こんにちは、太宰府アカデミーで広報/完全個別指導コースを担当している後藤です。
「医者になるには、どれくらい勉強するんですか」——高校生からも保護者の方からも聞かれます。多くの記事は入試の勉強の話で終わっていますが、実際に長いのは入学したあとです。
この記事では、入試ではなく医学部に入ってから医師になるまでに何をするのかを、文部科学省のモデル・コア・カリキュラムと医師法から書きます。答えは先に出します。
入学後に越える関門は、進級試験を別にしても5つあります。4年次の共用試験(CBT・OSCE)、6年次のPost-CC OSCE、卒業試験、医師国家試験です。
そしていちばん誤解されているのがCBTです。「何割で合格」という基準はありません。2023年度から全国統一されたのはIRT標準スコア396という数字で、得点率ではありません。
この記事を開いた方は、たぶんこんなことを思っています。
− 医者になるには、どれくらい勉強するの?
− 医学部に入ってからは、何をするの?
− 途中で落ちることはあるの?
ひとつずつ答えます。
この記事の目次
結論:入試より、入学後の6年間のほうが長い
先に答えを出します。
- 医学部の6年間の骨格は、全国共通で決まっています。文部科学省のモデル・コア・カリキュラムが「卒業時に何ができるようになっているか」を定めているためです
- 入学後に越える関門は5つ。共用試験CBT・共用試験OSCE・Post-CC OSCE・卒業試験・医師国家試験です(これに毎年の進級試験が加わります)
- CBTに「何割で合格」という基準はありません。受験者ごとに違う問題が出るためで、基準はIRT標準スコア396(2023年度から全国統一)です
- 共用試験の本試験で基準に届かないのは2.8%ですが、再試験では31.5%が届きません。全体では受験9,380人のうち317人(3.4%)が臨床実習に進めませんでした
医者になるための勉強|医学部6年間の流れ

まず全体の骨格です。学年の割り振りは大学ごとに違いますが、制度上どこに何が置かれるかは共通しています。
| 時期と内容 | そこで何が起きるか |
|---|---|
| 1〜2年 教養・基礎医学 | 解剖・生理・生化学など。早期体験実習で病院に入る大学もある |
| 3〜4年 臨床医学と臨床推論 | 内科・外科など各科の講義。ここまでが座学の中心 |
| 4年 共用試験(CBT・OSCE) | 合格するとStudent Doctorとして臨床実習に進む。医師法に位置づけられた試験 |
| 4〜6年 診療参加型臨床実習 | 指導医の監督の下で医業の一部を行う。患者の承諾を得ることが明文で決まっている |
| 6年 Post-CC OSCE・卒業試験・医師国家試験 | 国家試験は2月上旬、合格発表は3月中旬 |
1〜2年は教養と基礎医学(解剖・生理・生化学など)。この段階では診療科を決めません。早期体験実習として、1年生のうちに病院に入る大学もあります。
3〜4年で臨床医学に入ります。内科・外科など各科の講義と臨床推論で、座学の中心はここです。
4年の終わりに共用試験(CBT・OSCE)があり、合格するとStudent Doctorとして臨床実習に進みます。4〜6年が診療参加型臨床実習で、見学ではなく診療チームの一員として参加します。
6年でPost-CC OSCE・卒業試験・医師国家試験。国家試験は2月上旬で、合格発表は3月中旬です。
ここで大事なのは、これが「授業を受けて試験を受ける」だけの6年ではないということです。モデル・コア・カリキュラムは令和4年度の改訂でアウトカム基盤型教育に切り替わり、卒業時に身につけているべき10の資質・能力から逆算して組み立てる形になりました。そのうち純粋な知識にあたるのは1つだけです。
医学部に入ってから越える関門は5つ
「途中で落ちることはあるのか」への答えです。
| 関門 | 時期 | 誰が決めるか | 通らないとどうなるか |
|---|---|---|---|
| 進級試験 | 1〜4年(大学により毎年) | 各大学 | 落ちると留年 |
| 共用試験 CBT | 4年 | 全国共通(医師法) | 臨床実習に進めない=実質留年 |
| 共用試験 OSCE | 4年 | 全国共通(医師法) | 同上 |
| Post-CC OSCE | 6年 | 全国共通 | 臨床実習の修了が認められない |
| 卒業試験 | 6年 | 各大学が独自に実施 | 卒業できず、国家試験を受験できない |
| 医師国家試験 | 6年の2月 | 国(厚生労働省) | 国試浪人。既卒の合格率は54.6% |
進級試験は各大学が決めるもので、落ちると留年します。ここは大学によって厳しさがかなり違う部分です。
共用試験(CBT・OSCE)は全国共通で、2023年度から医師法に位置づけられた国の試験になりました。これに合格しないと臨床実習に進めないので、実質的に留年になります。
卒業試験は各大学が独自に実施します。国の試験ではありません。落ちると卒業できず、医師国家試験を受験できません。医師法第11条が受験資格を「大学において、医学の正規の課程を修めて卒業した者」と定めているためです。
だから「医師国家試験の合格率91.6%だから簡単」とは読めません。その91.6%の分母は、卒業試験を通った人だけだからです。入学した人から数えれば、まったく違う数字になります。
共用試験で落ちる人|本試験は2.8%、再試験は31.5%

共用試験の全国結果が公表されています。令和5年度(2023年度)の数字です。
| 試験 | 受験者 | 不到達(不合格) | 不到達率 | 到達率 |
|---|---|---|---|---|
| CBT(本試験) | 9,371 | 259 | 2.8% | 97.2% |
| OSCE(本試験) | 9,355 | 105 | 1.1% | 98.9% |
| CBT(再試験) | 743 | 234 | 31.5% | 68.5% |
| OSCE(再試験) | 837 | 43 | 5.1% | 94.9% |
| 全体(CBT・OSCE両方) | 9,380 | 317 | 3.4% | 96.6% |
本試験の不到達率はCBTが2.8%、OSCEが1.1%。「共用試験で落ちる人はほとんどいない」というのは、本試験に限れば正しいことになります。
ところが再試験は違います。CBTの再試験は743人が受けて234人が届かず、不到達率31.5%。3人に1人が落ちています。OSCEの再試験は5.1%なので、CBTだけが特に高い数字です。
CBTとOSCEを通して見ると、受験9,380人のうち317人(3.4%)が基準に届きませんでした。この学年の3.4%が、その年に臨床実習へ進めなかったということになります。
CBTは何割で合格か|得点率では答えられない

ここが、この記事でいちばん誤解されている部分です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 何を測るか | 臨床実習に進む前の知識 |
| 出題方式 | プールされた問題から出るため、受験者ごとに違う問題になる |
| 採点方式 | IRT標準スコア(項目反応理論)。難易度を補正したスコアで、得点率ではない |
| 合格基準(2022年度まで) | IRT標準スコア359が最低基準。合格ラインは各大学が独自に設定していた |
| 合格基準(2023年度から) | IRT標準スコア396が全国で統一された |
| 位置づけ | 2023年度から医師法に位置づけられた国の試験。合格するとStudent Doctorになる |
CBTはプールされた問題から出題されるため、受験者ごとに問題が違います。だから「何割取れば合格」という言い方が制度上できません。採点はIRT標準スコア(項目反応理論にもとづき、問題の難易度を補正したスコア)で行われます。
2022年度まではIRT標準スコア359が最低基準で、実際の合格ラインは各大学が独自に設定していました。2023年度からは396が全国で統一されています。
「CBTは何割」と書いてある説明を見かけたら、制度が変わる前の話か、得点率と標準スコアを混同したものだと考えてください。この違いは、在学生本人にとっても大事な部分です。
OSCEのほうも見ておきます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 必修課題(8つ) | 医療面接/バイタルサイン/頭頸部/胸部/腹部/神経/基本的臨床手技/救急 |
| 8課題で実施した大学 | 71大学 |
| 9課題で実施した大学 | 3大学 |
| 10課題で実施した大学 | 8大学 |
OSCEは実技の試験で、必修は8課題。医療面接・バイタルサイン・頭頸部・胸部・腹部・神経・基本的臨床手技・救急です。82大学の集計では8課題で実施したのが71大学、9課題が3大学、10課題が8大学でした。
もうひとつ、共用試験の公的化には大きな意味があります。以前は、学生が患者に医行為を行うことは「実質的に違法性がない」という解釈で運用されていました。令和3年の医師法改正(令和5年4月1日施行)で、共用試験に合格した医学生は、臨床実習において医師の指導監督の下で医業を行うことができると法律に書かれました。「学生なのに患者さんに触れていいのか」への公式な答えがこれです。
医師国家試験|第120回は91.6%、既卒は54.6%
最後の関門です。
| 指標 | 第120回(2026年) |
|---|---|
| 受験者数 | 9,980人 |
| 合格者数 | 9,139人 |
| 合格率 | 91.6% |
| 新卒の合格率 | 94.7%(受験9,205人/合格8,716人) |
| 既卒の合格率 | 54.6% |
| 合格者の内訳 | 新卒95.4%/既卒4.6% |
第120回(2026年)の合格率は91.6%。ただし新卒94.7%に対し、既卒は54.6%です。一度落ちると次の年はかなり厳しくなります。
これから受験する方のために、次の回の日程も出しておきます。
| 項目 | 第121回(2027年) |
|---|---|
| 試験期日 | 2027年2月6日(土)・7日(日) |
| 試験地 | 北海道・宮城・東京・新潟・愛知・石川・大阪・広島・香川・福岡・熊本・沖縄の12都道府県 |
| 受験書類の受付 | 2026年11月2日(月)〜11月30日(月) |
| 受験手数料 | 15,300円 |
| 合格発表 | 2027年3月16日(火)14時 |
第121回は2027年2月6日・7日、試験地は12都道府県で、九州では福岡・熊本・沖縄です。いま高校生の方が6年後に受けるときも、この形はおそらく大きくは変わりません。
太宰府アカデミーの視点|入学後の勉強量を、入る前に知っておく
ここまでの内容を、受験生と保護者の方がどう使えばいいかを書きます。
まず「医学部に受かること」と「医師になること」は別の話です。入試が終わっても、進級試験・共用試験・卒業試験・国家試験が続きます。入試の勉強はゴールではなく、6年間の入口だという感覚を、受験生のうちに持っておいてほしいと思っています。
次に大学選びで見るべきなのは、偏差値だけではありません。進級試験の厳しさや卒業試験の運用は大学ごとに違い、そこが「入学者数に対して6年で医師になれた人の割合」に出てきます。国家試験の合格率だけを見ると、卒業試験で絞っている大学ほど高く出るので、判断を誤ります。
三つめに、いま高校生の方が「医学部の勉強についていけるか」を心配する必要はあまりありません。共用試験の本試験で基準に届かないのは2.8%です。ただし再試験の31.5%という数字は、一度つまずいたときに立て直すのが難しいことを示しています。入ってから最初の2年で生活のリズムを作れるかどうかが効いてくる部分だと思います。
四つめに、この記事の数字は制度の話で、勉強時間そのものではありません。「医学部で1日何時間勉強するか」を全国で集計した公的なデータは、僕が探した範囲では見つかりませんでした。個人差が大きい部分なので、平均を出しても意味が薄いと思います。代わりに、いつ何の試験があるかを知っておくほうが計画は立てやすくなります。
最後に。医学部の6年間は、暗記だけの6年ではありません。モデル・コア・カリキュラムが定める10の資質・能力のうち、純粋な知識にあたるのは1つだけです。残りはコミュニケーション、多職種連携、社会における医療の役割の理解などです。入試の勉強とは違う種類のことを求められるようになる、と考えておいてください。
まとめ
「医者になるための勉強は何をするのか」への答えをまとめます。
- 医学部6年間の骨格は全国共通です。文部科学省のモデル・コア・カリキュラムが卒業時の到達目標を定めています
- 入学後の関門は5つ。共用試験CBT・共用試験OSCE・Post-CC OSCE・卒業試験・医師国家試験(+毎年の進級試験)です
- CBTに「何割で合格」の基準はありません。IRT標準スコア396が2023年度から全国統一の基準です
- 共用試験の本試験で基準に届かないのは2.8%、再試験は31.5%。全体では9,380人中317人(3.4%)が臨床実習に進めませんでした
- OSCEの必修は8課題。82大学のうち71大学が8課題で実施しています
- 共用試験に合格した学生は、臨床実習で医業の一部を行えます(令和3年の医師法改正・令和5年4月1日施行)
- 医師国家試験は第120回で合格率91.6%。ただし既卒は54.6%です。第121回は2027年2月6日・7日に行われます
この記事を書いたのは、「医者になるための勉強」を調べると入試の話ばかりが出てきて、入学後の6年間がほとんど書かれていないと感じたからです。入試は入口で、そこから先のほうが長い。先に地図を持っておくほうが、途中でつまずきにくくなります。
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本日の記事は以上です。
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後藤 登(Goto Noboru)
仕事:総務・広報・完全個別指導コース担当
自己PR:高校・大学ボクシング部。釣りや登山が好き。新卒で当校に勤めて13年目。医学部受験の情報を調べて、ブログやInstagram、Twitterを更新しています。4年前から完全個別指導コースのコース担当。
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