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医師国家試験の難易度|合格率91.6%でも既卒は54.6%

2026年08月19日 更新

こんにちは、太宰府アカデミーで広報/完全個別指導コースを担当している後藤です。

「医師国家試験って、どのくらい難しいんですか」——保護者の方からよく聞かれます。そして続けて、たいていこう言われます。「9割受かるって聞いたから、大学に入ればもう安心ですよね」

この記事は、その「9割」の中身を分解する記事です。第120回(2026年2月)の合格率は91.6%。ただしこれは新卒と既卒を混ぜた数字で、新卒は94.7%、既卒は54.6%でした。

数字は厚生労働省が各回の合格発表で公表しているものを、第110回から第120回まで11年ぶん集めました。文部科学省の卒業データも合わせて使います。

この記事を開いた方は、たぶんこんなことを思っています。

− 医師国家試験って、結局むずかしいの?やさしいの?

− 合格率が9割もあるのはなぜ?

− 何割取れば受かるの?

ひとつずつ答えていきます。

結論:合格率91.6%は「1回で受かる人」の数字。落ちた翌年は54.6%

先に答えを出します。医師国家試験の難易度は、次の3つで表せます。

  • 合格率は11年間ずっと88.7〜92.4%。ほとんど動いていません(第120回は91.6%)
  • ただし新卒94.7%に対して、既卒は54.6%。一度落ちると、次の合格率は半分近くまで下がります
  • 合格ラインは1つではなく3つ。必修は常に8割、一般・臨床実地は69.6〜76.7%で毎年動き、禁忌肢は例年3問以下です

つまり「9割受かるやさしい試験」ではなく、「1回で受かる前提で設計された試験」というのが実態に近い言い方になります。

第120回医師国家試験の合格率 新卒94.7%と既卒54.6%の差は40.1ポイント
「9割受かる」は新卒の話。既卒は54.6%(出典:厚生労働省「第120回医師国家試験の合格発表について」)

第120回では、新卒9,205人のうち8,716人が合格、既卒775人のうち423人が合格。差は40.1ポイントありました。

合格率は11年間ほとんど動いていない

まず「年々難しくなっている」という話が本当かを確かめます。第110回(2016年)から第120回(2026年)までの11回です。

受験者 合格者 合格率 新卒の合格率 既卒の合格率
第110回 2016 9,434 8,630 91.5% 94.3% 60.1%
第111回 2017 9,618 8,533 88.7% 91.8% 54.3%
第112回 2018 10,010 9,024 90.1% 93.3% 63.9%
第113回 2019 10,146 9,029 89.0% 92.4% 56.8%
第114回 2020 10,140 9,341 92.1% 94.9% 69.2%
第115回 2021 9,910 9,058 91.4% 94.4% 54.5%
第116回 2022 10,061 9,222 91.7% 95.0% 54.0%
第117回 2023 10,293 9,432 91.6% 94.9% 55.2%
第118回 2024 10,336 9,547 92.4% 95.4% 58.9%
第119回 2025 10,282 9,486 92.3% 95.0% 59.0%
第120回 2026 9,980 9,139 91.6% 94.7% 54.6%

いちばん低いのが第111回の88.7%、いちばん高いのが第118回の92.4%。11年間の振れ幅は3.7ポイントしかありません。合格率という数字だけを見るかぎり、難しくなってはいません。

もうひとつ、第120回で目を引くのが受験者数です。9,980人で、第115回(2021年)以来の1万人割れでした。新卒の受験も9,205人で、ここ数年でいちばん少なくなっています。

合格率が高いのは、受ける前に絞られているから

「医師国家試験合格率 なぜ高い」——これはこの記事に来ている検索語のなかで2番目に多いものです。答えは合格率の外側にあります。

文部科学省が、入学者がその後どうなったかを大学別に公表しています。令和元年度に入学した人が第119回国家試験(2025年2月)を受けるまでの数字です。

令和元年度入学者9456人のうち6年で卒業したのは8076人で85.4%
国試の合格率が高いのは、受ける前に絞られているため(出典:文部科学省「医学部医学科の入学状況・国家試験合格状況・卒業状況」令和7年12月)

入学した9,456人のうち、6年で卒業したのは8,076人(85.4%)。1,380人、およそ7人に1人は6年では卒業していません。

つまり国家試験の受験者は、すでに6年間の進級と卒業試験を通ってきた人たちです。95.7%という合格率は、その人たちの中での数字ということになります。

絞り方は大学によってかなり違います。進級率が低い10校と高い8校を並べます。

区分 大学 入学者 6年次在籍 6年次進級率 卒業率 国試合格率
進級率が低い10校 東海大学 121 80 66.1% 66.1% 98.9%
進級率が低い10校 川崎医科大学 128 86 67.2% 65.6% 87.5%
進級率が低い10校 福岡大学 110 79 71.8% 68.2% 94.6%
進級率が低い10校 愛知医科大学 116 84 72.4% 72.4% 98.0%
進級率が低い10校 岩手医科大学 124 92 74.2% 74.2% 95.8%
進級率が低い10校 東京医科大学 124 92 74.2% 71.0% 96.2%
進級率が低い10校 山形大学 120 91 75.8% 75.8% 95.3%
進級率が低い10校 藤田医科大学 120 91 75.8% 75.0% 98.1%
進級率が低い10校 大阪医科薬科大学 112 85 75.9% 74.1% 97.9%
進級率が低い10校 兵庫医科大学 112 85 75.9% 75.0% 99.1%
進級率が高い8校 鹿児島大学 99 99 100.0% 97.0% 96.3%
進級率が高い8校 金沢大学 116 115 99.1% 97.4% 100.0%
進級率が高い8校 自治医科大学 123 120 97.6% 97.6% 99.3%
進級率が高い8校 和歌山県立医科大学 100 97 97.0% 93.0% 91.1%
進級率が高い8校 滋賀医科大学 115 111 96.5% 92.2% 96.7%
進級率が高い8校 順天堂大学 141 136 96.5% 93.6% 97.8%
進級率が高い8校 名古屋市立大学 96 92 95.8% 95.8% 94.9%
進級率が高い8校 東京大学 110 105 95.5% 93.6% 97.2%
全81校の合計 9,456 8,201 86.7% 85.4% 95.7%

ここで注意していただきたいのは、進級率の低さと国試合格率の高さは、必ずしもセットではないということです。東海大学は進級率66.1%で国試合格率98.9%、鹿児島大学は進級率100.0%で国試合格率96.3%。入口から出口までの通り方は大学ごとに違い、数字の低さだけで良し悪しは決まりません。大学にはそれぞれの教育方針があります。

合格ラインは3つある。必修だけは常に8割

「何割取れば受かるのか」への答えです。医師国家試験の合格基準は3つあり、3つすべてを満たさないと合格になりません。

医師国家試験の一般問題臨床実地問題の合格ラインは第112回69.6%から第118回76.7%まで動く
合格ラインは69.6%〜76.7%で動く。必修だけは常に8割(出典:厚生労働省「第112〜120回医師国家試験の合格発表について」)

1つめの必修問題は絶対基準で、常に総点数の80%です。11回すべてで80.0〜80.2%(採点除外があった回は分母が減ります)。ここは制度として動きません。

2つめの一般問題・臨床実地問題は相対基準で、受験者の得点分布から毎年決まります。第112回の69.6%から第118回の76.7%まで、6年で7.1ポイント上がりました。ただし一直線ではなく、第115回と第119回は前回より3ポイント近く下がっています。

3つめが禁忌肢です。選ぶと患者さんに重大な不利益が生じる選択肢のことで、何点取っていても、一定数選ぶと不合格になります。11回のうち10回は「3問以下」でしたが、第117回だけ「2問以下」でした。

必修問題の基準 その得点率 一般・臨床実地の基準 その得点率 禁忌肢
第112回(2018年) 160/200 80.0% 208/299 69.6% 3問以下
第113回(2019年) 160/200 80.0% 209/296 70.6% 3問以下
第114回(2020年) 158/197 80.2% 217/299 72.6% 3問以下
第115回(2021年) 160/200 80.0% 209/300 69.7% 3問以下
第116回(2022年) 158/197 80.2% 214/297 72.1% 3問以下
第117回(2023年) 160/200 80.0% 220/295 74.6% 2問以下
第118回(2024年) 160/200 80.0% 230/300 76.7% 3問以下
第119回(2025年) 160/200 80.0% 221/300 73.7% 3問以下
第120回(2026年) 160/200 80.0% 224/300 74.7% 3問以下

この表からわかることを1文にすると、「7割では足りない年がある。必修は毎年8割」です。「9割受かるから7割取れば大丈夫」という言い方は、年によって外れます。

一度落ちると、次の合格率は半分になる

この記事でいちばんお伝えしたいのがここです。

既卒——前年までに受験して合格していない人の合格率は、11回を通して54.0%〜69.2%。第120回は54.6%でした。新卒との差は25.7〜41.0ポイントで、近年は40ポイント前後で開いています。

受験者数でいうと、既卒は毎年750〜1,100人。第120回は775人が受けて、423人が合格しました。

なぜここまで下がるのかは、この統計だけからは分かりません。ただ、大学が卒業試験で絞る理由の一つがここにあることは、数字の並びから読み取れます。1回で受かることの価値が、この試験ではとても大きい——それが11年分のデータが示していることです。

太宰府アカデミーの視点|「9割受かる」で安心しないために

この数字を、受験生と保護者の方がどう使えばいいかを書いておきます。

まず「医学部に入れば9割医者になれる」は、正確ではありません。正しくは「6年で卒業できれば、95%前後が1回で受かる」です。入学から数えると、9,456人のうち国家試験に1回で通ったのはもっと少なくなります。関門は国家試験ではなく、その手前の6年間にあります。

次に、志望校を選ぶときは、入口の偏差値と一緒に進級率・卒業率も見ておくと、入学後の6年間がイメージしやすくなります。数字が低い大学が悪いという意味ではまったくありません。教育方針の違いが数字に出ているだけです。ただ、知らずに入るのと知って入るのとでは、6年間の構えが変わります。

三つめに、高校生のうちにできることを1つ挙げるなら、「暗記ではなく、理由まで覚える習慣」です。必修問題は基本事項が中心で、絶対基準の8割を毎年求められます。丸暗記だけで通してきた人が、6年後にいちばん苦労するところです。

最後に。この記事の数字は、どれも全国の平均です。大学ごと、その年ごとに事情は変わります。志望校の実際の数字は、文部科学省の公表資料か、大学の公式サイトで確かめてください。

まとめ

「医師国家試験の難易度」への答えをまとめます。

  • 第120回(2026年2月)の合格率は91.6%。11年間ずっと88.7〜92.4%で、難しくなってはいません
  • ただし新卒94.7%、既卒54.6%。差は40.1ポイントで、一度落ちると次の合格率は半分近くになります
  • 合格率が高いのは、受ける前に絞られているから。入学9,456人のうち6年で卒業したのは8,076人(85.4%)です
  • 合格ラインは3つ。必修は常に8割、一般・臨床実地は69.6〜76.7%で毎年動き、禁忌肢は例年3問以下です
  • 大学による差は大きい。6年次進級率は東海大学66.1%から鹿児島大学100.0%まで開いています

いちばん覚えて帰っていただきたいのは、関門は国家試験そのものより手前にあるということです。医学部に入ったあとの6年間をどう過ごすかで、この数字のどちら側に立つかが決まります。

この記事を書いたのは、「9割受かるから安心」という一言で終わってしまう説明が多いと感じていたからです。9割の内訳を知っておくことは、不安を煽ることではなく、備えを具体的にすることだと思っています。厚生労働省と文部科学省が公表している数字だけで、ここまでは書けます。

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本日の記事は以上です。
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後藤 登(Goto Noboru)
仕事:総務・広報・完全個別指導コース担当
自己PR:高校・大学ボクシング部。釣りや登山が好き。新卒で当校に勤めて13年目。医学部受験の情報を調べて、ブログやInstagram、Twitterを更新しています。4年前から完全個別指導コースのコース担当。

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