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医学部の倍率は3種類ある|志願倍率100倍でも実質は8〜15倍

2026年09月15日 更新

こんにちは、福岡の医学部予備校で総務/広報を担当している後藤です。

本日のブログは、毎年この時期に必ず聞かれる「倍率」の話です。年内入試の出願が本格化して、受験生や保護者の方から「この大学、倍率が100倍を超えているんですけど、さすがに無理ですよね?」と相談されることが増えました。

結論から書くと、その「100倍」と、合格発表のあとに大学が出す「◯倍」は、まったく別の計算式で出た数字です。医学部の入試で使われている「倍率」には、少なくとも3種類あります。しかもどれを公表するかは大学の裁量なので、A大学の「15倍」とB大学の「15倍」が、そもそも同じ意味ではないということが普通に起きます。

実際、2026年度入試を大学公式の発表で調べ直したところ、私立8校の一般選抜は志願倍率では19.3〜40.3倍だったのに、実質倍率に直すと8.3〜15.2倍に収まりました。見かけの倍率は、実質の1.6〜3.9倍にふくらんでいたことになります。

− 倍率100倍って、100人に1人しか受からないってこと?

− 大学が出してる倍率って、どれも同じ計算じゃないの?

− 結局、どの倍率を見て出願先を決めればいいの?

この3つに、一次資料の数字だけで答えていきます。

 

 

結論|見かけの倍率は、実質の1.6〜3.9倍にふくらんでいる

先に答えを3行でまとめます。

  • 「倍率」は3種類ある……志願倍率(志願者÷募集人員)・受験倍率(受験者÷募集人員)・実質倍率(受験者÷合格者)。同じ1つの入試から3つの数字が出ます
  • どれを公表するかは大学ごとに違う……公表のしかたは4通りに分かれていて、倍率そのものを出していない大学もあります
  • 志願倍率が100倍を超えた方式は2026年度で12方式ある……ただしそのうち10方式は募集人員が20人以下です。分母が小さいから跳ねているだけで、難しさの順番ではありません

いちばん伝わるのは、同じ入試を2つの倍率で並べた下の図だと思います。

私立5校の一般選抜を志願倍率と実質倍率で比べた図。福岡大学は志願倍率40.3倍に対し実質倍率15.2倍、昭和医科大学は35.8倍に対し12.2倍、愛知医科大学は32.2倍に対し8.3倍、産業医科大学は24.7倍に対し15.0倍、久留米大学は19.3倍に対し8.6倍
出典:各大学が公表した2026年度入試の結果(大学公式)をもとに太宰府アカデミー算出。実質倍率=受験者÷合格者(繰上・追加合格を含む)(残る3校は本文の表に掲載)

これは2026年度入試で、受験者数と合格者数まで公表している私立8校の一般選抜です。愛知医科大学は志願倍率32.2倍に対して実質倍率8.3倍。見かけが実質の3.9倍にふくらんでいます。逆に産業医科大学は志願倍率24.7倍に対して実質倍率15.0倍で、ふくらみは1.6倍しかありません。

ここが大事なところで、志願倍率では愛知医科大学のほうが産業医科大学より高いのに、実質倍率では順番が入れ替わります。見かけの倍率で2校を比べても、実際の受かりにくさの順番は分からない、ということです。

以下、この3種類がどう違うのかを、1つずつ数字で確かめていきます。

 

「倍率」には3つある|志願倍率・受験倍率・実質倍率

まず定義をそろえます。医学部入試で使われる倍率は、この3つです。

産業医科大学 一般Aの2026年度入試から3つの倍率を計算した図。志願倍率24.7倍(志願1,480人÷募集60人)、受験倍率22.3倍(受験1,339人÷募集60人)、実質倍率15.0倍(受験1,339人÷合格89人)
出典:各大学が公表した2026年度入試の結果(大学公式)をもとに太宰府アカデミー算出。実質倍率=受験者÷合格者(繰上・追加合格を含む)。産業医科大学は3種類の倍率を定義つきで併記して公表しています

例に使ったのは産業医科大学の一般A(2026年度入試)です。この大学を選んだのには理由があって、今回の8校のなかで唯一、3種類の倍率を定義つきで併記して公表しているからです。

倍率の名前 計算式 産業医科大学 一般A(2026年度)
志願倍率 志願者 ÷ 募集人員 24.7倍(1,480 ÷ 60)
受験倍率 受験者 ÷ 募集人員 22.3倍(1,339 ÷ 60)
実質倍率 受験者 ÷ 合格者 15.0倍(1,339 ÷ 89)

募集人員60人に対して志願者1,480人、実際に受けに来たのが1,339人、最終的に合格したのが89人。この4つの数のうち、どれを分母・分子に置くかで24.7倍・22.3倍・15.0倍という3つの数字が出ます。どれも計算としては正しくて、嘘はどこにもありません。

違いは「何を測っているか」です。

  • 志願倍率何人が出願したかを測っています。受けに来なかった人も、他大学に合格して辞退した人も、全員そのまま分子に入っています
  • 受験倍率何人が試験会場に来たか。私立医学部は併願が多く、当日の欠席がかなり出るので、志願倍率より必ず低くなります
  • 実質倍率受けた人のうち何人に1人が合格したか。繰上合格・追加合格まで分母に入れて計算するので、いちばん実感に近い数字になります

受験生が知りたいのは、ほぼ間違いなく3つ目です。ところが、入試前に手に入るのは1つ目しかありません。受験者数と合格者数は入試が終わらないと出ないからです。ここが「倍率」という言葉がややこしくなる根っこだと思っています。

 

大学が公表している「倍率」は、大学ごとに計算式が違う

ここからが本題です。「じゃあ大学の発表を見ればいい」と思うところですが、大学が「倍率」と呼んでいるものの中身が、大学ごとに違います。

2026年度入試の結果を大学公式で確認できた8校を、公表している計算式で分けるとこうなります。

公表されている倍率の計算式 その計算式を使っている大学 読むときの注意
受験者 ÷ 合格者 愛知医科・兵庫医科・久留米・福岡 いわゆる実質倍率。他校と並べられる
3種類を定義つきで併記 産業医科 志願倍率・受験倍率・実質倍率を別々の列で出している
志願者 ÷ 合格者 昭和医科 分母が受験者ではなく志願者。他校の実質倍率より高く出る
倍率を公表していない 国際医療福祉・関西医科 志願者・受験者・合格者の実数だけを公表している

とくに注意したいのが昭和医科大学です。この大学が公表している倍率は志願者÷合格者で、分母が受験者ではありません。一般Ⅱ期の公表値は志願1,550人÷合格16人=96.9倍ですが、他校と同じ「受験者÷合格者」で計算し直すと86.8倍になります。同じ入試の同じ結果から、96.9倍と86.8倍という2つの数字が出るわけです。

もう一つ、国際医療福祉大学と関西医科大学は倍率そのものを公表していません。志願者・受験者・合格者の実数だけを出しています。なので、この2校について世の中に出回っている「◯倍」は、誰かが自分で計算した数字です(この記事の数字も、大学が出した実数からこちらで計算したものです)。

数字を引くときは、「何倍か」より先に「何を何で割ったか」を確かめる。遠回りに見えますが、これをやらないと比べられないものを比べることになります。

 

志願倍率が100倍を超えた12方式|そのうち10方式は募集20人以下

では、冒頭の「100倍」はどこから来ているのか。2026年度入試で、志願倍率(志願者÷募集人員)が100倍を超えた方式を全部並べます。

2026年度入試で志願倍率が100倍を超えた方式の上位8。近畿大学 一般後期152.6倍、金沢医科大学 一般後期138.6倍、昭和医科大学 一般Ⅱ期129.2倍、帝京大学 一般122.3倍、聖マリアンナ医科大学 一般後期121.2倍など
出典:代々木ゼミナール調べ(2026年6月13日更新)の募集人員・志願者数をもとに太宰府アカデミー算出。志願倍率=志願者÷募集人員(2026年度入試)

いちばん高いのは近畿大学の一般後期で152.6倍。募集人員5人に対して志願者763人です。

大学・方式 募集人員 志願者 志願倍率
近畿大学
一般後期
5人 763人 152.6倍
金沢医科大学
一般後期
10人 1,386人 138.6倍
昭和医科大学
一般Ⅱ期
12人 1,550人 129.2倍
帝京大学
一般
76人 9,293人 122.3倍
聖マリアンナ医科大学
一般後期
10人 1,212人 121.2倍
日本大学
N方式2期
15人 1,684人 112.3倍
帝京大学
一般 新潟県地域枠
1人 112人 112.0倍
久留米大学
一般後期
5人 545人 109.0倍
帝京大学
共テ3科目方式
8人 870人 108.8倍
近畿大学
共テ前期
5人 534人 106.8倍
獨協医科大学
一般前期
52人 5,346人 102.8倍
埼玉医科大学
一般後期
20人 2,048人 102.4倍

この表で見てほしいのは倍率の数字ではなく、募集人員の列です。12方式のうち10方式は募集人員が20人以下で、1人・5人・8人といった枠がずらりと並びます。分母が1桁なら、志願者が数百人集まるだけで倍率は3桁になります。難しさが3桁なのではなく、割り算の分母が小さいだけです。

例外は2つあります。帝京大学の一般選抜は募集76人で122.3倍、獨協医科大学の一般前期は募集52人で102.8倍。この2つは分母が大きいのに100倍を超えていて、単純に志願者が多い方式です(帝京大学の志願者9,293人は、この年の1方式としては全国で最も多い数でした)。

ちなみに、ここに並んでいる方式の多くは後期・Ⅱ期です。前期で結果が出なかった人が集まるうえ、募集枠が数名まで絞られるので、志願倍率はどうしても跳ね上がります。

 

同じ入試を実質倍率で見ると8.3〜15.2倍に収まる

ここが、この記事でいちばん伝えたいところです。

2026年度入試で受験者数と合格者数(繰上・追加を含む)まで公表している私立8校について、一般選抜の前期にあたる方式を、志願倍率と実質倍率の両方で計算しました。

大学・方式(2026年度) 志願倍率 実質倍率 見かけのふくらみ
福岡大学
一般(系統別)
40.3倍 15.2倍 2.7倍
昭和医科大学
一般Ⅰ期
35.8倍 12.2倍 2.9倍
兵庫医科大学
一般A(4科目型)
33.2倍 11.4倍 2.9倍
愛知医科大学
一般
32.2倍 8.3倍 3.9倍
関西医科大学
一般前期
31.0倍 8.4倍 3.7倍
国際医療福祉大学
一般
26.7倍 8.7倍 3.1倍
産業医科大学
一般A
24.7倍 15.0倍 1.6倍
久留米大学
前期一般
19.3倍 8.6倍 2.2倍

志願倍率では19.3倍から40.3倍まで開いていた8校が、実質倍率では8.3倍から15.2倍に収まります。上と下の開きが21.0から6.9に縮んだ、ということです。

計算のもとになった実数も置いておきます。ここを見ると、なぜふくらむのかが一目で分かります。

大学 募集人員 志願者 受験者 最終合格者
福岡大学 60人 2,417人 2,297人 151人(合格123+追加28)
昭和医科大学 76人 2,720人 2,507人 206人(繰上・追加を含む)
兵庫医科大学 69人 2,290人 2,196人 192人(正規155+繰上37)
愛知医科大学 70人 2,254人 2,192人 264人(正規181+繰上83)
関西医科大学 58人 1,797人 1,688人 201人(正規167+繰上34)
国際医療福祉大学 105人 2,802人 2,701人 310人(正規のみ(繰上非公表))
産業医科大学 60人 1,480人 1,339人 89人(正規69+追加20)
久留米大学 75人 1,448人 1,382人 161人(正規120+繰上41)

理由は2つです。1つは欠席。志願者と受験者の差が、8校とも数十人から百人以上あります。もう1つは繰上合格で、最終合格者は募集人員の2〜4倍に増えています。愛知医科大学は正規181人に繰上83人を足して264人、産業医科大学は正規69人に追加20人を足して89人。募集人員という数字は、実際に合格する人数とは別物です。

そのうえで、さきほどの入れ替わりをもう一度。愛知医科大学は志願倍率32.2倍・実質倍率8.3倍、産業医科大学は志願倍率24.7倍・実質倍率15.0倍。見かけでは愛知医科大学のほうが高く、実質では産業医科大学のほうが高い。受験者数は愛知医科大学2,192人・産業医科大学1,339人。差がついたのは合格者数(264人と89人)のほうです。

なお国際医療福祉大学の8.7倍は、繰上合格者数が公表されていないため正規合格者だけで計算した数字です。繰上を含めれば、実際の実質倍率はこれより低くなります。

 

後期・Ⅱ期だけは、実質倍率に直しても31.7〜86.8倍のまま

ここまで「見かけの倍率はふくらんでいる」と書いてきましたが、そうならない入試もあります。同じ8校の後期・Ⅱ期です。

大学・方式(2026年度) 募集人員 志願倍率 実質倍率
昭和医科大学
一般Ⅱ期
12人 129.2倍 86.8倍
産業医科大学
一般B
5人 77.0倍 72.2倍
久留米大学
後期一般
5人 109.0倍 67.6倍
関西医科大学
一般後期
5人 73.2倍 38.8倍
兵庫医科大学
一般B(英語資格)
10人 51.6倍 31.7倍

実質倍率に直しても31.7倍から86.8倍。前期の8.3〜15.2倍とは桁が違います。昭和医科大学の一般Ⅱ期は受験1,389人に対して合格16人で86.8倍、久留米大学の後期は受験473人に対して合格7人で67.6倍です。

つまり「後期は敗者復活」ではなく、「募集が数名しかない、まったく別の入試」と考えたほうが実態に合っています。前期と後期を1つの「その大学の倍率」でまとめて語ると、この差が消えてしまいます。

 

私立31校を1つの定義でそろえると|文部科学省の2025年度データ

ここまでは大学ごとの公表を見てきました。全校を同じ定義でそろえた数字も1つだけあります。文部科学省が毎年12月に出している入学状況の資料で、全81校の志願者・受験者・合格者・入学者が同じ様式で載っています。

まず区分ごとの全体像です。この資料の「実質競争倍率」は受験者÷合格者で、一般選抜・総合型選抜・学校推薦型を合計した数字です。

区分 校数 受験者 合格者 実質競争倍率
国立 42校 15,388人 4,773人 3.22倍
公立 8校 2,414人 869人 2.78倍
私立 31校 103,595人 8,237人 12.58倍
全81校 81校 121,397人 13,879人 8.75倍

私立31校は12.58倍、国立42校は3.22倍、公立8校は2.78倍。ただし、この3つを並べて「私立のほうが4倍難しい」と読むのは正確ではありません。私立の志願者は延べ人数で、1人が5校も10校も出願します。一方、国公立は前期・後期で実質1校しか受けられず、しかも共通テストの自己採点の段階で出願を取りやめる人が数字に出てきません。母集団の作られ方が違うので、私立と国公立の倍率は並べて比べられません。

その国公立側で、何が起きているかが分かる例を1つ。奈良県立医科大学は志願者3,439人に対して、実際に受験したのは512人でした。2,927人が出願だけして受けに来ていません。国公立の志願倍率が、出願先を決める材料にならない理由がここにあります。

私立31校を実質競争倍率の高い順に並べると、次のようになります。

2025年度入試の私立医学部31校の実質競争倍率の上位10。帝京大学35.25倍、埼玉医科大学24.54倍、聖マリアンナ医科大学23.35倍、獨協医科大学20.66倍、金沢医科大学19.97倍、産業医科大学17.32倍など
出典:文部科学省「医学部医学科の入学状況・国家試験合格状況・卒業状況」(令和7年12月公表)。2025年度入試。実質競争倍率=受験者÷合格者で、一般選抜・総合型選抜・学校推薦型の合計

上位は帝京大学の35.25倍、埼玉医科大学の24.54倍、聖マリアンナ医科大学の23.35倍。いちばん低いのは東北医科薬科大学の5.61倍で、31校の間で6.3倍の開きがあります。

大学 志願者 受験者 合格者 実質競争倍率
帝京大学 9,826人 9,447人 268人 35.25倍
埼玉医科大学 5,234人 4,736人 193人 24.54倍
聖マリアンナ医科大学 5,334人 4,787人 205人 23.35倍
獨協医科大学 4,568人 4,173人 202人 20.66倍
金沢医科大学 5,763人 5,331人 267人 19.97倍
産業医科大学 2,179人 1,992人 115人 17.32倍
日本医科大学 4,093人 3,759人 218人 17.24倍
東海大学 5,478人 5,120人 305人 16.79倍
自治医科大学 1,903人 1,818人 123人 14.78倍
近畿大学 4,320人 4,094人 280人 14.62倍
昭和医科大学 4,397人 3,914人 269人 14.55倍
順天堂大学 4,510人 4,188人 302人 13.87倍
日本大学 3,925人 3,539人 262人 13.51倍
福岡大学 3,382人 3,249人 266人 12.21倍
久留米大学 2,556人 2,394人 197人 12.15倍
大阪医科薬科大学 3,655人 3,264人 280人 11.66倍
兵庫医科大学 2,661人 2,540人 229人 11.09倍
東京医科大学 3,825人 3,585人 336人 10.67倍
愛知医科大学 3,351人 3,279人 327人 10.03倍
杏林大学 3,256人 3,149人 329人 9.57倍
東邦大学 2,701人 2,422人 253人 9.57倍
関西医科大学 4,580人 4,376人 473人 9.25倍
岩手医科大学 2,536人 2,474人 273人 9.06倍
東京女子医科大学 1,143人 1,088人 127人 8.57倍
国際医療福祉大学 4,015人 3,906人 472人 8.28倍
川崎医科大学 1,447人 1,397人 180人 7.76倍
東京慈恵会医科大学 1,895人 1,730人 227人 7.62倍
藤田医科大学 3,061人 2,871人 407人 7.05倍
慶應義塾大学 1,475人 1,349人 222人 6.08倍
北里大学 1,996人 1,678人 283人 5.93倍
東北医科薬科大学 2,014人 1,946人 347人 5.61倍

そして、この表を読むときにいちばん気をつけたいのがここです。帝京大学の「35.25倍」と、さきほどの志願倍率の表にあった「122.3倍」は、どちらも同じ大学の、どちらも正しい数字です。前者は2025年度入試の全方式を受験者÷合格者で計算したもの、後者は2026年度入試の一般選抜1方式を志願者÷募集人員で計算したもの。年度も、範囲も、計算式も違います。

1つの大学に、正しい「倍率」が同時に何個もある。だから数字だけを持ってきて比べても、話がかみ合わないわけです。

 

年内入試と地域枠の倍率は、また別物

最後にもう2つ、混ざりやすいものを分けておきます。いま出願が進んでいる年内入試(学校推薦型・総合型)と、地域枠です。

まず年内入試。同じ8校の2026年度の結果です。

大学・方式(2026年度) 受験者 合格者 実質倍率
産業医科大学
学校推薦型
102人 25人 4.1倍
愛知医科大学
学校推薦型(公募)
103人 20人 5.2倍
兵庫医科大学
学校推薦型(一般公募)
106人 20人 5.3倍
福岡大学
学校推薦型
136人 25人 5.4倍
昭和医科大学
学校推薦型
74人 12人 6.2倍
関西医科大学
学校推薦型 特別枠
73人 10人 7.3倍

実質倍率は4.1倍から7.3倍。一般選抜の8.3〜15.2倍と比べると、明らかに低い水準です。産業医科大学なら学校推薦型が4.1倍で、一般Aの15.0倍と同じ大学のなかでも差があります。現役・評定・専願・地域要件といった条件が合うなら、年内に受けられる分だけ受けておくほうが数字のうえでは有利だ、ということは言えます。試験の中身は医学部の総合型選抜・学校推薦型の試験内容22方式に、締切は医学部の推薦・総合型31校の締切一覧にまとめています。

一方、地域枠は事情が違います。

大学・枠(2026年度) 受験者 合格者 実質倍率
愛知医科大学
愛知県地域特別枠A(推薦)
28人 7人 4.0倍
福岡大学
学校推薦型(地域枠)
47人 10人 4.7倍
愛知医科大学
愛知県地域特別枠B(共テ)
40人 8人 5.0倍
関西医科大学
地域枠(静岡県)
44人 5人 8.8倍
昭和医科大学
新潟県地域枠
81人 7人 11.6倍
昭和医科大学
静岡県地域枠
179人 8人 22.4倍
関西医科大学
地域枠(大阪府)
41人 1人 41.0倍

4.0倍から41.0倍まで振れます。いちばん低いのが愛知医科大学の愛知県地域特別枠A(推薦)で4.0倍、いちばん高いのが関西医科大学の地域枠(大阪府)で41.0倍。枠が数名しかないので、その年に何人集まったかで倍率が大きく動きます。「地域枠は入りやすい」と一括りにできる数字にはなっていません。前の年の倍率が低かったから今年も低い、とも限らないので、複数年を並べて見てください。

 

太宰府アカデミーの視点|倍率をどう使うか、どう使わないか

ここまでの数字を、出願先を決めるときにどう使えばいいか。順番に書きます。

1つ目。数字を見たら、まず「何を何で割ったか」を確かめる。受験生がネットで見る「◯◯大学 倍率」は、ほとんどが志願倍率です。志願倍率は入試前に分かる唯一の倍率なので、それ自体は役に立ちます。ただし分母が募集人員であって合格者数ではないということだけは、頭に入れておいてください。募集人員10人の方式でも、繰上まで含めれば30人合格することがあります。

2つ目。志願倍率で大学を比べない。この記事で見たとおり、志願倍率の順番と実質倍率の順番は一致しませんでした。とくに募集人員が20人を切る方式の志願倍率は、ほとんど募集人員の小ささを測っているので、大学間の比較には使えません。同じ方式の前の年・前の前の年と並べて「増えたか減ったか」を見るほうが、まだ意味があります。

3つ目。実質倍率は「1つの試験の受かりにくさ」であって、「受かりやすさの順番」ではない。ここは強調しておきたいところです。実質倍率が低い大学ほど入りやすい、とは言えません。倍率はその大学に何人が受けに来たかでほとんど決まり、合格する人の学力とは別の話だからです。この点は入りやすい医学部はどこか|倍率ではなく合格者平均偏差値で見る全81校で、全81校の合格者平均偏差値と突き合わせて詳しく検証しています。出願先を絞る作業は、まず学力帯で、そのあとに科目の相性で。倍率はその次です。

4つ目。大学単位ではなく、方式単位で見る。昭和医科大学は一般Ⅰ期が実質12.2倍、一般Ⅱ期が実質86.8倍でした。同じ大学、同じ年度で7.1倍の開きがあります。「昭和医科大学の倍率」という言い方には、そもそもあまり意味がありません。受ける方式を決めてから、その方式の数字を見る。これだけで、見る数字はかなり絞れます。

そのうえで、倍率をいちばん有効に使える場面を1つ挙げるなら、繰上合格がどれくらい回りそうかの目安だと思います。募集人員に対して最終合格者が何倍出ているかは、上の実数の表から読み取れます。合格発表のあと、補欠で待つことになったときに効いてくる数字です。

 

まとめ

  • 倍率は3種類ある……志願倍率(志願者÷募集人員)・受験倍率(受験者÷募集人員)・実質倍率(受験者÷合格者)。産業医科大学一般A(2026年度)なら24.7倍・22.3倍・15.0倍で、どれも正しい数字です
  • 計算式は大学ごとに違う……昭和医科大学は志願者÷合格者、産業医科大学は3種類を併記、国際医療福祉大学と関西医科大学は倍率そのものを公表していません
  • 志願倍率100倍超は2026年度で12方式……最高は近畿大学一般後期の152.6倍。10方式は募集20人以下で、分母の小ささが効いています
  • 実質倍率に直すと前期は8.3〜15.2倍……見かけは実質の1.6〜3.9倍。ただし後期・Ⅱ期は実質でも31.7〜86.8倍のままです
  • 全81校を1つの定義でそろえると……2025年度入試で私立12.58倍・国立3.22倍・公立2.78倍。私立31校は帝京大学35.25倍から東北医科薬科大学5.61倍まで
  • 年内入試は4.1〜7.3倍、地域枠は4.0〜41.0倍……同じ「倍率」でも入試の種類でまったく違います

明日からできることを1つだけ挙げるなら、受ける予定の方式を紙に書き出して、その1つずつに「募集人員」「前年の志願者数」「前年の最終合格者数」の3つを埋めてみてください。倍率という言葉を一度捨てて、この3つの実数だけを並べる。そうすると、志願倍率100倍の方式が募集5人の枠だったことや、募集10人の方式で実際には30人合格していたことが、自分の目で見えるようになります。3つとも、この記事の表と各大学の入試結果ページから引けます。

この記事を書こうと思ったのは、「倍率100倍だから無理ですよね」という相談を、毎年ほぼ同じ言葉で受けるからです。そのたびに「その100倍は志願者を募集人員で割った数字ですよ」と説明するのですが、説明される機会がある人とない人で、出願先の選び方が変わってしまうのはよくないと思っていました。数字そのものは全部公表されています。足りないのは情報ではなく、どの数字がどれなのかという地図のほうです。

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本日の記事は以上です。

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後藤 登(Goto Noboru)
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