こんにちは、太宰府アカデミーで広報/完全個別指導コースを担当している後藤です。
「医学部を出ても、医者にならない人っているんですか」——この質問には、はっきりした数字で答えられます。
医師免許を持っている347,772人のうち、患者を診ていないのは12,888人。全体の3.7%です。厚生労働省が2年に1度おこなっている届出の集計に、そのまま載っています。
この記事では、その3.7%が具体的に何をしているのかまで書きます。「医者以外の進路」を漠然としたイメージではなく、人数で見ていきます。
この記事を開いた方は、たぶんこんなことを思っています。
− 医学部を出て医者にならない人って、どのくらいいるの?
− 医者にならないなら、何をしてるの?
− 医師免許を取らないまま卒業する人もいるの?
ひとつずつ答えます。
この記事の目次
結論:医師免許を持ちながら患者を診ていないのは3.7%・12,888人
先に答えを出します。
- 届出をしている医師は347,772人。そのうち病院・診療所・介護施設で働いているのが334,864人(96.3%)
- 残りの12,888人(3.7%)が、患者を診ていない医師です
- その中でいちばん多いのは大学などでの研究・教育で4,769人。次いで行政機関1,829人、産業医1,698人と続きます
- 無職は2,434人(医師全体の0.7%)。届出の時点で仕事に就いていない人で、引退した高齢の医師を含みます
つまり「医学部を出たのに医者にならない」人は、ほとんどが医師免許を使って別の場所で働いているということになります。
医師347,772人は、どこで働いているのか
厚生労働省の統計で、医師がどこで働いているかを見ます。

病院と診療所が331,092人で95.2%。介護老人保健施設と介護医療院が合わせて3,772人。ここまでが「患者を診ている医師」で、合計334,864人=96.3%です。
残りが2つに分かれます。研究・行政・産業医などが9,403人(2.7%)、その他・無職が3,485人(1.0%)。この12,888人が、いわゆる「医者にならなかった医師」にあたります。
公表されている全区分はこちらです。
| 施設・業務の種別 | 令和6年(人) | 構成割合 | 令和4年(人) | 2年間の増減 |
|---|---|---|---|---|
| 医療施設の従事者 | 331,092 | 95.2% | 327,444 | +3,648(+1.1%) |
| 介護老人保健施設の従事者 | 3,337 | 1.0% | 3,298 | +39(+1.2%) |
| 介護医療院の従事者 | 435 | 0.1% | 350 | +85(+24.3%) |
| 医療施設・介護老人保健施設・介護医療院以外の従事者 | 9,403 | 2.7% | 9,181 | +222(+2.4%) |
| 医育機関の臨床系以外の大学院生 | 526 | 0.2% | 596 | -70(-11.7%) |
| 医育機関の臨床系以外の勤務者 | 2,801 | 0.8% | 2,730 | +71(+2.6%) |
| 医育機関以外の教育機関又は研究機関の勤務者 | 1,442 | 0.4% | 1,425 | +17(+1.2%) |
| 行政機関・産業医・保健衛生業務の従事者 | 4,634 | 1.3% | 4,430 | +204(+4.6%) |
| 行政機関の従事者 | 1,829 | 0.5% | 1,856 | -27(-1.5%) |
| 産業医 | 1,698 | 0.5% | 1,427 | +271(+19.0%) |
| 保健衛生業務の従事者 | 1,107 | 0.3% | 1,147 | -40(-3.5%) |
| その他の者 | 3,485 | 1.0% | 2,979 | +506(+17.0%) |
| その他の業務の従事者 | 1,051 | 0.3% | 890 | +161(+18.1%) |
| 無職の者 | 2,434 | 0.7% | 2,089 | +345(+16.5%) |
| 不詳 | 20 | 0.0% | ― | ― |
| 総数 | 347,772 | 100.0% | 343,275 | +4,497(+1.3%) |
この表で1つ補足しておきたいのが「診療所の開設者又は法人の代表者」70,046人です。いわゆる開業医で、医師の5人に1人(20.1%)がここに入ります。開業も臨床の一部なので、この記事でいう「医者にならない」には含みません。
医者以外の進路は、具体的に何か
ここが「医学部 進路 医者以外」で調べている方がいちばん知りたいところだと思います。12,888人の内訳を、人数の多い順に並べます。

いちばん多いのは大学などでの研究・教育で4,769人。医学部を置く大学(医育機関)の基礎医学の教員・大学院生と、大学以外の研究機関の勤務者を合わせた数です。解剖学・生理学・薬理学といった、患者を直接診ない分野の研究者がここに入ります。日本には医学部のある大学が81校あり、その基礎系の講座がこの4,769人の受け皿になっています。
次が行政機関の1,829人。厚生労働省の医系技官や、保健所の所長などです。感染症対策や医療制度の設計は、この人たちの仕事です。
三番目が産業医の1,698人。企業で働く人の健康管理を担当する医師で、労働安全衛生法で一定規模以上の事業場に選任が義務づけられています。
| 何をしているか | 人数 | 12,888人に占める割合 | 内容 |
|---|---|---|---|
| 大学などで研究・教育をしている | 4,769 | 37.0% | 医育機関の臨床系以外の勤務者・大学院生と、医育機関以外の教育・研究機関の勤務者の合計 |
| 無職 | 2,434 | 18.9% | 届出の時点で仕事に就いていない人。引退した高齢の医師を含む |
| 行政機関で働いている | 1,829 | 14.2% | 厚生労働省の医系技官、保健所の所長など |
| 産業医をしている | 1,698 | 13.2% | 企業で働く人の健康管理を担当する |
| 保健衛生業務に従事している | 1,107 | 8.6% | 血液センター、生命保険会社の嘱託医、社会保険診療報酬支払基金など |
| その他の業務 | 1,051 | 8.2% | 上のどれにも当てはまらない仕事 |
| 合計 | 12,888 | 100.0% | 医師全体の3.7%にあたる |
無職2,434人は、届出の時点で仕事に就いていない人です。この数字を「医学部を出たのに働いていない若者」と読むのは誤りです。医師は生涯の資格なので、引退した高齢の医師もここに含まれます。医師全体の平均年齢は50.6歳です。
この2年で増えたのは産業医だった
この統計は2年に1度なので、前回(令和4年)と比べられます。

産業医が1,427人→1,698人で+19.0%。医師全体の伸びが+1.3%なので、その14倍の速さで増えています。その他の業務も+18.1%、無職も+16.5%と、臨床以外の区分がそろって伸びました。
逆に減ったのが医育機関の臨床系以外の大学院生(596人→526人、−11.7%)です。全区分の増減はこちらです。
| 何をしているか | 令和4年 | 令和6年 | 増減 | 増減率 |
|---|---|---|---|---|
| 産業医をしている | 1,427 | 1,698 | +271 | +19.0% |
| その他の業務 | 890 | 1,051 | +161 | +18.1% |
| 無職 | 2,089 | 2,434 | +345 | +16.5% |
| 大学などで研究・教育をしている | 4,751 | 4,769 | +18 | +0.4% |
| 行政機関で働いている | 1,856 | 1,829 | -27 | -1.5% |
| 保健衛生業務に従事している | 1,147 | 1,107 | -40 | -3.5% |
| 医師の総数 | 343,275 | 347,772 | +4,497 | +1.3% |
2年ぶんの動きなので、これが流れなのか一時的なものなのかは、この統計だけでは分かりません。次の令和8年調査で同じ方向に動いているかを見る必要があります。ただ、産業医が2年で271人増えたことは事実です。
「医師免許を取らないまま卒業する」人はいるのか
ここまでは「免許を取ったあと」の話でした。もう1つの疑問——医学部を出たのに国家試験を受けない、あるいは受からない人はどうでしょうか。
文部科学省が、入学者のその後を大学別に公表しています。令和元年度に入学した9,456人が第119回国家試験(2025年2月)を受けるまでを追った数字です。
- 入学者 9,456人
- 6年で6年次に在籍 8,201人(86.7%)
- 6年で卒業 8,076人(85.4%)
- 国家試験の出願 9,440人/受験 9,238人/合格 8,840人
国家試験の出願・受験・合格には既卒(前年までに卒業した人)が含まれるので、入学者の数と直接は比べられません。それでも「6年で卒業したのは85.4%」という数字は、そのまま読めます。7人に1人は6年では卒業していません。
ただしこれは「医者にならない」とは別の話です。留年しても7年目・8年目に卒業して、医師になる人がほとんどです。この記事で扱っている3.7%は、あくまで免許を取ったうえで臨床以外の道を選んだ医師のことです。
太宰府アカデミーの視点|「医者にならない」は逃げ道ではありません
この数字を、受験生と保護者の方がどう受け止めればいいかを書いておきます。
まず「医学部に入ったら、臨床の医師になる以外の道はない」というのは正確ではありません。研究・行政・産業医で8,000人以上が働いています。医学部を目指す動機が「研究がしたい」「公衆衛生に関わりたい」であっても、それは十分に成り立つ進路です。
ただしそこへ行く人も、まず臨床研修2年を経てから進むのが一般的です。医師法で、診療に従事しようとする医師は2年以上の臨床研修を受けることが義務づけられています。「臨床が向いていないから研究へ」という順番ではなく、「臨床を経験したうえで研究を選ぶ」のが実際の道筋です。
三つめに、面接でこの話を使うときの注意です。「医者にはならず研究者になりたい」という言い方は、志望動機としては弱くなります。大学の医学部は医師を養成する課程で、大学がそう明示しているからです。踏まえたうえで「臨床を経験したうえで、この分野を深めたい」という順序で話すほうが伝わります。志望する大学の研究分野を1つ挙げられると、さらに具体的になります。
最後に。この記事の数字は、届出をした医師のものです。2年に1度の届出なので、その間に進路が変わった人は反映されません。数字は全体の輪郭をつかむために使ってください。
まとめ
「医学部を出て医者にならない割合」への答えをまとめます。
- 医師347,772人のうち、患者を診ていないのは12,888人=3.7%です(令和6年12月31日現在)
- いちばん多いのは大学などでの研究・教育で4,769人。医学部のある大学81校の基礎系講座などが受け皿です。次いで行政機関1,829人、産業医1,698人
- 無職は2,434人(0.7%)。医師は生涯の資格なので、引退した高齢の医師を含みます
- この2年で増えたのは産業医(+19.0%)。医師全体の伸び+1.3%の14倍の速さです
- 「6年で卒業できるのは85.4%」は別の話。留年しても、多くはその後に卒業して医師になります
いま医学部を目指していて「臨床以外の道も考えたい」という方は、まず医学部に入り、初期研修まで進んでから決めても遅くありません。研究も行政も産業医も、臨床研修を終えたあとに選べる道です。
この記事を書いたのは、「医学部を出たのに医者にならないのは、もったいない」という言われ方が気になっていたからです。数字を見れば、そこには研究・行政・産業保健という、医師免許がなければできない仕事が並んでいます。医学部の出口は1本ではありません。
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本日の記事は以上です。
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【当校の特徴】
定員30名|21年間の累計医学部医学科合格実績518名(のべ数)|田舎の全寮制|全国各地から入学(2026年度生は全国20の都道府県より入学)|異次元の生活サポート|食事が美味しい(土日祝日問わず3食提供)|講師との距離が近い|プロ講師の質問対応が充実|完全個別指導コースあり|選抜国公立コースあり|専用筋トレジムあり|同じ夢を持った仲間と1年間切磋琢磨し、医学部合格を目指す
【校風】アットホームな大家族予備校
◆筆者プロフィール
後藤 登(Goto Noboru)
仕事:総務・広報・完全個別指導コース担当
自己PR:高校・大学ボクシング部。釣りや登山が好き。新卒で当校に勤めて13年目。医学部受験の情報を調べて、ブログやInstagram、Twitterを更新しています。4年前から完全個別指導コースのコース担当。
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