こんにちは、福岡の医学部予備校で総務/広報を担当している後藤です。
先日、Twitterでこんなツイートをしました。
【令和4年】全医学部医学科の
進級(留年)率・国試合格率ランキング表10日ほど前に文部科学省が
発表した最新データです◆このランキング表で分かること◆
①6年間ストレート進級率・卒業率
②国試合格率
③卒試合格人数(出願者−受験者)
④6年間で医師になる確率
(厳密に言えば少し違います) pic.twitter.com/Fu694x2ESJ— 太宰府アカデミー🐶|全寮制医学部受験予備校 (@dazaifu_academy) October 12, 2022
このツイートを医大生中心に100リツイートほどしてくれたことから、進級率や国試合格率に対する関心の高さを窺えました。
ツイートの通り、先日、文部科学省より「全医学部の進級・卒業試験・医師医師国家試験(第116回)の合格率」の資料が公開されました。
記事の前半では「2022年度の進級・卒試・国試合格率」をランキング形式でお伝えし、
記事の後半では「今後の進級難易度や医学部入試はどう変化していくのか」予想してみます。
今回の記事では、
− 医学部の進級・卒試・国試ってどんどん難しくなってるの?
と、気になっている医学部志望の受験生・医大生に向けて記事を書いていきます。
初めに結論からお伝えします。
大学6年間を1度も留年せずに卒業する確率の全体平均は、
2021年度➡︎84.0% 2022年度➡︎84.4%(+0.4)
医師国家試験合格率の新卒全体平均は、
2021年度➡︎94.8% 2022年度➡︎95.4%(+0.6)
【結論】
卒業率+0.4%上昇し、国試合格率も+0.6%上昇しました。よって昨年度より医師になりやすくなったと言えます。
2023年度版の進級・卒試・国試合格率ランキング記事が気になる方はこちらをクリックしてください。
では、前置きが長くなりましたが、さっそく本題に移りたいと思います。
この記事の目次
[全医学部] 進級・卒業試験・医師国家試験合格率ランキング2022
文部科学省のデータを元に、全医学部医学科の進級・卒業・国試合格率のランキング表を作成しました。
まず、表の見方(進級率・卒業率・国試合格率)ついて、簡単にご説明します。
〜 進級率とは 〜
1年生〜6年生まで1度も留年しなかった人の割合
〜 卒業率とは 〜
6年間ストレートで進級し、卒業試験に合格した人の割合
〜 国試合格率とは 〜
卒業試験に合格した人が医師国家試験に合格した割合
※上記は、留年者を含みます
〜 6年間で医師になる確率とは 〜
6年間ストレートで進級し、卒業試験に合格し、医師国家試験に合格する割合
「計算式:6年間卒業率×国試合格率」
※厳密に言えば、新卒には留年者を含んでいるので少し違います…。
医学部の情報発信サイトでは、「国試合格率」がピックアップされがちですが、医学部志望の受験生は入学後の「進級率」も気になっている人が多いのではないでしょうか?
どちらも重要な数字なので、このランキング表では「国試合格率×6年間卒業率=6年間で医師になる確率」を基準に順位を付けています。
背景色:赤➡︎国立 青➡︎私立 黄➡︎公立
※画像をクリックする拡大されます。
※出典:(文部科学省調べ)各大学の医学部医学科の
入学状況及び医師国家試験(令和4年2月第116回)結果等
毎年「卒業率・国試合格率ランキング」の記事を更新していますが、卒業率と国試合格率を掛け合わせた数値(6年間で医師になる割合)を出したのは初めてです。皆さんが気になる数値に近づいたのでは無いでしょうか。異論がある方は、後でコッソリ教えてください(๑•̀ㅂ•́)و
◆ トップランキング ◆
順位 | 大学名 | 6年間ストレート 卒業率 |
医師国家試験 合格率 |
6年間で医師に なる割合 |
1 | 順天堂大学 | 97.7% | 97.8% | 95.6% |
2 | 東京慈恵会医科大学 | 95.5% | 98.1% | 93.7% |
3 | 浜松医科大学 | 94.2% | 99.2% | 93.4% |
4 | 筑波大学 | 93.7% | 99.3% | 93.0% |
4 | 名古屋大学 | 95.6% | 97.3% | 93.0% |
6 | 自治医科大学 | 92.7% | 100.0% | 92.7% |
7 | 神戸大学 | 94.9% | 95.1% | 90.2% |
8 | 東北医科薬科大学 | 93.0% | 96.8% | 90.0% |
8 | 東京医科歯科大学 | 92.5% | 97.3% | 90.0% |
10 | 名古屋市立大学 | 90.7% | 99.0% | 89.8% |
全医学部の中で最短で医師になる割合が高い大学は、1位▶️順天堂大学、2位▶️東京慈恵会医科大学、3位▶️浜松医科大学、という結果となりました。ちなみに医学部の中でも最難関大学である東京大学は15位(87.6%)、京都大学は36位(81.0%)です。今年、初めての卒業生が出た東北医科薬科大学は、東京医科歯科大学と同率8位という結果に(大学名が似ていて、タイプミスかと思いました)。素晴らしい結果ですね。
国公立医学部と私立医学部を比較すると、医師国家試験の合格率は95%程度でほぼ同じ、6年間のストレート卒業率は2%程度のズレがある程度で、「ほとんど変わらない」という結果となりました。
◆ ワーストランキング ◆
順位 | 大学名 | 6年間ストレート 卒業率 |
医師国家試験 合格率 |
6年間で医師に なる割合 |
1 | 川崎医科大学 | 64.5% | 94.0% | 60.6% |
2 | 杏林大学 | 67.5% | 94.0% | 63.5% |
3 | 久留米大学 | 75.9% | 85.7% | 65.0% |
4 | 福岡大学 | 68.2% | 97.7% | 66.6% |
5 | 愛知医科大学 | 71.8% | 94.1% | 67.6% |
6 | 徳島大学 | 73.7% | 95.0% | 70.0% |
7 | 宮崎大学 | 76.4% | 94.0% | 71.8% |
8 | 横浜市立大学 | 73.3% | 98.6% | 72.3% |
9 | 鳥取大学 | 78.3% | 92.5% | 72.4% |
9 | 埼玉医科大学 | 77.7% | 93.2% | 72.4% |
今年も川崎医科大学が最下位となりました。Twitterで川崎医科大学の卒業試験で50名近く不合格となった、との情報がありました。ちなみに医師国家試験の欄に記入されていますが「出願者−受験者」で、卒業試験の合格者数がわかります。
入学難易度と比較し、最短で医師になる割合が低いと思われる大学は、79位▶︎杏林大学(63.5%)、78位▶︎久留米大学(65.0%)、77位▶︎福岡大学(66.6%)、73位▶︎横浜市立大学(72.3%)、70位▶︎日本大学(72.7%)、68位▶︎関西医科大学(73.7%)、59位▶︎日本医科大学(75.8%)、36位▶︎京都大学(81.0%)です。
地元の久留米大学・福岡大学の進級は年々難しくなっているという話は聞いていましたが、杏林大学や横浜市立大学も数字で見るとかなり厳しいようですね。
[私立医学部] 進級・卒業試験・医師国家試験合格率ランキング2022
◆ トップランキング ◆
順位 | 大学名 | 6年間ストレート 卒業率 |
医師国家試験 合格率 |
6年間で医師に なる割合 |
1 | 順天堂大学 | 97.7% | 97.8% | 95.6% |
2 | 東京慈恵会医科大学 | 95.5% | 98.1% | 93.7% |
3 | 自治医科大学 | 92.7% | 100% | 92.7% |
4 | 東北医科薬科大学 | 93.0% | 96.8% | 90.0% |
5 | 慶應義塾大学 | 90.4% | 99.1% | 89.6% |
6 | 大阪医科薬科大学 | 91.1% | 97.3% | 88.6% |
7 | 東京女子医科大学 | 93.8% | 92.0% | 86.3% |
8 | 獨協医科大学 | 90.2% | 94.7% | 85.4% |
9 | 北里大学 | 86.7% | 95.9% | 83.1% |
10 | 帝京大学 | 85.0% | 97.8% | 83.1% |
私立医学部で特筆するべき大学は、7位▶︎東京女子医科大学、8位▶️獨協医科大学、10位▶︎帝京大学、11位▶︎岩手医科大学 です。入学難易度に対して素晴らしい数値だと思います。例年、帝京大学の進級率はあまり良くない印象がありましたが、劇的に向上しています。東京女子医科大学は入学難易度に対して、いつも進級率や国試合格率が高水準です。
◆ ワーストランキング ◆
順位 | 大学名 | 6年間ストレート 卒業率 |
医師国家試験 合格率 |
6年間で医師に なる割合 |
1 | 川崎医科大学 | 64.5% | 94.0% | 60.6% |
2 | 杏林大学 | 67.5% | 94.0% | 63.5% |
3 | 久留米大学 | 75.9% | 85.7% | 65.0% |
4 | 福岡大学 | 68.2% | 97.7% | 66.6% |
5 | 愛知医科大学 | 71.8% | 94.1% | 67.6% |
6 | 埼玉医科大学 | 77.7% | 93.2% | 72.4% |
7 | 日本大学 | 76.4% | 95.2% | 72.7% |
8 | 関西医科大学 | 75.2% | 98.0% | 73.7% |
9 | 東海大学 | 86.6% | 85.7% | 74.2% |
9 | 兵庫医科大学 | 77.7% | 96.3% | 74.8% |
2023年度の学費を大幅引き下げ(670万円)を発表した関西医科大学の順位は68位と、かなり順位が低いのは驚きですね。
− 進級率って偏差値に比例するの?
と気になっている方もいると思いますが、医学部の場合はだいたいその考えで大丈夫だと思います。つまり、入学難易度の高い大学に合格すると、進級率も上がるということです。しかし、あくまで目安程度の指標です。例えば、医学科全体ランキング順位で、79位の杏林大学、78位の久留米大学、77位の福岡大学、76位の愛知医科大学はいわゆる私立の中堅医学部ですが「進級が厳しい…」と聞くことが多いです。
先日、入学難易度の高い・低い大学について記事を書きましたので、気になる人はぜひ下記のURLをクリックしてください⤵︎⤵︎
全医学部偏差値ランキング2023/共通テストボーダー (最新予想+推移)
[国公立医学部] 進級・卒業試験・医師国家試験合格率ランキング
◆ トップランキング ◆
順位 | 大学名 | 6年間ストレート 卒業率 |
医師国家試験 合格率 |
6年間で医師に なる割合 |
1 | 浜松医科大学 | 94.2% | 99.2% | 93.4% |
2 | 筑波大学 | 93.7% | 99.3% | 93.0% |
2 | 名古屋大学 | 95.6% | 97.3% | 93.0% |
4 | 神戸大学 | 94.9% | 95.1% | 90.2% |
5 | 東京医科歯科大学 | 92.5% | 97.3% | 90.0% |
6 | 名古屋市立大学 | 90.7% | 99.0% | 89.8% |
7 | 大分大学 | 90.9% | 97.3% | 88.4% |
8 | 千葉大学 | 90.3% | 97.4% | 88.0% |
9 | 東京大学 | 94.0% | 93.2% | 87.6% |
10 | 東北大学 | 89.9% | 97.2% | 87.4% |
10 | 愛媛大学 | 91.3% | 95.7% | 87.4% |
◆ ワーストランキング ◆
順位 | 大学名 | 6年間ストレート 卒業率 |
医師国家試験 合格率 |
6年間で医師に なる割合 |
1 | 徳島大学 | 73.7% | 95.0% | 70.0% |
2 | 宮崎大学 | 76.4% | 94.0% | 71.8% |
3 | 横浜市立大学 | 73.3% | 98.6% | 72.3% |
4 | 鳥取大学 | 78.3% | 92.5% | 72.4% |
5 | 香川大学 | 79.8% | 92.1% | 73.5% |
6 | 熊本大学 | 77.4% | 96.1% | 74.4% |
7 | 高知大学 | 80.0% | 93.6% | 74.9% |
8 | 琉球大学 | 80.3% | 93.6% | 75.2% |
9 | 金沢大学 | 82.9% | 91.0% | 75.4% |
10 | 群馬大学 | 76.4% | 99.1% | 75.7% |
旧帝大医学科の友人から、「国試前に教授からレポート提出を迫られてて大変…」という話も聞いていますので、どうか国試前はお手柔らかにお願いしたします( ;∀;)
徐々に医師になることが難しくなってきている原因について
冒頭に結論として「昨年度より医師になりやすくなった」とお伝えしましたが、これから大学卒業や国試は徐々に難しくなっていくと個人的には思っています。
− なぜ、医師になることが難しくなっていくのか?
一つの要因として挙げられるのは、各医大では、続々とグローバルスタンダード(国際標準)に合わせた新カリキュラムとなっているからです。
※本校で開催した久留米大学入試説明会に使用された写真
つまり国際標準に合わせた新カリキュラムとは、臨床実習が劇的に増えたことを指します。
久留米大学では、2016年「新カリキュラム」を導入した際は臨床実習が56週➡︎66週となり、2018年「新々カリキュラム」になった際は66週➡︎76週になりました。おそらく、全ての医大でも同様に臨床実習が増えていると思います。この国際基準を満たした大学と認定されない限り、卒業生が海外で医師として働くのは非常に困難となります。
今まで通りの膨大な知識(CBT・卒試・国試の合格レベル)は必要なので、単純に臨床実習の負荷が増えた分、以前より進級しにくい状況が続くと推察できます。
今後の医学部入試はどうなるのか
この超少子化のご時世で、2022年度の私立・国公立医学科の志願者数はあまり変化は見られませんでした。
個人的には、今後も医学部人気は落ちないと思っています。今後も医師が人気な根拠としては社会的なステータスが高いこと。もう一つ人気が落ちない理由の一番わかりやすい指標は、年収です。
給与所得者 :年収 約360万円(中央値)
医師(副業含):年収 約 1700万円(中央値)
給与所得者の約5倍です。
さらに、安定した仕事は経済が不安定になればなるほど、その価値は上昇します。
安定した高収入の医師という職業は、人気が落ちる理由がありません。
ただ、研修医の4人に1人が「抑うつ状態」なると言われているほど、とんでもなくハードで責任を背負った仕事という一面もあります。この話は、長くなりそうなので切り上げます。
まとめ
ここまでの話をまとめると・・・
中長期的な視点で見ると、これからも医学部人気は衰えず、医学部を卒業することも、国家試験に合格することも、徐々に難しくなってくるので「覚悟」を決め、1年でも早く医大に入学し、医師なることを目指しましょう!
いま、あなたが本気で頑張っている経験は、今後の人生でとても大きな経験値になります。
どうせ、一回しかない人生なので、思いっきり生きたって心から言える人生がいいと思いませんか?
今を思いっきり生きるって、大切なことですよね。
では、本日のブログは以上です。
昨年度のデータが見たい方はこちらをクリックしてください。
長々と書いてしまいましたが… 最後まで読んでいただき、ありがとうございました!!
総務/広報 後藤 登
◆太宰府アカデミーの自己PR
本校は福岡にある全寮制の医学部予備校です。1年間、約30名の生徒たちが切磋琢磨し、医学部の合格を勝ち取ります。当校に入学される約3〜4割の生徒さんは、九州以外からご入学されます。「地元のしがらみに捉われたくない」「環境を変えたい」と、勉強に専念したい受験生たちが多く集まります。
おかげさまで創設から18年目となり、これまで医学科に404名以上の合格者を輩出しました。そんな卒業生たちが大学を卒業し、医師・歯科医師・薬剤師・獣医師となり、現在の日本の医療を支えてくれています。
◆筆者プロフィール
後藤 登(Goto Noboru)/仕事:総務と広報/自己PR:高校大学ボクシング部。新卒で当校に勤めて10年目。毎日医学部受験の情報を調べて、ブログやInstagram、Twitterを更新しています。生徒たちのおかげで仕事はやりがいの塊です。医学部受験のご相談は下記にてお待ちしています。
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