 9,420人 過去最多(2019年度も同数)
2020年度 9,330人 初めて減った年
2025年度 9,393人 この記事で基準にした数字
2026年度 6大学で差し引き7人 関西医科−6・杏林−2・順天堂−1・近畿−1/昭和医科+2・帝京+1

医学部の定員は、1982年に国が「増やしすぎた」と判断して絞られ、2008年に「足りない」と判断されて増やされ、いままた「増やしすぎかもしれない」と言われています。2007年度の7,625人から2017年度の9,420人まで、10年で1,795人(23.5%)増えました。そして2020年度に初めて減り、以降はほぼ横ばいです。

2026年度は、2024年度の9,403人を上限として臨時増員の枠組みを1年延長する扱いになりました。実際に総定員が動いたのは6大学だけで、差し引き7人の減です。2027年度(令和9年度)以降の定員は、まだ決まっていません。

そして足元では、臨時定員の削減を受けて募集人員が「調整中」のまま走っている大学があります。2027年度入試では徳島大学・長崎大学・筑波大学・熊本大学・愛媛大学の5校がそうでした。1校で数人の増減でも、倍率には効きます。秋に学生募集要項が出そろった時点で、志望校の募集人員は必ず確認してください。

出典:厚生労働省「医学部臨時定員について」(医師養成過程を通じた医師の偏在対策等に関する検討会 資料)/文部科学省「令和8年度 医学部入学定員増について」

 

それでも易しくなるとは限りません|すでに1度、同じことが起きました

ここがこの記事でいちばんお伝えしたいところです。

「定員が増えて、同時に18歳人口も減る」という期間は、すでに1回ありました。2010年から2026年です。定員は23.5%増え、18歳人口は減り続けました。条件だけ見れば、易しくなってもおかしくない16年間です。

結果はどうだったか。河合塾のボーダー偏差値を、全期間そろっている私立24校に母集団を固定して計算し直すと、平均は2010年の66.15から2026年の65.10へ、16年で1.05しか動いていませんでした。

動いたのは平均ではなく、ばらつきのほうです。同じ24校の標準偏差は2010年の2.39から2026年の3.19へ、16年で33%広がりました。内訳を見ると、2010年から2026年で下がったのが11校、変わらなかったのが11校、上がったのが2校。上位の帯はまったく動かず、下の帯だけが緩んだという形です。

つまり、供給が増えて分母が減っても、「医学部全体が易しくなる」という動き方はしませんでした。起きたのは大学ごとの差が開くことでした。偏差値の推移そのものは別の記事で50年ぶんまとめているので、そちらもあわせて読んでみてください。

出典:河合塾 入試難易予想ランキング表(ボーダー偏差値)をもとに、全年度そろっている私立24校に母集団を固定して太宰府アカデミー集計

 

太宰府アカデミーの視点|「いつ受けるか」より「どこを受けるか」

ここまでの数字を、受験生と保護者の方がどう使えばいいかを書きます。

まず、下のお子さんの代を待つ、という考え方はおすすめしません。枠が相対的に広がるのは事実ですが、それが効いてくるのは10年20年の単位です。しかも過去16年の実績を見る限り、緩んだのは下の帯だけでした。「6年後なら入れるかもしれない」という時間の使い方より、いまの学年でどの大学のどの方式を受けられるかを数えたほうが、はるかに早く結果が出ます。

次に、保護者の方が本当に備えるべきなのは、難易度ではなくお金と年数のほうだと思っています。受験人口が減っても、私立医学部の6年間の学費が下がるという材料は、いまのところ見当たりません。下のお子さんが医学部を目指す可能性があるなら、難易度の見通しより、6年間の学費・地域枠の条件・修学資金の返還免除の仕組みを先に調べておくほうが、実際の選択肢は広がります。

三つめに、この記事の数字を志望校選びに使わないでください。人口の話は「世の中の話」で、受験は「自分の話」です。決めるのは、志望校の配点・科目・日程と、自分の得点の形です。同学年が何人いるかは、その判断を1ミリも助けてくれません。

それでも僕がこの記事を書いたのは、冒頭の「下の子のころには入りやすくなっていますよね」に、根拠のないうなずき方をしたくなかったからです。答えは「枠は広がります。ただし易しくなるとは限りません」でした。少なくとも、なんとなくの相づちよりは誠実な答えだと思っています。

 

まとめ

「医学部は少子化で入りやすくなるのか」への答えをまとめます。

受験人口は確定した未来です。いま18歳の世代は1,091,156人、2042年に18歳になる世代は686,061人。16年で37.1%減ります
減り方は下の学年ほど急です。前年度比は高校−0.69%・中学−1.46%・小学−2.72%。いまの小学生は、いまの高校生より1学年10万5,200人少ない
同学年の何人に1人ぶんの枠かは、164人(2007年)→116人(いま)→73人(2042年)
ただし定員も動きます。過去最多は2017年度の9,420人で、2027年度以降は未定
同じ条件は2010〜2026年にすでにありました。それでも私立24校の平均ボーダー偏差値は1.05しか動かず、代わりにばらつきが33%広がりました

受験人口が減ることは、医学部が易しくなることと同じではありません。少なくとも直近16年は、そういう動き方をしませんでした。

 

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本日の記事は以上です。

最後まで読んでいただきありがとうございます!


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◆筆者プロフィール

後藤 登(Goto Noboru)
仕事:総務・広報・完全個別指導コース担当
自己PR:高校・大学ボクシング部。釣りや登山が好き。新卒で当校に勤めて13年目。医学部受験の情報を調べて、ブログやInstagram、Twitterを更新しています。4年前から完全個別指導コースのコース担当。

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