こんにちは、福岡の医学部予備校で総務・広報を担当している後藤です。
本日のブログも、検索候補に出てくる一言について書きます。
「愛知医科大学」とGoogleの検索窓に入れると、候補に「恥ずかしい」が出てきます。「やばい」「留年」も一緒に並びます。大学の名前を調べただけで、こういう言葉が目に入る。これから受験する人にとっても、いまその大学に通っている人にとっても、気持ちのいいものではないはずです。
そこで今回は、掲示板の書き込みも口コミサイトも1つも使わず、河合塾・文部科学省・厚生労働省・医師臨床研修マッチング協議会が公表している数字だけで確かめます。先に結論を書くと、「恥ずかしい」を裏づける数字は、どこを探しても見つかりませんでした。
− 昔は偏差値がうんと低くて、誰でも入れた大学なんでしょ?
− 倍率30倍と書いてあるけど、そんなに人が集まる大学なの?
− 卒業したあと、研修先で相手にされないんじゃないの?
この3つに、順番に数字でお答えします。
この記事の目次
ボーダー偏差値は1985年の37.5から、2027年度予想の65.0へ上がりました
まず「昔は誰でも入れた」という話から。河合塾のボーダー偏差値を、公表されている年でさかのぼって並べました。

| 年 | 河合塾 ボーダー偏差値 |
|---|---|
| 1975 | 47.5 |
| 1985 | 37.5 |
| 1995 | 60.0 |
| 2010 | 65.0 |
| 2015 | 65.0 |
| 2023 | 65.0 |
| 2024 | 62.5 |
| 2025 | 62.5 |
| 2026 | 65.0 |
| 2027(予想) | 65.0 |
いちばん低かった1985年が37.5、2027年度入試の予想は65.0。40年で27.5ポイント上がっています。1985年の数値が残っている私立26校のなかで、この上げ幅は最大でした。2番目が順天堂大学と東海大学の20.0ポイントですから、かなり離れています。
出典:河合塾 全統模試ボーダー偏差値(2026年度一般前期時点・2027年度は予想値)をもとに太宰府アカデミー集計
ここは正直に断っておきます。1985年の37.5と、いまの65.0を単純に引き算することはできません。模試を受ける人の数も顔ぶれも、当時といまではまるで違うからです。それでも、「昔の愛知医科大学」と「いまの愛知医科大学」がまったく別の入試になっていることは、この並びだけで十分に伝わると思います。
直近の動きも見ておくと、2024年度と2025年度が62.5、2026年度で65.0に戻り、2027年度も65.0の予想です。ここ数年は62.5〜65.0の帯で動いています。親世代が受験した頃の記憶で語られる「入りやすい私立医大」という像は、いまの数字とは合いません。
「志願倍率32.2倍」と「実質倍率8.3倍」は、別の数字です
2つめの「倍率30倍」。これは嘘ではありません。ただし、どの数字を倍率と呼んでいるかで意味がまるごと変わります。

| 選抜 | 募集人員 | 志願者 | 受験者 | 最終合格 | 志願倍率 | 実質倍率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 一般 | 約70 | 2,254 | 2,192 | 264(正規181+繰上83) | 32.2倍 | 8.3倍 |
| 共通テスト利用 | 約15 | 962 | 955 | 75(正規36+繰上39) | 64.1倍 | 12.7倍 |
| 学校推薦型(公募) | 約20 | ― | 103 | 20 | ― | 5.2倍 |
| 愛知県地域特別枠A(推薦) | 約5 | ― | 28 | 7 | ― | 4.0倍 |
| 愛知県地域特別枠B(共テ利用) | 約5 | ― | 40 | 8 | ― | 5.0倍 |
2026年度入試の一般選抜は、募集70名に対して2,254人が志願しました。募集人員で割ると32.2倍です。ところが実際には2,192人が受験して、264人が合格しています(正規181人+繰上83人)。受験者を合格者で割った実質倍率は8.3倍でした。
出典:愛知医科大学が公表した入試結果(2026年度入試)をもとに太宰府アカデミー集計(実質倍率=受験者数÷最終合格者数・繰上合格を含む)
共通テスト利用は志願倍率64.1倍に対して実質倍率12.7倍。学校推薦型(公募)は103人が受験して20人が合格で5.2倍です。年内入試がいちばん通りやすいという並びは、私立医学部でおおむね共通しています。条件(現役・評定・専願)が合う人にとっては、ここが最短ルートになります。
もうひとつ、全国81大学を同じ物差しでそろえた数字も置いておきます。文部科学省が公表している2025年度入試の実数では、愛知医科大学は志願3,351人・受験3,279人・合格327人で、実質競争倍率10.03倍。全81大学のなかで19番目でした(すべての選抜方式の合計)。10人受けて1人しか受からない入試です。
出典:文部科学省「医学部医学科の入学状況及び国家試験合格状況等について」(令和7年12月公表)1〜2ページをもとに太宰府アカデミー集計(2025年度入試)
一般選抜の入学者69人のうち59人が浪人経験者。合格率も浪人のほうが高い
「浪人してまで行く大学なのか」と聞かれることがあります。これも数字が出ています。

| 選抜 | 区分 | 受験者 | 合格者 | 合格率 | 入学者 |
|---|---|---|---|---|---|
| 一般 | 現役 | 597 | 56 | 9.4% | 10 |
| 一般 | 浪人 | 1,595 | 208 | 13.0% | 59 |
| 共通テスト利用 | 現役 | 302 | 23 | 7.6% | 4 |
| 共通テスト利用 | 浪人 | 653 | 52 | 8.0% | 13 |
| 学校推薦型(公募) | 現役 | 68 | 12 | 17.6% | 12 |
| 学校推薦型(公募) | 浪人 | 35 | 8 | 22.9% | 8 |
2026年度入試の一般選抜は、現役の合格率が9.4%(597人中56人)、浪人が13.0%(1,595人中208人)。共通テスト利用も学校推薦型も、3つの選抜すべてで浪人のほうが合格率は高くなっています。
出典:愛知医科大学が公表した入試結果(2026年度入試)をもとに太宰府アカデミー集計。大学の公表が「浪人内数」方式のため、現役の人数は総数から浪人を引いて算出しています
そして一般選抜で入学した69人のうち、59人(86%)が浪人を経験しています。浪人が例外ではなく、むしろ多数派です。同じ傾向は金沢医科大学・藤田医科大学の公表データでも確認できていて、「浪人だから不利」という話は、少なくとも入り口の段階では当てはまりません。
研修先としては、全国の大学病院で14番目に選ばれています
3つめの「卒業したあと相手にされないのでは」。ここがいちばん正直な数字が出るところだと思っています。
医師免許を取った人は、2年間の初期臨床研修をどこで受けるかを自分で選んで希望を出します。6年間そこで過ごした学生が、そのまま残りたいと思うかどうか。評判を測る材料としては、口コミよりずっと確かです。

| 順 | 大学病院 | 募集定員 | 第1希望者数 | 充足率 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 自治医科大学附属さいたま医療センター | 28人 | 39人 | 139.3% |
| 3 | 獨協医科大学病院 | 57人 | 52人 | 91.2% |
| 6 | 藤田医科大学病院 | 33人 | 27人 | 81.8% |
| 11 | 金沢医科大学病院 | 38人 | 28人 | 73.7% |
| 14 | 愛知医科大学病院 | 29人 | 20人 | 69.0% |
| 15 | 慶應義塾大学病院 | 51人 | 35人 | 68.6% |
| ― | (参考)全国の大学病院405プログラムの平均 | ― | ― | 37.1% |
愛知医科大学病院は募集29人に対して第1希望が20人で、充足率69.0%。全国405ある大学病院プログラムの平均37.1%を大きく上回り、募集定員10人以上の大学病院のなかで14番目でした。
出典:医師臨床研修マッチング協議会「2025年度 中間公表」をもとに太宰府アカデミー集計(充足率=第1希望者数÷募集定員)
内訳は次のとおりです。
| プログラム | 募集定員 | 第1希望者数 | 充足率 |
|---|---|---|---|
| 一般プログラム | 25人 | 19人 | 76.0% |
| 総合小児科医育成プログラム | 2人 | 1人 | 50.0% |
| 産婦人科プログラム | 2人 | 0人 | 0.0% |
| 合計 | 29人 | 20人 | 69.0% |
いちばん枠の大きい一般プログラムが定員25人に第1希望19人で76.0%。産婦人科プログラムは第1希望が0人でした。大学の人気というより、プログラム単位で選ばれているのが分かります。
この表でいちばん見てほしいのは、受験のときの偏差値の並びと、研修先としての人気が一致していないことです。順位は毎年動きますし、中間公表の段階なので最終結果とは差が出ます。それでも「卒業生が残りたがらない大学」ではないことは、はっきり読み取れます。
入学してからの6年間はどうか
入試の話だけでは片手落ちなので、入ったあとの数字も置いておきます。
| 指標 | 愛知医科大学 | 全国 |
|---|---|---|
| 入学者数(2019年度) | 116人 | 9,456人 |
| 6年ちょうどで6年次に在籍 | 84人 | 8,201人 |
| 6年ストレートの卒業率 | 72.4% | 85.4% |
| 医師国家試験 合格率(第119回・2025年) | 98.0% | 95.7% |
| 医師国家試験 合格率(第120回・2026年) | 91.3%(新卒93.6%) | 91.6%(新卒94.7%) |
文部科学省が2019年度の入学者を追いかけた調査では、入学した116人のうち84人が6年ちょうどで6年次に在籍し、そのまま卒業しています(72.4%)。全国平均の85.4%より低い数字です。一方で、その学年が受けた第119回医師国家試験の合格率は98.0%で、全国平均95.7%を上回りました。
出典:文部科学省「医学部医学科の入学状況及び国家試験合格状況等について」(令和7年12月公表)8〜9ページをもとに太宰府アカデミー集計(2019年度入学者の追跡)
直近の第120回(2026年2月実施)も併記しました。愛知医科大学は115人が受験して105人が合格=91.3%(新卒93.6%・既卒40.0%)。全国の総合計は91.6%、新卒平均は94.7%でした。
出典:厚生労働省「第120回医師国家試験の合格発表について」(2026年3月16日)
この2つの数字は、集計したところも対象も違います。上の98.0%は文部科学省が2019年度入学者を追った調査の一部(第119回)で、下の91.3%は厚生労働省が発表した学校別の合格状況(第120回)です。並べて引き算をするための数字ではありません。国家試験は年に1回なので、1年だけを見て判断しないでください。
6年ストレートの卒業率が全国平均を下回っている点は、隠さずに書いておきます。ただ、この数字は進級や卒業の判定がどれくらい厳格かでも動きます。大学にはそれぞれの教育方針があり、数字だけで良し悪しを語れるものではありません。数字は出しておくので、読み方はご自身で決めてください。
太宰府アカデミーの視点|検討するうえで見ておきたい3点
ここまでの数字を踏まえて、愛知医科大学を志望校として検討するなら見ておきたいポイントを3つ挙げます。
1つめ。倍率は、どの数字を見ているかを必ず確かめてください。同じ2026年度の一般選抜が、分母の取り方だけで32.2倍にも8.3倍にもなります。志願倍率は「その大学に人が集まっているか」を見る数字で、「自分が受かる確率」に近いのは実質倍率のほうです。倍率の定義は大学ごとに違い、受験者を分母にする大学もあれば志願者を分母にする大学もあります。結果ページを開いたら、まず定義を探すくせをつけておくと損をしません。
2つめ。学費は6年間で3,420万円です。初年度820万円、2年次以降が各520万円という内訳で、諸会費まで含めた総額は3,510万円になります。私立31校を6年間の学納金で並べると、いちばん安い国際医療福祉大学の1,850万円と、いちばん高い川崎医科大学の4,550万円のあいだで、愛知医科大学はほぼ真ん中(安いほうから16番目)にいます。総額が同じでも初年度に集中するか6年間に分散するかで資金計画はまるで変わるので、募集要項の納入時期まで見てください。なお公式の掲載額に年度の表記がないため、これは2026年8月時点の掲載額です。出願前に必ず最新の募集要項をご確認ください。
3つめ。繰上合格(補欠)の回り方が、年によって大きく振れます。一般選抜の1次補欠は、2025年度が27番、2024年度が106番、2023年度が89番、2021年度が94番まで回りました。2022年度以前には、補欠が全員合格になった年もあります。例年、繰上の可能性が高い1次補欠はおよそ120名です。補欠になっても最後まで諦める必要はない一方で、当てにして併願を組むのは危ない——その両方が言える大学です。入学手続きの締切と繰上の連絡時期を、併願校とセットでカレンダーに並べておいてください。
そのうえで、過去問は必ず解いてください。倍率も配点も、出題形式との相性が合わなければ点にはなりません。どの大学を選ぶにしても、そこだけは変わらない話です。
まとめ|「恥ずかしい」を裏づける数字は見つかりませんでした
愛知医科大学について、公表されている数字だけで確かめた結果をまとめます。
- ボーダー偏差値は1985年の37.5から2027年度予想の65.0へ。1985年の値が残る私立26校のなかで、上げ幅27.5ポイントは最大でした
- 2026年度一般選抜の実質倍率は8.3倍(受験2,192人・合格264人)。志願倍率32.2倍とは別の数字です
- 全81大学を同じ物差しでそろえると実質競争倍率10.03倍で19位(文部科学省・2025年度入試)
- 一般選抜の入学者69人のうち59人(86%)が浪人経験者。合格率も3つの選抜すべてで浪人が現役を上回りました
- 愛知医科大学病院の研修第1希望充足率は69.0%で、全国405の大学病院プログラムの平均37.1%の約2倍。大学病院のなかで14番目です
- 6年ストレートの卒業率は72.4%(全国85.4%)。その学年の第119回国試合格率は98.0%(全国95.7%)でした
最初の3つの疑問に戻ります。「昔は誰でも入れた」——1985年の37.5はたしかに低いですが、それは40年前の話です。「倍率30倍は言いすぎだろう」——言いすぎではなく、定義が違うだけでした。「研修先で相手にされない」——大学病院のなかで14番目に選ばれています。
この記事を書いたのは、川崎医科大学のときと同じ理由です。大学名を検索しただけで「恥ずかしい」という言葉が目に入る状態が、単純に嫌だからです。10人受けて1人しか受からない入試を突破した人にも、いまその大学で6年間を過ごしている人にも、失礼な話だと思っています。ここに並べた数字は全部、誰でも見られる公表資料から取りました。「恥ずかしい」と書いている人が、この数字を見たうえで書いているのかどうか。そこは考えてみてもいいと思います。
同じ問いを、他の大学でも調べました
「恥ずかしい」「やばい」と検索されている大学を、同じやり方で1校ずつ調べています。気になる大学があれば、こちらもどうぞ。数字はすべて大学と国の公表資料から取っています。
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- 岩手医科大学は「やばい」のか|偏差値は50年で52.5→62.5、実質倍率9.06倍
- 金沢医科大学は「恥ずかしい」のか|実質倍率19.97倍は全国5位という事実
- 埼玉医科大学は「恥ずかしい」のか|実質倍率24.54倍は全国2位
- 獨協医科大学は「恥ずかしい」のか|研修先の第1希望98.0%という事実
- 兵庫医科大学は「恥ずかしい」のか|国試97.0%は全国7位という事実
- 久留米大学は「恥ずかしい」のか|偏差値50.0→62.5・倍率12.15倍
- 東邦大学は「恥ずかしい」のか|6年で医師になる割合は全国27位
- 徳島大学は「恥ずかしい」のか|倍率1.6倍でも共テ85.6%
37.5から65.0へ動いた愛知医科が、いま全国のどこにいるのか。医学部偏差値ランキング2027(全81校)の一覧表で確かめられます。
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では、本日の記事は以上です。
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後藤 登(Goto Noboru)
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