こんにちは、福岡の医学部予備校で総務/広報を担当している後藤です。
大学入学共通テストまで、今日(2026年11月7日)であと70日。この時期になると「睡眠を削ってでも、勉強時間を増やしたほうがいいですか」という相談が増えます。
こんなふうに思っていませんか。
− 6時間寝ていれば、受験生としては十分でしょ?
− 最初はきつかったけど、もう寝不足には慣れたから大丈夫でしょ?
− 「睡眠不足で記憶力が40%下がる」って、本当なの?
先に答えを書くと、毎晩6時間の睡眠を2週間続けた大人の頭の働きは、徹夜1晩分まで落ちていました。しかも本人は「少し眠い」くらいにしか感じていませんでした。この記事では、確かめられた実験と国の調査だけを使って、受験生は何時間・何時に寝ればいいかをまとめます。研究の数字はそのまま出さず、「何晩分」「40人のクラスなら」のような言葉に置き換えました。元の数字は記事の最後の表にあります。

この記事の目次
結論|受験生の睡眠時間は6時間で足りる?
先に答えを書きます。
- 6時間を2週間続けると、頭の働きは徹夜1晩分。4時間なら徹夜2晩分。8時間の組はほとんど落ちませんでした(大人48人の実験)
- 本人は、ほとんど気づかない。6時間の組も4時間の組も「少し眠い」くらいで、自分の眠さでは区別できませんでした
- 成績とのつながりが強かったのは、寝た時間より「昼の眠気」。授業中や自習中に眠いなら、足りていないサインです(ただし、眠くないから足りているとは限りません)
- 国の目安は、高校生で8〜10時間。大学入学共通テストは朝9時30分に始まるので、寝る時刻より先に起きる時刻を決めます
「6時間なら大丈夫」と自分で感じていても、それは当てになりません。今夜、明日の朝に起きる時刻を決めて、そこから逆算して寝る時刻を決めてください。
6時間の睡眠を2週間続けると、頭の働きは徹夜1晩分
アメリカで2003年に発表された実験です。21〜38歳の健康な大人48人に、実験の施設で過ごしてもらい、毎晩の睡眠を8時間・6時間・4時間のどれかに決めて、14日間続けました。くらべるために、3晩まったく眠らない組もつくっています。
毎日、画面に出る合図にすぐ反応するテストをして、反応が抜けた回数を数えました。結果がこちらです。

| 毎晩の睡眠(14日間) | 14日目の頭の働き | 本人の感じ方 |
|---|---|---|
| 8時間(9人) | ほとんど落ちなかった | — |
| 6時間(13人) | 徹夜1晩分まで落ちた | 「少し眠い」くらい |
| 4時間(13人) | 徹夜2晩分まで落ちた | 「少し眠い」くらい |
※アメリカの実験(2003年)。21〜38歳の大人48人。頭の働きは、注意力のテスト(画面に出る合図への反応の抜け)で比べた。同じテストを、3晩眠らなかった組(13人)とくらべて「徹夜何晩分」とした
8時間の組は、2週間たってもほとんど落ちませんでした。ところが6時間の組は日がたつほど落ち続け、14日目には徹夜1晩分、4時間の組は徹夜2晩分の水準でした。1晩で急に落ちるのではなく、毎晩少しずつ積み上がっていくのがポイントです。
たとえば、大学入学共通テストまでの70日を毎晩6時間で走りきろうとすると、2週間後には「徹夜明けの頭」で問題を解いている計算になります。夜に1時間多く起きていても、その分、昼の勉強の中身が薄くなっているかもしれません。
ただし、参加者は大人で、高校生の実験ではありません。また、測ったのは注意力や記憶のテストで、受験の点数そのものではありません。
「6時間なら平気」は、2週間たつと平気ではない。睡眠を削るなら、何日続けるかまで考える。
成績とつながりが強いのは、寝た時間より「昼の眠気」
では、睡眠の何が成績とつながっているのでしょうか。子ども〜高校生を対象にした研究を集めて分析したもの(2010年)では、3つの物差しをくらべています。

| 成績とのつながり | 睡眠の物差し | もとにした研究 |
|---|---|---|
| 1位 | 昼の眠気 | 17本・19,530人 |
| 2位 | 眠りの質 | 16本・13,631人 |
| 3位 | 寝た時間 | 17本・15,199人 |
※子ども〜高校生の研究を集めた分析(2010年)。3つとも成績とのつながりは小さめで、順位はその中での強さ
いちばん強かったのは昼の眠気、次が眠りの質で、寝た時間はいちばん弱いという順でした。同じ7時間でも、昼にうとうとする人と、すっきり過ごせる人がいます。自分に合った睡眠かどうかは、時計より、昼の自分の様子のほうがよく分かる、ということです。
正直に書いておくと、3つとも成績とのつながりは小さめです。大学生の研究を集めた分析(2025年)では、316本の論文のうち、睡眠から成績への影響を実験で確かめたものは1本だけでした。だから「長く寝れば成績が上がる」とまでは言えません。言えるのは、削り続けると頭の働きが落ち、本人はそれに気づきにくいというところまでです。
寝た時間を数えるより、授業中・自習中に眠くなっていないかを毎日見る。
受験生は何時間寝ればいい?国の目安は8〜10時間
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」は、中学生・高校生は8〜10時間を参考に睡眠時間を確保するようすすめています。この目安の根拠の1つとして、さきほどの2010年の分析も引用されています。
| 何を見るか | 数字 |
|---|---|
| 国がすすめる中学生・高校生の睡眠 | 8〜10時間 |
| 午前0時を過ぎてから寝る高校生 | 47.0%(40人なら約19人) |
| 睡眠が「十分ではない」と答えた高校生 | 31.5%(40人なら約13人) |
※国の目安は厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」。高校生の数字は文部科学省の調査(2014年・学校がある日の前の夜)で、12年前のもの
一方で、文部科学省の調査(2014年)では、高校生の47.0%が午前0時を過ぎてから寝ていました。40人のクラスなら約19人です。「十分ではない」と答えた高校生も31.5%いました。12年前の数字ですが、国が高校生の睡眠を全国規模で調べたものは、これより新しいものが見つかりませんでした。
受験生が毎晩8時間を守るのは、正直、簡単ではありません。だからこそ、目安に届かない日が続いていないか、昼の眠気で確かめることが大事です。
本番は朝9時30分|寝る時刻より先に、起きる時刻を決める
2027年1月16日の大学入学共通テスト1日目は、最初の科目(地理歴史・公民)が9時30分に始まります(2科目を受ける人。1科目の人は10時40分)(大学入試センターの実施要項)。試験室に入る時刻はもっと早く、2027年の時刻は12月上旬に公表されます。
朝の時刻が成績に効くことを示した研究があります。アメリカの空軍士官学校(4年制の大学にあたる学校)の1年生6,165人の分析(2011年)では、授業がくじ引きのように割り当てられ、1日の始まりが朝7時の年は、1限に当たった学生の成績が下がり、7時50分に遅らせた年は、その差がほとんど消えました。下がったのは1限の科目だけでなく、その日のあとの授業もでした。著者は、始業を50分遅らせる効果を「先生の教え方の質を大きく1段上げるのと同じくらい」と書いています。
本番の時刻は動かせません。だから受験生は、体のほうを本番の朝に合わせます。
| 本番の朝に向けて | やること |
|---|---|
| 共通テスト1日目の最初の科目 | 9時30分に始まる(2027年1月16日) |
| 先に決めるもの | 寝る時刻より、起きる時刻(本番の日と同じ時刻) |
| 始める時期 | 本番の3週間より前(夜型の大人の試験で、3週間で寝る・起きる時刻が約2時間早まった) |
| 朝にすること | 起きたら光を浴びる・朝食の時刻を毎日そろえる |
※「何時に起きれば何点上がる」という研究は見つかっていない。会場までの移動時間は人によって違うので、本番の起きる時刻は自分で逆算する
夜型の大人を対象にした試験(2019年)では、3週間、早く起きて朝の光を浴び、食事の時刻をそろえる生活にしたところ、寝る・起きる時刻が約2時間早まり、睡眠時間は減りませんでした。大学入学共通テストまでは70日。今から始めれば、十分に間に合います。逆に、前日だけ早く寝ようとしても、効くという証拠は見つかっていません。
本番の日に起きる時刻を、今日から毎日の起きる時刻にする。寝る時刻はそこから逆算する。
「睡眠不足で記憶力40%低下」は本当?|出どころは未発表のデータ
受験生の睡眠の話でよく見るのが、「睡眠不足で記憶力が40%下がる」という数字です。どこから来た数字なのか、元をたどりました。
出どころは、2012年の解説論文の中で、睡眠研究者が「未発表の結果」として紹介したものでした。ほかの研究者のチェック(査読)を通った論文の数字ではありません。しかも同じ段落で、覚える内容によって下がり方が変わるとも書かれています。
睡眠不足で覚える力が落ちること自体は、多くの研究が示しています。ただ「40%」という数字は、確かめようがありません。この記事でその数字を使わず、実験の中身まで分かるものだけを使ったのは、そのためです。
目を引く数字ほど、出どころを確かめる。確かめられない数字で、自分の睡眠を決めない。
太宰府アカデミーの視点|「寝不足に慣れた」は、慣れたのではなく気づけないだけ
この記事でいちばん伝えたいのは、2003年の実験のもう1つの結果です。6時間の組も4時間の組も、14日目に感じていた眠さは「少し眠い」くらいで、ほとんど同じでした。頭の働きは徹夜1晩分と2晩分で大きく違っていたのに、本人の感じ方では区別できなかったのです。著者は、参加者は「積み上がっていく不調に、ほとんど気づいていなかった」と書いています。
受験生から「最初はきつかったけど、もう慣れました」と聞くことがあります。でも、この実験を見るかぎり、それは慣れたのではなく、落ちていることに気づけなくなっただけかもしれません。だから僕は、睡眠を自分の眠さで決めるのはやめたほうがいいと考えています。決めるのは時刻です。本番の日に起きる時刻を毎日の起きる時刻にして、そこから逆算して寝る時刻を決める。眠くなくても、その時刻になったら布団に入る。
もちろん、直前期に睡眠を少し削って勉強したくなる気持ちは分かります。削るなら、何日続けるかを先に決めて、眠くなくても、その日が来たら戻す。2週間で徹夜1晩分という数字は、毎晩の1時間が、知らないうちに積み上がることを教えてくれます。勉強時間を数えるのと同じくらい、起きる時刻を守れた日を数えてほしいと思っています。
勉強の手順そのものは受験生のやる気が出ない11月は?に、模試のあとの復習の日は復習のタイミングは何日後?にまとめています。
受験生の睡眠でよくある質問
Q. 6時間しか寝られない日があっても大丈夫ですか
1日だけの影響は、この実験では調べていません。はっきりしているのは、続けると落ちることです。6時間の組は日がたつほど落ち続け、14日目に徹夜1晩分になりました。削るなら何日までと先に決めて、眠くなくても、その日が来たら戻してください。
Q. 眠くないなら、睡眠は足りていると考えていいですか
そうとは限りません。6時間と4時間の組は、どちらも「少し眠い」くらいにしか感じていませんでした。自分の眠さより、決めた時刻で寝起きするほうが確かです。
Q. 試験の前の日だけ早く寝れば大丈夫ですか
前日だけ早く寝ることが効くという証拠は見つかっていません。いつもより早い時刻には寝つけないことも多いので、本番の数週間前から起きる時刻をそろえておくほうが確かです。
Q. 夜型なのですが、朝型に変えたほうがいいですか
「朝型に生まれ変わる」必要はありません。大学入学共通テストが9時30分に始まるので、その時刻に頭が動くように、起きる時刻を本番の日と同じにそろえておきます。眠れない日が続く・日中の眠気が強いなど体調の心配があるときは、医療機関に相談してください。
この記事で使った研究(元の数字)
本文では、研究の数字を「何晩分」「強い順」などの言葉に置き換えました。元の数字はこちらです。どれも、守れば成績が上がると保証するものではありません。
| 研究 | わかったこと(元の数字) |
|---|---|
| Van Dongen ほか(2003) Sleep 26(2) |
21〜38歳の健康な大人48人。床にいる時間を4・6・8時間に分けて14日間(4時間13人・6時間13人・8時間9人)、ほかに3晩眠らない組13人。14日目の注意力のテスト(PVT)の反応の抜けは、4時間の組で徹夜2晩分、6時間の組で徹夜1晩分に相当。8時間の組は14日間で有意な悪化なし。眠気の自己評価は初日に上がったあと小さな増え方にとどまり、6時間と4時間の組を区別できなかった(”subjects were largely unaware of these increasing cognitive deficits”) |
| Dewald ほか(2010) Sleep Medicine Reviews 14(3) |
子ども〜青年の睡眠と学業成績のメタ分析。眠気 r = −0.133(17研究・19,530人)/睡眠の質 r = 0.096(16研究・13,631人)/睡眠時間 r = 0.069(17研究・15,199人)。3つとも有意だが、原文は「modestly related(ささやかな関連)」 |
| Barley(2025) Baylor University 博士論文 |
大学生の睡眠と成績の系統的レビュー・メタ分析。適格316論文のうち80.7%が横断研究で、睡眠から成績への影響を実験で確かめたものは1件。睡眠の質 r = 0.10・睡眠時間 r = 0.06 |
| Carrell・Maghakian・West(2011) American Economic Journal: Economic Policy 3(3) |
米空軍士官学校の1年生6,165人。授業と教員が無作為に割り当てられ、始業時刻が2度変わったことを使った分析。1限に当たった学生の成績は、始業7時で −0.140 標準偏差(有意)、7時50分で −0.014(有意でない)。始業を50分遅らせる効果は、教員の質を約1標準偏差上げるのと同程度 |
| Facer-Childs ほか(2019) Sleep Medicine |
夜型の大人を対象にした無作為化比較試験。3週間、早い起床・朝の光・食事の時刻の固定などをそろえると、寝る・起きる時刻が約2時間早まり、睡眠時間は減らなかった(成績は測っていない) |
| Saletin & Walker(2012) Frontiers in Neurology 3 |
「睡眠不足で新しい記憶を作る力が40%下がる」という数字の出どころ。本文では “Walker, unpublished results”(未公刊の結果)として紹介されている |
まとめ
- 大学入学共通テストまで、2026年11月7日で70日。1日目は朝9時30分に始まります
- 毎晩6時間を14日続けた大人の頭の働きは徹夜1晩分、4時間なら徹夜2晩分(48人の実験・2003年)
- 本人は「少し眠い」くらいで、落ちていることに気づきにくい
- 成績とのつながりが強かったのは、寝た時間より昼の眠気
- 国の目安は高校生で8〜10時間。午前0時を過ぎて寝る高校生は47.0%(2014年)
- 夜型でも、3週間で寝る・起きる時刻は約2時間早められた(2019年の試験)
今夜、大学入学共通テストの朝に起きる時刻を決めて、明日の朝からその時刻に起きてください。寝る時刻は、そこから逆算します。
睡眠を削ってがんばる受験生ほど、自分の不調に気づきにくい。その事実を、気持ちの問題ではなく実験の結果として知ってほしくて、この記事を書きました。
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本日の記事は以上です。
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