\ 整形外科の「仕事の中身」を数字で見るなら /
骨折の手術の71.2%は65歳以上、膝の靱帯の再建は56.4%が15〜29歳(2023年度)。整形外科医に向いている人を、手術と外来の数字で考えました。詳しくは 整形外科医に向いている人|骨折の手術の7割は65歳以上の患者 をご覧ください。
こんにちは、福岡の医学部予備校で総務・広報を担当している後藤です。
今日は、前に書いた記事の宿題を片づけます。以前「麻酔科医になるには」という記事で、「どんな人が麻酔科に向いているかを示した公的なデータは見つからなかった」と正直に書きました。
そのあとも「麻酔科医に向いてる人」で検索して、あの記事にたどり着く人が毎月たくさんいます。答えになっていないまま、読者を帰していたわけです。そこで今回は考え方を変えました。性格のデータが無いなら、仕事の中身を数字で描けばいい。何を、どれだけ、どんな患者さんに対してやる仕事なのかが分かれば、向き不向きはかなり見えてきます。
先に、いちばん伝えたい数字を書きます。日本で1年間にかけられる全身麻酔は約441万回(2023年度の保険診療)。そのうち56.2%が65歳以上の患者さんです。麻酔科医の仕事は「眠らせること」ではなく、持病を抱えた体を、手術のあいだ丸ごと預かることです。
この記事を開いた方は、たぶんこんなことを思っています。
− 麻酔科医って、実際は何をしてる人なの?
− 頭がいい人じゃないと無理? どういう性格が向いてるの?
− 麻酔科って楽そうだし、人気なんじゃないの?
ひとつずつ、数字で確かめていきます。
この記事の目次
麻酔科医に向いてる人は?|性格ではなく仕事の中身で見る
結論から書きます。麻酔科医に向いているのは、「自分が主役ではない手術のあいだ、患者さんの全身を預かり続けることに力が出る人」です。そう考える根拠を、先に5つの数字で並べます。
| 見るもの | 数字 | そこから分かる向き不向き |
|---|---|---|
| 全身麻酔の回数 | 年441万回 | 1回1回、誰かの手術のあいだ全身を預かる |
| うち65歳以上 | 56.2% | 持病の多い体を読む力が要る |
| 専門医の経験症例 | 4年で600例 | 同じ手技を数百回、正確に重ねる |
| 専攻医(新しく選ぶ人) | 9年で495人→495人 | 全体が18.9%増えたなかで横ばい |
| 医師少数区域で足りない | 108圏域中89 | 地方では引く手あまた |
まず、麻酔科医が何をする医師なのか。日本麻酔科学会は公式の説明で、麻酔科医のいちばんの価値(コアバリュー)を「患者さんの生命を守る全身管理能力」と書いています。そして、その力が使われる場所を6つ挙げています。

| 麻酔科医の仕事 | 中身 |
|---|---|
| 手術の麻酔管理 | 手術前の評価から手術後の回復まで(周術期) |
| 集中治療 | 重症の患者さんの呼吸・循環を支える |
| 検査や治療のときの鎮静管理 | 内視鏡やカテーテルなど手術室の外でも |
| 分娩時の鎮痛(いわゆる無痛分娩) | 産科麻酔の領域 |
| ペインクリニック | 慢性の痛みに外来で向き合う |
| 緩和医療 | 患者さんの苦痛を和らげる |
学会の言葉をそのまま借りると、「麻酔科医の専門性は手術室の中だけにとどまりません」。手術の麻酔のほかに、集中治療、内視鏡などの検査のときの鎮静、無痛分娩、ペインクリニック、緩和医療。どれも「呼吸・血圧・心臓の働きを見守りながら、体を安全な範囲に保つ」という同じ力を使う仕事です。
ここから先は、この「全身を預かる」という仕事を、回数・患者・経験量・人の数で見ていきます。なお、働き方の数字(年1,860時間超の時間外労働は1.7%・病院勤務が94.2%・女性比率43.3%)は麻酔科医になるにはの記事で詳しく書いたので、ここでは繰り返しません。
出典:日本麻酔科学会「麻酔科医の役割」(2026年10月3日確認)。
年441万回|全身麻酔の半分以上は65歳以上の患者
国は、保険診療で行われた医療行為の回数を、年齢別に公開しています(NDBオープンデータ)。そこから全身麻酔(マスクまたは気管内挿管による閉鎖循環式全身麻酔)の回数を、患者さんの年齢ごとに集計しました。

| 患者の年齢 | 全身麻酔の回数 | 割合 |
|---|---|---|
| 0〜14歳 | 215,853回 | 4.9% |
| 15〜39歳 | 448,474回 | 10.2% |
| 40〜64歳 | 1,267,450回 | 28.7% |
| 65〜74歳 | 1,025,018回 | 23.2% |
| 75歳以上 | 1,454,582回 | 33.0% |
| うち80歳以上 | 847,101回 | 19.2% |
| うち90歳以上 | 127,418回 | 2.9% |
2023年4月〜2024年3月の1年間で、全身麻酔は4,411,663回。そのうち65歳以上が56.2%、80歳以上だけで19.2%(847,101回)でした。90歳以上の患者さんへの全身麻酔も、年127,418回あります。一方で、0〜14歳の子どもは4.9%です。
もう1つ。全身麻酔の点数には、厚生労働大臣が定める「麻酔が困難な患者」(心臓や呼吸の機能が落ちている人など)の区分があります。その区分で算定されたのは561,378回、全体の12.7%でした。8回に1回は、国がわざわざ「難しい」と区別している麻酔だということです。
この数字から見えるのは、麻酔科医の目の前にいるのは「健康な人が手術だけ受けに来る」姿ではないということです。高血圧、糖尿病、心臓の病気、飲んでいる薬。手術の前にそれを読み、手術中に起きる変化に先回りする。学会も「手術を受ける患者さんの背景も複雑になり」と書いています。だから、外科の手技よりも、内科のように体全体を読むことが好きな人のほうが、この仕事には合っていると僕は読みました。
ちなみに、この441万回を主たる診療科が麻酔科の医師10,628人(2024年)で単純に割ると、1人あたり年415回になります。ただし全身麻酔は麻酔科医以外がかけることもあるので、これは「規模の目安」として見てください。
出典:厚生労働省「第10回NDBオープンデータ」(2023年4月〜2024年3月診療分)L 麻酔 性年齢別算定回数より、L008 閉鎖循環式全身麻酔の入院・外来を太宰府アカデミー集計。保険診療で算定された回数で、集計値が10未満の欄(「-」表示)は含みません。医師数は厚生労働省「令和6(2024)年 医師・歯科医師・薬剤師統計」。
麻酔科専門医になるには|4年・600症例、うち特殊な麻酔110例
次は、麻酔科医として一人前と認められるまでに、どれだけの経験が要るかです。

| 経験する麻酔 | 必要な症例数 |
|---|---|
| 小児(6歳未満)の麻酔 | 25例 |
| 帝王切開術の麻酔 | 10例 |
| 心臓血管手術の麻酔 | 25例 |
| 胸部外科手術の麻酔 | 25例 |
| 脳神経外科手術の麻酔 | 25例 |
| 特殊な麻酔の合計 | 110例 |
| 麻酔科管理症例(局所麻酔を含む)の総数 | 600例 |
麻酔科専門医(日本専門医機構の認定)になるには、初期研修のあと満4年以上の研修プログラムで、麻酔科が管理する症例を600例経験します。1年にならすと150例、週に約3例のペースです。
そのうえで、6歳未満の子ども25例・帝王切開10例・心臓血管手術25例・胸部外科25例・脳神経外科25例、合わせて110例の「特殊な麻酔」が別に決まっています。小さな子どもの細い気道、お母さんと赤ちゃんの2人の命、心臓を止める手術、片方の肺だけで呼吸させる手術、脳の手術。同じ「全身麻酔」でも、体のどこを、誰を守るかで中身がまったく違うので、全部を一定数こなすことが求められています。試験は筆記・口頭・実技の3科目で、4年以内に全部に合格する必要があります。
専門医とは別に、病院が「麻酔科」の看板を出すには、医師が厚生労働大臣の許可(麻酔科標榜医)を受ける必要があります。条文は麻酔科医になるにはの記事に書いたので、ここでは実際に何人が許可されているかを見ます。
| 審査の年度 | 基準1(指導医のもとで2年修練) | 基準2(2年の業務+全身麻酔300例) | 許可の合計 |
|---|---|---|---|
| 2024年度 | 438人中438人 | 63人中49人 | 488人 |
| 2025年度 | 434人中434人 | 61人中59人 | 494人 |
許可は年に約490人(2024年度488人・2025年度494人)。麻酔指導医のもとで2年修練した人(基準1)は、2年で872人が申請して872人全員が許可されました。一方、2年の業務と全身麻酔300例の経験で申請した人(基準2)は、124人中108人です。
ここから分かるのは、麻酔科は「何例やったか」だけでなく「誰のもとで、どう積んだか」まで問われる科だということです。同じ手技を何百回も、毎回同じ精度で繰り返すことを苦にしない人が、この経験量を自然に積んでいけると思います。
出典:日本麻酔科学会「各種資格認定に必要な症例数・単位数 一覧表【2026年度以降】」・「機構専門医 新規申請」(2026年10月3日確認)。厚生労働省 医道審議会 医道分科会 麻酔科標榜資格審査部会 議事要旨(第214〜219回・2024年7月〜2026年3月)。年度の合計は各回の合格者を太宰府アカデミーが足したもので、合計には基準3(2年で2人)を含みます。
麻酔科を選ぶ医師は増えていない|9年で495人→495人
では、この仕事を選ぶ若い医師は増えているのか。初期研修を終えた医師が19の基本領域から1つを選ぶ「専攻医」の採用数で見ます。

| 診療科 | 2018年度 | 2026年度 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 救急科 | 267人 | 527人 | +97.4% |
| 整形外科 | 552人 | 773人 | +40.0% |
| 精神科 | 441人 | 547人 | +24.0% |
| 外科 | 805人 | 996人 | +23.7% |
| 内科 | 2,670人 | 3,129人 | +17.2% |
| 産婦人科 | 441人 | 478人 | +8.4% |
| 麻酔科 | 495人 | 495人 | +0.0% |
| 小児科 | 573人 | 543人 | -5.2% |
| 全19領域の合計 | 8,410人 | 9,998人 | +18.9% |
2018年度から2026年度にかけて、専攻医の全体は8,410人から9,998人へ18.9%増えました。救急科は+97.4%、整形外科は+40.0%です。そのなかで、麻酔科は495人から495人。ぴったり横ばいです。
9年分を並べます。
| 年度 | 麻酔科の専攻医 | 全19領域の合計 | 麻酔科の割合 |
|---|---|---|---|
| 2018 | 495人 | 8,410人 | 5.9%(5位) |
| 2019 | 489人 | 8,615人 | 5.7%(5位) |
| 2020 | 455人 | 9,082人 | 5.0%(7位) |
| 2021 | 463人 | 9,183人 | 5.0%(7位) |
| 2022 | 494人 | 9,448人 | 5.2%(7位) |
| 2023 | 466人 | 9,325人 | 5.0%(7位) |
| 2024 | 486人 | 9,454人 | 5.1%(6位) |
| 2025 | 497人 | 9,762人 | 5.1%(6位) |
| 2026 | 495人 | 9,998人 | 5.0%(7位) |
9年間、麻酔科は455人〜497人のあいだを行き来しています。全体が伸びたぶん、割合は5.9%から5.0%へ下がり、順位は5位から7位になりました。もし麻酔科が全体と同じだけ伸びていたら、2026年度は約588人だった計算です。
前の章で見たとおり、手術を受ける患者さんは高齢になり、背景も複雑になっています。それでも新しく麻酔科を選ぶ医師の数は、9年前と同じ。「麻酔科は楽そうだから人気」というイメージは、少なくとも専攻医の数字には出ていません。
出典:厚生労働省 医道審議会 医師分科会 医師専門研修部会 資料1「令和8年度の専攻医採用と令和9年度の専攻医募集について」(令和8年7月15日)。
地方では足りていない|医師少数区域の82.4%で全国平均の0.6倍未満
人の数が横ばいのとき、しわ寄せが出るのは地方です。国は、医師が少ない108の二次医療圏(医師少数区域)について、診療科ごとに全国平均と比べた医師の数を出しています。

| 診療科 | 全国平均の0.6倍未満 | その割合 | 全国平均以上 |
|---|---|---|---|
| 放射線科 | 92圏域 | 85.2% | 4圏域 |
| 救急科 | 91圏域 | 84.3% | 7圏域 |
| 麻酔科 | 89圏域 | 82.4% | 2圏域 |
| 形成外科 | 83圏域 | 76.9% | 6圏域 |
| 皮膚科 | 73圏域 | 67.6% | 0圏域 |
| 産婦人科 | 64圏域 | 59.3% | 3圏域 |
| 小児科 | 61圏域 | 56.5% | 6圏域 |
| 全診療科 | 40圏域 | 37.0% | 12圏域 |
| 外科 | 37圏域 | 34.3% | 11圏域 |
| 精神科 | 34圏域 | 31.5% | 26圏域 |
| 内科 | 20圏域 | 18.5% | 6圏域 |
麻酔科は108圏域のうち89圏域(82.4%)で、人口あたりの医師数が全国平均の0.6倍に届いていません。全国平均以上の圏域は、わずか2つです。放射線科(92圏域)・救急科(91圏域)に次ぐ3番目で、全診療科(40圏域)の2倍以上の多さです。
その一方で、都市部では麻酔科の専攻医に定員の上限(シーリング)がかかっています。2027年度は北海道・東京・京都・大阪・兵庫・岡山・広島・福岡・沖縄の9都道府県が対象で、福岡も入っています。都市では枠が絞られ、地方では足りない。どこで働くかに柔軟な人ほど、麻酔科の選択肢は広がるということです。
この地方の不足は、医学部の入試ともつながっています。文部科学省の調べでは、2024年度の臨時定員の地域枠978枠のうち410枠(41.9%)が、卒業後の診療科を特定(推奨を含む)しています。その選択肢に麻酔科が入っている枠もあります。
たとえば関西医科大学の特別枠学校推薦型選抜(2027年度は10名)は、卒業後に研修2年を終えたあと、医師不足の診療科(産婦人科・救急・外科・麻酔科・内科・小児科)の医師として大学に3年以上勤めることが条件です。大学の奨学金(6年で最大600万円)を受けなくても、この勤務条件はかかります。地域枠や特別枠で医学部を受けるなら、募集要項の「卒業後の診療科」の欄を、出願の前に必ず読んでください。大学によって、麻酔科を選べる枠もあれば、選べない枠もあります。
出典:厚生労働省 第12回 地域医療構想及び医療計画等に関する検討会 資料2-2(令和8年3月3日)(医師・歯科医師・薬剤師統計 令和4年をもとにした集計)、同 医師専門研修部会 資料1(令和8年7月15日)p22。地域枠は文部科学省医学教育課調べ(令和6年度の臨時定員・自治医科大学を含む)、関西医科大学の2027年度学生募集要項。
麻酔科医に向いていない人|仕事とのずれが出やすい3つ
ここまでの数字を裏返すと、ずれが出やすいタイプも見えてきます。能力の話ではなく、仕事の形との相性の話として読んでください。
①「自分の手で治した」を手応えにしたい人
手術で病気を取り除くのは外科医です。麻酔科医の仕事がうまくいったとき、起きるのは「何も起きなかった」という結果です。その静けさに誇りを持てるかどうかは、大きな分かれ目です。
②開業して自分のペースで働きたい人
麻酔科医の94.2%は病院で働いています(2024年)。手術室と集中治療室が職場なので、病院というチームの中で働くことが前提になります。ただしペインクリニックのように、外来で患者さんを診る道もあります。
③1人の患者さんと何年も付き合いたい人
手術の麻酔では、患者さんとの関わりは手術の前後の数日です。長く寄り添う医療をしたいなら、同じ全身管理の力を使う緩和医療やペインクリニックに目を向ける、という選び方もあります。
太宰府アカデミーの視点|高校生のうちに確かめられる3つ
麻酔科を選ぶのは、医学部6年+初期研修2年のあと、最短でも8年先です。高校生のうちに決める必要はまったくありません。ただ、向き不向きの手がかりを今のうちに集めることはできます。
①生物の「体内環境」の単元を、面白いと思えるか。
呼吸・血圧・心臓の働き・血糖の調節。麻酔科医が手術中にずっと見ているのは、生物基礎で習うこの仕組みです。暗記の対象ではなく「ここが崩れたらどう立て直すか」を考えるのが楽しいなら、麻酔科の思考に近いと思います。
②「支える役」で力が出たことがあるか。
文化祭の照明、部活のマネージャー、試合の記録係。表に出ない役で、全体がうまく回ったときに満足できた経験があるか。65歳以上が56.2%という患者さんの体を、手術のあいだ黙って支え続ける仕事です。自分がどちらで力が出るタイプかは、振り返れば分かります。
③志望する大学の附属病院を、手術の側から見ておく。
医学部5〜6年の臨床実習では、手術室に入ります。大学によって附属病院の規模も、麻酔科の講座が担う範囲(集中治療・ペインクリニック・緩和医療など)も違います。オープンキャンパスで「附属病院の麻酔科はどんな分野を診ていますか」と聞いてみると、答えから大学の医療の厚みが見えます。
最後に1つ。「麻酔科は頭がいい人の科」「楽な科」という序列は、制度の上にはありません。医師国家試験は全科共通です。数字が示しているのは、頭の良さではなく、600例の経験を積み、毎回「何も起きない」を作り続ける仕事だということです。
よくある質問
Q. 麻酔科医になるには何年かかりますか?
A. 医学部6年+初期研修2年+麻酔科の専門研修4年で、最短12年です。専門研修では4年で600症例(うち特殊な麻酔110例)を経験し、筆記・口頭・実技の試験に合格して専門医になります。
Q. 麻酔科医は何人いますか?
A. 主たる診療科を麻酔科とする医師は10,628人(2024年)で、医療施設で働く医師の3.2%です。平均年齢は45.9歳と若く、10,010人が病院で働いています。
Q. 麻酔科医を目指すなら、どの大学の医学部がいいですか?
A. 麻酔科の専門研修は、初期研修のあとに全国のプログラムから選ぶので、出身大学で決まるものではありません。大学選びで見るとしたら、附属病院の規模と、麻酔科の講座が集中治療・ペインクリニック・緩和医療まで担っているかです。地域枠で入る場合は、大学ごとに卒業後の診療科の条件が違うので、募集要項で確かめてください。
Q. 麻酔科医は頭の良さが必要ですか?
A. 医師免許は全科共通の国家試験で取るので、麻酔科だけ特別な学力が要る制度はありません。求められるのは、高齢の患者さんの持病を読み、4年で600例の経験を正確に積み重ねる力です。
Q. 麻酔科は人気がありますか?
A. 専攻医の採用数は2018年度も2026年度も495人で、9年間横ばいです。全体が18.9%増えたため、19領域の中での順位は5位から7位に下がっています。
まとめ
- 日本の全身麻酔は年4,411,663回(2023年度・保険診療)。65歳以上が56.2%、80歳以上が19.2%です
- 12.7%は国が「麻酔が困難な患者」と区別している麻酔です
- 麻酔科専門医には4年で600症例、うち小児・帝王切開・心臓・胸部・脳外科の特殊な麻酔110例が要ります。試験は筆記・口頭・実技です
- 麻酔科標榜の許可は年に約490人。指導医のもとでの修練は872人中872人、症例数での申請は124人中108人が許可されました
- 専攻医は9年間で495人→495人。全体が18.9%増えるなかで割合は5.9%→5.0%、順位は5位→7位です
- 医師少数区域108圏域のうち89圏域で、全国平均の0.6倍に届いていません。一方で福岡を含む9都道府県はシーリングの対象です
結論です。麻酔科医に向いているのは、持病を抱えた体を内科のように読み、自分が主役ではない手術のあいだ、黙って全身を預かり続けられる人だと、僕はこのデータを見て思いました。年441万回の全身麻酔は、その人たちが「何も起きない」を作り続けているから回っています。いま高校生なら、まず生物基礎の「体内環境」を、暗記ではなく「崩れたらどう立て直すか」で読んでみてください。そして志望する大学の附属病院で、麻酔科がどこまでの分野を担っているかを、オープンキャンパスで一度聞いてみてください。
あわせて読みたい
- 麻酔科医になるには|医学部6年+研修2年+専攻医4年の最短12年(標榜許可の条文、「麻酔科医」の3つの数え方、働き方の数字はこちらです)
- 医者に向いてる人とは?19診療科の働き方を数字で比べました(麻酔科以外の科と並べて見たい方はこちら)
- 外科医に向いている人|専門医になるには手術350例(手術の「執刀する側」です。並べて読むと役割の違いが分かります)
- 精神科医に向いている人|18万件の入院を判定する仕事(同じ形で精神科を見ています)
- 医者に向いている人|国が定めた10の資質のうち知識は1つ(診療科を問わない「医師に向いている人」です)
この記事を書いたのは、前の記事で「向いている人のデータは無い」と書いたまま、読者を帰していたのが心残りだったからです。データが無いのは「性格」の側で、仕事の中身の側には数字がちゃんとありました。年441万回、その半分以上が65歳以上。この数字を知ったうえで「それでも面白そうだ」と思えた人に、麻酔科という道があることを知ってほしいと思っています。ちなみに、日本麻酔科学会は10月13日を「麻酔の日」としています。…今月は、手術室の静かな主役に少しだけ思いを寄せてみてください。
本日の記事は以上です。
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後藤 登(Goto Noboru)
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自己PR:高校・大学ボクシング部。釣りや登山が好き。新卒で当校に勤めて13年目。医学部受験の情報を調べて、ブログやInstagram、Twitterを更新しています。4年前から完全個別指導コースのコース担当。
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