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自治医科大学の義務年限9年|2,300万円を返す条件

2026年08月28日 更新

こんにちは、福岡の医学部予備校で総務・広報を担当している後藤です。

本日のブログは、面談で年に何度も話題に出るのに、僕がそのたびに言葉に詰まっていた大学の話です。自治医科大学、いわゆる自治医大です。

話題に出るときの流れは、だいたい決まっています。私立の学費の一覧をお見せしたあと、保護者の方が少し黙って、こう言われるのです。「自治医大なら、お金はかからないんですよね」。

そのとおりです。かかりません。でも僕は、そこで「はい」と答え切れたことが一度もありませんでした。安いから、という理由だけで決めていい話ではない気がしていたからです。かといって「9年しばられますよ」と言うのも違う。その9年が何をする9年なのかを、僕自身が説明できるほど分かっていなかったからです。

ちょうどいま、その「9年」をめぐって裁判が動いています。自治医科大学を2022年に卒業した医師が、修学資金など約3,766万円の一括返還を求められたのは違憲・違法だとして、大学と愛知県を相手に東京地方裁判所で争っており、2026年8月26日に7回目の口頭弁論が開かれたばかりです。この機会に、募集要項と国の統計を最初から読み直しました。

この記事で答えたいのは、次の3つです。

− 自治医大って、本当に学費がタダなの?

− 卒業後の9年って、実際どこで何をするの?

− もし続けられなくなったら、いくら返すことになるの?

先に断っておきます。これは制度を責める記事でも、辞めた人を責める記事でもありません。どちらの言い分にも事実の裏づけがあり、だからこそ裁判になっています。僕が書きたいのは、出願する前に家族で一度読んでおいたほうがいい契約の中身と、その契約がなぜ生まれたのかという背景です。

 

 

結論|2,300万円が貸与され、9年の勤務で返さなくてよくなります

先に答えを書きます。

①学費は「無料」ではなく「全額貸与」です。自治医科大学は入学者全員に、学生納付金の相当額と入学時学業準備費を貸与します。6年間の合計は2,300万円。入学時に入学金や授業料を用意する必要はありません。

②9年勤めると、返さなくてよくなります。卒業後ただちに、出願した都道府県の知事の意見を聴いて大学が指定する公立病院等に医師として勤務し、その期間が貸与を受けた期間の1.5倍(6年貸与なら9年)に達したときに返還が免除されます。しかもその9年の2分の1は、知事が指定するへき地等での勤務と決められています。

③途中でやめると、勤めた分は差し引かれません。募集要項には「この条件を成就しなかった場合には、貸与金に所定の利率を乗じて得た額を加えて一括返還する」と書かれています。何年働いたかに応じて減額する、という定めは要項にありません。ここがいま争われている点です。

この3つだけでも判断はできます。ただ、それだと「厳しい制度だ」で終わってしまいます。なぜ9年なのかから順に見ていきます。

 

なぜ9年なのか|医療機関のない地区が、いまも557あります

自治医科大学は、1972年に全国の都道府県が共同で設立した大学です。大学概要には設立の趣旨がこう書かれています。「医療に恵まれないへき地等における医療の確保及び向上と地域住民の福祉の増進を図るため」。掲げているミッションは「医療の谷間に灯をともす」です。

きれいな言葉に聞こえるかもしれません。ではその「谷間」は、いまどれくらいあるのか。国が3年に1度、数えています。

無医地区数の推移。1984年1276地区から2022年557地区へ。無医地区人口は122206人
出典:厚生労働省「令和4年度無医地区等及び無歯科医地区等調査」(2023年7月28日公表・令和4年10月末現在)
調査年 無医地区数 無医地区の人口 前回からの増減
1984年 1,276地区 319,796人
1994年 997地区 236,193人 -279地区
2004年 787地区 164,680人 -210地区
2014年 637地区 124,122人 -150地区
2019年 590地区 126,851人 -47地区
2022年 557地区 122,206人 -33地区

厚生労働省の「無医地区等調査」は、医療機関がなく、中心からおおむね半径4kmの区域内に50人以上が住んでいて、かつ容易に医療機関を利用できない地区を無医地区と定義して数えています。この40年で1,276地区から557地区へ、56.3%減りました。自治医大が開学したころに比べれば、状況はたしかに良くなっています。

それでもいまなお557地区に、122,206人が暮らしています。半径4kmの中に医療機関がない、という状態でです。

そして分布に大きな偏りがあります。多い順に北海道64、広島53、大分38、島根28、熊本26。一方で山形・埼玉・千葉・東京・神奈川・大阪・佐賀の7都府県はゼロです。九州・沖縄の8県だけで116地区あり、これは全国の20.8%にあたります。福岡県にも17地区あります。都会に住んでいると実感しにくい数字ですが、同じ県の中に、車で1時間かけないと医師に会えない場所があるということです。

「9年のうち半分をへき地等で」という条件は、ここから来ています。制度の厳しさを語る前に、この557という数字を置いておきたいと思いました。

出典:厚生労働省「令和4年度無医地区等及び無歯科医地区等調査」(2023年7月28日公表・令和4年10月末現在)/自治医科大学「大学概要2025-26」

 

貸与されるのは2,300万円|入学時に用意するお金はありません

では、お金の話です。私立大学の学費としては、これは相当に安い部類に入ります。

自治医科大学の修学資金2300万円の内訳。授業料1080万円、施設設備費780万円、実験実習費300万円、入学料100万円、入学時学業準備費40万円
出典:自治医科大学「令和9年度 医学部入学者募集要項」(2026年7月3日公表)p.21
区分 入学(1年次) 2〜6年次(各年) 6年間の合計
授業料 1,800,000円 1,800,000円 10,800,000円
施設設備費 1,300,000円 1,300,000円 7,800,000円
実験実習費 500,000円 500,000円 3,000,000円
入学料 1,000,000円 1,000,000円
入学時学業準備費 400,000円 400,000円
合計 5,000,000円 3,600,000円 23,000,000円

6年間の学生納付金が2,260万円、これに入学時学業準備費40万円を足して2,300万円。私立医学部31校の学費は1,850万〜4,550万円ですから、納付金だけを見ても私立の中では安いほうです。それが全額貸与されます。

大事なのは、この2,300万円が現金で振り込まれるわけではないことです。募集要項には「現金による貸与及び納入は行わず、書面によるものとなります」とあります。大学が貸して、そのまま大学に納める形なので、学費については家計から出ていくお金が発生しません。入学時学業準備費の40万円だけは、教科書代として本人の口座に振り込まれます。

生活費については別枠の奨学資金貸与制度があります。申請すれば無条件で月5万円、選考を経て最高月15万円まで無利息で借りられます。ただしこちらは返還免除がありません。卒業後9年以内に半年賦で返します。「自治医大は全部タダ」と聞いていると、ここで話が食い違います。全寮制なので寮費や食費もかかりますから、「1円もかからない」という理解で入学の話を進めないほうがいいと思います。

出典:自治医科大学「令和9年度 医学部入学者募集要項」(2026年7月3日公表)p.21/同「修学資金・奨学資金」

 

9年の中身|2年+3年+2年+2年。半分はへき地等の勤務です

次に、その9年です。「9年間ずっとへき地の診療所にいる」と思われがちですが、そうではありません。大学が公表している基本パターンはこうなっています。

自治医科大学の卒業後9年の内訳。臨床研修2年、へき地等勤務3年、後期研修2年、再び地域医療2年の基本パターン
出典:自治医科大学「本学医学部の特色」および令和9年度医学部入学者募集要項p.21をもとに太宰府アカデミー作成
時期 年数 どこで何をするか
1〜2年目 2年 出身都道府県の臨床研修指定病院や大学附属病院で臨床研修
3〜5年目 3年 へき地などの病院・診療所・保健所に勤務
6〜7年目 2年 後期研修。臨床研修指定病院や自治医科大学附属病院など
8〜9年目 2年 改めて出身都道府県の医療・保健機関などに勤務
合計 9年 うち2分の1は知事が指定するへき地等の指定公立病院等

最初の2年は臨床研修です。ここは他大学の卒業生と同じで、出身都道府県の臨床研修指定病院や大学附属病院で行います。次の3年が、いわゆるへき地等での勤務。そのあと2年の後期研修で専門性を積み、最後の2年でもう一度地域に戻ります。

ここで見落とされやすいのが、要項に書かれている「2分の1」の条件です。9年のうち2分の1にあたる期間は、知事が指定するへき地等の指定公立病院等で勤務すると明記されています。上の基本パターンでいうと3年目から5年目がそこに当たりますが、実際の配置は都道府県ごとのキャリア形成プログラムで決まります。同じ自治医大の卒業生でも、県が違えば回り方が違うということです。

そして、この9年は臨床研修の2年を含んだ9年です。地域枠の中には研修2年を義務年限に算入しない制度もあり、その場合は実質11年や12年になります。自治医大の9年は研修込みなので、その意味では標準的な設計です。

もうひとつ、あまり書かれていないことがあります。この期間の多くは都道府県の職員としての勤務になります。地方公務員法により、他の病院でのアルバイトはできません。同じ年次の医師が当直のアルバイトで収入を補っている時期に、それができないということです。この点は、訴訟の中でも原告側が指摘しています。

出典:自治医科大学「本学医学部の特色」および「令和9年度 医学部入学者募集要項」p.21をもとに太宰府アカデミー作成

 

9年を終えた人は、いまどこにいるのか|卒業生4,978名の行き先

ここが、僕がいちばん知りたかったところです。9年が明けたあと、その人たちはどうしているのか。「9年が終わったら全員が都会へ出ていく」のなら、この制度は続かないはずです。

大学が毎年、卒業生の勤務動向を公表しています。

自治医科大学の卒業生4978名の勤務動向。病院2412名、開業538名、診療所523名、大学435名、その他383名
出典:自治医科大学「大学概要2025-26」11ページ(令和6年7月1日現在)
勤務先 人数 うち義務年限終了者 全体に占める割合
病院 2,412名 1,901名 48.5%
開業 538名 538名 10.8%
診療所 523名 422名 10.5%
大学 435名 425名 8.7%
その他 383名 211名 7.7%
臨床研修 245名 ―(義務年限中) 4.9%
後期研修 200名 ―(義務年限中) 4.0%
行政 113名 78名 2.3%
研究所・老健施設等 89名 88名 1.8%
大学院・留学等 40名 39名 0.8%
合計 4,978名 3,702名 100.0%

開学から2025年3月までの卒業者は5,113名。そのうち勤務動向が把握されている4,978名の内訳が上の表です。括弧の中は、すでに義務年限を終えた人の数で、合計3,702名にのぼります。

目を引くのは開業の行です。538名のうち538名、つまり全員が義務年限を終えた人でした。9年を勤め上げたあとに、自分で診療所を開いた人が538名いる、ということです。病院1,901名、診療所422名、大学425名を合わせると、義務年限を終えた3,702名のうち3,286名(88.8%)が、いまも臨床の現場にいます。

大学は取材に対し、返還が免除された卒業生は3,900名以上にのぼり、「返還が免除された後も約7割の卒業生が出身都道府県に留まっている」と説明しています。9年が終わってもなお7割がその県に残るのなら、この制度は「9年しばる制度」というより「9年かけて地元に医師を根づかせる制度」に近い、という見方も成り立ちます。

ただ、ここで書き添えておきたいことがあります。この数字は、9年を勤め上げた人たちの数字です。勤め上げられなかった人が何人いて、その人たちがどうなったのかは、公表されていません。平均は制度を肯定しますが、平均から外れた人に何が起きるかは、平均には表れません。次の章はその話です。

出典:自治医科大学「大学概要2025-26」11ページ(令和6年7月1日現在)/卒業者数は同5ページ/返還免除者数と定着率は弁護士JPニュースの取材に対する大学のコメント(2026年8月)

 

途中でやめたらどうなるか|勤めた分は差し引かれません

学費が実質0円になるルートは、自治医科大学のほかにもあります。産業医科大学、防衛医科大学校、それに都道府県の地域枠。入口はどれも「お金は要りません、その代わり9年働いてください」で同じに見えます。ところが、途中でやめたときの計算方法がまったく違います。

学費が実質0円になる4つの制度で、義務年限の途中でやめたときに勤務期間分が差し引かれるかどうかの比較
出典:自治医科大学 令和9年度募集要項/産業医学振興財団「修学資金貸与制度の概要(医学部)」/防衛省「自衛隊法施行令の一部を改正する政令案要綱」/山梨県 2026年7月7日発表資料
制度(義務年限はいずれも9年) 入学時の負担 途中でやめたときの扱い 勤めた分の減額
自治医科大学
(うち1/2はへき地等)
0円
2,300万円を貸与
貸与金に所定の利率を加えて一括返還 定めなし
産業医科大学
(うち産業医2年以上)
6年で約1,130万円
1,919万円を貸与
貸与額と貸与利息の合計を一括返還 定めなし
防衛医科大学校 0円
学生手当 月161,000円
償還金(令和7年3月卒業生の基礎算定額4,421万円) 在職期間に応じて算定
山梨県の地域枠 修学資金936万円を貸与 違約金842万4,200円は2026年1月に無効と判断され、県が制度を改正 勤務期間に応じて減額(新制度)

防衛医科大学校の償還金は、自衛隊法にもとづき卒業後の在職期間に応じて算定されます。だから公式サイトの書き方も「令和7年3月卒業生の償還最高額 4,421万円」となっていて、働いた年数が増えれば額は下がります。

いっぽう自治医科大学と産業医科大学は、要項・制度概要のどちらにも勤務した期間に応じて減額するという定めがありません。産業医科大学は「貸与を受けた全額を一括返還」、自治医科大学は「貸与金に所定の利率を乗じて得た額を加えて一括返還」です。

これは制度の良し悪しの話ではありません。自治医科大学は全国の都道府県が共同で設立した大学で、各県が2〜3名という枠でしか採れない以上、「9年に届かなければ、その県は1人分の医師を失う」という考え方には筋が通ります。ただ、受験生と保護者の側から見ると、8年勤めても1年分が控除されない設計かどうかは、出願前に知っておくべき情報だと思います。

なお、都道府県の地域枠では設計が動き始めています。山梨県は、地域枠から離脱した医師に修学資金936万円と利息のほかに最大842万4,200円の違約金を課していましたが、2026年1月20日に甲府地方裁判所がこの違約金条項を消費者契約法9条1項1号・10条に反して無効と判断し、使用の差止めを命じました。県は控訴したものの、違約金によらない制度へ改める条例改正が2026年7月6日に議決されたことを受け、7月7日に控訴を取り下げています。新しい制度では、途中で離脱した場合に勤務期間に応じて返還額を減らす仕組みが入る予定です。「働いた分は差し引く」という考え方が、制度の側に入り始めているということです。

出典:自治医科大学「令和9年度 医学部入学者募集要項」p.21/産業医学振興財団「修学資金貸与制度の概要(医学部)」/防衛省「自衛隊法施行令の一部を改正する政令案要綱」(2025年8月14日)/消費者機構日本(2026年1月27日公表)/山梨県「違約金差止訴訟の控訴取り下げについて」(2026年7月7日)

 

いま裁判で何が争われているのか|双方の言い分を並べます

ここまでの制度の話が、いま実際に法廷で問われています。この訴訟は係争中で、判決は出ていません。どちらかの側に立たずに、事実と、双方の主張を同じ分量で書きます。

何が起きたか。原告は、2015年に自治医科大学へ入学し2022年に卒業した医師です。愛知県の職員兼研修医として勤務していました。原告側の説明では、父親が失職して母親と自閉症の弟を扶養する必要が生じ、さらに妻の妊娠で扶養の負担が増えたため、勤務先が毎年変わりうる指定公立病院等で常勤を続けることが難しくなったとされています。2023年5月に退職を申し出て、2024年3月末に退職。大学からは修学資金2,660万円と損害金1,106万円の計3,766万円の一括返還を求められました。2025年3月5日、大学と愛知県を相手取り、返還債務がないことの確認などを求めて東京地方裁判所に提訴しています。

原告側の主張。柱は4つです。憲法22条1項(居住・移転の自由)に反すること。労働基準法16条(賠償予定の禁止)が適用されるべきだということ。消費者契約法9条1項1号について、年10%の損害金と年15%の遅延損害金が「平均的な損害の額」を超えているのではないかということ。そして、返還免除の条件が成就するのを大学・県の側が妨げたのではないかということです。会見では、防衛医科大学校や国家公務員の留学費用償還制度にあるような勤務期間に応じた減額の仕組みが自治医大にはないこと、地方公務員のためアルバイトができず収入が抑えられることを挙げ、「契約書に書いてあっても、法律に照らせば無効なものはある」と述べています。

大学側の主張。大学は、労働基準法16条について「雇用主は県であり、貸与主体の大学とは別個の主体だ」として同条は及ばないという立場です。消費者契約法についても「10%は利息であり損害金ではない」としています。そのうえで、弁護士JPニュースの取材に対し次のようにコメントしています。経済的事情で進学の機会を失うことがないよう広く門戸を開き、修学資金貸与制度によって入学金・授業料等が実質不要となる制度を実施していること。これまでに3,900名以上が要件を満たして返還を免除され、免除後も約7割が出身都道府県に留まっていること。制度の内容はあらかじめ受験生に公表しており、受験も入学も本人の判断に委ねられていること。そして「返還請求は、契約に基づく正当な対応である」ということです。

2026年8月26日に第7回口頭弁論が開かれ、次回期日は11月11日です。2026年8月時点で係争中であり、判決は出ていません。

ひとつ、混同しやすいので書き添えます。自治医科大学の修学資金と、都道府県の地域枠の修学資金は別の制度です。前者は大学と学生の貸与契約、後者は県の条例・要綱にもとづく貸与で、契約の当事者が違います。この訴訟の結論が、そのまま全国の地域枠に当てはまるとは限りません。

受験生と保護者にとって意味があるのは、どちらが勝つかではありません。入学手続きのときに結ぶ「修学資金貸与契約書」が、9年先まで効き続ける契約だという事実のほうです。学生が未成年なら、親権者が連帯保証人になります。そして原告が会見で挙げた事情——親の失職、家族の介護、配偶者の妊娠——は、どれも特別なことではありません。20代後半から30代前半という時期は、そういうことが起きても不思議のない時期です。

「そんなことは分かって入ったはずだ」という声もあります。実際、原告もその指摘は受け止めたうえで、地域医療に従事する大学だと理解して入学したことは認めています。そのうえで、条件の細かさまでは知らされていなかったと述べている。この食い違いこそが、いま法廷で確かめられているところです。

 

入試のしくみ|1つの都道府県にしか出願できません

制度がわかったところで、入試です。自治医科大学の入試は他大学とかなり違います。

まず選抜が都道府県単位で行われます。2027年度(令和9年度)の募集人員は100名で、全ての都道府県から2名または3名ずつ選ばれます(このほかに栃木県地域枠3名を含む23名の臨時定員増を認可申請中で、決まれば123名になります)。そして出願できるのは1つの都道府県だけ。複数の県に出願すると、その年の受験資格を失います。

出願先は自分では自由に選べません。出身高校の所在地、3年以上住んでいる現住所地、または戸籍を同じくする父母の現住所地のいずれか1つです。そして選んだその県が、卒業後に9年間勤務する県になります。受験校を選ぶ時点で、30代前半までの勤務地がおおむね決まるという意味でもあります。

自治医科大学の2027年度一般選抜の日程。出願1月4日から20日、1次試験1月25日と26日、2次試験2月3日、合格発表2月12日
出典:自治医科大学「令和9年度 医学部入学者募集要項」(2026年7月3日公表)p.10〜11・p.19
日程 2027年度(令和9年度) 内容
出願 2027年1月4日〜1月20日 17時必着。出願できるのは1つの都道府県のみ
1次 学力試験 1月25日 数学25点・理科2科目50点・外国語25点(マークシート)
1次 面接試験 1月26日 学力試験の及第者のみ。会場は都道府県が指定
1次 合格発表 1月29日 13時 各都道府県が指定した場所で発表
2次試験 2月3日 記述式 数学12.5点・外国語12.5点/集団面接約20分・個人面接
2次 合格発表 2月12日 17時 補欠者も同時に発表
入学手続 2月25日・3月12日 出願した都道府県庁で本人が手続き

1次試験は各都道府県の会場で、2次試験は栃木県下野市の大学で行われます。1次の学力試験は数学25点・理科2科目50点・外国語25点の計100点で、翌日の面接は学力の及第者だけ。2次は記述式の数学と外国語が各12.5点、これに集団面接約20分と個人面接が加わります。配点の総量が小さく、面接の比重が読み取りにくい入試です。入学検定料は20,000円です。

年齢の制限は要項に書かれておらず、出願資格には「社会経験をした者」も挙がっています。浪人や再受験でも受けられますが、出願できる都道府県の選び方が細かく決まっているので、要項の2〜3ページを必ず確認してください。

直近の令和8年度入試では、一般選抜に1,799名が志願して1,731名が受験し、合格は115名。総合型選抜7名、学校推薦型選抜1名を合わせた合格者は123名で、受験者1,788名に対する実質倍率は14.54倍でした。入学後の数字も触れておくと、2026年の第120回医師国家試験は116名が受験して116名が合格、合格率100.0%で全国1位です。入るのも、6年間も、楽な道ではありません。

出典:自治医科大学「令和9年度 医学部入学者募集要項」p.2・p.10〜11・p.19/同「入試データ」(令和8年度)/同「医師国家試験合格率」(令和8年3月16日現在)

 

太宰府アカデミーの視点|出願する前に確かめておきたい3つ

ここからは、受験校として検討するときに見ておきたい点を3つ挙げます。

1つめ。出願する都道府県のキャリア形成プログラムを、先に読むこと。9年をどう回るかを決めるのは大学ではなく、出願した都道府県です。募集要項の巻末には47都道府県すべての担当課とキャリア形成プログラムの参照先が一覧で載っています。何年目にどこへ行くのか、専門医の取得にどこまで配慮があるのかは県によって書きぶりが違います。同じ「9年」という言葉でも中身が違うので、自分が出す県のものを読んでください。分からないことは県の担当課に電話で聞けます。番号も要項に載っています。

2つめ。「予定どおりにいかなかったとき」を、先に一度だけ話しておくこと。20代後半から30代前半にかけての9年間です。結婚、出産、親の介護と重なる可能性のある時期でもあります。この期間はアルバイトができず、勤務地も自分では選べません。縁起でもない話に思えるかもしれませんが、そこを話しておくことは、この大学を避けるためではなく、選ぶための作業です。話したうえで納得できるなら、9年は医師としての土台をつくる9年になります。実際、9年を終えた3,702名のうち88.8%が、いまも臨床の現場にいます。

3つめ。学力面では、1次の科目バランスを確かめること。1次のマークシートは数学25点・理科50点・外国語25点で、理科の比重が半分です。ただし配点が有利かどうかだけで受験校を決めないでください。出題の形式や時間配分との相性は、必ず過去問で確かめる必要があります。大学は令和6年度から令和8年度までの試験問題と解答を公式サイトで公開していますから、夏のうちに1年分だけでも通して解いてみると、相性が体感できます。

数字は出しました。どう読むかは、ご家庭で決めていただくところだと思っています。

 

まとめ|自治医科大学の義務年限で押さえる5点

最後に、この記事の要点を5つにまとめます。

・自治医科大学の修学資金は6年で2,300万円(学生納付金2,260万円+入学時学業準備費40万円)。入学者全員に貸与され、入学時に納めるお金はありません。ただし生活費の奨学資金には返還免除がありません

・返還が免除されるのは、卒業後ただちに指定公立病院等に勤務し、その期間が貸与期間の1.5倍=9年に達したとき。うち2分の1はへき地等での勤務です

・その背景には、医療機関のない無医地区が全国に557地区・122,206人あるという事実があります。九州・沖縄だけで116地区、福岡県にも17地区あります

・9年を終えた卒業生は3,702名。うち3,286名(88.8%)がいまも臨床の現場にいて、開業した538名は全員が義務年限を終えた人です。大学は免除後も約7割が出身県に留まると説明しています

・いっぽう途中でやめた場合は貸与金に所定の利率を加えて一括返還で、勤務した期間に応じた減額の定めは要項にありません。在職期間に応じて算定される防衛医科大学校とはここが違い、いま東京地裁で争われています

2027年度の募集人員は100名(臨時定員増23名を申請中)。全都道府県から2〜3名ずつで、出願できるのは1県のみ。一般選抜は1次が2027年1月25日・26日、2次が2月3日です。令和8年度は1,788名が受験して123名が合格し、実質倍率は14.54倍でした。

冒頭に書いた「自治医大なら、お金はかからないんですよね」という質問に、僕はこれからこう答えようと思います。かかりません、ただし2,300万円は借りている状態です、そして返さなくてよくなるのは9年後です、と。そのうえで、557という数字と、9年後に3,286名が現場に残っているという数字の両方をお見せします。制度を怖がらせるためでも、美化するためでもなく、両方を見てから決めてほしいからです。

出願はまだ先です。まずは、出願する都道府県のキャリア形成プログラムを1本、今日のうちに開いてみてください。9年の中身は、そこにいちばん具体的に書いてあります。

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本日の記事は以上です。
最後まで読んでいただきありがとうございます!


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当校は福岡県にある日本で唯一の全寮制医学部受験予備校です。

【当校の特徴】
定員30名|21年間の累計医学部医学科合格実績518名(のべ数)|田舎の全寮制|全国各地から入学(2026年度生は全国20の都道府県より入学)|異次元の生活サポート|食事が美味しい(土日祝日問わず3食提供)|講師との距離が近い|プロ講師の質問対応が充実|完全個別指導コースあり|選抜国公立コースあり|専用筋トレジムあり|同じ夢を持った仲間と1年間切磋琢磨し、医学部合格を目指す

【校風】アットホームな大家族予備校

◆筆者プロフィール

後藤 登(Goto Noboru)
仕事:総務・広報・完全個別指導コース担当
自己PR:高校・大学ボクシング部。釣りや登山が好き。新卒で当校に勤めて13年目。医学部受験の情報を調べて、ブログやInstagram、Twitterを更新しています。4年前から完全個別指導コースのコース担当。

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