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医学部の推薦・総合型の倍率は一般の半分|59方式|2027年度入試

2026年10月08日 更新

こんにちは、福岡の医学部予備校で総務/広報を担当している後藤です。

本日のブログは、うちのサイトにずっと足りていなかった数字の話です。医学部の年内入試(学校推薦型選抜と総合型選抜)については、締切のカレンダーも試験で何が課されるかも、すでに記事にしてあります。ところが「で、その入試は何倍なのか」だけが、うちのサイトのどこにもまとまっていませんでした。

実際、うちのサイトに「◯◯大学 推薦 倍率」「◯◯大学 総合型選抜」と検索して来る人は毎月いるのに、その人たちが見ているのは各大学のページに散らばった数字です。1本にまとまっていないので、高いのか低いのかを比べられません。

そこで、私立医学部31校が公表している2026年度(令和8年度)の入学者選抜結果を1校ずつ開いて、年内入試の受験者数と合格者数を拾い直しました。皆さんが気になっているのは、だいたいこのあたりだと思います。

− 推薦や総合型って、一般入試より入りやすいんでしょ?

− どうせ指定校とか、附属校の子だけが受かるやつでしょ?

− 倍率が低い大学を選べば、それだけ受かりやすいんじゃないの?

一つずつ、数字で確かめていきます!

 

結論|年内入試の実質倍率は中央値5.0倍。一般選抜のおよそ半分です

先に答えを書きます。私立医学部31校のうち、この記事で倍率を算出できた24校・59方式を数えると、実質倍率は1.0倍から22.8倍で、中央値は5.0倍でした。同じ2026年度の一般選抜(28校)は5.5倍から44.9倍・中央値11.8倍ですから、年内入試のほうがはっきり低い、というのが全体の答えになります。

ここでいう実質倍率は「受験者数÷合格者数」です。募集要項やパンフレットに載っている「倍率」は志願者数÷募集人員のことが多く、こちらは100倍を超えることもあります。同じ言葉で別のものを数えているので、この記事では実質倍率だけを使います。

下の表は、そのうち誰でも出願できる枠(公募制の推薦と、公募の総合型)で、受験者が10名以上いた43方式を倍率の低い順に並べたものです。指定校制や附属校制の枠は、通っている高校で出願できるかどうかが決まってしまうので外してあります(外した枠は後で別に出します)。

私立医学部の年内入試のうち誰でも出願できる43方式の実質倍率ランキング前半。最も低いのは聖マリアンナ医科大学の神奈川県地域枠と東京女子医科大学の一般推薦の1.9倍(2026年度)
出典:各大学が公表した2026年度(令和8年度)入学者選抜結果をもとに太宰府アカデミー集計。実質倍率=受験者数÷合格者数。指定校制・附属校制・卒業生子女枠と、受験者10名未満の方式は除いています
私立医学部の年内入試のうち誰でも出願できる43方式の実質倍率ランキング後半。昭和医科大学の公募推薦6.2倍から大阪医科薬科大学の総合型22.8倍まで(2026年度)
出典:各大学が公表した2026年度(令和8年度)入学者選抜結果をもとに太宰府アカデミー集計。実質倍率=受験者数÷合格者数。指定校制・附属校制・卒業生子女枠と、受験者10名未満の方式は除いています
大学・方式 受験者 合格者 実質倍率
聖マリアンナ医科大学 神奈川県地域枠 13 7 1.9倍
東京女子医科大学 一般推薦 83 44 1.9倍
埼玉医科大学 埼玉県地域枠 54 19 2.8倍
聖マリアンナ医科大学 公募推薦 60 20 3.0倍
岩手医科大学 総合型 25 8 3.1倍
岩手医科大学 地域枠A 48 15 3.2倍
帝京大学 学校推薦型 59 15 3.9倍
東北医科薬科大学 総合型 85 21 4.0倍
愛知医科大学 愛知県地域特別枠A 28 7 4.0倍
産業医科大学 学校推薦型 102 25 4.1倍
岩手医科大学 地域枠B 35 8 4.4倍
大阪医科薬科大学 公募推薦 60 13 4.6倍
岩手医科大学 公募推薦 60 13 4.6倍
獨協医科大学 公募推薦 地域特別枠 47 10 4.7倍
福岡大学 地域枠推薦 47 10 4.7倍
埼玉医科大学 一般公募推薦 68 14 4.9倍
東京医科大学 公募推薦 98 20 4.9倍
東京医科大学 茨城県地域枠 40 8 5.0倍
愛知医科大学 公募推薦 103 20 5.2倍
東京医科大学 新潟県地域枠 16 3 5.3倍
兵庫医科大学 公募推薦 106 20 5.3倍
福岡大学 学校推薦型 136 25 5.4倍
昭和医科大学 公募推薦 74 12 6.2倍
関西医科大学 特別枠推薦 73 10 7.3倍
藤田医科大学 ふじた未来一般枠 129 17 7.6倍
自治医科大学 総合型 55 7 7.9倍
兵庫医科大学 地域指定制推薦 40 5 8.0倍
日本大学 新潟県地域枠 16 2 8.0倍
日本大学 埼玉県地域枠 17 2 8.5倍
東京医科大学 英語検定利用推薦 28 3 9.3倍
日本大学 公募推薦 48 5 9.6倍
獨協医科大学 総合型 10 1 10.0倍
東海大学 希望の星育成 338 33 10.2倍
東邦大学 公募推薦 新潟県枠 62 6 10.3倍
近畿大学 公募推薦 751 67 11.2倍
東京医科大学 全国ブロック別推薦 70 6 11.7倍
東邦大学 公募推薦 千葉県枠 37 3 12.3倍
関西医科大学 一般枠推薦 185 15 12.3倍
久留米大学 公募推薦A日程 115 9 12.8倍
金沢医科大学 総合型 新潟県枠 29 2 14.5倍
帝京大学 総合型 299 18 16.6倍
金沢医科大学 総合型AO 300 16 18.8倍
大阪医科薬科大学 総合型 至誠仁術 91 4 22.8倍

いちばん低いのは、聖マリアンナ医科大学の神奈川県地域枠(受験13名)と東京女子医科大学の一般推薦(受験83名)で、どちらも1.9倍です。次いで埼玉医科大学の埼玉県地域枠が2.8倍。低い側には都道府県の地域枠が多く並びます。地域枠は卒業後に指定された地域で働く義務がつくぶん、出す人が絞られるからです。一方で、59方式のうち29方式は5倍を切り、13方式は10倍以上あります。「年内入試は◯倍」とひとくくりにできる数字ではありません。

 

私立医学部31校のうち、2027年度に年内入試があるのは26校です

倍率の前に、そもそもどの大学に年内入試があるのかを確かめておきます。2027年度(令和9年度)の学生募集要項と入試概要で見ると、実施しないのは4校——杏林大学・慶應義塾大学・東京慈恵会医科大学・日本医科大学です。順天堂大学は年内の推薦がなく、2月の国際臨床医・研究医選抜だけになります。

残りの大学は、形はさまざまですが年内入試を持っています。2027年度は東京女子医科大学の総合型【一般枠】(約19名)と、国際医療福祉大学の総合型(10名)が新設され、岩手医科大学の総合型は15名以内に、近畿大学の推薦は25名から30名に増えました。年内の枠は、いま広がっている最中です。

大学 2027年度の年内入試 中身
岩手医科大学 実施する 推薦4区分+総合型(15名以内に拡大)
東北医科薬科大学 実施する 総合型(東北地域定着枠)20名
自治医科大学 実施する 総合型(5県)+学校推薦型(富山県)
獨協医科大学 実施する 総合型3名以内+推薦4区分
埼玉医科大学 実施する 推薦4区分(指定校・一般公募・埼玉県地域枠・特別枠)
国際医療福祉大学 2027年度に新設 総合型(専願制)10名を2027年度に新設
杏林大学 実施しない 一般選抜と共通テスト利用のみ
慶應義塾大学 実施しない 一般選抜のみ
順天堂大学 年内はなし 年内の推薦はなく、国際臨床医・研究医選抜(2月)のみ
昭和医科大学 実施する 学校推薦型17名+卒業生推薦10名
帝京大学 実施する 総合型10名+推薦(公募制)15名
東京医科大学 実施する 推薦(公募20名以内・全国ブロック別12名以内・県地域枠)
東京慈恵会医科大学 実施しない 一般選抜のみ
東京女子医科大学 実施する 総合型【一般枠】約19名を新設+推薦約40名
東邦大学 実施する 総合入試+同窓生子女+推薦(付属校・県地域枠)
日本大学 実施する 推薦(公募制)10名+地域枠13名+校友枠5名
日本医科大学 実施しない 2026年度は学校推薦型選抜6名を実施したが、2027年度は実施しない(実施要項2027の募集人員116名は一般選抜の3区分のみ)
北里大学 指定校のみ 推薦は指定校制のみ(公募なし)
聖マリアンナ医科大学 実施する 推薦(一般公募約20名・指定校・神奈川県地域枠)
東海大学 実施する 総合型「希望の星育成」10名
金沢医科大学 実施する 総合型(AO)15名+推薦(指定校)4名ほか
愛知医科大学 実施する 推薦(公募)約20名+愛知県地域特別枠A方式
藤田医科大学 実施する 総合型「ふじた未来入試」一般枠+独創一理枠で12名
大阪医科薬科大学 実施する 推薦(公募10名・指定校5名・地域指定校1名を新設)+総合型5名
関西医科大学 実施する 特別枠10名+一般枠8名+特色選抜2名
近畿大学 実施する 推薦(一般公募)を25名から30名に増員
兵庫医科大学 実施する 総合型4区分+学校推薦型2区分
川崎医科大学 実施する 総合型3区分(中国四国約20名・霧島市約1名・特定診療科約4名)
久留米大学 実施する 推薦(一般A日程・久留米大学特別枠・福岡県特別枠・自己推薦)
福岡大学 実施する 推薦A方式40名+地域枠10名
産業医科大学 実施する 総合型(ラマツィーニ選抜)10名以内+学校推薦型25名以内

1校だけ補足が必要なのが日本医科大学です。2026年度は学校推薦型選抜を実施していました——募集人員6名に6名が出願して6名が合格しています(大学公表の令和8年度入学者選抜情報)。ところが2027年度は実施しません。『入学者選抜実施要項2027』の募集人員116名の内訳は、一般選抜(前期)(地域枠)75名・グローバル特別選抜(前期)10名・一般選抜(後期)(地域枠)31名の3区分だけで、推薦の行がありません(要項60ページ全文を確認。「推薦」の語が出てくるのは静岡県の修学資金の説明1か所だけでした)。2026年度の実績を見て日本医科大学を推薦で狙う計画は、2027年度には立てられません。

出願の時期も書いておきます。大学公式で日程が確定している16校ぶんを数えると、拾えた締切30件のうち16件が11月6日から12日までの7日間に集中します。いちばん早かったのは獨協医科大学の総合型で、出願はすでに8月25日に締め切られました。大学ごとの締切は医学部の推薦・総合型31校の締切一覧にまとめてあります。

 

同じ大学で比べると、22校中19校で年内入試のほうが低い

全体の中央値を比べるだけでは、まだ足りません。年内入試をやっている大学と、一般選抜が難しい大学が、たまたま別々ということもあるからです。そこで同じ大学・同じ年度で、一般選抜と年内入試(公募の枠)を突き合わせました。両方の数字がそろったのは22校です。

同じ大学の一般選抜と年内入試の実質倍率の比較。聖マリアンナ医科大学は35.9倍に対し3.0倍、獨協医科大学は44.2倍に対し4.7倍(2026年度)
出典:各大学が公表した2026年度(令和8年度)入学者選抜結果をもとに太宰府アカデミー集計。実質倍率=受験者数÷合格者数。一般選抜の倍率に※が付く大学は繰上合格が非公表のため高く出ています
大学 年内入試(公募) 一般選抜 一般÷年内
聖マリアンナ医科大学 3.0倍 35.9倍※ 12.0倍
獨協医科大学 4.7倍 44.2倍 9.4倍
埼玉医科大学 4.9倍 44.9倍※ 9.2倍
帝京大学 3.9倍 29.6倍 7.6倍
東京女子医科大学 1.9倍 7.9倍 4.2倍
産業医科大学 4.1倍 15.0倍 3.7倍
東海大学 10.2倍 31.4倍 3.1倍
福岡大学 5.4倍 15.2倍 2.8倍
岩手医科大学 4.6倍 12.8倍 2.8倍
兵庫医科大学 5.3倍 11.4倍 2.2倍
昭和医科大学 6.2倍 12.2倍 2.0倍
自治医科大学 7.9倍 15.1倍 1.9倍
大阪医科薬科大学 4.6倍 8.7倍 1.9倍
東北医科薬科大学 4.0倍 7.5倍 1.9倍
東京医科大学 4.9倍 8.1倍 1.7倍
愛知医科大学 5.2倍 8.3倍 1.6倍
近畿大学 11.2倍 16.6倍 1.5倍
金沢医科大学 18.8倍 22.3倍 1.2倍
日本大学 9.6倍 11.2倍 1.2倍
藤田医科大学 7.6倍 6.2倍 0.8倍
関西医科大学 12.3倍 8.4倍 0.7倍
久留米大学 12.8倍 8.6倍 0.7倍

22校のうち19校で、年内入試のほうが倍率が低いという結果でした。差の中央値は1.9倍——年内入試の中央値5.3倍に対して、同じ大学の一般選抜は12.5倍です。差がいちばん大きいのは聖マリアンナ医科大学で、一般選抜35.9倍に対して一般公募の推薦は3.0倍でした。

ただし、この表には気をつけるところが1つあります。表の一般選抜に※が付いている大学は、繰上合格の人数を公表していません。合格者が正規合格だけで数えられているので、倍率が実際より高く出ます。聖マリアンナ医科大学と埼玉医科大学がこれに当たるので、差がそのぶん大きく見えています。

そこで繰上合格まで公表している20校だけで計算し直しました。それでも年内入試5.4倍・一般選抜11.8倍で、差の中央値は1.9倍のまま動きません。※印の大学を外しても結論は変わらない、ということです。

 

年内入試でも10倍を超える方式が13方式あります

ここからが、この記事でいちばん伝えたいところです。「年内入試=倍率が低い」は、方式ごとに見ると成り立ちません。

私立医学部の年内入試で実質倍率が10倍を超えた13方式。最高は大阪医科薬科大学の総合型選抜「至誠仁術」の22.8倍(2026年度)
出典:各大学が公表した2026年度(令和8年度)入学者選抜結果をもとに太宰府アカデミー集計。実質倍率=受験者数÷合格者数
大学・方式 受験者 合格者 実質倍率
大阪医科薬科大学 総合型 至誠仁術 91 4 22.8倍
金沢医科大学 総合型AO 300 16 18.8倍
帝京大学 総合型 299 18 16.6倍
金沢医科大学 総合型 新潟県枠 29 2 14.5倍
藤田医科大学 独創一理枠 13 1 13.0倍
久留米大学 公募推薦A日程 115 9 12.8倍
東邦大学 公募推薦 千葉県枠 37 3 12.3倍
関西医科大学 一般枠推薦 185 15 12.3倍
東京医科大学 全国ブロック別推薦 70 6 11.7倍
近畿大学 公募推薦 751 67 11.2倍
東邦大学 公募推薦 新潟県枠 62 6 10.3倍
東海大学 希望の星育成 338 33 10.2倍
獨協医科大学 総合型 10 1 10.0倍

いちばん高いのは大阪医科薬科大学の総合型選抜「至誠仁術」で22.8倍——同じ大学の一般選抜(前期)が8.7倍ですから、年内のほうが2倍以上高いことになります。この方式は併願ができて、1次選考に共通テストを使うため、一般選抜の受験生がそのまま出願できる設計になっています。出願しやすい枠は、そのぶん人が集まります。

次に高いのが金沢医科大学の総合型(AO入試)で18.8倍(受験300名・合格16名)、帝京大学の総合型が16.6倍(受験299名・合格18名)です。この2つには共通点があります。どちらも評定平均の基準がありません。さらに金沢医科大学は出願資格が「令和8年4月1日現在25歳以下」で浪人の上限が広く、帝京大学は指定校制を除く自校の全入試と他大学に併願できます。出願のハードルが低い枠ほど、人が集まって倍率が上がるという形がそのまま出ています(ただし金沢医科大学のAO入試は合格したら入学を確約する専願です)。

さらに、22校のうち3校では、年内入試のほうが一般選抜より倍率が高くなっていました。関西医科大学は一般枠の学校推薦型が12.3倍で一般選抜(前期)が8.4倍、久留米大学は公募推薦A日程が12.8倍で一般選抜(前期)が8.6倍、藤田医科大学は総合型「ふじた未来入試」の一般枠が7.6倍で一般選抜が6.2倍です。この3校を「年内のほうが入りやすい」と思って出願すると、前提から外れます。

 

倍率が低い枠ほど、出願できる人が限られています

ここまでの表から、意図的に外していた枠があります。指定校制・附属校制・卒業生の子女枠です。実は、いちばん倍率が低いのはこの側でした。

指定校・附属校・卒業生の枠は9方式で中央値3.7倍

私立医学部の指定校制・附属校制・卒業生子女枠などの実質倍率9方式。大阪医科薬科大学の指定校推薦1.0倍から藤田医科大学の独創一理枠13.0倍まで(2026年度)
出典:各大学が公表した2026年度(令和8年度)入学者選抜結果をもとに太宰府アカデミー集計。実質倍率=受験者数÷合格者数。これらの枠は通っている高校や保護者の出身で出願資格が決まります
大学・方式 受験者 合格者 実質倍率
大阪医科薬科大学 指定校推薦 6 6 1.0倍
日本大学 付属校推薦 14 14 1.0倍
東邦大学 付属校推薦 28 17 1.6倍
金沢医科大学 指定校・指定地域 11 4 2.8倍
獨協医科大学 指定校推薦 82 22 3.7倍
金沢医科大学 総合型 卒業生子女 38 8 4.8倍
埼玉医科大学 指定校推薦 25 5 5.0倍
昭和医科大学 卒業生推薦 60 10 6.0倍
藤田医科大学 独創一理枠 13 1 13.0倍

大阪医科薬科大学の指定校推薦は受験6名で合格6名(1.0倍)、東邦大学の附属校推薦は受験28名で合格17名(1.0倍)です。数字だけ見れば、この記事で最も倍率が低い枠になります。ただし、これは受験生が選べる枠ではありません。指定校になっているかどうかは通っている高校で決まり、附属校制はその附属高校の生徒だけ、卒業生子女枠は保護者がその大学の卒業生であることが条件です。倍率の低さが、そのまま受かりやすさにならない典型なので、表から分けました。なお、この表のいちばん上の倍率は藤田医科大学の総合型「独創一理枠」の13.0倍(受験13名・合格1名)です。2027年度の要項では本学卒業生の2親等以内の親族が対象の枠なので、公募には入れずここに置いています(2026年度の要項での条件は未確認)。

もう1つ、倍率の表から外したものがあります。受験者が10名に満たない方式です。受験2名・合格1名だと倍率は2.0倍と出ますが、翌年に1人増えるだけで3.0倍に変わってしまいます。順位として並べる意味がないので、こちらにまとめました。

大学・方式 受験者 合格者 実質倍率
自治医科大学 学校推薦型 2 1 2.0倍
埼玉医科大学 特別枠推薦 2 1 2.0倍
東京医科大学 群馬県地域枠 4 2 2.0倍
東京医科大学 埼玉県地域枠 5 2 2.5倍
岩手医科大学 秋田県地域枠 4 1 4.0倍
金沢医科大学 総合型 研究医枠 9 1 9.0倍
日本医科大学 学校推薦型 6 6 1.0倍

この表のいちばん下、日本医科大学の学校推薦型選抜だけは、公募制なのか指定校制なのかが公表資料から読み取れませんでした。募集6名に6名が出願している形からは指定校に近い運用が想像できますが、想像で書くわけにはいかないので、公募の集計にも指定校の集計にも入れていません。

倍率を見る前に、出願資格で落ちていないか

年内入試には、一般選抜にはない4つの縛りがあります。倍率がどれだけ低くても、ここで引っかかると出願そのものができません。

医学部の年内入試に出願できない4つの条件。現役だけ・評定の下限・専願・地域や出身の指定(2027年度入試)
出典:各大学の2027年度(令和9年度)学生募集要項・入試概要をもとに太宰府アカデミー集計(2026年9月28日時点)
条件 この条件がある枠の例 何が起きるか
現役だけ 帝京の推薦(公募制)・昭和医科の学校推薦型・聖マリアンナの一般公募・東海の総合型 「2027年3月卒業見込み」だけが対象。1浪で出せなくなる枠がある
評定の下限 帝京・東京医科・日本大学は4.0以上、昭和医科は4.3以上、東京女子医科の総合型は3.8以上 評定が足りないと、点が取れても出願そのものができない
専願 昭和医科・聖マリアンナ・大阪医科薬科の公募制推薦ほか 受かったら必ず入学する約束。ほかの大学と併願できない
地域・出身の指定 東京医科の県地域枠(茨城・新潟・埼玉・群馬)、川崎医科の中国・四国地域出身者枠ほか 住んでいる場所や出身校で出願できるかが決まる

とくに重いのは現役限定と専願の2つです。帝京大学の公募制推薦・昭和医科大学の学校推薦型・聖マリアンナ医科大学の一般公募・東海大学の総合型は、いずれも2027年3月卒業見込みの人だけが対象で、1浪した時点で出願できなくなります。一方で帝京大学の総合型は2026年3月卒業者も出願できるなど、同じ大学でも枠ごとに条件が違います。評定の下限も、昭和医科大学は4.3以上、東京女子医科大学の総合型は3.8以上と幅があります。

 

倍率を出せなかった7校と、その理由

この記事で倍率を出せたのは31校のうち24校です。残り7校がどうして出せなかったのかも、そのまま書いておきます。「データがない」と「実施していない」はまったく別のことなので、分けて読んでください。

大学 倍率を出せない理由
杏林大学 2027年度は年内入試を実施しません(一般選抜と共通テスト利用のみ)
慶應義塾大学 2027年度は年内入試を実施しません
東京慈恵会医科大学 2027年度は年内入試を実施しません
順天堂大学 年内の推薦はなく、2月の国際臨床医・研究医選抜だけです
国際医療福祉大学 総合型が2027年度の新設で、2026年度の実績がありません
川崎医科大学 総合型の受験者(中国・四国枠60名/特定診療科枠27名)は公表していますが、最終合格者数を公表していません
北里大学 推薦が指定校制のみで、入学試験状況の公表からは倍率を出せませんでした

川崎医科大学は少し特殊です。総合型選抜の志願者と受験者は公表していて、中国・四国地域出身者枠が受験60名、特定診療科専攻枠が受験27名なのは分かります。けれども最終合格者数を公表していないので、実質倍率が計算できません。受験者だけを見て「60名しか受けていないから入りやすい」と読むのは誤りです。また、川崎医科大学の「地域枠選抜」は名前に反して年内入試ではなく、出願は12月から1月・1次試験は2月1日で、一般選抜と同じ日です。名前で年内かどうかを決めないほうがいい例です。

この記事の初版(9月28日朝)では、岩手医科大学・日本大学・藤田医科大学・東京女子医科大学・東海大学の5校を「結果にたどり着けなかった」と書いていましたが、その後に5校とも大学の公式ページで見つかりました(岩手医科は9月14日、日本大学は9月26日に掲載)。いまは24校59方式に増えています。「未公表」と書く前に、公表された日を確かめる——自分たちへの戒めとして残します。

 

太宰府アカデミーの視点|この倍率をどう使うか、観点を3つ

1つめ。倍率は「出願できる人が何人いたか」の結果であって、難しさそのものではありません。この記事でいちばん倍率が低かったのは地域枠と指定校でした。どちらも出願できる人が構造的に少ないから低いのであって、受かった人の学力が低いという意味ではありません。地域枠には卒業後の従事義務がつきます。倍率だけで選ぶ対象ではないので、義務年限と対象地域を先に読んでください(医学部の地域枠とは?離脱は4.1%・貸与額6.5倍差・義務9〜12年に詳しく書いています)。

2つめ。見るべき順番は、倍率より先に出願資格です。現役限定・評定の下限・専願・地域指定の4つは、どれか1つでも外れたら受けられません。逆に、この4つを全部満たせる人にとっては、年内入試は22校中19校で一般選抜より倍率が低い、有利な回になります。9月から11月にかけて募集要項が出そろうので、自分が出せる枠を先に数えるところから始めるのが早いです。

3つめ。年内入試の倍率は、年による振れが一般選抜より大きくなります。合格者が数名から数十名と少ないため、受験者が10名増えただけで倍率が何倍も動きます。この記事の数字は2026年度の実績であって、2027年度の予測ではありません。去年の倍率が低かったから今年も低い、とは考えないでください。使い方としては、順位より「この大学の年内入試はだいたい何倍の世界か」という桁をつかむのが正しい読み方です。

そのうえで、出願を決めたら過去問と選考内容の確認に進んでください。年内入試は小論文・面接・基礎学力試験の組み合わせが大学ごとに違い、共通テストを使う方式もあります。中身は医学部の総合型選抜・学校推薦型の試験内容22方式にまとめました。

 

医学部の推薦・総合型の倍率についてよくある質問

Q. 志願倍率と実質倍率は、どちらを見ればいいですか。
A. 実質倍率(受験者÷合格者)です。志願倍率は志願者を募集人員で割った数字で、枠が小さい方式ほど大きく出ます。一般選抜では志願倍率100倍を超える方式もありますが、実質倍率は5.5倍から44.9倍の範囲です。別のものを数えているので、並べて比べないでください。

Q. 推薦と総合型では、どちらが倍率が低いですか。
A. 方式の名前では決まりません。この記事で10倍を超えた13方式のうち、上位3つは総合型ですが、東京医科大学の全国ブロック別推薦(11.7倍)や近畿大学の推薦(11.2倍)のように推薦でも高いものがあります。専願かどうか・評定の基準があるかどうかのほうが、倍率をよく説明します。

Q. 年内入試で不合格になったら、その大学の一般選抜は受けられませんか。
A. 受けられる大学がほとんどです。たとえば国際医療福祉大学の総合型は、不合格でも一般選抜と共通テスト利用に出願できると要項に書かれています。ただし専願の枠に合格した場合は辞退できないのが原則です。「不合格のとき」と「合格したとき」で扱いが別なので、要項の併願の項を必ず読んでください。

Q. 倍率が低い大学を狙えば、それだけ合格に近づきますか。
A. 出願資格を満たしていることが前提です。この記事で倍率が低かった上位は地域枠が中心で、住んでいる場所や卒業後の勤務地の条件がついています。条件が合う人にとっては確かに有利ですが、合わない人にとっては0倍でも1倍でも同じです。まず自分が出せる枠を数えて、そのなかで倍率を比べてください。

 

まとめ|医学部の年内入試の倍率で押さえる5点

  • 年内入試の実質倍率は1.0〜22.8倍・中央値5.0倍(私立24校・59方式・2026年度)。一般選抜は5.5〜44.9倍・中央値11.8倍で、年内のほうがはっきり低い
  • 同じ大学で比べると22校中19校で年内が低く、差の中央値は1.9倍。繰上合格まで公表している20校だけで計算し直しても1.9倍で動かない
  • ただし13方式は10倍以上。最高は大阪医科薬科大学の総合型「至誠仁術」の22.8倍で、同じ大学の一般選抜8.7倍より高い。関西医科大学・久留米大学・藤田医科大学も年内のほうが高い
  • いちばん倍率が低いのは地域枠と指定校・附属校の枠。出願できる人が構造的に少ないからで、受かりやすさとは別の話
  • 2027年度に年内入試があるのは31校中26校。実施しないのは杏林大学・慶應義塾大学・東京慈恵会医科大学・日本医科大学の4校で、順天堂大学は2月の選抜のみ

この記事を書いたのは、年内入試の締切が11月上旬に集中していて、いま志望校を決めている人がいちばん知りたいはずの「何倍なのか」だけが、どこにも1本でまとまっていなかったからです。調べてみると、倍率が低い枠ほど出願できる人が限られているという、わりと当たり前の構造が数字にそのまま出ていました。そして31校のうち7校は、倍率そのものを出せませんでした。ここはうちの宿題として残しておきます。2027年度の結果が公表されたら(岩手医科は9月、日本大学は9月下旬に出ていました)、前年との2年分を並べ直します。

 

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後藤 登(Goto Noboru)
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自己PR:高校・大学ボクシング部。釣りや登山が好き。新卒で当校に勤めて13年目。医学部受験の情報を調べて、ブログやInstagram、Twitterを更新しています。4年前から完全個別指導コースのコース担当。

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