こんにちは、太宰府アカデミーで広報/完全個別指導コースを担当している後藤です。
「医師国家試験って、どのくらい難しいんですか」——保護者の方からよく聞かれます。そして続けて、たいていこう言われます。「9割受かるって聞いたから、大学に入ればもう安心ですよね」
この記事は、その「9割」の中身を分解する記事です。第120回(2026年2月)の合格率は91.6%。ただしこれは新卒と既卒を混ぜた数字で、新卒は94.7%、既卒は54.6%でした。
数字は厚生労働省が各回の合格発表で公表しているものを、第110回から第120回まで11年ぶん集めました。文部科学省の卒業データも合わせて使います。
この記事を開いた方は、たぶんこんなことを思っています。
− 医師国家試験って、結局むずかしいの?やさしいの?
− 合格率が9割もあるのはなぜ?
− 何割取れば受かるの?
ひとつずつ答えていきます。
この記事の目次
結論:合格率91.6%は「1回で受かる人」の数字。落ちた翌年は54.6%
先に答えを出します。医師国家試験の難易度は、次の3つで表せます。
- 合格率は11年間ずっと88.7〜92.4%。ほとんど動いていません(第120回は91.6%)
- ただし新卒94.7%に対して、既卒は54.6%。一度落ちると、次の合格率は半分近くまで下がります
- 合格ラインは1つではなく3つ。必修は常に8割、一般・臨床実地は69.6〜76.7%で毎年動き、禁忌肢は例年3問以下です
つまり「9割受かるやさしい試験」ではなく、「1回で受かる前提で設計された試験」というのが実態に近い言い方になります。

第120回では、新卒9,205人のうち8,716人が合格、既卒775人のうち423人が合格。差は40.1ポイントありました。
合格率は11年間ほとんど動いていない
まず「年々難しくなっている」という話が本当かを確かめます。第110回(2016年)から第120回(2026年)までの11回です。
| 回 | 年 | 受験者 | 合格者 | 合格率 | 新卒の合格率 | 既卒の合格率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 第110回 | 2016 | 9,434 | 8,630 | 91.5% | 94.3% | 60.1% |
| 第111回 | 2017 | 9,618 | 8,533 | 88.7% | 91.8% | 54.3% |
| 第112回 | 2018 | 10,010 | 9,024 | 90.1% | 93.3% | 63.9% |
| 第113回 | 2019 | 10,146 | 9,029 | 89.0% | 92.4% | 56.8% |
| 第114回 | 2020 | 10,140 | 9,341 | 92.1% | 94.9% | 69.2% |
| 第115回 | 2021 | 9,910 | 9,058 | 91.4% | 94.4% | 54.5% |
| 第116回 | 2022 | 10,061 | 9,222 | 91.7% | 95.0% | 54.0% |
| 第117回 | 2023 | 10,293 | 9,432 | 91.6% | 94.9% | 55.2% |
| 第118回 | 2024 | 10,336 | 9,547 | 92.4% | 95.4% | 58.9% |
| 第119回 | 2025 | 10,282 | 9,486 | 92.3% | 95.0% | 59.0% |
| 第120回 | 2026 | 9,980 | 9,139 | 91.6% | 94.7% | 54.6% |
いちばん低いのが第111回の88.7%、いちばん高いのが第118回の92.4%。11年間の振れ幅は3.7ポイントしかありません。合格率という数字だけを見るかぎり、難しくなってはいません。
もうひとつ、第120回で目を引くのが受験者数です。9,980人で、第115回(2021年)以来の1万人割れでした。新卒の受験も9,205人で、ここ数年でいちばん少なくなっています。
合格率が高いのは、受ける前に絞られているから
「医師国家試験合格率 なぜ高い」——これはこの記事に来ている検索語のなかで2番目に多いものです。答えは合格率の外側にあります。
文部科学省が、入学者がその後どうなったかを大学別に公表しています。令和元年度に入学した人が第119回国家試験(2025年2月)を受けるまでの数字です。

入学した9,456人のうち、6年で卒業したのは8,076人(85.4%)。1,380人、およそ7人に1人は6年では卒業していません。
つまり国家試験の受験者は、すでに6年間の進級と卒業試験を通ってきた人たちです。95.7%という合格率は、その人たちの中での数字ということになります。
絞り方は大学によってかなり違います。進級率が低い10校と高い8校を並べます。
| 区分 | 大学 | 入学者 | 6年次在籍 | 6年次進級率 | 卒業率 | 国試合格率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 進級率が低い10校 | 東海大学 | 121 | 80 | 66.1% | 66.1% | 98.9% |
| 進級率が低い10校 | 川崎医科大学 | 128 | 86 | 67.2% | 65.6% | 87.5% |
| 進級率が低い10校 | 福岡大学 | 110 | 79 | 71.8% | 68.2% | 94.6% |
| 進級率が低い10校 | 愛知医科大学 | 116 | 84 | 72.4% | 72.4% | 98.0% |
| 進級率が低い10校 | 岩手医科大学 | 124 | 92 | 74.2% | 74.2% | 95.8% |
| 進級率が低い10校 | 東京医科大学 | 124 | 92 | 74.2% | 71.0% | 96.2% |
| 進級率が低い10校 | 山形大学 | 120 | 91 | 75.8% | 75.8% | 95.3% |
| 進級率が低い10校 | 藤田医科大学 | 120 | 91 | 75.8% | 75.0% | 98.1% |
| 進級率が低い10校 | 大阪医科薬科大学 | 112 | 85 | 75.9% | 74.1% | 97.9% |
| 進級率が低い10校 | 兵庫医科大学 | 112 | 85 | 75.9% | 75.0% | 99.1% |
| 進級率が高い8校 | 鹿児島大学 | 99 | 99 | 100.0% | 97.0% | 96.3% |
| 進級率が高い8校 | 金沢大学 | 116 | 115 | 99.1% | 97.4% | 100.0% |
| 進級率が高い8校 | 自治医科大学 | 123 | 120 | 97.6% | 97.6% | 99.3% |
| 進級率が高い8校 | 和歌山県立医科大学 | 100 | 97 | 97.0% | 93.0% | 91.1% |
| 進級率が高い8校 | 滋賀医科大学 | 115 | 111 | 96.5% | 92.2% | 96.7% |
| 進級率が高い8校 | 順天堂大学 | 141 | 136 | 96.5% | 93.6% | 97.8% |
| 進級率が高い8校 | 名古屋市立大学 | 96 | 92 | 95.8% | 95.8% | 94.9% |
| 進級率が高い8校 | 東京大学 | 110 | 105 | 95.5% | 93.6% | 97.2% |
| 全81校の合計 | ― | 9,456 | 8,201 | 86.7% | 85.4% | 95.7% |
ここで注意していただきたいのは、進級率の低さと国試合格率の高さは、必ずしもセットではないということです。東海大学は進級率66.1%で国試合格率98.9%、鹿児島大学は進級率100.0%で国試合格率96.3%。入口から出口までの通り方は大学ごとに違い、数字の低さだけで良し悪しは決まりません。大学にはそれぞれの教育方針があります。
合格ラインは3つある。必修だけは常に8割
「何割取れば受かるのか」への答えです。医師国家試験の合格基準は3つあり、3つすべてを満たさないと合格になりません。

1つめの必修問題は絶対基準で、常に総点数の80%です。11回すべてで80.0〜80.2%(採点除外があった回は分母が減ります)。ここは制度として動きません。
2つめの一般問題・臨床実地問題は相対基準で、受験者の得点分布から毎年決まります。第112回の69.6%から第118回の76.7%まで、6年で7.1ポイント上がりました。ただし一直線ではなく、第115回と第119回は前回より3ポイント近く下がっています。
3つめが禁忌肢です。選ぶと患者さんに重大な不利益が生じる選択肢のことで、何点取っていても、一定数選ぶと不合格になります。11回のうち10回は「3問以下」でしたが、第117回だけ「2問以下」でした。
| 回 | 必修問題の基準 | その得点率 | 一般・臨床実地の基準 | その得点率 | 禁忌肢 |
|---|---|---|---|---|---|
| 第112回(2018年) | 160/200 | 80.0% | 208/299 | 69.6% | 3問以下 |
| 第113回(2019年) | 160/200 | 80.0% | 209/296 | 70.6% | 3問以下 |
| 第114回(2020年) | 158/197 | 80.2% | 217/299 | 72.6% | 3問以下 |
| 第115回(2021年) | 160/200 | 80.0% | 209/300 | 69.7% | 3問以下 |
| 第116回(2022年) | 158/197 | 80.2% | 214/297 | 72.1% | 3問以下 |
| 第117回(2023年) | 160/200 | 80.0% | 220/295 | 74.6% | 2問以下 |
| 第118回(2024年) | 160/200 | 80.0% | 230/300 | 76.7% | 3問以下 |
| 第119回(2025年) | 160/200 | 80.0% | 221/300 | 73.7% | 3問以下 |
| 第120回(2026年) | 160/200 | 80.0% | 224/300 | 74.7% | 3問以下 |
この表からわかることを1文にすると、「7割では足りない年がある。必修は毎年8割」です。「9割受かるから7割取れば大丈夫」という言い方は、年によって外れます。
一度落ちると、次の合格率は半分になる
この記事でいちばんお伝えしたいのがここです。
既卒——前年までに受験して合格していない人の合格率は、11回を通して54.0%〜69.2%。第120回は54.6%でした。新卒との差は25.7〜41.0ポイントで、近年は40ポイント前後で開いています。
受験者数でいうと、既卒は毎年750〜1,100人。第120回は775人が受けて、423人が合格しました。
なぜここまで下がるのかは、この統計だけからは分かりません。ただ、大学が卒業試験で絞る理由の一つがここにあることは、数字の並びから読み取れます。1回で受かることの価値が、この試験ではとても大きい——それが11年分のデータが示していることです。
太宰府アカデミーの視点|「9割受かる」で安心しないために
この数字を、受験生と保護者の方がどう使えばいいかを書いておきます。
まず「医学部に入れば9割医者になれる」は、正確ではありません。正しくは「6年で卒業できれば、95%前後が1回で受かる」です。入学から数えると、9,456人のうち国家試験に1回で通ったのはもっと少なくなります。関門は国家試験ではなく、その手前の6年間にあります。
次に、志望校を選ぶときは、入口の偏差値と一緒に進級率・卒業率も見ておくと、入学後の6年間がイメージしやすくなります。数字が低い大学が悪いという意味ではまったくありません。教育方針の違いが数字に出ているだけです。ただ、知らずに入るのと知って入るのとでは、6年間の構えが変わります。
三つめに、高校生のうちにできることを1つ挙げるなら、「暗記ではなく、理由まで覚える習慣」です。必修問題は基本事項が中心で、絶対基準の8割を毎年求められます。丸暗記だけで通してきた人が、6年後にいちばん苦労するところです。
最後に。この記事の数字は、どれも全国の平均です。大学ごと、その年ごとに事情は変わります。志望校の実際の数字は、文部科学省の公表資料か、大学の公式サイトで確かめてください。
まとめ
「医師国家試験の難易度」への答えをまとめます。
- 第120回(2026年2月)の合格率は91.6%。11年間ずっと88.7〜92.4%で、難しくなってはいません
- ただし新卒94.7%、既卒54.6%。差は40.1ポイントで、一度落ちると次の合格率は半分近くになります
- 合格率が高いのは、受ける前に絞られているから。入学9,456人のうち6年で卒業したのは8,076人(85.4%)です
- 合格ラインは3つ。必修は常に8割、一般・臨床実地は69.6〜76.7%で毎年動き、禁忌肢は例年3問以下です
- 大学による差は大きい。6年次進級率は東海大学66.1%から鹿児島大学100.0%まで開いています
いちばん覚えて帰っていただきたいのは、関門は国家試験そのものより手前にあるということです。医学部に入ったあとの6年間をどう過ごすかで、この数字のどちら側に立つかが決まります。
この記事を書いたのは、「9割受かるから安心」という一言で終わってしまう説明が多いと感じていたからです。9割の内訳を知っておくことは、不安を煽ることではなく、備えを具体的にすることだと思っています。厚生労働省と文部科学省が公表している数字だけで、ここまでは書けます。
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◆筆者プロフィール
後藤 登(Goto Noboru)
仕事:総務・広報・完全個別指導コース担当
自己PR:高校・大学ボクシング部。釣りや登山が好き。新卒で当校に勤めて13年目。医学部受験の情報を調べて、ブログやInstagram、Twitterを更新しています。4年前から完全個別指導コースのコース担当。
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