こんにちは、太宰府アカデミーで広報/完全個別指導コースを担当している後藤です。
「ドクターヘリの番組を見て、救急医になりたいと思いました」——医療ドラマやドキュメンタリーの影響もあって、救急医は受験生の憧れを集めやすい科です。一方で「体力的にきついのでは」「なり手が少ないのでは」という不安もセットで聞きます。
そこで、国が毎年公表している専攻医の採用数と医師統計を読んでみました。すると、救急科はこの9年で専攻医がほぼ倍増している、いま最も伸びている診療科だという事実が出てきました。憧れだけの科ではなく、実際に多くの医師が選んでいる科です。
− 救急医になるには、何年かかるの?
− 救命救急医、救急医、救急救命士——何が違うの?
− 体力的にきついって本当?続けられるの?
順番にお答えします。
この記事の目次
結論|救急医になるには最短11年。専門医は29歳ごろ
まず全体の地図です。医学部6年+初期臨床研修2年+救急科の専門研修3年=最短11年。現役で医学部に合格し、留年なしで進めば29歳ごろに救急科専門医になります。

| 段階 | 年数 | 年齢の目安 | この段階で決まること |
|---|---|---|---|
| 医学部(医学科) | 6年 | 18→24歳 | 医師国家試験の受験資格 |
| 医師国家試験 | ― | 24歳の2月 | 医師免許(第120回の新卒合格率94.7%) |
| 初期臨床研修(必修) | 2年 | 24→26歳 | まだ科は決めない。救急を含む全科を回る |
| 救急科の専門研修(専攻医) | 3年 | 26→29歳 | ここで救急科を選ぶ。19の基本領域から1つ |
| 救急科専門医 | ― | 29歳ごろ〜 | 研修修了後、試験に合格して取得 |
救急科の専門研修は3年で、整形外科・眼科(4年)より1年短い設計です。初期研修の2年間にも救急科のローテーションが含まれているので、医師免許を取ってすぐの段階から救急の現場を経験できるのも、この科の特徴です。
出典:医師法(初期臨床研修2年)/日本救急医学会・日本専門医機構 救急科専門研修プログラム(3年)。年齢は現役合格・留年なしの目安
ここで整理しておきたいのが、混同されやすい3つの言葉です。「救命救急医」「救急医」は、どちらも救急科を専門とする医師を指す呼び方で、資格としては「救急科専門医」の1つです。一方「救急救命士」は医師ではありません——救急車に同乗して救命処置を行う国家資格で、養成課程も進路もまったく別のものです。この記事で扱うのは、医師である救急科専門医の道です。
救急科の専攻医は9年でほぼ倍増|いま最も伸びている科
「なり手が少ないのでは」という不安に、実数で答えます。

| 年度 | 救急科の専攻医採用数 | 参考:整形外科 | 参考:眼科 |
|---|---|---|---|
| 2018年度 | 267人 | 552人 | 328人 |
| 2020年度 | 279人 | 671人 | 344人 |
| 2022年度 | 370人 | 644人 | 343人 |
| 2024年度 | 472人 | 739人 | 331人 |
| 2026年度 | 527人(+97.4%) | 773人(+40.0%) | 341人(+4.0%) |
2018年度の267人から2026年度は527人へ、+97.4%。9年でほぼ倍増しています。同じ期間で整形外科は+40.0%、産婦人科+8.4%、眼科+4.0%ですから、救急科の伸びは群を抜いていると言えます。2026年度の527人は9年間で最多です。
出典:厚生労働省 医道審議会 医師分科会 医師専門研修部会 資料1「令和8年度の専攻医採用と令和9年度の専攻医募集について」(2026年7月15日)をもとに太宰府アカデミー集計
ここには制度的な追い風もあります。救急科は「シーリング」の対象外——専攻医が都市部に集中しないよう都道府県ごとに置かれる採用上限が、救急科にはありません(ほかに外科・産婦人科・病理・臨床検査・総合診療の計6科)。国が医師の確保を必要と認めている科だからで、東京でも大阪でも福岡でも、枠の取り合いにならずに研修先を選べます。
数字で見る「救急科」という科の実像
| 指標 | 数字 | 何を意味するか |
|---|---|---|
| 主たる診療科を救急科とする医師 | 4,081人(全体の1.2%) | 医師数としてはまだ少数 |
| 2026年度の専攻医採用数 | 527人 | 19領域中6番目(全体9,998人) |
| 平均年齢 | 41.9歳 | 全診療科で最も若い(内科59.3歳) |
| 働く場所 | 病院4,011人(98.3%) | ほぼ全員が病院勤務。開業はほぼ無い |
| 女性比率(病院勤務) | 17.8% | 外科系より高く、眼科・産婦人科より低い |
| 年1,860時間超の長時間労働 | 3.1%(調査全体2.4%) | 産婦人科7.0%・外科5.1%より低い |
| シーリング(採用上限) | 対象外 | 全国どこでも枠の制約なし |
この表でいちばん目を引くのは平均年齢41.9歳という数字です。

| 診療科 | 医師の平均年齢 | 参考:主たる診療科とする医師数 |
|---|---|---|
| 救急科 | 41.9歳(全診療科で最も若い) | 4,081人 |
| 麻酔科 | 45.9歳 | 10,628人 |
| 産婦人科 | 50.0歳 | 11,188人 |
| 整形外科 | 52.5歳 | 22,630人 |
| 眼科 | 53.7歳 | 13,436人 |
| 外科 | 53.9歳 | 12,341人 |
| 内科 | 59.3歳 | 62,161人 |
内科59.3歳、外科53.9歳、眼科53.7歳と比べると、救急科の若さは際立ちます。全診療科のなかで最も若い科で、内科との差は17.4歳。救急科が独立した専門領域として整備されたのが比較的新しいためで、いまの救急医療は若い医師が中心になって動かしているということでもあります。これから入る人にとっては、年齢構成の上でも入りやすい領域です。
出典:厚生労働省「令和6(2024)年 医師・歯科医師・薬剤師統計」表4・表5/医政局「医師の働き方改革の施行に向けた準備状況調査」(令和4年・全病院対象)/医師専門研修部会 資料1(2026年7月15日)
もうひとつ、「きつい科」というイメージについて。年1,860時間超の長時間労働の割合は3.1%で、調査全体の2.4%は上回るものの、産婦人科7.0%・脳神経外科5.8%・外科5.1%よりは低い数字でした。夜勤や当直は多い科ですが、シフト勤務が組みやすく、勤務時間の管理は比較的しやすい——という現場の構造が数字にも表れています。ただし当直や夜間の呼び出しの回数は、この指標では測れません。数字は数字として押さえつつ、実際の勤務形態は病院見学で確かめるのが確実です。
なお、98.3%が病院勤務で、開業という選択肢がほぼ無いのもこの科の特徴です。救命救急センターや高度救命救急センターといった設備の整った病院でこそ成り立つ医療だからで、3人に2人が診療所で働く眼科とは、キャリアの形がまったく違います。
太宰府アカデミーの視点|憧れを進路に変えるために
1つめ。救急医志望でも、大学選びで特別なことをする必要はありません。科を決めるのは26歳で、しかも初期研修の2年間には救急科のローテーションが必ず含まれます。全員が一度は救急の現場を経験してから決められる制度です。受験の段階では偏差値・配点・立地といった条件で志望校を選んで大丈夫です。
2つめ。11年の最短ルートは「6年で卒業できて初めて」成立します。ここは大学差が大きく、文部科学省の公表データでは、6年でストレートに医師になれる割合は国公立トップの金沢大学で97.4%、第120回医師国家試験で新卒合格率100%だったのは自治医科大学・北海道大学・京都大学の3校でした。大学ごとのストレート卒業率ランキングで候補校の数字を確かめておくことをおすすめします。
3つめ。「きつそう」という印象は、数字で確かめてから判断してほしい。長時間労働率3.1%は産婦人科や外科より低く、専攻医は9年でほぼ倍増、平均年齢は最も若い。イメージと実数がずれている科の代表格です。診療科ごとの働き方を横断で比べた19診療科の比較記事とあわせて読むと、自分がどんな医師人生を送りたいかを考える材料になるはずです。
まとめ|救急医になるには
- 最短ルートは医学部6年+初期臨床研修2年+専門研修3年=11年。現役合格なら29歳ごろに救急科専門医
- 「救命救急医」「救急医」は同じ救急科の医師。資格は「救急科専門医」の1つ。「救急救命士」は医師ではない別の国家資格
- 専攻医は9年で267→527人(+97.4%)とほぼ倍増。整形外科+40.0%・産婦人科+8.4%・眼科+4.0%と比べ群を抜く伸び
- シーリング対象外の6科の1つ。全国どこでも枠の制約なく研修先を選べる
- 平均年齢41.9歳は全診療科で最も若い(内科59.3歳)。98.3%が病院勤務で、開業という道はほぼ無い
- 長時間労働率3.1%は調査全体(2.4%)より高いが、産婦人科7.0%・外科5.1%より低い
- 受験の段階でできるのは大学選び。6年で医師になれる割合は金沢大学97.4%(国公立1位)など大学差が大きいので、進級・国試のデータまで見て志望校を決める
「ドクターヘリを見て憧れた」という動機を、僕は否定しません。ただ、その憧れに「9年で倍増している科で、平均41.9歳で、シーリングが無い」という事実が加わると、進路の話は具体的になります。憧れを数字で裏打ちしてほしくて、この記事を書き直しました。
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本日の記事は以上です。
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◆筆者プロフィール
後藤 登(Goto Noboru)
仕事:総務・広報・完全個別指導コース担当
自己PR:高校・大学ボクシング部。釣りや登山が好き。新卒で当校に勤めて13年目。医学部受験の情報を調べて、ブログやInstagram、Twitterを更新しています。4年前から完全個別指導コースのコース担当。
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