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医学部の地域枠とは?離脱は4.1%・貸与額6.6倍差・義務9〜12年

2026年10月21日 更新

こんにちは、太宰府アカデミーで広報/完全個別指導コースを担当している後藤です。

「地域枠って、正直どうなんですか。いくら出るんですか」——学費の話になると、面談で必ずと言っていいほど出てくる質問です。検索候補にも「医学部 地域枠 デメリット」「地域枠 恥ずかしい」が並びます。

ところが、この「いくら」に答えるのが意外に大変です。地域枠のお金は、大学のホームページに書いてあることもあれば、都道府県のホームページにしか書いていないこともあるからです。同じ大学の地域枠でも県ごとに額が違い、大学が県の資金に上乗せしている枠もあれば、そもそもお金の付かない地域枠もあります。

そこで今回、47都道府県の案内・条例と、私立31校の募集要項を1つずつ当たり直して、6年間でいくら出るのか、何年働けば返さなくてよくなるのか、途中でやめたらいくら返すのかを、金額と年数で全部並べました(2026年9月時点・2027年度入試)。

− 地域枠って、結局いくら出るの?いちばん多いのはどこ?

− 私立でも、地域枠なら学費がほとんどかからないって本当?

− 途中でやめたら、いくら返すことになるの?

順番にお答えします。

医学部の地域枠とは?離脱は4.1%・貸与額6.6倍差・義務9〜12年の記事のアイキャッチ画像

この記事の目次

 

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医学部の地域枠とは|先に答えを4つ

地域枠は、卒業後に決められた都道府県で一定の年数働くことを約束して入る、医学部の入学枠です。文部科学省の調査(2025年度)では、入学定員9,270人のうち地域枠等の募集は1,847人(19.9%)、実際に地域枠等で入学したのは1,795人(19.4%)。80大学のうち71大学が設けていて、医学部に入る人のおよそ5人に1人が地域枠です。

そのうえで、お金の答えを先に4つ書きます。

  • ① お金は「もらう」のではなく「借りる」。ほとんどの地域枠には都道府県などの修学資金(貸与)が付き、決められた地域で決められた年数働くと、結果として返さなくてよくなります(返還免除)。「返済不要の奨学金」ではありません
  • ② 6年間の額は、都道府県・市の資金で676.2万〜4,480万円。6.6倍違う。いちばん大きいのは兵庫医科大学の「兵庫県推薦入学制度」で4,480万円。3,000万円以上の9枠は、すべて私立大学の地域枠です
  • ③ お金の付かない地域枠もある。福岡大学の地域枠推薦、久留米大学特別枠、兵庫医科大学の地域指定制です。東北医科薬科大学の定着枠(2027年度は計45名)も、大学からの貸与はありません
  • ④ 義務は9年が標準。やめると一括で返し、利息は年10%が大半。実際に義務から離脱した人は、14,173人中579人(4.1%)です

つまり「地域枠」という1つの制度があるわけではなく、都道府県・市・大学ごとに、額も年数も勤務先もばらばらです。「地域枠はいくら?」には、どこの地域枠かを言わないと答えられません。ここから先は、それを全部並べていきます。

▶ この記事の内容は、動画でも解説しています(YouTube)
【超貴重】医学部の地域枠は額が最大12.8倍|お金が出ない枠も

 

地域枠の修学資金はいくら?|6年で676.2万〜4,480万円・6.6倍

まず全体の幅です。都道府県や市の修学資金を6年間の総額で並べると、いちばん大きいものと小さいものはこうなります(入学料・授業料の相当額だけを出す資金は、あとで別に書きます)。

医学部の地域枠の修学資金の6年総額。兵庫医科大学の兵庫県推薦入学制度4,480万円、杏林大学の東京都地域枠4,420万円、北里大学の相模原市枠3,890万円、新潟県の月50万円枠3,660万円、岩手医科大学の地域枠A3,050万円、東北医科薬科大学の宮城A3,000万円。国公立は岐阜大学約1,790万円、沖縄県678万円、最小は青森県の自宅通学676.2万円で6.6倍の差
出典:各都道府県・相模原市・各大学の公式資料(2026年9月確認)。万円未満は四捨五入
資金(大学) 6年総額 学費(6年) 学費−貸与
兵庫医科(兵庫県推薦入学制度) 4,480万 3,700万 0円
杏林(東京都地域枠) 4,420万 3,700万 0円
北里(相模原市) 3,890万 3,890万 0円
日大・北里・獨協医科・帝京(新潟県) 3,660万 3,310〜3,909万 0〜249万
岩手医科(地域枠A) 3,050万 3,400万 350万
東北医科薬科(宮城A) 3,000万 3,700万 700万
日本医科(東京都地域枠) 2,920万 2,200万 0円
岐阜大学(地域医療コース) 1,790万 350万 0円
沖縄県(琉球大学など) 678万 350万 0円
青森県(自宅通学) 676万 大学による —

※都道府県・市の修学資金と東北医科薬科大学の宮城A(太字=私立の地域枠)。入学料・授業料相当だけの資金と、月5万円・義務3年の山梨県医師修学資金(第一種・6年360万円)は除いた(大学独自の奨学金は私立の一覧に載せた)。6年総額は万円未満を四捨五入。学費は各大学の学納金(2026・2027年度入学者)、国公立は国の標準額(入学料28.2万円+授業料53.58万円×6年)。「0円」は貸与が学費と同じか上回るもの(東京都は学生会費・父兄会費・傷害保険料が修学費に含まれない)。青森県医師修学資金は県外のどの大学でも使えるので、学費は大学による。出典:兵庫県・東京都・相模原市・新潟県・岩手県・岐阜県・沖縄県・青森県の修学資金の案内、東北医科薬科大学「2027年度学生募集要項」、各大学の学生納付金(2026年9月確認)

最大は兵庫医科大学の「兵庫県推薦入学制度」(1972年に始まった兵庫県の養成医制度)で6年4,480万円、最小は青森県医師修学資金の自宅通学(6年676.2万円)で、差は6.6倍です。入学料と授業料の相当額だけを出す弘前大学医師修学資金の一般枠(6年349.68万円)まで入れると、12.8倍になります。

この差は「気前のいい県かどうか」では決まりません。私立大学の学費まで引き受けるかどうかで決まります。3,000万円以上の9枠は、兵庫医科(兵庫県)・杏林(東京都)・北里(相模原市)・日本大学/北里/獨協医科/帝京(新潟県の月50万円)・岩手医科(地域枠A)・東北医科薬科(宮城A)で、すべて私立。これらの大学の6年の学費(3,310万円〜3,909万円)の8割以上を肩代わりするので、額が跳ね上がります。

一方、国公立の大学に地域枠で入ったときの額は、多くが700万〜1,500万円台です(最小は沖縄県の地域枠 約678万円、最大は岐阜大学の地域医療コース 約1,790万円)。国公立の6年の学費は国の標準額で349.68万円(入学料28.2万円+授業料53.58万円×6年)なので、学費を上回る額が出ていることになります。額の大小だけで有利・不利を比べず、「学費のうちいくら残るか」で見てください。

私立で貸与が学費と同じか上回るのは、兵庫医科の兵庫県推薦入学制度(学費3,700万円に対して4,480万円)、杏林の東京都地域枠(3,700万円に対して4,420万円)、北里の相模原市枠(学費と同じ3,890万円)など。岩手医科の地域枠Aは、県が「学納金3,400万円−貸与3,050万円=実質負担350万円(別に諸会費40万円程度)」と案内しています。東北医科薬科の宮城Aは、学費3,700万円に対して自己負担700万円です。

 

私立医学部の地域枠一覧|6年総額の大きい順(25大学・81枠)

ここからは私立医学部の地域枠を、6年総額の大きい順に全部並べます。県・市の資金が付く地域枠と、大学が独自に出す修学資金の枠を合わせると、私立25大学に81枠ありました。「◯◯大学 地域枠」で調べている方は、表の中で大学名を探してください。

読むときの注意が2つあります。人数は行ごとに年度が違います(2027年度の募集要項が出ている大学と、県の案内がまだ2026年度のままのところが混ざっています)。そして同じ県の資金でも、大学によって額が違うことがあります(新潟県・東京都・大阪府・愛知県。このすぐあとで説明します)。

■ 3,000万円以上(学費の8割以上が出る9枠)

大学 出どころ 6年総額 人数(年度)
兵庫医科 兵庫県 4,480万 5(2026)
杏林 東京都 4,420万 10(2027)
北里 相模原市 3,890万 2(2026)
日本大学 新潟県(月50万) 3,660万 4(2026)
北里 新潟県(月50万) 3,660万 3(2026)
獨協医科 新潟県(月50万) 3,660万 2(2026)
帝京 新潟県(月50万) 3,660万 1(2026)
岩手医科 岩手県(地域枠A) 3,050万 15(2027)
東北医科薬科 大学(宮城A) 3,000万 10(2027)

※出どころ=お金を出すところ(都道府県・市・大学)。人数の( )はその人数の年度で、「現行」は大学のページに年度の書かれていないもの。順天堂の東京都地域枠は都の案内が6人、大学の2027年度要項が8名(認可申請予定)。新潟県の枠は2026年度入試の県の一覧による。2027年度の人数の多くは臨時定員の認可を待つ予定の数で、変わることがある。出典:各都道府県・相模原市の修学資金の案内、各大学の学生募集要項(2026年9月確認)

9枠のうち4枠は新潟県の月50万円の枠です。日本大学(糸魚川・小千谷・三条・阿賀野)、北里(佐渡・村上・南魚沼)、獨協医科(見附・燕/弥彦)、帝京(魚沼)に、新潟県内の市町村ごとの枠が用意されていて、5年をその市町村の病院で働く形になっています。

■ 2,000万〜3,000万円未満(17枠)

大学 出どころ 6年総額 人数(年度)
杏林 新潟県(月40万) 2,930万 4(2026)
日本医科 東京都 2,920万 5(2027)
順天堂 東京都 2,800万 6か8(2027)
岩手医科 岩手県(地域枠D) 2,200万 7(2026)
獨協医科 栃木県 2,200万 10(2027)
日本大学 栃木県 2,200万 2(2027)
慶應義塾 栃木県 2,200万 1(2027)
岩手医科 岩手県(地域枠B) 2,160万 8(2027)
岩手医科 岩手県(地域枠C) 2,160万 5(2026)
東邦 新潟県(月30万) 2,160万 8(2026)
昭和医科 新潟県(月30万) 2,160万 7(2026)
東京医科 新潟県(月30万) 2,160万 3(2026)
日本医科 新潟県(月30万) 2,160万 2(2026)
金沢医科 新潟県(月30万) 2,160万 2(2026)
順天堂 新潟県(月30万) 2,160万 1(2026)
岩手医科 秋田県 2,160万 非公表
愛知医科 愛知県+大学の上乗せ 2,010万 5(2027)

※愛知医科は愛知県の1,110万円に大学の900万円を足した額(人数は2027年度入学の約5名)。岩手医科の秋田県地域枠は人数非公表

栃木県の2,200万円は、獨協医科(10名)・日本大学(2名)・慶應義塾(1名)の3大学に共通です。日本大学は2027年度から学校推薦型(公募制)で2名を募集し、慶應義塾は2026年度入試から始まった栃木県地域枠1名が、唯一の地域枠です。

■ 1,000万〜2,000万円未満(47枠)

大学 出どころ 6年総額 人数(年度)
金沢医科 大学独自 1,980万 —
大阪医科薬科 大阪府+大学の上乗せ 1,920万 2(2027)
北里 山梨県 1,800万 2(2027)
昭和医科 山梨県 1,800万 2(2027)
帝京 群馬県 1,800万 2(2027)
東京医科 群馬県 1,800万 2(2027)
杏林 群馬県 1,800万 1(2027)
順天堂 群馬県 1,800万 1(2027)
東京医科 茨城県 1,800万 8(2027)
北里 茨城県 1,800万 4(2027)
昭和医科 茨城県 1,800万 4(2027)
日本大学 茨城県 1,800万 3(2027)
帝京 茨城県 1,800万 2(2027)
日本医科 茨城県 1,800万 2(2027)
杏林 茨城県 1,800万 2(2027)
獨協医科 茨城県 1,800万 2(2027)
近畿大学 茨城県 1,800万 2(2027)
順天堂 茨城県 1,800万 2(2027)
帝京 福島県 1,792万 2(2027)
兵庫医科 大学独自 1,710万 3(2027)
日本医科 千葉県 1,440万 7(2026)
東邦 千葉県 1,440万 5(2027)
順天堂 千葉県 1,440万 5(2027)
帝京 千葉県 1,440万 2(2027)
近畿大学 和歌山県 1,440万 1(2027)
埼玉医科 埼玉県 1,440万 19(2027)
順天堂 埼玉県 1,440万 10(2027)
日本大学 埼玉県 1,440万 5(2026)
北里 埼玉県 1,440万 2(現行)
日本医科 埼玉県 1,440万 2(2026)
東京医科 埼玉県 1,440万 2(2027)
獨協医科 埼玉県 1,440万 2(2027)
近畿大学※ 奈良県 1,440万 2(2024)
昭和医科 長野県 1,440万 2(2026)
近畿大学※ 長野県 1,440万 2(2027)
近畿大学 静岡県 1,440万 10(2027)
昭和医科 静岡県 1,440万 8(2026)
順天堂 静岡県 1,440万 5(2027)
日本医科 静岡県 1,440万 4(2026)
日本大学 静岡県 1,440万 3(2026)
東海※ 静岡県 1,440万 3(2025)
帝京 静岡県 1,440万 2(2027)
関西医科 静岡県 1,440万 2(2027)
川崎医科 静岡県 1,440万 —
東海※ 大学独自 1,200万 9(2025)
藤田医科 愛知県 1,110万 10(2023)
東北医科薬科 秋田県(自宅外/自宅) 748〜1,108万 7(2026)

※大阪医科薬科は大阪府の720万円に大学の1,200万円を足した額(計算)。※の大学は資料が2025年度以前か「予定」の段階で、目安(東海=2025年度の要項、近畿大学の奈良県枠=2024年度の実績、近畿大学の長野県枠=県のページも予定)。金沢医科の大学独自の資金は人数が未確認

いちばん枠が多いのがこの帯です。茨城県(1,800万円)は10大学、静岡県(1,440万円)は9大学、埼玉県(1,440万円)は7大学に枠を持っていて、1つの県の資金が関東・中部・近畿の私立にまたがっています。茨城県の杏林・日本医科の各2名は入試の別枠ではなく、一般選抜の合格者から県が審査して選ぶ形です。

■ 1,000万円未満(8枠)

大学 出どころ 6年総額 人数(年度)
川崎医科 長崎県 969万 —
関西医科 大阪府 720万 2(2027)
近畿大学 大阪府 720万 1(2026)
聖マリアンナ医科 神奈川県 720万 7(2026)
北里 神奈川県 720万 5(現行)
東海※ 神奈川県 720万 5(2025)
久留米 福岡県 720万 3(2027)
関西医科 大学独自 600万 10(2027)

※関西医科の大学独自=特別枠奨学金(年100万円まで)。大阪府・神奈川県・福岡県の資金は月10万円

大阪府・神奈川県・福岡県の資金は6年720万円(月10万円)です。対象の私立の学費は2,100万円〜3,890万円なので、残りは家庭で用意することになります。

表に出てこない私立は7校です。自治医科・産業医科は入学者全員に修学資金が出る大学(このあと説明します)、福岡大学は地域枠にお金が付きません。国際医療福祉・東京慈恵会医科・東京女子医科は入試の地域枠がありませんが、千葉県の一般枠(大学の推薦が必要・6年1,440万円)などに在学中に応募できます(東京女子医科は2027年度に地域枠を新設する予定で、内容は未公表)。川崎医科は、2027年度の静岡県・長崎県地域枠が「設置協議中」で、岡山県地域枠には県の貸与がないため、この一覧に入れていません(3つの枠の額と条件は、このあと表にまとめました)。

同じ県でも大学で額が違う|新潟は1,080万〜3,660万円

同じ県の資金でも、大学ごとに額が違う県があります。

都府県 大学 出し方 6年総額
新潟県 新潟大学 月15万円 1,080万
新潟県 昭和医科・東邦・東京医科 月30万円 2,160万
新潟県 日本医科・金沢医科・順天堂 月30万円 2,160万
新潟県 杏林 月40万円(初月90万円) 2,930万
新潟県 日本大学・北里・獨協医科・帝京 月50万円(初月110万円) 3,660万
東京都 順天堂 学費の全額+月10万円 2,800万
東京都 日本医科 学費の全額+月10万円 2,920万
東京都 杏林 学費の全額+月10万円 4,420万
大阪府 大阪公立・関西医科・近畿大学 月10万円 720万
大阪府 大阪医科薬科 府720万円+大学1,200万円 1,920万
愛知県 名古屋・名古屋市立・藤田医科 県の資金(初年度は月17.5万円) 1,110万
愛知県 愛知医科 県1,110万円+大学900万円 2,010万

※新潟県は2026年度入試の県の一覧(医師ナビにいがた)、東京都は2027年度入学試験の都のリーフレット、大阪府・愛知県は府県のページと大阪医科薬科大学・愛知医科大学の要項による

新潟県は同じ「新潟県医師養成修学資金」が4段階に分かれていて、新潟大学(月15万円・1,080万円)と月50万円の4大学(3,660万円)では3.4倍の差があります。月50万円の4大学は市町村と、杏林は厚生連と組んだ枠で、それぞれ5年を指定の市町村の病院で、3年を厚生連の病院で働く決まりです。東京都は「学費の全額+生活費月10万円(6年720万円)」なので、額は大学の学費で決まり、杏林4,420万円・日本医科2,920万円・順天堂2,800万円になります。大阪府と愛知県は、大学が県の資金に上乗せしているかどうかで差がつきます。

大学が出すお金|県の資金への上乗せと大学独自の資金

大学 資金 6年総額 義務
東北医科薬科 宮城A(一般選抜10名) 3,000万 研修のあと10年
愛知医科 愛知県枠に900万を上乗せ 計2,010万 10年
金沢医科 特別奨学金(指定地域) 1,980万 5年
大阪医科薬科 大阪府枠に1,200万を上乗せ 計1,920万 9年以上
兵庫医科 特定診療科(エキスパート) 1,710万 5年以上
東海※ 特別貸与奨学金 1,200万 付属病院で6年
関西医科 特別枠奨学金(特別枠推薦) 600万 5年以上
埼玉医科 埼玉県枠の入学時550万を免除 (免除)550万 —

※東北医科薬科の宮城Aは大学の制度(原資は宮城県の復興基金)。東海は2025年度の要項による目安。埼玉医科の550万円は貸与ではなく免除(埼玉県の奨学金の貸与が決まった人が対象)。出典:各大学の学生募集要項・奨学金の案内(2026年9月確認)

大阪府の地域枠は、関西医科・近畿大学では府の720万円(大学の上乗せは確認できず)ですが、大阪医科薬科は大学が年200万円(6年1,200万円)を上乗せして1,920万円。愛知県の地域枠も、藤田医科は県の1,110万円、愛知医科は大学の900万円が加わって2,010万円(そのぶん義務は10年)です。こうした大学の上乗せは県のページには出てこず、大学の募集要項や学費のページにしか書かれていません。

大学が独自に出す資金もあります。兵庫医科の特定診療科医師養成奨学制度(エキスパート養成入試・3名以内・1,710万円)は、外科系と救急科で本学に5年以上勤めるもので、診療科の変更や途中の離脱はできません。関西医科の特別枠奨学金(10名・年100万円まで・6年600万円)は、奨学金を受けなくても研修2年+本学で3年以上の勤務が条件になります。埼玉医科は、埼玉県の地域枠で県の奨学金が決まった人の入学時の550万円(入学金・初年度の実験実習費など)を免除しています。

お金が出ない地域枠|福岡大学・久留米大学特別枠・兵庫医科の地域指定制

大学 枠 人数(年度) 卒業後の約束
福岡大学 地域枠推薦 10(2027) 福岡大学の研修(初期2年+後期3年)
久留米 特別枠推薦 約20(2027) 福岡県内で研修2年→久留米大学病院で4年
兵庫医科 推薦(地域指定制) 5以内(2027) 就労義務なし(大学が明記)
東北医科薬科 定着枠(一般・総合型) 25・20(2027) 入学後に東北5県の資金へ応募

※出典:福岡大学「令和9年度学校推薦型選抜入試要項」、久留米大学「2027年度学校推薦型選抜共通募集要項」、兵庫医科大学、東北医科薬科大学「2027年度学生募集要項」

「地域枠=県の奨学金が出る」とは限りません。文部科学省の「地域枠等」も、奨学金と連動する枠と、連動しないけれど地域医療に従事する意思を持つ人の枠の両方を含んでいます。福岡大学の地域枠推薦(10名)は九州(沖縄を含む)・山口の出身か居住が条件で、福岡大学の卒後研修プログラム(初期2年+後期3年)への参加を確約する枠。返還や利息の決まりはありません。久留米大学特別枠(約20名)は出身地を問わず、福岡県内で臨床研修2年のあと久留米大学病院で4年働く誓約。兵庫医科の地域指定制(5名以内)は「本学での就労義務などはありません」と大学が明記しています。

ちなみに福岡県の資金(福岡県地域医療医師奨学金・6年720万円)が付くのは、久留米大学の福岡県特別枠(2027年度は3名)です。九州大学や福岡大学ではありません。地元でもよく誤解されるところです。獨協医科の地域特別枠(10名)は、お金が付くかどうかを公式資料で確かめられませんでした。

川崎医科大学|静岡1,440万円・長崎約969万円、岡山県地域枠は県の貸与なし

同じ大学の中に「県のお金が出る地域枠」と「出ない地域枠」が並んでいる例が、川崎医科大学(岡山県倉敷市・6年の学費4,550万円)です。地域枠選抜は岡山県・静岡県・長崎県の3つ。2027年度の学生募集要項には「静岡県及び長崎県地域枠で入学する者には各自治体から奨学金が貸与されます」とあり、岡山県地域枠には県の貸与の記載がありません。

項目 岡山県地域枠 静岡県地域枠 長崎県地域枠
募集(2027年度) 約10名 設置協議中 設置協議中
入学者(2026年度) 10名 10名 4名
県の貸与(6年) なし 1,440万円(月20万円) 最大9,686,480円
卒業後の約束 大学の病院などで6年の研修(初期研修を含む) 県が指定する県内の公的病院などで9年 県が指定する病院などで9年(うち半分以上は離島・へき地等)
やめたとき —(貸与がない) 一括返還・年10% 一括返還・年14.5%

※出典:川崎医科大学「2027年度 学生募集要項」p.22〜24(2026年6月作成)、同「入試データ」(2026年度の入学者)。静岡県・長崎県地域枠の2027年度の募集人員は「設置協議中」(2026年9月28日時点)。額と条件は2026年度の要項と同じ。「9年」は6年借りた場合(貸与期間の1.5倍)。岡山県地域枠は要項に県の貸与の記載がない

静岡県地域枠は、静岡県医学修学研修資金が月20万円(1年分をまとめて本人の口座に振り込み)で6年1,440万円。卒業後2年以内に医師免許を登録してすぐ初期研修を始め、県が指定する県内の公的医療機関などで貸与期間の1.5倍(6年なら9年)働くと返還が免除されます。期限は卒業後16年で、果たせなければ一括返還・年10%。留年・休学・停学の年は貸与されません。

長崎県地域枠は、長崎県医学修学資金が1年目173万9,580円(入学料31万200円・授業料58万9,380円・生活費84万円)、2年目142万9,380円、3〜6年目は図書費20万円が加わって各162万9,380円で、6年最大9,686,480円。入学料と授業料は、長崎県の「国立大学の標準額の1.1倍以内」という上限どおりの額です。初期研修は知事が指定する病院(長崎医療センターなど)で行い、貸与期間の1.5倍(うち半分以上は離島・へき地など)を県の指定する医療機関で働くと免除。果たせなければ一括返還で、利息は年14.5%です。

岡山県地域枠(約10名)は、県のお金が出ない代わりに、卒業後に大学の附属病院などで初期研修を含む6年の研修をし、将来は岡山県内で地域医療に携わると約束する枠です。学納金は一般選抜と同じ6年4,550万円です。総合型選抜の中国・四国地域出身者枠(約20名)と霧島市地域枠(約1名)も、要項に修学資金の記載はなく、同じ6年の研修を約束します。

静岡県と長崎県の枠は、2027年度の要項では募集人員が「設置協議中」です(2026年9月28日時点)。2026年度の要項も同じ表記でしたが、2026年度は静岡県地域枠10名・長崎県地域枠4名が入学しています(大学の入試データ)。出願する年の枠の有無と人数は、大学の発表で確かめてください。

このほか大学の制度として「川崎学園良医育成支援奨学金」があります。附属病院・総合医療センター・大学が指定する臨床研修病院(地域枠選抜などの入学者)で初期研修をすることが決まって申請した医学生に、国家試験の合格後200万円を貸与し、そこで初期臨床研修を終えれば返さなくてよくなる制度です。

東北医科薬科大学|2027年度から大学のお金は宮城Aの10名だけ

地域枠を語るうえで外せないのが東北医科薬科大学です。東日本大震災のあとの東北の医師不足に対応するため2016年に新設された医学部で、文部科学省の2025年度の調査では定員100名のうち55名が地域枠(私立で1位)。55名すべてが恒久定員の中にあります。

大学自身が出すのが「修学資金枠 宮城A」(一般選抜・10名)で、6年3,000万円(年500万円)。原資は、クウェート国から寄贈された原油をもとに宮城県が受けた復興基金のうち90億円です。学費3,700万円に対して自己負担は700万円。ただし義務は、臨床研修2年を終えたあとに宮城県知事が指定する医療機関で10年、合わせて実質12年です。勤務先の病院が医師1人あたり年300万〜375万円を負担して次の学生の資金に回す「資金循環型」で、やめるときは2か月以内に全額+年10%を返します。

そして2027年度入試から枠が変わりました。2027年度の学生募集要項では、一般選抜は宮城A 10名・東北5県定着枠25名・一般枠40名。大学の修学資金は宮城Aだけになり、2026年度まであった大学の1,500万円(旧B方式)はなくなりました。東北5県定着枠(25名)と総合型選抜の東北地域定着枠(20名)の人は、入学後1年次に宮城県以外の東北5県の修学資金に応募します。2026年度の実績では、青森1,108.2万円・岩手(市町村)2,200万円・岩手(医療局)2,160万円・秋田1,108.2万円・山形1,200万円・福島(へき地)1,792万円など。どこにも採用されなければ、お金がないまま東北5県の医療機関で5年働く義務が残ります。

「東北医科薬科大学なら3,000万円借りられる」と書いてあるページを見かけたら、年度を確かめてください。2027年度入試で当てはまるのは宮城Aの10名だけです。

入学者全員に出る大学|自治医科2,300万円・産業医科1,919万円

大学 6年の貸与 学費(6年) 義務
自治医科 2,300万 2,260万 9年(半分はへき地等)
産業医科 1,919万 3,049万 9年(産業医2年以上)
防衛医科大学校(参考) 学費0円+月16.1万 0円 9年(離職で償還金)

※自治医科=学生納付金2,260万円+入学時学業準備費40万円。産業医科=産業医学振興財団の修学資金(1,919.32万円)。防衛医科大学校は文部科学省の大学ではないので参考。出典:自治医科大学・産業医学振興財団・防衛医科大学校の公式ページ

地域枠とは別に、入学した全員に修学資金が出る私立大学が2つあります。自治医科大学は学生納付金2,260万円+入学時学業準備費40万円の計2,300万円を全員に貸与し、出願した都道府県の知事が指定する公立病院などで9年(うち半分はへき地など)働くと返還が免除されます。産業医科大学は産業医学振興財団が1,919.32万円を貸与し、産業医などとして9年(うち2年以上は産業医)働くと免除されます(学費3,049万円との差は1,129.68万円)。参考までに、防衛医科大学校は学費がかからず、学生手当が月161,000円出ます(卒業後9年。9年未満で離職すると償還金があり、2025年3月卒業生の最高額は4,421万円)。

自治医科大学は文部科学省の地域枠の調査の対象外、産業医科大学は同じ調査で「地域枠0」ですが、どちらも全員に修学資金がある大学です。自治医科大学の9年の中身と返すときの条件は、自治医科大学の義務年限9年|2,300万円を返す条件に詳しく書きました。

 

都道府県別の医師修学資金一覧|47都道府県の6年総額・義務・利率

次は都道府県から見た一覧です。「国公立生」は国公立の大学に地域枠で入ったときの6年総額、「私立生」は私立の大学の地域枠に付く額、「義務・利率」は返還が免除されるまでに働く年数と、途中でやめたときに付く利息(年率)です。

6年総額は、県が総額を示していないものは月額×72か月+入学時の額などで計算し、万円未満を四捨五入しました。上限の決まっている制度は上限で計算しています。「—」は該当する枠がない、「貸与なし」は地域枠はあっても県のお金が付かない、「未確認」は公式資料で額を確かめられなかったもの、「※」は資料の年度が古いなどで目安の額です。どの県にどの医学部があるかは、医学部のある大学は全国81校|都道府県順の一覧にまとめています。

北海道・東北|676万〜3,050万円

都道府県 国公立生 私立生 義務・利率
北海道 1,214万 — 9年・違約金10%
青森県 350〜1,070万 676〜1,108万 9年・無利息/10%
岩手県 1,440万 2,160〜3,050万 9〜11年・9%
宮城県 720万 3,000万 9〜12年・10%
秋田県 748〜1,108万 748〜2,160万 9年・10%
山形県 1,200万 1,200万 9年・10%
福島県 1,108〜1,165万 1,792万 9年・10%

※青森の350万は弘前大学医師修学資金の一般枠(入学料・授業料相当だけ)。宮城の国公立720万は東北大学の宮城県地域枠で、県は「2026年度のみの時限措置」と明記。宮城の私立3,000万は東北医科薬科大学の宮城A(大学の制度)。北海道は年利ではなく貸付額の10%の違約金

岩手医科大学の地域枠A(3,050万円)と、東北医科薬科大学の宮城A(3,000万円・大学の制度)が大きく、国公立生は720万円(宮城県・東北大学)〜1,440万円(岩手県)。山形県は大学を問わない資金で、山形大学の地域枠の人は借りることが必須になっています。

関東|720万〜4,420万円

都道府県 国公立生 私立生 義務・利率
茨城県 1,440万 1,800万 9年・10%
栃木県 — 2,200万 9年・10%
群馬県 748〜1,108万※ 1,800万 10年・10%
埼玉県 未確認 1,440万 9年・10%
千葉県 1,080万 1,080〜1,440万 9年・10%
東京都 — 2,800〜4,420万 9年・10%
神奈川県 720万 720〜3,890万 9年・10%

※神奈川の私立3,890万は相模原市(北里大学)。埼玉の国公立(東京科学大学の埼玉県枠)は額を確かめられず

東京都(2,800万〜4,420万円)と栃木県(2,200万円)は私立だけに枠があり、茨城県は国立1,440万円・私立1,800万円と、私立のほうが月5万円多く出ます。群馬県は義務が10年(貸与期間の5/3)で、返すのが遅れたときの利率は年10.75%です。

中部|1,070万〜3,660万円

都道府県 国公立生 私立生 義務・利率
新潟県 1,080万 2,160〜3,660万 9年・10%
富山県 1,070万 — 11年・5%
石川県 1,440万 — 9年・10%
福井県 1,080万 — 9年・10%
山梨県 1,440万 1,800万 9年・10%
長野県 1,440万 1,440万 9年・10%
岐阜県 1,070〜1,790万 — 9年・10%
静岡県 1,440万 1,440万 9年・10%
愛知県 1,110万 1,110〜2,010万 9〜10年・10%

※富山は研修のあとに9年(合わせて11年)、利子率5%(年率かは案内に明記なし)。愛知の私立2,010万は愛知医科大学の上乗せを含む

新潟県は県の中だけで1,080万〜3,660万円(3.4倍)。山梨県の私立1,800万円は2027年度以降の新規貸与からで、2026年度は国公私とも月13万円(6年936万円)でした。

近畿|720万〜4,480万円

都道府県 国公立生 私立生 義務・利率
三重県 770万 — 9年・10%
滋賀県 1,080万 — 9年・10%
京都府 1,080万 — 9年・10%
大阪府 720万 720〜1,920万 9年・10%
兵庫県 1,151万 4,480万 9年・10%
奈良県 1,468〜1,520万 1,440万※ 9年・10%
和歌山県 720〜1,080万 1,440万 9年・3%

※大阪の私立1,920万は大阪医科薬科大学の上乗せを含む(計算)。兵庫の岡山大学の兵庫県枠は額を確かめられず

兵庫医科大学の4,480万円が全国で最大です。兵庫県推薦入学制度は2026年度に5名(うち2名は臨時定員)で、2027年度の要項は例年12月に県が公表します。和歌山県は途中でやめたときの利率が年3%と低め。奈良県の近畿大学の枠は2024年度の実績(2027年度の要項では確かめられず)なので目安です。

中国・四国|864万〜1,440万円

都道府県 国公立生 私立生 義務・利率
鳥取県 864万※ — 6年・無利息
島根県 1,070万 — 9年・10%
岡山県 1,440万 貸与なし 9年・未確認
広島県 1,440万 — 9年・法定3%
山口県 1,080万※ — 9年・10%
徳島県 1,070万※ — 9年・10%
香川県 864万 — 9年・未確認
愛媛県 1,070万 — 9年・未確認
高知県 未確認 — 未確認

※広島は法定利率(2023年4月時点で年3%)。岡山の私立=川崎医科大学の岡山県地域枠(約10名)は県の貸与なし(2027年度学生募集要項)

国公立生向けが中心です。鳥取県は義務が貸与期間と同じ6年で、利息がありません(資料の年度が不明なので目安)。広島県の利率は民法の法定利率で、法定利率は3年ごとに見直されます。高知県は、資料から月額の関係が読み取れず、額を確かめられませんでした。

九州・沖縄|678万〜1,038万円

都道府県 国公立生 私立生 義務・利率
福岡県 — 720万 9年・10%
佐賀県 765万 — 11年・未確認
長崎県 934万 969万 9年・14.5%
熊本県 890万 — 9年・10%
大分県 710万 — 9年・未確認
宮崎県 748万 — 9年・未確認
鹿児島県 940万 — 9年・10%
沖縄県 678〜1,038万 — 4年※・未確認

※沖縄は規則上4年(6年借りた場合)。キャリア形成プログラム上は研修を含め9〜12年。長崎の私立969万は国立以外の上限(1.1倍)で計算(川崎医科大学の2027年度学生募集要項も長崎県地域枠は6年最大9,686,480円。枠は設置協議中)。長崎大学の地域枠(37名)に付く資金は確かめられず。熊本は授業料相当を国の標準額で計算(熊本大学は2027年度から授業料を59.46万円に改定。県の額が追随するかは未確認)

※6年総額は、県が総額を示していないものを月額×72か月+入学時の額などで計算し、万円未満を四捨五入(上限のある制度は上限で計算)。「※」は資料の年度が古いなど確認度が低い目安。出典:47都道府県の医師修学資金の案内・条例・規則(2026年9月確認)

九州・沖縄は国公立生向けが中心で、約678万〜約1,038万円です。福岡県の資金が付くのは久留米大学の福岡県特別枠(3名)だけ。長崎県は途中でやめたときの利率が年14.5%で全国でいちばん高く、2026年度の募集は1名程度です。

地域枠で入らなくても応募できる修学資金

地域枠の入試で入らなくても、入学後に応募できる資金があります。

都道府県 対象 6年総額 義務・利率
青森県 県外の大学に通う人(自宅外/自宅) 1,108/676万 9年・無利息
岩手県 医療局 一般枠(国公立/私立) 1,440/2,160万 9年・9%
岩手県 市町村 一般(国公立/私立) 1,440/2,200万 研修後6年/9年・9%
岩手県 産婦人科特別枠(大学不問) 2,880万 9年・未確認
山形県 大学不問(山形大の地域枠は必須) 1,200万 9年・10%
福島県 へき地(県立医大以外の大学) 1,792万 9年・10%
千葉県 一般枠(8大学・大学の推薦) 1,440万 9年・10%
千葉県 ふるさと(千葉出身で県外の大学) 1,080万 9年・10%
山梨県 一般枠(全大学・国公立/私立) 1,440/1,800万 9年・10%
山梨県 第一種(大学不問・月5万円) 360万 3年・10%
岐阜県 第2種(地域枠以外の医学生) 720万 —・10%
静岡県 慈恵医大の在学生 1,440万 9年・10%
三重県 一般枠(出身地・大学不問) 770万※ 9年・10%
滋賀県 大学不問(2026年度創設) 1,080万 9年・10%
島根県 全国枠(全国の大学) 1,070万 9年・10%
長崎県 医学部の在学生(国立/国立以外) 934/969万 9年・14.5%

※県の審査があり、貸与は保証されない。人数は県ごとに数名〜十数名。千葉の一般枠の8大学には東京慈恵会医科・東京女子医科・国際医療福祉を含む。三重は資料の年度が古い目安。岐阜の第2種は義務の年数を確かめられず。出典:各県の修学資金の案内(2026年9月確認)

青森県(県外の大学に通う医学生)、山形県(大学を問わない)、福島県のへき地医療等(県立医大以外の全国の大学)、千葉県のふるさと医師支援コース(千葉出身で県外の大学)、山梨県の一般枠(すべての大学)、長崎県(医学部の在学生)などです。ただし県の審査があり、貸与は保証されません。一般選抜で私立に入った人にも道がある、という意味で覚えておいてください。

 

返さなくてよくなる条件|義務は9年が標準、群馬10年・宮城Aは実質12年

修学資金は、決められた地域・病院で決められた年数働くと返還が免除されます。その年数を並べました。

医学部の地域枠で返還が免除されるまでに働く年数。標準は貸与期間の1.5倍の9年で、東北医科薬科大学の宮城Aは研修2年のあとに10年で実質12年、岩手県の地域枠A・佐賀県・富山県は11年、群馬県は10年、鳥取県は6年
出典:各都道府県・各大学の公式資料(2026年9月確認)
資金・枠 義務 数え方
東北医科薬科 宮城A 実質12年 研修2年のあとに10年(資金循環型)
岩手県 地域枠A 11年 研修を含む・17年以内に
佐賀県 11年 研修2年+9年
富山県 11年 研修のあとに9年
群馬県 10年 貸与期間の5/3・研修を含む
大多数の都道府県 9年 貸与期間の1.5倍・研修を含む
鳥取県※ 6年 貸与期間と同じ(猶予は9年以内)
大学独自(関西医科・兵庫医科・金沢医科) 5年 関西医科・兵庫医科は研修を含め5年以上
沖縄県(規則上) 4年 プログラム上は研修を含め9〜12年

※鳥取は資料の年度が不明な目安。愛知医科大学の上乗せ(大学の制度)も10年(研修2年+専門研修3年+県内5年)。出典:各都道府県・各大学の公式資料(2026年9月確認)

全国の標準は「貸与期間の1.5倍」=6年借りたら9年で、多くはこの9年に初期臨床研修の2年が入ります。そこから外れるのが、東北医科薬科大学の宮城A(研修のあとに10年=実質12年)、岩手県の地域枠A・佐賀県・富山県(11年)、群馬県(10年)です。短い側には、鳥取県(6年)や大学独自の資金(関西医科・兵庫医科・金沢医科の5年以上)があります。

年数だけでなく「いつまでに勤め終えるか」の期限も違います。山梨県は免許を取ってから15年以内、静岡県は卒業後16年以内、岩手県の地域枠Aは17年以内に11年、広島・山口・島根・徳島は12年以内、といった具合です。期限のなかで勤め終えればよいので、専門研修などのために一時中断して戻る人もいます(中断の数字はあとで出します)。

勤務先や診療科の縛りもあります。東京都の場合は、出身大学の都内の附属病院で臨床研修2年を修了し、そのあと小児・周産期・救急・へき地医療のいずれかで都の指定する医療機関に7年(領域は本人が選べる)。国の資料では、臨時定員の地域枠978枠のうち410枠(41.9%)が、診療科の特定(推奨を含む)を条件にしています(2024年度の臨時定員で集計・文部科学省医学教育課調べ)。

留年したときの扱いにも注意が要ります。義務の年数が「借りた年数の1.5倍」で決まる制度では、留年した年も借り続けると義務が延びる計算です。この点は医学部の地域枠は入りやすい?合格最低点を36組で比較の「地域枠の義務と返還」の節に書きました。大学ごとの留年の多さは医学部の留年率・進級率・卒業率・国試合格率ランキング2025で確かめられます。

 

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地域枠のデメリットは途中でやめたとき|一括返還・利息は年10%が39資金

地域枠でいちばん重いのはここです。決められた勤務を果たさずにやめると、借りた修学資金をまとめて返すのが原則で、多くの制度では利息が付きます。途中でやめたときの利率を、資金ごとに数えました。

医学部の地域枠の修学資金を途中でやめたときの利率。58資金のうち39が年10%、長崎県は年14.5%、岩手県は年9%、富山県は5%、和歌山県と広島県は年3%、青森県と鳥取県は無利息
出典:各都道府県・市の修学資金の条例・規則・案内(2026年9月確認)
やめたときの利率 資金の数 都道府県
年14.5% 1 長崎
年10% 39 32都府県(下の注)
年9% 3 岩手
5% 1 富山
年3% 3 和歌山(2資金)・広島
無利息 2 青森(県の資金)・鳥取
違約金10% 1 北海道(年利ではなく貸付額の10%)
未確認 8 佐賀・大分・宮崎・岡山・香川・愛媛・沖縄・岩手(産婦人科特別枠)
合計 58 —

※年10%の39資金がある32都府県:青森・宮城・秋田・山形・福島・茨城・栃木・群馬・埼玉・千葉・東京・神奈川・新潟・石川・福井・山梨・長野・岐阜・静岡・愛知・三重・滋賀・京都・大阪・兵庫・奈良・島根・山口・徳島・福岡・熊本・鹿児島(山形・福島・神奈川・岐阜・三重・滋賀は1つの県に2〜3の資金。神奈川は県と相模原市)。大学独自の資金・入学者全員に出る資金・お金の出ない枠は数えていない。出典:各都道府県・市の修学資金の条例・規則・案内(2026年9月確認)

県や市の資金58のうち39が年10%です。例外は、長崎県の年14.5%(いちばん高い)、岩手県の年9%(3つの資金)、富山県の5%(年率かどうかは案内に書かれていません)、和歌山県の年3%(2つの資金)と広島県の法定利率(2023年4月時点で年3%)、そして青森県医師修学資金と鳥取県の無利息。北海道は年利ではなく、貸付額の10%を違約金として加えます。

では、実際にいくらになるのか。県が自分で示している数字を並べます。

県 借り方・やめた時期 返す額・利息(県の数字)
茨城県 私立の地域枠(月25万円)を6年借りた 約2,400万円(1,800万円+利息約540万円)
茨城県 国立の地域枠(月20万円)を6年借りた 約1,900万円(1,440万円+利息約430万円)
山形県 6年借りて、大学卒業時にやめた 利息の目安 約350万円(元金1,200万円と合わせ約1,550万円)
山形県 6年借りて、研修修了時にやめた 利息の目安 約600万円(元金と合わせ約1,800万円)
三重県 6年借りた 返還総額 1,000万円強
静岡県 6年借りた(日本医科向けの案内) 利息 約480万円
千葉県 月20万円を6年(日本医科向け) 利息 約425万円

※山形は県が「利息の目安」として示している額。元金と合わせた額は計算。出典:茨城県「2027年度 地域医療医師修学資金のご案内」、山形県「医師修学資金のしおり」(2026年度)、三重県、静岡県・千葉県(日本医科大学向けの案内・募集要項)

茨城県の私立の地域枠(月25万円)で6年借りてやめると、元金1,800万円に利息約540万円が付いて約2,400万円。山形県が示している「卒業時 約350万円・研修修了時 約600万円」は、返す額ではなく利息だけの目安で、元金1,200万円と合わせると約1,550万円・約1,800万円になります(元金との合計は計算)。

利息をいつまで数えるかも県で違います。新潟・埼玉・群馬・大阪・徳島・鹿児島・兵庫・福井は貸与期間のあいだだけ数えるので、卒業したあとは利息が増えません。山形・長野・東北医科薬科(宮城A)・山梨(2027年度以降の新規貸与)はやめるときまで数えるので、研修を終えてからやめると重くなります。

働いた年数に応じて返す額が減る「一部免除」があるのは、新潟・福島・群馬・秋田など。反対に東京都は「指定勤務を行った年数に応じた返還額の一部免除はできません」としていて、兵庫県は勤務した期間にかかわらず全額+利息を1か月以内に返す決まりです。大阪府の地域枠は、退学・死亡・心身の故障などの例外を除いて、原則として途中でやめられません。返すのが遅れたときの延滞利率は、多くが年14.5〜15%(群馬県は年10.75%)です。

一括返還が裁判になっている例もあります。報道によると、自治医科大学の卒業生が、修学資金と年10%の損害金をあわせた約3,766万円の一括返還を求められたことをめぐって、大学と愛知県を相手に東京地方裁判所で争っています(2025年3月提訴)。大学側は契約に基づく正当な対応だとしていて、判決は出ていません(次回の期日は2026年11月11日)。都道府県の地域枠とは別の制度ですが、「やめたら一括で返す」という骨格は共通です。争点と双方の言い分は自治医科大学の義務年限9年|2,300万円を返す条件に並べました。

 

地域枠の離脱は4.1%|抜ける理由は専門研修より生活の事情

「やめたらこうなる」は分かりました。では、実際に何人がやめているのか。厚生労働省の検討会に、全国の大学が調べた実数が出ています(2026年4月17日の資料。原調査は全国医学部長病院長会議・2025年3月)。

医学部の地域枠を離脱した人の割合の推移。2009年度入学は20.0%だったが2017年度入学は1.7%まで下がり、2008〜2023年度の合計では14,173人中579人=4.1%
出典:厚生労働省「今後の地域枠等の運用について」(第14回 医師養成過程を通じた医師の偏在対策等に関する検討会 資料2・2026年4月17日)。原調査は全国医学部長病院長会議(2025年3月)
入学年度 地域枠の入学者 離脱した人 離脱率
2009年度 404人 81人 20.0%
2011年度 790人 97人 12.3%
2013年度 852人 71人 8.3%
2015年度 944人 41人 4.3%
2017年度 938人 16人 1.7%
2019年度 1,011人 4人 0.4%
2008〜2023年度の合計 14,173人 579人 4.1%

※表は2年おきに抜き出した。合計は全16年度。出典:厚生労働省「今後の地域枠等の運用について」(第14回 医師養成過程を通じた医師の偏在対策等に関する検討会 資料2・2026年4月17日)。原調査は全国医学部長病院長会議(2025年3月)

2008〜2023年度に地域枠で入学した14,173人のうち、義務から離脱したのは579人=4.1%。入学年度で大きく違い、いちばん高い2009年度入学の20.0%(2008年度入学は13.3%)から、2017年度入学は1.7%まで下がっています。

ただし、2020年度以降の入学者が0.0%なのは、まだ判定の時期(離脱がいちばん多い卒後2〜3年目)が来ていないからです。数字がほぼ固まっている2012〜2016年度入学で見ると3.0〜8.3%。「20人に1人前後」が実感に近いと思います。

抜ける理由は「専門研修」より「生活」

離脱の理由 人数 割合
その他の個人的理由 305人 52.7%
不明 132人 22.8%
県外への居住地変更 98人 16.9%
専門研修 26人 4.5%
健康上の理由 17人 2.9%
大学院入学 1人 0.2%
合計 579人 100%

※出典:同上(地域枠の離脱者579人の内訳)

僕がいちばん意外だったのがここです。専門医を取りたいという理由(専門研修)での離脱は26人(4.5%)だけ。いちばん多いのは「その他の個人的理由」52.7%、次が「県外への居住地変更」16.9%です。キャリアを理由に抜けるより、結婚や配偶者の転勤、家族の事情といった生活の側の理由で抜けている、と読めます。18歳のときには想像しにくいことが、9年のあいだには起こります。

「離脱」と「中断」は別の話

中断の理由 人数 割合
専門研修 228人 38.8%
不明 159人 27.0%
その他の個人的理由 118人 20.1%
県外への居住地変更 36人 6.1%
大学院入学 33人 5.6%
健康上の理由 14人 2.4%
合計 588人 100%

※2023年度までに医師国家試験に合格した地域枠出身の7,950人のうち、義務を一時中断した人の内訳。出典:同上

義務を止めて、あとで戻る「中断」もあります。2023年度までに医師国家試験に合格した地域枠出身の7,950人のうち、588人(7.4%)。理由の1位は専門研修(38.8%)で、大学院入学と合わせると44.4%がキャリアのための一時停止です。中断は義務が残ったままの一時停止で、やめたわけではありません。

結婚や介護で動けなくなったら

同じ検討会の資料は、家族の介護・体調不良・結婚・他の都道府県での就労希望・指定された診療科以外への変更の5つについて、やむを得ない場合は義務年限に猶予期間を設けるなど条件を変えて再契約し、離脱を避けることが望ましいとしています(介護と体調不良は、複数の第三者による事実認定が必要)。自治医科大学の卒業生どうしが結婚した場合に、配偶者の出身都道府県での勤務を特例的に認める「結婚協定」も、例として載っています。日本専門医機構も、地域枠の医師が専門医を取れるよう、カリキュラム制を選べるようにしています。

猶予や一時中断は、実際に使っている県があります。高知県は、臨床研修を終えて15年以内を猶予期間にして、育児・介護・本人の病気・県外での専門研修・留学などによる一時中断を認めています。国の調査では、義務履行の一時中断が認められている県の数は、育児休業が47県、疾病が42県、大学院進学が38県、留学が35県、県外での研修と災害が34県、介護が31県でした(厚生労働省の検討会資料)。

「9年は動けない」と身構える必要はありません。ただ、これは都道府県と相談して条件を変える話で、黙って離れてよいという話ではありません。困ったときは、まず県と大学に相談してください。

 

2027年度の地域枠|人数が動く大学と、新しくできる枠

国は、医学部の定員を全体で減らす方針です。厚生労働省の検討会の資料には、2027年度(令和9年度)の医学部の総定員は、2025年度の9,393人に対して、全体として削減が図られるよう臨時定員を設定する、とあります。地域枠も、今後は原則として恒久定員の中に置くことが望ましい、という方向です。文部科学省が2026年10月9日に公表した計画(認可前)では、2027年度の入学定員は9,336人で、2026年度の9,377人から41人減ります。2028年度については、2026年11月4日の検討会で、医師の少ない県の地域枠も削減の対象に入りうる案が出ました(医学部の定員削減2028)。

人数が動くのは、地域枠も同じです。次の表は、各大学の2027年度の入学者選抜要項・予告で確認できた変更です。人数の多くは臨時定員の認可前の「計画・予定」なので、出願の前に、11月ごろに公表される最新の募集要項で確かめてください。

大学 2027年度の変更(計画・予定を含む)
新潟大学 前期日程が80人→70人。学校推薦型の地域枠は40人→42人(臨時定員の増が認められた場合の計画)
熊本大学 学校推薦型Ⅱに「熊本医療枠」10人を新設。地域枠は8人→11人、みらい医療枠は10人→5人
愛媛大学 学校推薦型ⅡBの地域特別枠推薦が20人→5人(予定)。入学定員は110人→95人(予定)
近畿大学 大阪府の地域枠が2人→1人(和歌山県1人・静岡県10人を募集予定)
山梨大学 学校推薦型Ⅱに、県外の受験生も出せる全国募集枠を10人以内で新設(2浪まで出願可)
東北医科薬科大学 一般選抜に「東北地域定着枠」を新設(入学定員100人は変わらず)。本学の修学資金の貸与はなく、入学後に東北5県の修学資金へ申し込む
東京女子医科大学 2027年度から、一般選抜の区分の中に地域枠を導入(2月実施・科目は一般選抜と同じ。人数は公式ページに記載なし)

新しくできる枠や組み替えられた枠は、出願資格・併願の可否・専願かどうかが、大学ごとに違います。山梨大学の全国募集枠のように、県外の高校の人も出せる枠がある一方、秋田大学の秋田県地域枠は、秋田県内の高校の卒業者が出願要件です(2027年度の学生募集要項)。志望校を決める前に、募集要項の出願資格の欄を読んでください。

同じ地域枠でも、修学資金と従事義務はセットです。やめたときの返還条件は、この記事の「地域枠のデメリットは途中でやめたとき」で県ごとに確かめられます。

 

地域枠で専門医は取れる?|診療科の指定と、専門研修の数え方

地域枠の約4割は、入る前から診療科が決まっています。厚生労働省の検討会の資料では、令和6年度の臨時定員の地域枠978枠のうち410枠(41.9%)が、特定の診療科への従事(推奨を含む)を要件にしていて、そうした枠を設けている都道府県は47のうち26(55.3%)です。外科・小児科・産婦人科・救急科・麻酔科・総合診療のいずれかを選ぶことを要件にする例が挙がっています。

専門医の研修(専門研修)を義務年限に数えるかは、県で違います。長野県の資金は、初期臨床研修2年と専門研修3年が義務年限に含まれます。愛知県は、原則として専門研修3年のうち2年まで義務履行に数えます。県の案内に専門研修の扱いが書かれていない資金もあるので、「地域枠は専門医が取れない」とも「全県で専門医の研修が義務に入る」とも言えません。

日本専門医機構は、地域枠の医師でも専門医が取れるよう、カリキュラム制を選べるようにしていて、留学や妊娠・出産・育児のときは、専門研修の一時中断も認めています。専門医を取りたい人は、出願の前に、志望する県の案内で次の3つを確かめてください。

  • 診療科の指定があるか
  • 専門研修を義務年限に数えるか(何年まで数えるか)
  • 県外の研修や大学院が認められるか

募集要項に「やめたとき」の取扱いが書いてあるか

2023年10月30日、文部科学省と厚生労働省は、都道府県と大学に対して、従事要件と離脱要件を、募集要項や入学手続書類で明示し、本人と保護者にわかりやすく説明するよう求める事務連絡を出しました。離脱した場合の取扱いも、あわせて情報提供することが望ましい、とされています。募集要項に「やめたとき」の取扱いが書いてあるかどうかは、地域枠を選ぶときのチェック項目になります。書いていなければ、県と大学に聞いてください。

 

「地域枠は恥ずかしい」と言われることについて

検索候補に出てくるこの言葉にも、正面から答えておきます。恥ずかしいことは何もありません。理由は3つです。

1つめ。入試の難しさは、枠と試験によって違います。同じ大学・同じ年・同じ試験で比べると、推薦(学校推薦型選抜)では9組中7組で地域枠の合格最低点のほうが高く、河合塾の2027年度の予想ボーダーは16校中14校で地域枠と一般が同じ値、東北医科薬科大学は地域枠のほうが高い予想(67.5対65.0)です。「地域枠は入りやすいのか」は、合格最低点を同じ年・同じ試験で36組比べた医学部の地域枠は入りやすい?合格最低点を36組で比較にまとめました(一般選抜では33組で地域枠が低い一方、東北医科薬科のように逆の大学もあります)。

2つめ。入学後の扱いに差はありません。同じ授業を受け、同じ試験を通り、同じ医師国家試験を受けます。医師免許にも区別はありません。

3つめ。違うのは「どこで働くか」の約束だけです。卒業後9年前後、決められた地域で働く。それは医師のキャリアの選び方のひとつで、優劣の話ではありません。むしろ地域医療を最初から引き受ける進路だと、僕は思っています。

地域枠等で入学する人は年1,795人(2025年度)。医学部に入る人のおよそ5人に1人で、珍しい入り方ではありません。

 

太宰府アカデミーの視点|出願前に確かめる3つ

地域枠は、学費が理由で医学部をあきらめかけている人にとって、とても大きな選択肢です。そのうえで、出願の前に次の3つを確かめてください。

1つめ。額は「県のページ」と「大学の募集要項」の両方で見る。今回いちばん実感したのがここです。新潟県の大学ごとの月額は県のサイト(医師ナビにいがた)に一覧がある一方、大阪医科薬科の年200万円や愛知医科の900万円といった大学の上乗せは、県のページには出てきません。逆に、茨城県の杏林・日本医科の枠が「入試の別枠ではなく、一般選抜の合格者から県が審査して選ぶ」仕組みであることは、県の案内のほうに書かれていました。片方だけで判断すると、額も条件も見落とします。

2つめ。年数は「何年」「研修を含むか」「いつまでに」の3点で読む。「地域枠は9年」と覚えていると、宮城A(研修のあとに10年)、岩手県の地域枠A(11年)、富山県(研修のあとに9年)で計算が狂います。募集要項に「臨床研修期間を含む」という一文があるかどうかを、自分の目で確かめてください。

3つめ。やめたときの額まで、家族で話しておく。利率が年10%か14.5%か3%か、利息をいつまで数えるか、働いた分だけ減る一部免除があるか。茨城県の私立の地域枠なら、6年借りてやめると約2,400万円です。離脱の理由の多くが生活の事情だったことを考えると、「返すことになったらどうするか」まで話してから出願するのが、いちばん後悔の少ない選び方だと思います。

この記事の数字は2026年9月時点のものです(2027年度の人数の変更と国の資料は、2026年10月21日に確認して加えました)。額や人数は年度で変わり、兵庫県の推薦入学制度の要項は例年12月、相模原市の2027年度の募集要領は2026年11月中旬に公表の予定です。出願する年度の県のページと大学の募集要項で、必ず最新の額を確かめてください。推薦・総合型で募集する地域枠も多いので、出願の締切は医学部の推薦・総合型31校の締切一覧で、私立の学費は私立医学部の学費一覧2027で確かめられます。

 

まとめ|医学部の地域枠の修学資金

  • 地域枠は、卒業後に決められた地域で働く約束をして入る枠。募集1,847人・入学1,795人(2025年度)=医学部の約5人に1人
  • お金は「貸与」で、働けば返還免除。都道府県・市の資金の6年総額は676.2万〜4,480万円で6.6倍(最大は兵庫医科大学の兵庫県推薦入学制度)
  • 3,000万円以上の9枠はすべて私立(兵庫医科4,480万・杏林4,420万・北里3,890万・新潟県の月50万円枠3,660万・岩手医科3,050万・東北医科薬科3,000万)
  • 同じ県でも大学で額が違う(新潟県1,080万〜3,660万・東京都2,800万〜4,420万)。大阪医科薬科1,920万・愛知医科2,010万は大学の上乗せ込み
  • お金の出ない地域枠もある(福岡大学・久留米大学特別枠・兵庫医科の地域指定制。東北医科薬科の定着枠45名は大学からは0円)
  • 義務は9年が標準。群馬県10年、岩手県の地域枠A・佐賀県・富山県11年、東北医科薬科の宮城Aは実質12年
  • やめると一括返還。利率は58資金中39が年10%、長崎県は14.5%。茨城県の私立の枠を6年借りてやめると約2,400万円
  • 離脱したのは14,173人中579人(4.1%)。理由は専門研修(4.5%)より生活の事情が中心
  • 2027年度は地域枠の人数が動く(新潟大40→42人・熊本大8→11人・愛媛大20→5人・近畿大の大阪府枠2→1人など。計画・予定を含む)。山梨大・熊本大・東北医科薬科大・東京女子医科大に新しい枠ができる
  • 診療科が決まっている(勧められている)地域枠は978枠中410枠(41.9%)。専門研修を義務年限に数えるかは県で違う(長野県は3年・愛知県は2年まで)。募集要項に「やめたとき」の取扱いがあるかも確かめる

明日からできることは1つです。志望する都道府県の「医師修学資金」のページと志望大学の募集要項を開いて、6年総額・義務の年数・やめたときの利率の3つをメモしてください。この記事の表と見比べれば、その枠で学費がいくら残り、何年の約束になるのかが分かります。

「地域枠 恥ずかしい」という検索候補を、地域医療を志す受験生に見てほしくありません。ただ、条件を知らずに選んで何年もあとに苦しむのも見たくない。誇っていい選択だと伝えることと、額と条件を正確に伝えることは両立します。そのために今回は、県のページと大学の要項を47都道府県ぶん開きました。

私立医学部で地域枠などの臨時増員が定員の何割を占めるかは、私立医学部の定員一覧(2027年度)で大学ごとに並べています。

医学部の立地(駅からの時間・街の大きさ・新幹線の駅や空港の近さ)を全81校で比べ、1年次だけ別のキャンパスで学ぶ大学も載せた表は、医学部の立地ランキング|全81校を10段階で評価にまとめています。

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本日の記事は以上です。

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