こんにちは、太宰府アカデミーで広報/完全個別指導コースを担当している後藤です。
「医学部を目指すなら、理科は物理と生物のどちらを取るべきですか」——高校1年生と保護者の方から、毎年この時期にいちばん多く届く質問です。
「生物は不利」「物理のほうが点が取りやすい」という話をよく見かけます。その根拠を確かめるために、大学入試センターが公表している共通テストの平均点を6年分並べました。
結果はこうです。
物理と生物の平均点は年によって逆転します。6年のうち2年は、生物のほうが平均点が高くなっていました。6年平均でも物理58.99・生物55.32で、差は3.67点しかありません。
この記事を開いた方は、たぶんこんなことを思っています。
− 医学部を目指すなら、物理と生物のどっち?
− 生物を選ぶと本当に不利になるの?
− 途中で変えることはできるの?
ひとつずつ答えます。
この記事の目次
結論:物理と生物の差は3.67点。年によって逆転する
先に答えを出します。
- 共通テストの平均点は、6年のうち2年で生物が物理を上回っています。「生物は不利」は一定していません
- 6年平均は物理58.99・化学52.70・生物55.32・地学48.63。物理と生物の差は3.67点で、年ごとの振れ(最大14.93点)のほうがずっと大きい
- 科目間で20点以上の差が出て、それが難易差によると認められた場合は得点調整が行われます。ただし物理と生物の差が20点を超えた年は、この6年で一度もありません
- 選ぶときに見るべきなのは平均点ではなく、志望校が理科をどう課すかです。大学によって配点も選び方の制限も違います
医学部の理科選択|「生物は不利」は6年のうち4年だけ

まず数字を見ます。大学入試センターが公表している共通テスト本試験の平均点(100点満点に換算した値)です。
| 年度 | 物理 | 化学 | 生物 | 地学 | 物理−生物 |
|---|---|---|---|---|---|
| 令和3年度(2021年)(得点調整後) | 62.36 | 57.59 | 72.64 | 46.65 | -10.28 |
| 令和4年度(2022年) | 60.72 | 47.63 | 48.81 | 52.72 | +11.91 |
| 令和5年度(2023年)(得点調整後) | 63.39 | 54.01 | 48.46 | 49.85 | +14.93 |
| 令和6年度(2024年) | 62.97 | 54.77 | 54.82 | 56.62 | +8.15 |
| 令和7年度(2025年) | 58.96 | 45.34 | 52.21 | 41.64 | +6.75 |
| 令和8年度(2026年) | 45.55 | 56.86 | 55.01 | 44.29 | -9.46 |
| 6年の平均 | 58.99 | 52.70 | 55.32 | 48.63 | +3.67 |
物理が生物を上回ったのは令和4年度から令和7年度までの4年。逆に令和3年度は生物が10.28点高く、令和8年度も生物が9.46点高くなっています。
いちばん差が開いたのは令和5年度の14.93点(物理63.39・生物48.46)。逆方向でいちばん大きいのは令和3年度の10.28点です。差の向きも大きさも、年によって変わります。
6年をならすと、物理58.99・生物55.32で差は3.67点。ちなみにいちばん平均点が低いのは化学の52.70で、医学部志望者がほぼ必ず取る科目です。
読むときの注意を2つ。1つめ、平均点はその科目を選んだ人の集団の中での結果です。物理を選ぶ層と生物を選ぶ層は同じではないので、平均点の差がそのまま「科目の難しさの差」ではありません。2つめ、令和3年度と令和5年度の数値は得点調整後のものです(次の章で説明します)。
共通テストの得点調整|20点差で発動する仕組み

「不利になったら救済されないのか」への答えです。共通テストには得点調整という仕組みがあります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| いつ行うか | 原則として20点以上の平均点差が生じ、これが試験問題の難易差に基づくものと認められた場合 |
| 誰が決めるか | 得点調整判定委員会で審議し、大学入試センターが決定する |
| 対象外になる科目 | 受験者数が1万人未満の科目。理科②では地学が対象外 |
| 実際に行われた年 | 令和3年度(公民・理科②)と令和5年度。上の表の平均点は調整後の数値 |
大学入試センターの公表文をそのまま引くと、「原則として、20点以上の平均点差が生じ、これが試験問題の難易差に基づくものと認められた場合、得点調整を行います」となっています。
実際に令和3年度は公民と理科②で20点以上の差が生じ、得点調整が行われました。令和5年度にも行われています。上の表の平均点は、その調整後の数値です。
ただし地学だけは対象になりません。受験者数が1万人未満だからです。令和3年度の公表文にも「理科②の『地学』は、受験者数が1万人未満のため、得点調整の対象としません」と明記されています。
そして物理と生物の差が20点を超えた年は、この6年で一度もありません。最大でも令和5年度の14.93点です。「差がついたら調整で戻る」と当てにするには、20点はかなり遠い数字だということになります。
医学部志望の理科選択|生物を選ぶ人は物理の4割

次に、実際に何人が選んでいるかを見ます。
| 年度 | 物理 | 化学 | 生物 | 地学 |
|---|---|---|---|---|
| 令和3年度(2021年) | 146,041 | 182,359 | 57,878 | 1,356 |
| 令和4年度(2022年) | 148,585 | 184,028 | 58,676 | 1,350 |
| 令和5年度(2023年) | 144,914 | 182,224 | 57,895 | 1,659 |
| 令和6年度(2024年) | 142,525 | 180,779 | 56,596 | 1,792 |
| 令和7年度(2025年) | 144,761 | 183,154 | 57,985 | 2,365 |
| 令和8年度(2026年) | 145,203 | 181,584 | 56,314 | 2,701 |
| 6年の平均 | 145,338 | 182,354 | 57,557 | 1,870 |
6年平均で、化学182,354人・物理145,338人・生物57,557人・地学1,870人。生物を選ぶ人は物理の約4割です。
いちばん多いのは化学で、物理の1.25倍。これは医学部に限らず理系全体の傾向ですが、医学部の入試では化学がほぼ必ず必要になるので、実際の選択は「化学+もう1科目を物理か生物のどちらにするか」という形になります。
基礎科目(理科①)のほうも出しておきます。文系との比較で見えるものがあります。
| 科目(理科①・50点) | 受験者数 | 平均点(100点換算) |
|---|---|---|
| 物理基礎 | 18,486 | 69.36 |
| 化学基礎 | 89,094 | 57.16 |
| 生物基礎 | 114,187 | 72.92 |
| 地学基礎 | 48,438 | 56.34 |
基礎科目では生物基礎が114,187人でいちばん多く、物理基礎は18,486人。専門科目とは逆の並びになります。理科①は文系の受験者が中心なので、集団がまったく違うということです。この表は、医学部志望の方の選択には直接使えません。比べるなら理科②のほうを見てください。
理科選択で本当に見るべきもの|志望校が理科をどう課すか
ここまでは共通テストの話です。医学部の入試では、共通テストより2次試験(大学個別の学力検査)のほうが理科の比重が大きくなることがあります。
大学によって違うのは、次の3つです。
1つめ、理科の配点。2次試験で理科をどれだけの点数にするかは大学ごとに違い、しかも年によって変わります。2027年度入試では、旭川医科大学が2次の理科を200点から150点へ、東京女子医科大学が理科を200点から150点へ変更することを公表しています(東京女子医科大学は英語150点で満点400点は据え置き)。50点の変更は、合否のラインを動かす大きさです。
2つめ、選べる科目の範囲。物理・化学・生物から2科目を選ぶのが基本形ですが、組み合わせに制限を置く大学もあります。ここは必ず志望校の学生募集要項で確認してください。予備校の一覧表ではなく、大学が出している原文を見るのが確実です。
3つめ、共通テストと2次で必要な科目が違うことがある。共通テスト利用選抜では理科の指定が別になっている大学があります。2027年度から北里大学が新設する共通テスト利用選抜(前期)は、1次が共通テストで理科200点・数学150点・外国語150点という配点です。
つまり「物理と生物のどちらが有利か」は、全国共通の答えを持ちません。志望校が決まっているなら、その大学の配点表を見るのがいちばん早い答えになります。
太宰府アカデミーの視点|迷ったら「続けられるほう」を選ぶ
ここまでの数字を、受験生と保護者の方がどう使えばいいかを書きます。
まず平均点の差で選ばないでください。6年平均で3.67点、しかも年によって逆転します。この程度の差は、本人が3年間その科目にどれだけ取り組めるかの差に、簡単に飲み込まれます。高校1年生の段階で「有利な科目」を当てにいくのは、根拠の薄い賭けになります。
次に「医学部だから生物」という選び方も、根拠がありません。医学部の6年間はモデル・コア・カリキュラムで骨格が全国共通に決まっていて、1年生から解剖・生理・生化学を全員が同じように学びます。高校で生物を取っていなかった人が置いていかれる設計にはなっていません。大学に入ってからの有利・不利を理由に決める必要はないということです。
三つめに、変更のコストは学年が上がるほど重くなります。2年生の途中から生物を物理に変えるのは、学校の時間割の面でも現実的に難しいことが多い。だからこそ、迷っているなら1年生のうちに決めてしまうほうがいいと思っています。判断材料は平均点ではなく、実際に授業を受けてみてどちらが続けられそうかです。
四つめに、志望校が決まっている方は、いま配点表を見てください。2次の理科が200点なのか150点なのかで、対策の重さが変わります。そして配点は毎年変わりうるので、出願年度の募集要項で必ず確認してください。
最後に。この記事の数字は全国の平均です。本人がどちらで得点できるかは、この表からは分かりません。模試を1回受けて、実際の得点で判断するほうが、平均点を眺めるよりずっと確かです。
まとめ
「医学部の理科選択は物理と生物のどちらか」への答えをまとめます。
- 共通テストの平均点は、6年のうち2年で生物が物理を上回りました。「生物は不利」は一定していません
- 6年平均は物理58.99・化学52.70・生物55.32・地学48.63。物理と生物の差は3.67点です
- 年ごとの振れのほうが大きい。最大は令和5年度の14.93点(物理が上)、逆方向は令和3年度の10.28点(生物が上)でした
- 20点以上の差が難易差によると認められた場合は得点調整が行われます。ただし物理と生物の差が20点を超えた年は、この6年で一度もありません
- 地学は受験者数が1万人未満のため、得点調整の対象になりません(令和3年度の公表文に明記)
- 受験者数は化学182,354人・物理145,338人・生物57,557人。生物を選ぶ人は物理の約4割です
- 選ぶときに見るのは平均点ではなく、志望校の配点表。2027年度は旭川医科大学と東京女子医科大学が理科の配点を200点から150点へ変更します
この記事を書いたのは、「生物は不利」という話が根拠を示されないまま、高校1年生の科目選択を動かしていると感じたからです。6年分を並べると、差は3.67点で年によって逆転していました。決め手になる差ではありません。続けられるほうを選んでください。
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本日の記事は以上です。
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◆筆者プロフィール
後藤 登(Goto Noboru)
仕事:総務・広報・完全個別指導コース担当
自己PR:高校・大学ボクシング部。釣りや登山が好き。新卒で当校に勤めて13年目。医学部受験の情報を調べて、ブログやInstagram、Twitterを更新しています。4年前から完全個別指導コースのコース担当。
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