こんにちは、福岡の医学部予備校で総務・広報を担当している後藤です。
本日のブログは、ずっと気になっていた検索ワードについてです。
「岩手医科大学 やばい」。
当校のサイトに来てくださる方が実際に検索している言葉を調べると、この語が年間1万回近く検索されています。あわせて「岩手医科大学 金持ち」「岩手医科大学 恥ずかしい」も並びます。
正直に言うと、この検索ワードが僕はずっと嫌でした。受験生が一生を賭けて目指す大学を、噂だけで語ってほしくないからです。
そこで今回は、口コミや噂をいったん脇に置いて、文部科学省と河合塾が公表している数字だけで「やばいのか」を確かめてみます。
使うのは4つです。河合塾のボーダー偏差値(1975年から2027年まで)、文部科学省の入試結果(志願者・受験者・合格者の実数)、同じく文部科学省の卒業状況(6年後にどうなったか)、そして厚生労働省が発表した医師国家試験の結果。すべて公表されている一次資料です。
結論を先に言うと、「やばい」と言われている部分と、実際に数字が示している部分は、かなりズレていました。
この記事の目次
「やばい」で調べている人が気にしているのは、だいたいこの3つ
検索の候補に出てくる言葉を並べると、気にされているのはこのあたりです。
− 偏差値が低くて、お金さえあれば入れる大学なんでしょ?
− 金持ちの家じゃないと通えないんでしょ?
− 入ってからも留年ばかりで、卒業できないんでしょ?
一つずつ、数字で見ていきます。
偏差値は50年で52.5→62.5。昔の岩手医科大学とは別の大学です
まず「偏差値が低い」という話から。河合塾のボーダー偏差値を50年ぶん並べると、こうなります。

| 年 | 河合塾ボーダー偏差値 | 備考 |
|---|---|---|
| 1975年 | 52.5 | 50年前 |
| 1985年 | 52.5 | 40年前 |
| 1995年 | 57.5 | 30年前 |
| 2010年 | 65.0 | この50年で最も高い |
| 2023年 | 62.5 | |
| 2025年 | 62.5 | |
| 2026年 | 62.5 | 直近の実績値 |
| 2027年 | 62.5 | 予想値 |
1975年の52.5から、いまは62.5。50年で10ポイント上がっています。
「昔は入りやすかった」という話は、事実としては間違っていません。1985年までは52.5でした。ただ、それは40年前の話です。いまの62.5という数字は、模試を受けた人のうち上位およそ1割が到達する水準です。
ちなみに、いちばん高かったのは2010年の65.0でした。医学部人気が最も高かった時期です。そこから2.5ポイント下がって、いまは62.5で落ち着いています。
2,474人が受けて、273人が合格。実質競争倍率は9.06倍
偏差値は「どのくらいの学力層が受かるか」の目安ですが、実際の入りにくさは倍率で見たほうが早いです。文部科学省が公表している2025年度入試の実数がこちらです。

| 区分 | 人数 | 読み方 |
|---|---|---|
| 募集人員 | 130 | |
| 志願者 | 2,536 | 延べ人数(複数方式の重複を含む) |
| 受験者 | 2,474 | 実際に試験を受けた人 |
| 合格者 | 273 | 受験者の11.0% |
| 入学者 | 131 | |
| 実質競争倍率 | 9.06倍 | 受験者÷合格者/全81大学中23番目 |
2,474人が受験して、合格したのは273人。11.0%です。
実質競争倍率(受験者÷合格者)は9.06倍。全国81大学のなかで23番目の高さでした。ちなみに国立大学の平均は3.22倍なので、数字のうえでは国立の3倍近い競争率ということになります。
「お金さえあれば入れる」という言い方が成り立つなら、9倍にはなりません。
「金持ちしか行けない」は、学費で見ると当たっていません
次に「岩手医科大学 金持ち」という検索について。私立医学部の学費は確かに高いのですが、岩手医科大学は私立31校のなかでは高いほうではありません。

| 大学 | 6年間の学費(総額) | 岩手医科との差 |
|---|---|---|
| 川崎医科大学 | 4,550万円 | +1,150万円 |
| 金沢医科大学 | 3,950万円 | +550万円 |
| 北里大学 | 3,890万円 | +490万円 |
| 福岡大学 | 3,760万円 | +360万円 |
| 兵庫医科大学 | 3,700万円 | +300万円 |
| 岩手医科大学 | 3,400万円 | ― |
| 順天堂大学 | 2,080万円 | −1,320万円 |
| 国際医療福祉大学 | 1,850万円 | −1,550万円 |
6年間で3,400万円。最も高い川崎医科大学(4,550万円)とは1,150万円の差があり、金沢医科大学や北里大学、福岡大学よりも安く設定されています。
もちろん3,400万円は大きな金額です。ただ、「私立医学部のなかで特別に高い大学だから金持ちが集まる」という説明は、数字とは合いません。
なお岩手県には医師修学資金の制度があり、条件を満たせば返還が免除される枠があります。学費だけで判断する前に、奨学金と修学資金まで含めて調べておくと、見える景色が変わります。
入ってからの6年間は、たしかに楽ではありません
ここは正直に書きます。文部科学省が公表している「令和元年度に入学した人が、6年後にどうなったか」のデータです。

| 指標 | 岩手医科大学 | 全国81大学の平均 |
|---|---|---|
| 入学者(編入含む) | 124人 | ― |
| 6年で6年次に在籍した人 | 92人 | ― |
| 6年次進級率 | 74.2% | 86.7% |
| 6年で卒業した人 | 92人 | ― |
| 卒業率 | 74.2% | 85.4% |
| 医師国家試験 合格率(第119回) | 95.8% | 95.7% |
124人が入学して、6年で卒業したのは92人。74.2%でした。全国81大学の平均は85.4%なので、それより11ポイントほど低い数字です。
これをどう読むかですが、大学にはそれぞれの教育方針があり、数字だけで良し悪しを語れるものではありません。ただ、受験生と保護者が「入学したら6年で卒業できるとは限らない」ことを知っておくのは大事だと思います。
一方で、そこを通過した人の国家試験の結果は95.8%(第119回)。全国平均の95.7%と同じ水準です。在学中に一定の関門があり、そのうえで出口の実績は保たれているという形になっています。
直近の国家試験の結果も見ておきます
いちばん新しい第120回(2026年2月実施)の数字も出ています。
| 区分 | 受験者 | 合格者 | 合格率 |
|---|---|---|---|
| 総数 | 149 | 130 | 87.2% |
| 新卒 | ― | ― | 92.6% |
| 既卒 | ― | ― | 30.8% |
| (参考)全国の総数 | 9,980 | 9,139 | 91.6% |
| (参考)全国の新卒 | 9,205 | 8,716 | 94.7% |
総数では87.2%でしたが、新卒に限れば92.6%です。既卒(一度不合格になって再挑戦した人)の30.8%が全体を押し下げています。
これは岩手医科大学に限った話ではなく、全国でも既卒は54.6%と大きく下がります。大学別の国家試験合格率を見るときは、必ず新卒と既卒を分けて見てください。総数だけで比べると、実態を読み違えます。
太宰府アカデミーの視点|「やばい」を3つに分けて考える
ここまでの数字を踏まえて、志望校として検討するうえで注意したいポイントを3つ挙げます。
1つめ。入試の難易度と、入学後の厳しさは別の話です。
偏差値62.5・実質倍率9.06倍というのは、入るのが簡単な大学の数字ではありません。一方で6年間ストレートで卒業できるのは4人に3人。「入りやすい/入りにくい」と「卒業しやすい/しにくい」は、分けて考えたほうが判断を誤りません。
2つめ。学費は「総額」だけでなく「いつ払うか」まで見てください。
6年間の総額が同じでも、初年度に集中する大学と、6年間に分散する大学があります。募集要項の年次別内訳まで確認しておくと、入学後の資金計画が立てやすくなります。
3つめ。過去問との相性を必ず確かめてください。
2025年度の一般選抜1次の合格最低点は226点/350点(64.6%)でした。数字だけ見ると「6割5分で届く」と読めますが、それは出題形式に慣れていればの話です。配点や科目構成が自分に合っているかは、実際に過去問を解いて確かめる以外に判断する方法はありません。
まとめ|「やばい」の中身は、入試ではなく在学中にありました
結論です。「岩手医科大学はやばいから入りやすい」という理解は、数字とは合いません。
偏差値は50年で52.5から62.5へ10ポイント上がり、2025年度入試の実質競争倍率は9.06倍。2,474人が受けて273人しか受かっていません。学費も3,400万円で、私立医学部のなかでは高いほうではありませんでした。
その一方で、6年間ストレートの卒業率は74.2%。全国平均より11ポイント低く、ここは事実として受け止めておくべき数字です。ただし国家試験は新卒92.6%(第120回)。関門を越えた人は、きちんと医師になっています。
もし志望校として検討しているなら、明日やることは2つです。①募集要項で学費の年次別内訳を確認する ②過去問を1年分解いて、出題形式が自分に合うか確かめる。噂ではなく、この2つで判断してください。
「岩手医科大学 やばい」という検索ワードが、僕はずっと嫌でした。数字を並べてみれば、入るのも簡単ではないし、入ってからも真剣にやらないと卒業できない大学です。少なくとも、笑い話で語られるような大学ではありません。だからこの記事を書きました。
同じ問いを、他の大学でも調べました
「恥ずかしい」「やばい」と検索されている大学を、同じやり方で1校ずつ調べています。気になる大学があれば、こちらもどうぞ。数字はすべて大学と国の公表資料から取っています。
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- 東邦大学は「恥ずかしい」のか|6年で医師になる割合は全国27位
- 徳島大学は「恥ずかしい」のか|倍率1.6倍でも共テ85.6%
岩手医科大学の偏差値・学費・入試日程をまとめて見たい方は、岩手医科大学医学部のまとめページにあります。
52.5から62.5へ動いた岩手医科の現在地は、医学部偏差値ランキング2027(全81校)の一覧表で確認できます。
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本日の記事は以上です。
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