こんにちは、福岡の医学部予備校で総務/広報を担当している後藤です。
「やらなきゃいけないのは分かっているのに、机に向かえない」。秋になると、大学受験を控えた生徒からいちばん多く受ける相談です。
僕はずっと「それはやる気の問題じゃないよ」と答えてきました。ただ、根拠は自分の経験だけでした。そこで先延ばしの研究を調べてみると、答えははっきりしていました。先延ばしは、やる気とはほとんど関係がありません。
この記事では、研究の数字をそのまま出さずに「関係が強い/弱い」といった言葉に置き換えています。元の数字は、記事の最後の表にまとめました。
まず、こう思っていませんか。
− やる気さえ出れば、先延ばしはしなくなるんでしょ?
− 完璧主義だから、なかなか手が付けられないんでしょ?
− 自分は追い込まれたほうが力が出るタイプなんでしょ?
3つとも、研究の結果は違いました。
この記事の目次
結論|先延ばしの原因は「やる気」ではなく「誘惑」と「始めにくさ」
先に答えを書きます。
- やる気や完璧主義は、先延ばしとほぼ関係ありませんでした
- 関係が強かったのは、誘惑に反応しやすいか、やることが嫌か、「できそう」と思えるかでした
- 先延ばしが多い人ほど、成績は少し低めでした。後回しで得をすることはありません
だから、やる気が出るのを待つより、誘惑を遠ざけて、始める一歩を小さくするほうが近道です。明日からの手順は、記事の後半に4つにまとめました。
やる気がある人も、ない人も、先延ばしの量はほとんど同じ
大学生の試験勉強や課題を中心に、先延ばしの研究216本をまとめた分析(2007年)は、先延ばしと「どんな性格や気持ちが関係しているか」を一覧にしています。関係の強さを言葉で並べると、次のとおりです。

| 先延ばしとの関係 | 強さ |
|---|---|
| 計画どおりに動ける人ほど、少ない | 強い |
| 自分を抑えられる人ほど、少ない | 強い |
| 誘惑に反応しやすい人ほど、多い | はっきり |
| 気が散りやすい人ほど、多い | はっきり |
| やることが嫌なときほど、多い | はっきり |
| 「できそう」と思える人ほど、少ない | はっきり |
| 頭のよさ(知能・適性) | ほぼなし |
| 完璧主義 | ほぼなし |
| やる気(やろうという気持ち) | ほぼなし |
やる気と完璧主義は「ほぼなし」でした。やる気がある人も、ない人も、先延ばしの量はほとんど変わらなかったということです。頭のよさも、ほぼ関係ありませんでした。
一方で、「計画どおりに動けるか」は強い関係、「誘惑に反応しやすいか」「やることが嫌か」「できそうと思えるか」ははっきりした関係がありました。どれも気持ちの強さではなく、目の前に何があるか、始める一歩が重いかの話です。
やる気が出るのを待たない。先に、スマホなどの誘惑を遠ざけて、最初の1問を小さくする。
先延ばしが多い人ほど、成績は少し低い
同じ分析で、先延ばしと成績の関係は「弱い関係」でした。先延ばしが多い人ほど、成績が少し低い傾向です。
著者は結果をこうまとめています。「たいていは害になり、ときどき害にならない。でも、得になることはない」。
「後回しにしたけど、なんとかなった」という経験は、誰にでもあると思います。それは”ときどき害にならなかった”だけで、後回しにしたおかげで点が上がったわけではありません。
「なんとかなった」を、次も後回しにしていい理由にしない。
「追い込まれると力が出る」は、自分の感覚ではわからない
中学生から大学生、社会人まで、96本の研究・のべ55,477人をまとめた2024年の分析では、2つのことがわかりました。
1つ目。わざと後回しにして、締め切り前に集中する「追い込み型」の人は、成績が少し高い傾向がありました。ただし、このタイプを調べた結果は176件中14件しかなく、まだ確かとは言えません。
2つ目のほうが大事です。先延ばしの量を本人に聞くと、成績との関係は弱く出ました。記録など外から測ると、関係は約3倍強く出ました。

| 先延ばしの測り方 | 成績との関係 |
|---|---|
| 本人に聞いて測る | 弱い |
| 記録など外から測る | はっきり |
※記録など外から測ったほうが、関係は約3倍強く出ました
つまり、自分では「そんなに後回しにしていない」と感じていても、実際の影響はもっと大きいかもしれません。「自分は追い込み型だ」という感覚も、あてにしにくいということです。大学入学共通テストの直前に「追い込めば間に合う」と考えたくなったときほど、思い出してほしい結果です。
感覚で判断しない。机に向かった時刻を、毎日1行だけ記録する。
夜に回すと、気づかないうちに頭が働かなくなる
後回しにした分は、たいてい夜に回ります。そこで睡眠の研究を1つだけ紹介します。
健康な大人48人に、睡眠を4時間・6時間・8時間に分けて14日間続けてもらった実験(2003年)があります。6時間以下の人は、頭の働きが「一睡もしない夜を2回過ごした人」と同じくらいまで落ちました。
しかも本人は、そこまで落ちていることに気づいていませんでした。眠気の感じ方は途中から変わらず、6時間の人と4時間の人で区別がつかなかったのです。「寝不足に慣れた」は、慣れたのではなく、気づけなくなっただけでした。
終わらなかった分を、睡眠を削って取り返さない。寝る時刻は動かさない。
太宰府アカデミーの視点|先延ばしを減らす4つの手順
ここまでの研究を、明日から使える形にまとめました。どれも、やる気がない日にこそできることです。

| 手順 | やること |
|---|---|
| 1. スマホを別の部屋に置く | 机に向かう前に。誘惑を目の前から消す |
| 2. 明日の最初の1問を決める | 前の晩に。必ず解ける問題を選ぶ |
| 3. 始める時刻と場所を書く | 机に向かった時刻も毎日1行残す |
| 4. 夜に回さない | 終わらなかった分は翌日へ。寝る時刻は固定 |
4つとも、研究で関係が強かったものに1つずつ対応させています。①は誘惑、②は始めにくさと「できそう」の感覚、③は計画どおりに動くことと自分の感覚のずれ、④は睡眠です。②で選ぶ1問は、必ず解ける問題にしてください。「できそう」と思えるほど先延ばしは少なかったので、最初の1問は簡単なほうが動き出せます。
志望校が国公立大学でも私立大学でも、この4つは同じです。そして、先延ばしは能力や性格の欠陥ではありません。頭のよさとも、完璧主義とも、ほぼ関係がありませんでした。自分を責めるより、手順を1つ変えるほうが早いと考えています。
勉強法の順番は秋に勉強が続かないのはなぜかに、模試が返ってきたあとの動き方は模試の復習はいつやるかにまとめています。
勉強の先延ばしについてよくある質問
Q. やる気を出す方法はありますか
研究からは、やる気を上げても先延ばしは減りにくいと言えます。やる気とはほぼ関係がなかったからです。先に「始める時刻」と「最初の1問」を決めるほうが、動き出しにつながります。
Q. 完璧主義は直したほうがいいですか
先延ばしを減らすためなら、直す必要はほぼありません。関係がほとんどなかったからです。ただし「周りから完璧を求められている」と感じている人だけは、少し関係がありました。
Q. 睡眠は何時間とればいいですか
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」は、中学生・高校生に8〜10時間を目安にするよう勧めています。大学入学共通テストは朝から始まるので、寝る時刻は早めに固定しておくほうが当日も楽です。体調の相談は、医療機関にお願いします。
この記事で使った研究(元の数字)
本文では、数字を言葉に置き換えました。関係の強さは、相関係数が0.5以上を「強い」、0.3以上を「はっきり」、0.1以上を「弱い」、0.1未満を「ほぼなし」としています(研究でよく使われる目安です)。どれも「〜な人ほど〜」という傾向で、「〜すれば〜になる」という因果を示したものではありません。対象の多くは大学生と社会人です。
| 研究 | わかったこと(元の数字) |
|---|---|
| Steel(2007) Psychological Bulletin 133(1) |
先延ばしの研究216本(691の相関)をまとめた分析。 やる気 −0.03/完璧主義 −0.03/知能・適性 +0.03/誠実性 −0.62/自分を抑える力 −0.58/気の散りやすさ +0.45/衝動性 +0.41/やることの嫌さ +0.40/自己効力感 −0.38/全体的な成績 −0.19 |
| Kooren ほか(2024) Education Sciences 14(3) |
96本の研究・のべ55,477人(中学生〜社会人)。 先延ばしと成績 −0.18/追い込み型(能動的先延ばし)+0.15(176件中14件・95%区間 0.035〜0.266)/本人の申告で測ると −0.16、記録など外から測ると −0.49 |
| Van Dongen ほか(2003) Sleep 26(2) |
健康な大人48人。睡眠4・6・8時間を14日間。 6時間以下で、完全に眠らない夜2晩に相当する低下。本人の眠気の感じ方では6時間と4時間を区別できなかった |
| 厚生労働省(2024年2月) 健康づくりのための睡眠ガイド2023 |
中学・高校生は8〜10時間を参考に睡眠時間を確保することを推奨 |
まとめ
- 先延ばしとやる気は、ほぼ関係ありませんでした(216本の研究)。完璧主義も同じです
- 関係が強いのは「計画どおり動けるか」「誘惑」「やることの嫌さ」「できそうと思えるか」
- 先延ばしが多い人ほど成績は少し低い。後回しで得をすることはありません
- 「追い込み型」かどうかは、自分の感覚ではわかりません。記録で測ると、影響は約3倍に見えました
- 6時間以下の睡眠が続くと、頭の働きは大きく落ち、本人は気づきません
今日やることは1つです。大学入学共通テストまでの日数を数えるより先に、スマホを別の部屋に置いて、明日の最初の1問を決めてから寝てください。大学受験の勉強は、気持ちより手順で進めるほうが崩れにくいと、僕は考えています。
「やる気を出せ」と言われて出せるなら、誰も苦労しません。気持ちの問題として片付けたくなくて、この記事を書きました。
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本日の記事は以上です。
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後藤 登(Goto Noboru)
仕事:総務・広報・完全個別指導コース担当
自己PR:高校・大学ボクシング部。釣りや登山が好き。新卒で当校に勤めて13年目。医学部受験の情報を調べて、ブログやInstagram、Twitterを更新しています。4年前から完全個別指導コースのコース担当。
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