こんにちは、福岡の医学部予備校で総務・広報を担当している後藤です。
本日のブログは、私立医学部の特待生の話です。面談で学費の一覧をお見せすると、ときどきこう聞かれます。「成績がよければ、安くなる大学もあるんですよね?」
あります。ただ、調べようとすると意外に苦労します。大学によって呼び方が違い(特待生・減免・奨学生・スカラシップ)、載っている場所も違う(学費のページ・奨学金のページ・募集要項の中)。そのうえ、まとめて比べられる一覧がどこにもありません。
そこで、私立医学部の公式サイトを1校ずつ開いて、入試の成績や在学中の成績で学費が下がる制度だけを書き出しました。予備校の集計は使っていません。金額はすべて大学が公表しているものです。
この記事で答えたいのは、次の3つです。
− 成績がよければ、どの大学でいくら安くなるの?
− 特待生になるには、何位以内に入ればいいの?
− 地域枠の奨学金とは何が違うの?
金額の大きい順に見ていきます。
この記事の目次
結論|入試の成績で学費が下がる大学は、10校ありました
先に答えを書きます。
①入試の成績で学費が下がる制度がある大学は10校。北里大学・国際医療福祉大学・聖マリアンナ医科大学・金沢医科大学・東京医科大学・兵庫医科大学・埼玉医科大学・関西医科大学・獨協医科大学・東邦大学です(大学公式サイトで確認できたもの。2026年8月28日時点)。
②いちばん大きいのは北里大学の3,890万円。医学部特待生の第1種に選ばれると、入学金・授業料・施設設備費・教育充実費が納入免除になり、学費が全額になります。人数は「若干名」です。
③人数がいちばん多いのは国際医療福祉大学の50人。特待奨学生Sが20人(6年間で1,700万円を給付)、Aが30人(同1,400万円)。もともと学費が6年で1,850万円と私立でいちばん安い大学なので、給付額との差はかなり小さくなります。
そしてもうひとつ、大事なことがあります。特待生は「返さなくてよいお金」で、地域枠の修学資金は「返すお金」です。この2つはまったく別のものなので、同じ土俵で比べないでください(→ 5章)。
6年間の学費が下がる制度|北里3,890万円・国際医療福祉1,700万円
まず、金額の大きいところから。初年度だけでなく、6年間ずっと効く制度は次の4つです。

| 大学・制度 | 対象 | 6年間で下がる額 | 人数と中身 |
|---|---|---|---|
| 北里大学 医学部特待生 第1種 |
一般選抜の合格者 | 3,890万円 | 若干名 入学金・授業料・施設設備費・教育充実費の納入免除。学費全額38,900,000円 |
| 北里大学 医学部特待生 第2種 |
一般選抜の合格者 | 1,945万円 | 若干名 入学金及び授業料の一部の納入免除。6年間で19,450,000円 |
| 国際医療福祉大学 医学部特待奨学生S |
一般選抜 | 1,700万円 | 20人 1年次300万円・2〜6年次各280万円を給付。入学金150万円免除と寮費全額給付が別に付く |
| 国際医療福祉大学 医学部特待奨学生A |
一般選抜・共通テスト利用ほか | 1,400万円 | 30人 1年次250万円・2〜6年次各230万円を給付(一般25人・共通テスト利用5人) |
北里大学の医学部特待生は、一般入学試験の合格者から選ばれます。第1種は学費全額の38,900,000円が納入免除。第2種でも6年間で19,450,000円が免除されます。北里大学の学費は6年で3,890万円ですから、第1種は文字どおり全額です。ただし人数はどちらも「若干名」と書かれていて、具体的な数は公表されていません。
国際医療福祉大学は考え方が違い、免除ではなく給付です。特待奨学生Sは1年次に300万円、2〜6年次に毎年280万円で6年間の合計1,700万円。Aは1年次250万円・2〜6年次各230万円で合計1,400万円。Sが20人、Aが30人(一般選抜25人・共通テスト利用5人)で、合わせて50人という規模です。Sにはこのほかに入学金150万円の免除と寮費の全額給付が付きます。
金額だけを見ると北里大学が大きいのですが、学費そのものが違う点は押さえておいてください。北里大学は6年で3,890万円、国際医療福祉大学は1,850万円です。「いくら下がるか」ではなく「下がったあと、いくら払うか」で見るのが実際的だと思います。
出典:北里大学「医学部特待生制度・奨学金」/国際医療福祉大学 医学部「学生納付金」(いずれも2026年8月28日確認)
初年度の学費が下がる制度|聖マリアンナ547万円から東邦100万円まで
次に、初年度だけ効く制度です。こちらのほうが数は多く、8つありました。

| 大学・制度 | 対象 | 初年度に下がる額 | 人数と中身 |
|---|---|---|---|
| 聖マリアンナ医科大学 特待生 |
合格者のうち入試成績・人物ともに優秀な者 | 547万円 | ― 初年度の授業料・教育維持費・教育充実費相当額を免除 |
| 金沢医科大学 医学部特待生制度 |
一般選抜(前期) | 450万円 | 10名以内 初年度学納金のうち450万円を免除。申請は不要 |
| 東京医科大学 授業料減免制度 |
学士選抜/一般選抜 上位40位/共通テスト利用 上位8位 | 290万円 | 48位まで 2027年度以降の入学者が対象。初年度に納入する授業料2,900,000円を免除 |
| 兵庫医科大学 特待生制度 |
一般選抜A(4科目型) | 215万円 | 5名 入学手続時納付金のうち実験実習費50万円・施設設備費65万円・教育充実費100万円を免除 |
| 埼玉医科大学 第2種特別待遇奨学生 |
医学部特別奨学金の受給者 | 200万円 | ― 入学金200万円を免除。2027年度入学者の制度 |
| 関西医科大学 特待生制度 |
一般選抜(前期) | 190万円 | 上位30名 初年度納入金のうち授業料・実験実習費・施設設備費・教育充実費の全額 |
| 獨協医科大学 教育充実費の減免 |
一般選抜(前期)(後期)の成績優秀者 | 180万円 | 若干名 初年度教育充実費の5割(180万円)を減免 |
| 東邦大学 奨学金(給付) |
一般入試(A)(B)・共通テスト利用入試の成績優秀者 | 100万円 | 8名 入学年度に限り最高100万円を給付。人数は2025年度実績 |
いちばん大きいのは聖マリアンナ医科大学の547万円。合格者のうち入試成績・人物ともに優秀な者が対象で、初年度の授業料・教育維持費・教育充実費の相当額が免除されます。
金沢医科大学は一般選抜(前期)で初年度学納金のうち450万円を免除。10名以内で、申請は要りません(前期に出願した人が自動的に対象になります)。東京医科大学は2027年度以降の入学者から新しく始まる制度で、学士選抜の入学者、一般選抜の成績上位40位まで、共通テスト利用選抜の成績上位8位までに、初年度の授業料2,900,000円を免除します。
関西医科大学は一般選抜(前期)の上位30名に190万円、兵庫医科大学は一般選抜A(4科目型)の上位5名に215万円。獨協医科大学は一般選抜(前期)(後期)の成績優秀者(若干名)に、初年度教育充実費の5割180万円を減免します。東邦大学だけは免除ではなく給付で、一般入試(A)(B)と共通テスト利用入試の成績優秀者に入学年度に限り最高100万円。人数は2025年度の実績で8名でした。
出典:各大学が公式サイトで公表している特待生・奨学金の制度(2026年8月28日確認)
入学後の成績で下がる制度もあります|こちらは毎年入れ替わります
ここまでは入試の成績で決まる制度でした。入学したあとの成績で、翌年度の学費が下がる制度もあります。

| 大学・制度 | 対象 | 下がる額 |
|---|---|---|
| 埼玉医科大学 第3種特別待遇奨学生 |
1〜5年次の成績優秀者 上位10名 | 次年度学費100万円を免除(1年間) |
| 愛知医科大学 学納金一部減免制度 |
2〜6学年次・各学年2名以内 | 授業料の一部100万円を免除 |
| 川崎医科大学 特待生制度 |
1〜5学年の成績優秀者 | 翌年度、授業料相当額の奨学金を給付 |
| 日本大学 日本大学特待生 |
学部2年次以上(全学の制度) | 甲種=授業料半額+図書費12万円/乙種=授業料半額 |
| 福岡大学 福岡大学特待生 |
2年次以上・前年度の学業成績等(全学の制度) | 奨学金30万円。各学部学科から約200人 |
埼玉医科大学の第3種特別待遇奨学生は、1〜5年次の成績優秀者の上位10名に次年度の学費100万円を1年間免除。愛知医科大学の学納金一部減免制度は2〜6学年次で各学年2名以内、授業料の一部100万円を免除。川崎医科大学は1〜5学年の成績優秀者に、翌年度、川崎学園育英会から授業料相当額の奨学金を給付します。
日本大学と福岡大学の特待生は医学部だけの制度ではなく、大学全体の制度です。福岡大学は2年次以上の各学年・各学部学科から約200人が選ばれて30万円、日本大学は学部2年次以上で甲種が授業料1年分の半額+図書費12万円(1名)、乙種が授業料半額(5名)となっています。
この型で注意したいのは、毎年選び直されるということです。入学の時点では当てにできません。ただ、入ってからの目標にはなりますし、「6年間ずっと同じ額を払い続ける」という前提が絶対ではないことは知っておいてよいと思います。
出典:各大学が公式サイトで公表している特待生・奨学金の制度(2026年8月28日確認)
制度は3つの型に分かれます|分かれ目は「返すのかどうか」
ここが、この記事でいちばん書きたかったところです。
「学費が下がる」と一括りにされがちですが、中身は3つに分かれます。

| 型 | 返す義務 | いつ決まるか | 例 |
|---|---|---|---|
| ①入試の成績で下がる | ありません | 合格発表と同時、または入学手続き前 | 北里・国際医療福祉・聖マリアンナ医科・金沢医科・東京医科・兵庫医科・埼玉医科・関西医科・獨協医科・東邦 |
| ②入学後の成績で下がる | ありません | 毎年度末に選び直される | 埼玉医科・愛知医科・川崎医科・日本大学・福岡大学 |
| ③貸与(条件を満たすと免除) | あります | 出願の時点で条件が決まっている | 自治医科大学・産業医科大学・都道府県の地域枠 |
①と②は返す必要がありません。免除か給付だからです。③の貸与型は、自治医科大学・産業医科大学や都道府県の地域枠が当たります。こちらはいったん借りて、決められた期間だけ決められた場所で働くと、返さなくてよくなるという仕組みです。
金額だけを並べると、貸与型のほうがはるかに大きく見えます。自治医科大学は6年で2,300万円、東京都の地域枠(杏林大学)は4,420万円。ですが、こちらは卒業後9年前後の勤務が条件で、満たさなければ利息を付けて一括で返すことになります。実際にその返還額をめぐって訴訟になっている例もあります(2025年3月提訴・東京地裁。2026年8月時点で係争中で、判決は出ていません)。
だから「学費が下がる大学ランキング」のような並べ方をしないでください。特待生の3,890万円と、地域枠の4,420万円は、意味がまるで違います。前者は返さないお金、後者は9年働いて返さなくてよくするお金です。
出典:各大学が公式サイトで公表している制度/貸与型は自治医科大学「令和9年度 医学部入学者募集要項」ほか(2026年8月28日確認)
「特待生の合格最低点」は、どこも公表していません
この話題でいちばん検索されているのが「特待生の合格最低点」です。正直にお答えします。特待生になるための点数を公表している大学は、見つかりませんでした。
ただし、これは「何も分からない」という意味ではありません。点数のかわりに順位や人数が公表されているからです。
・東京医科大学……一般選抜の成績上位40位まで、共通テスト利用選抜の上位8位まで
・関西医科大学……一般選抜(前期)合格者の上位30名
・金沢医科大学……一般選抜(前期)で10名以内
・兵庫医科大学……一般選抜A(4科目型)の成績上位者5名
・国際医療福祉大学……特待奨学生S 20人/A 30人
・東邦大学……8名(2025年度実績)
つまり「何点で特待生になれるか」は分かりませんが、「何位以内に入ればよいか」は分かります。たとえば東京医科大学の一般選抜は募集人員が変動しますが、上位40位という数字は合格者数のかなり上のほうにあたります。関西医科大学の上位30名も同様です。合格ラインの少し上、ではなく、合格者の中でも上位という位置だと考えてください。
逆にいうと、北里大学や聖マリアンナ医科大学のように「若干名」「成績・人物ともに優秀な者」としか書かれていない大学もあります。こちらは人数の目安すら公表されていないので、狙って取りにいくものではありません。
太宰府アカデミーの視点|特待生を志望校選びにどう使うか
この一覧をどう使うかについて、3つ書きます。
1つめ。特待生を前提に受験校を決めないこと。上で見たとおり、人数は「若干名」から多くて50人です。合格すること自体が難しい入試で、さらにその上位に入る前提で家計の計画を立てるのは、現実的とは言えません。特待生は取れたら大きい、取れなくても困らないという位置に置いてください。
2つめ。ただし、併願先を絞るときの判断材料にはなります。同じくらいの難易度で迷っている2校があり、片方に特待生の制度があるなら、そちらを受ける理由にはなります。とくに国際医療福祉大学のようにもともと学費が安く、給付の人数も多い大学は、期待値の面では有利です。ただし配点や出題形式との相性は別の話なので、必ず過去問で確かめてから決めてください。
3つめ。金額は毎年変わります。必ず募集要項で確認してください。この記事の数字は2026年8月28日時点で各大学が公表しているものです。東京医科大学のように2027年度から新設される制度もあれば、人数や金額が見直される制度もあります。私立医学部の学生募集要項は例年8〜11月に公表されます。志望校が決まっているなら、要項が出たら学費のページと奨学金のページの両方に目を通してください。特待生の情報は、学費のページに書かれている大学と、奨学金のページに書かれている大学に分かれています。片方だけ見て「うちの志望校には無い」と判断してしまうのが、いちばんもったいないところです。
この記事の調べ方と、載せていない大学について
最後に、どうやって調べたかを書いておきます。
私立医学部31校の公式サイトを開き、学費・学納金・奨学金・特待生のページを順に見て、入試または在学中の成績で学費が下がると明記されている制度だけを書き出しました。金額はすべて大学の公表値をそのまま使っています。予備校や進学情報サイトの集計は使っていません(実際、ある大学の全学の特待生選抜を「医学部も対象」と書いている記事がありましたが、大学公式の実施学部一覧に医学部は入っていませんでした)。
ここに載っていない大学に制度が無い、という意味ではありません。公式サイトに接続できなかった大学、制度の一覧が画像で掲載されていて文字として読めなかった大学、募集要項の中にしか書かれていない大学があります。確認できなかったものは、推測で書かずに省いています。
調べるときのコツを1つだけ。「大学名+学納金」ではなく「大学名+奨学金」で探すほうが早いです。特待生の説明は奨学金のページにまとめられていることが多く、学費のページには金額だけが並んでいることがよくあります。
まとめ|私立医学部の特待生で押さえる5点
最後に、この記事の要点を5つにまとめます。
・入試の成績で学費が下がる大学は10校(北里・国際医療福祉・聖マリアンナ医科・金沢医科・東京医科・兵庫医科・埼玉医科・関西医科・獨協医科・東邦)。入学後の成績で下がる大学を含めると14校になります
・金額の最大は北里大学の第1種で3,890万円(学費全額)。第2種でも6年間で1,945万円が免除されます。いずれも人数は「若干名」です
・人数の最大は国際医療福祉大学の50人。特待奨学生Sが20人で6年1,700万円、Aが30人で1,400万円の給付。同大学の学費は6年1,850万円です
・初年度だけの制度では聖マリアンナ医科547万円・金沢医科450万円・東京医科290万円・兵庫医科215万円・埼玉医科200万円・関西医科190万円・獨協医科180万円・東邦100万円
・「特待生の合格最低点」は公表されていません。かわりに順位や人数が出ています(東京医科は一般上位40位・共テ利用上位8位、関西医科は上位30名、兵庫医科は上位5名、金沢医科は10名以内)
この記事を書いたのは、学費の一覧をお見せしたあとの沈黙を、何度も見てきたからです。私立医学部の6年間は1,850万円から4,550万円。簡単に出せる額ではありません。だからこそ、下がる可能性がある制度は、全部知ったうえで受験校を決めてほしいと思っています。特待生を当てにして受験校を決めるのは違いますが、知らずに選択肢から外すのは、もっと違うと思います。
志望校が決まっている方は、今日のうちに「大学名+奨学金」で公式サイトを開いてみてください。1校あたり5分もかかりません。
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本日の記事は以上です。
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