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産婦人科医になるには?医学部6年+初期研修2年からの最短ルート

2026年08月15日 更新

こんにちは、太宰府アカデミーで広報/完全個別指導コースを担当している後藤です。

先日、産婦人科医と産科医・婦人科医の違いを国の統計で整理した記事を書いたところ、生徒から返ってきたのは「じゃあ、実際になるには何年かかるんですか」というまっすぐな質問でした。

調べてみると、「専攻医」「シーリング」といった制度の言葉で説明が止まっているページが多く、何歳のときに・何を決めて・最短で何年かかるのかを1枚で見わたせるものが意外と見つかりません。そこで今回は、その答えを制度の一次資料だけで1本にまとめます。

− 産婦人科医になるには、何年かかるの?

− どの医学部を出ても、なれるの?

− きついって聞くけど、選ぶ人は減っているんじゃないの?

この3つに、順番にお答えします。

結論|産婦人科医になるには最短11年。専門医は29歳ごろ

先に全体の地図を出します。医学部6年+初期臨床研修2年+産婦人科の専門研修3年以上=最短11年。現役で医学部に合格し、留年なしで進んだ場合、29歳ごろに「産婦人科専門医」です。

産婦人科医になるまでの最短ルート図。医学部6年、初期臨床研修2年、産婦人科の専門研修3年以上で、現役合格なら29歳ごろに産婦人科専門医
出典:医師法(初期臨床研修2年)/日本産科婦人科学会 専門医制度(専門研修3年以上)
段階 年数 年齢の目安 この段階で決まること
医学部(医学科) 6年 18→24歳 医師国家試験の受験資格
医師国家試験 24歳の2月 医師免許(第120回の新卒合格率94.7%)
初期臨床研修(必修) 2年 24→26歳 まだ科は決めない。内科・外科・救急など全科を回る
産婦人科の専門研修(専攻医) 3年以上 26→29歳 ここで産婦人科を選ぶ。19の基本領域から1つ
産婦人科専門医 29歳ごろ〜 審査を経て「産婦人科専門医」に

この表でいちばん見てほしいのは年数ではなく、「産婦人科」と決める場所です。決めるのは医学部入学のときではなく、医師免許を取って初期研修を終える26歳ごろ。つまり——

医学部に入る=何科の医者になるか決める、ではありません。

出典:医師法(初期臨床研修は必修・2年)/日本産科婦人科学会 専門医制度(専門研修は3年以上)。年齢は現役合格・留年なしの場合の目安

「産婦人科医になりたいけれど、どの大学の医学部に行けばいいのか」という質問を受験生からよく受けます。答えはシンプルで、どの大学の医学部からでも産婦人科医になれます。大学選びの段階で科の心配をする必要はありません。ここは後半でもう一度触れます。

産婦人科医になるまでの4つの段階

① 医学部で6年(18→24歳)

全国の医学部医学科はどこも6年制です。ここを卒業(見込み)にならないと医師国家試験が受けられないので、受験勉強の次に大事なのは「6年で卒業すること」になります。進級のしくみや卒業試験の通りやすさは大学によって差があるので、医学部の留年率・進級率・国試合格率ランキングで入学前に確かめておくと、入学後がイメージしやすくなります。

② 医師国家試験(24歳の2月)

2026年2月の第120回医師国家試験は、新卒の全国合格率が94.7%でした。数字だけ見ると高く感じますが、これは「新卒で受けた場合」です。受験回数別に見ると1回目94.7%→2回目71.9%→3回目42.7%と下がっていくので、現役の学生のうちに1回で通ることの重みが分かります。ちなみに第120回で新卒合格率100%だったのは自治医科大学・北海道大学・京都大学の3校でした。

③ 初期臨床研修で2年(24→26歳)——まだ科は決めない

医師免許を取っても、すぐに産婦人科医にはなれません。医師法で2年間の初期臨床研修が必修と決まっていて、この間は内科・外科・救急・産婦人科・小児科・精神科など、科を横断して全体を回ります

研修先は「マッチング」という仕組みで決まります。2025年度の結果では、研修先として大学病院を選んだ人が35.2%、大学以外の市中病院が64.8%(マッチ率92.3%)。出身大学の付属病院に残る人のほうが少数派で、研修先は全国から自由に選べます。

この2年があるおかげで、「18歳で科を決めなければいけない」というプレッシャーから受験生は解放されます。実際に全科を回ってから決められる制度設計です。診療科ごとの働き方の違いを先に知っておきたい人は、19診療科の働き方を数字で比べた記事が参考になるはずです。

④ 産婦人科の専門研修で3年以上(26→29歳)——ここで決める

初期研修を終えると、19ある「基本領域」から1つを選んで専門研修に進みます。ここで産婦人科を選んだ人が「専攻医」として3年以上の研修プログラムに入り、修了と審査を経て産婦人科専門医になります(日本産科婦人科学会の専門医制度)。

なお、専門医になった後も、周産期・婦人科腫瘍・生殖医療といった、さらに細かい専門に進む道が続いています。キャリアの分岐は18歳ではなく、26歳と29歳にある——これが産婦人科医への道の実像です。

「なり手が減っている」は本当か|専攻医は9年間で+8.4%

産婦人科というと、報道などで「なり手不足」の印象を持っている人が多いと思います。では、実際に産婦人科の専門研修へ進んだ人数はどう動いているのか。国の資料で9年分を並べます。

産婦人科の専攻医採用数の推移2018〜2026年度。441人から478人へ9年間で+8.4%
出典:厚生労働省 医師専門研修部会 資料1「令和8年度の専攻医採用と令和9年度の専攻医募集について」(2026年7月15日)
年度 産婦人科の専攻医採用数
2018年度 441人
2019年度 437人
2020年度 476人
2021年度 475人
2022年度 517人(ピーク)
2023年度 481人
2024年度 482人
2025年度 469人
2026年度 478人(2018年度比+8.4%)

2018年度の441人から2026年度は478人へ、+8.4%。2022年度の517人をピークに前後はありますが、この9年で「選ぶ人が減り続けている」という事実は、少なくとも専攻医の採用数には表れていません。

出典:厚生労働省 医道審議会 医師分科会 医師専門研修部会 資料1「令和8年度の専攻医採用と令和9年度の専攻医募集について」(2026年7月15日)をもとに太宰府アカデミー集計

一方で、働き方の数字は正直に見ておくべきです。時間外・休日労働が年1,860時間相当を超える医師の割合は、産婦人科が7.0%と、集計された20科のなかで最多でした(調査全体は2.4%)。お産は時間を選ばないためです。この数字の詳しい読み解きは産婦人科医とは?の記事に書いたので、そちらをどうぞ。加えて知っておいてほしいのは、初期研修医・専攻医の時期は「C-1水準」といって、技能習得のために年1,860時間までの時間外労働が制度上認められていることです。研修期間は、キャリアのなかでも特に忙しい時期だと思って備えるのが現実的です。

シーリング(採用の上限)が無い6科の1つ|どの都道府県でも目指せる

専門研修には「シーリング」という仕組みがあります。専攻医が都市部に集中しすぎないよう、都道府県×診療科ごとに採用数の上限を置くもので、たとえば東京の内科や精神科は枠の上限があります。

ところが産婦人科には、このシーリングがありません。国が医師の確保を必要と認めている科には上限が置かれず、2027年度にそれに当たるのは次の6科です。

区分 診療科
採用の上限(シーリング)が無い6科=全国どの都道府県でも枠の制約なし 外科・産婦人科・救急科・病理・臨床検査・総合診療
参考:福岡県で2027年度にシーリング対象となる8科 内科・精神科・整形外科・泌尿器科・放射線科・麻酔科・形成外科・リハビリテーション科

出典:厚生労働省 医師専門研修部会 資料1(2026年7月15日)「令和9(2027)年度シーリング対象都道府県診療科の一覧」より

つまり産婦人科志望なら、東京でも大阪でも福岡でも、専攻医の枠の取り合いという制約がありません。福岡県は13科中8科がシーリング対象になるなかで、産婦人科は対象外です。「どこで研修するか」を、枠ではなくプログラムの中身で選べるのは、この科の大きな特徴です。

太宰府アカデミーの視点|大学選びの段階でできることは3つ

ここまでの制度を受験生の側から見ると、大学選びで気にすべきことは絞られます。

1つめ。医学部選び=科選びではない、と知っておくこと。産婦人科医になる資格ルートはどの大学でも同じで、科を決めるのは26歳です。「産婦人科に強い大学に行かなければ」と受験校を狭める必要はありません。偏差値・配点・立地といった受験の条件で選んで大丈夫です。ただし配点の相性だけで決めず、必ず過去問で出題形式を確かめてください。

2つめ。「6年で医師になれるか」は大学差が大きいので、入学前に数字を見ること。専門医への11年は、医学部をストレートで卒業できて初めて最短になります。進級・卒業・国試のデータは大学ごとに公表されているので、ストレート卒業率のランキングで志望校の位置を確かめておくことをおすすめします。

3つめ。女子受験生にとって、産婦人科はロールモデルの多い科だと知っておくこと。令和6年の国の統計では、病院で働く産婦人科医の49.2%が女性です。主たる診療科を産婦人科と届け出ている医師は全国に11,188人いて、平均年齢は50.0歳。半数近くが女性という科は、20ある基本領域のなかでも少数です。

まとめ|産婦人科医になるには

  • 最短ルートは医学部6年+初期臨床研修2年+専門研修3年以上=11年。現役合格なら29歳ごろに産婦人科専門医
  • 科を決めるのは26歳。どの大学の医学部からでも産婦人科医になれる
  • 第120回医師国家試験の新卒合格率は94.7%。ただし2回目71.9%・3回目42.7%と下がるので、6年で卒業して1回で通る計画が前提
  • 専攻医の採用数は9年間で+8.4%(441→478人)。「なり手が減り続けている」は採用数には表れていない
  • シーリングの無い6科の1つ。東京・大阪・福岡を含め、どの都道府県でも枠の制約なく目指せる
  • 年1,860時間超の医師の割合は20科で最多の7.0%。働き方の厳しさは数字のまま受け止めて備える

「産婦人科医になりたい」と言ってくれる生徒に、僕が受験の段階で伝えられるのは「まず6年で卒業して、1回で国家試験に通ること。科の心配はそれからで間に合う」ということです。その根拠を、感覚ではなく国の資料の数字で示したくて、この記事を書きました。

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本日の記事は以上です。

最後まで読んでいただきありがとうございます!


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◆筆者プロフィール

後藤 登(Goto Noboru)
仕事:総務・広報・完全個別指導コース担当
自己PR:高校・大学ボクシング部。釣りや登山が好き。新卒で当校に勤めて13年目。医学部受験の情報を調べて、ブログやInstagram、Twitterを更新しています。4年前から完全個別指導コースのコース担当。

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