こんにちは、福岡の医学部予備校で総務・広報を担当している後藤です。
本日のブログは、面談で保護者の方からときどき聞かれるのに、僕がずっとちゃんと答えられずにいた質問についてです。「少子化なんだから、下の子が受けるころには医学部も入りやすくなっていますよね?」というものです。
なんとなく「そうかもしれませんね」と答えていました。でも根拠がありませんでした。その材料が、昨日そろいました。文部科学省が2026年8月26日に「令和8年度学校基本調査」の速報値を公表したからです。これに厚生労働省の出生数を重ねると、これから何人が18歳になるのかは、実はもう決まっていることが分かります。
この記事で答えたいのは、次の3つです。
− 少子化で医学部の受験人口はどれくらい減るの?
− じゃあ医学部は入りやすくなるってこと?
− 下の子の代は、上の子の代より有利になるの?
ひとつずつ、国のデータで見ていきます。
この記事の目次
結論|受験人口は16年で37%減ります。ただし易しくなるとは限りません
先に答えを書きます。
①受験人口は確実に、しかも急速に減ります。いま18歳になる世代(2008年生まれ)は1,091,156人ですが、2024年に生まれた世代は686,061人です。16年で37.1%減ります。これは予測ではありません。すでに生まれている人数なので、確定した数字です。
②同学年に対する医学部の枠は、相対的に広がります。医学部の定員が今のままなら、同学年の何人に1人ぶんの枠があるかは、2007年に18歳だった世代の164人に1人から、いまの116人に1人を経て、2042年には73人に1人まで動く計算になります。
③それでも「易しくなる」とは限りません。理由は2つあります。定員の側も減る方向で動いていること。そしてもう1つ、同じことが過去にすでに1度起きていて、そのときは難易度がほとんど動かなかったことです。
順番に見ていきます。
いま学校にいる人数は、もう決まっています
文部科学省が2026年8月26日に公表した学校基本調査の速報値は、2026年5月1日時点で学校に何人いるかを数えたものです。この子たちが、順番に受験生になります。

| 区分 | 1学年あたり | 18歳になるのは | 医学部の定員9,393人なら |
|---|---|---|---|
| いまの高校生 | 約1,058,167人 | 2027〜2029年 | 約113人に1人 |
| いまの中学生 | 約1,036,431人 | 2030〜2032年 | 約110人に1人 |
| いまの小学生 | 約952,967人 | 2033〜2038年 | 約101人に1人 |
| 2024年生まれ | 約686,061人 | 2042年 | 約73人に1人 |
1学年あたりに直すと、高校生は約1,058,167人、中学生は約1,036,431人、小学生は約952,967人です。つまりいまの小学生は、いまの高校生より1学年あたり10万5,200人少ない(−9.9%)ということになります。
もうひとつ、この速報値で目を引くのが減り方の順番です。前年度からの減少率は、高等学校が−0.69%、中学校が−1.46%、そして小学校が−2.72%。下の学年ほど減り方が急です。減少はこれから加速するということを、この3つの数字が示しています。小学校も中学校も、在学者数は過去最少です。
なお、高校の在学者数には専攻科・別科が含まれるため、3で割った値は実際の1学年よりわずかに大きく出ます。この記事の「約」は、そのぶんを含んだ書き方です。
出典:文部科学省「令和8年度学校基本統計(学校基本調査の結果)速報値」(2026年8月26日公表・2026年5月1日現在)をもとに太宰府アカデミー集計
さらに先まで見えます|2024年に生まれたのは686,061人
小学校より先は、まだ学校にいません。そこは厚生労働省の出生数で見ます。ある年に生まれた人数が分かれば、その18年後に18歳になる人数がおおよそ分かるからです。
この「おおよそ」がどれくらい確かなのかを、先に確かめておきます。いまの高校生1学年(約1,058,167人)を、その世代の出生数(2007年と2008年の平均で1,090,487人)と比べると97.0%でした。3%ほど目減りしますが、規模を測る代理としては十分に使えます。

| 生まれた年 | 出生数 | 18歳になる年 | 1973年 =100 |
|---|---|---|---|
| 1973年 | 2,091,983人 | 1991年 | 100.0 |
| 1989年 | 1,246,802人 | 2007年 | 59.6 |
| 1999年 | 1,177,669人 | 2017年 | 56.3 |
| 2008年 | 1,091,156人 | 2026年 | 52.2 |
| 2016年 | 977,242人 | 2034年 | 46.7 |
| 2020年 | 840,835人 | 2038年 | 40.2 |
| 2024年 | 686,061人 | 2042年 | 32.8 |
2024年に生まれたのは686,061人です(概数)。統計上、初めて70万人を割った年でした。100万人を割ったのが2016年ですから、70万人までは8年しかかかっていません。
第2次ベビーブームのピークだった1973年は2,091,983人でした。2024年生まれは、その32.8%です。いまの大学入試の仕組みができた時代と比べると、同じ学年の人数が3分の1になっている、ということになります。
出典:厚生労働省「令和6年(2024)人口動態統計月報年計(概数)」第1表 人口動態総覧の年次推移。2024年は概数(*印)
同学年の何人に1人ぶんの定員があるか|164人 → 116人 → 73人
ここまでの2つを、医学部の定員と並べます。「その世代の人数 ÷ 医学部の入学定員」で、同学年の何人に1人ぶんの枠があるかを出しました。過去はその年度の実際の定員、これからは「定員が今のままなら」で置いています。2014年生まれはいまの小学6年生、2020年生まれはいまの6歳です。

| 18歳になる年 | その世代の人数 | 医学部の定員 | 何人に1人 |
|---|---|---|---|
| 2007年 1989年生まれ |
1,246,802人 | 7,625人 | 164人に1人 |
| 2017年 1999年生まれ |
1,177,669人 | 9,420人 | 125人に1人 |
| 2026年 2008年生まれ |
1,091,156人 | 9,393人 | 116人に1人 |
| 2032年 2014年生まれ |
1,003,609人 | 9,393人 今のままなら |
107人に1人 |
| 2038年 2020年生まれ |
840,835人 | 9,393人 今のままなら |
90人に1人 |
| 2042年 2024年生まれ |
686,061人 | 9,393人 今のままなら |
73人に1人 |
2007年に18歳だった世代は、定員が抑制されていた時期と重なり、同学年164人に1人ぶんの枠しかありませんでした。それがいまは116人に1人、2042年には73人に1人。35年で2.2倍に広がる計算です。
ただし、この数字を「合格率」と読まないでください。3つ理由があります。
1つめ。医学部を受けるのは現役生だけではありません。既卒生も再受験の方も同じ枠を目指します。分母は「その学年の人数」であって「受験者数」ではありません。
2つめ。同学年のうち医学部を目指す人の割合が上がれば、この数字が広がっても競争は緩みません。実際、今回の速報値では18歳人口が減っているのに大学の在学者数は3,000,542人で過去最多です。人口が減っても、進学する人の割合が上がれば総数は増えます。
3つめ。定員の側が動きます。次の章で見ます。
出典:出生数=厚生労働省 人口動態統計/入学定員=厚生労働省「医学部臨時定員について」および文部科学省の公表資料をもとに太宰府アカデミー集計
定員の側も動きます|過去最多は2017年度の9,420人
分母(受験人口)だけを見て難易度を語ることはできません。分子(定員)も動くからです。

| 年度 | 医学部の入学定員 | できごと |
|---|---|---|
| 2007年度 | 7,625人 | 閣議決定で抑制されていた水準 |
| 2010年度 | 8,846人 | 医師不足を受けた臨時増員のさなか |
| 2017年度 | 9,420人 | 過去最多(2019年度も同数) |
| 2020年度 | 9,330人 | 初めて減った年 |
| 2025年度 | 9,393人 | この記事で基準にした数字 |
| 2026年度 | 6大学で差し引き7人 | 関西医科−6・杏林−2・順天堂−1・近畿−1/昭和医科+2・帝京+1 |
医学部の定員は、1982年に国が「増やしすぎた」と判断して絞られ、2008年に「足りない」と判断されて増やされ、いままた「増やしすぎかもしれない」と言われています。2007年度の7,625人から2017年度の9,420人まで、10年で1,795人(23.5%)増えました。そして2020年度に初めて減り、以降はほぼ横ばいです。
2026年度は、2024年度の9,403人を上限として臨時増員の枠組みを1年延長する扱いになりました。実際に総定員が動いたのは6大学だけで、差し引き7人の減です。2027年度(令和9年度)以降の定員は、まだ決まっていません。
そして足元では、臨時定員の削減を受けて募集人員が「調整中」のまま走っている大学があります。2027年度入試では徳島大学・長崎大学・筑波大学・熊本大学・愛媛大学の5校がそうでした。1校で数人の増減でも、倍率には効きます。秋に学生募集要項が出そろった時点で、志望校の募集人員は必ず確認してください。
出典:厚生労働省「医学部臨時定員について」(医師養成過程を通じた医師の偏在対策等に関する検討会 資料)/文部科学省「令和8年度 医学部入学定員増について」
それでも易しくなるとは限りません|すでに1度、同じことが起きました
ここがこの記事でいちばんお伝えしたいところです。
「定員が増えて、同時に18歳人口も減る」という期間は、すでに1回ありました。2010年から2026年です。定員は23.5%増え、18歳人口は減り続けました。条件だけ見れば、易しくなってもおかしくない16年間です。
結果はどうだったか。河合塾のボーダー偏差値を、全期間そろっている私立24校に母集団を固定して計算し直すと、平均は2010年の66.15から2026年の65.10へ、16年で1.05しか動いていませんでした。
動いたのは平均ではなく、ばらつきのほうです。同じ24校の標準偏差は2010年の2.39から2026年の3.19へ、16年で33%広がりました。内訳を見ると、2010年から2026年で下がったのが11校、変わらなかったのが11校、上がったのが2校。上位の帯はまったく動かず、下の帯だけが緩んだという形です。
つまり、供給が増えて分母が減っても、「医学部全体が易しくなる」という動き方はしませんでした。起きたのは大学ごとの差が開くことでした。偏差値の推移そのものは別の記事で50年ぶんまとめているので、そちらもあわせて読んでみてください。
出典:河合塾 入試難易予想ランキング表(ボーダー偏差値)をもとに、全年度そろっている私立24校に母集団を固定して太宰府アカデミー集計
太宰府アカデミーの視点|「いつ受けるか」より「どこを受けるか」
ここまでの数字を、受験生と保護者の方がどう使えばいいかを書きます。
まず、下のお子さんの代を待つ、という考え方はおすすめしません。枠が相対的に広がるのは事実ですが、それが効いてくるのは10年20年の単位です。しかも過去16年の実績を見る限り、緩んだのは下の帯だけでした。「6年後なら入れるかもしれない」という時間の使い方より、いまの学年でどの大学のどの方式を受けられるかを数えたほうが、はるかに早く結果が出ます。
次に、保護者の方が本当に備えるべきなのは、難易度ではなくお金と年数のほうだと思っています。受験人口が減っても、私立医学部の6年間の学費が下がるという材料は、いまのところ見当たりません。下のお子さんが医学部を目指す可能性があるなら、難易度の見通しより、6年間の学費・地域枠の条件・修学資金の返還免除の仕組みを先に調べておくほうが、実際の選択肢は広がります。
三つめに、この記事の数字を志望校選びに使わないでください。人口の話は「世の中の話」で、受験は「自分の話」です。決めるのは、志望校の配点・科目・日程と、自分の得点の形です。同学年が何人いるかは、その判断を1ミリも助けてくれません。
それでも僕がこの記事を書いたのは、冒頭の「下の子のころには入りやすくなっていますよね」に、根拠のないうなずき方をしたくなかったからです。答えは「枠は広がります。ただし易しくなるとは限りません」でした。少なくとも、なんとなくの相づちよりは誠実な答えだと思っています。
まとめ
「医学部は少子化で入りやすくなるのか」への答えをまとめます。
− 受験人口は確定した未来です。いま18歳の世代は1,091,156人、2042年に18歳になる世代は686,061人。16年で37.1%減ります
− 減り方は下の学年ほど急です。前年度比は高校−0.69%・中学−1.46%・小学−2.72%。いまの小学生は、いまの高校生より1学年10万5,200人少ない
− 同学年の何人に1人ぶんの枠かは、164人(2007年)→116人(いま)→73人(2042年)
− ただし定員も動きます。過去最多は2017年度の9,420人で、2027年度以降は未定
− 同じ条件は2010〜2026年にすでにありました。それでも私立24校の平均ボーダー偏差値は1.05しか動かず、代わりにばらつきが33%広がりました
受験人口が減ることは、医学部が易しくなることと同じではありません。少なくとも直近16年は、そういう動き方をしませんでした。
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本日の記事は以上です。
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後藤 登(Goto Noboru)
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