こんにちは、福岡の医学部予備校で総務・広報を担当している後藤です。
本日のブログは、生徒からいちばんよく名前が挙がる診療科の話です。
「将来は皮膚科がいいと思っています」。面談でそう言う生徒は毎年います。理由を聞くと、たいてい「当直が少なそうだから」「女性でも続けやすいと聞いたから」です。
その印象が当たっているのかどうか、厚生労働省の統計と日本皮膚科学会の公表資料だけで確かめました。結論から言うと、当たっている部分と、まったく逆の部分の両方がありました。
− 皮膚科って、他の科より早く専門医になれるんでしょ?
− 当直がないから、楽な科なんでしょ?
− 人気が高くて、なりたい人が増えているんでしょ?
この3つに、順番に数字でお答えします。
この記事の目次
結論|医学部6年+臨床研修2年+皮膚科の専門研修5年
まず全体像です。

| # | 段階 | 年数 | 中身 |
|---|---|---|---|
| 1 | 医学部医学科 | 6年 | 共用試験(4年次)と卒業試験を越えて卒業する |
| 2 | 医師国家試験・医籍登録 | ― | 18歳入学でまっすぐ進めば24歳 |
| 3 | 初期臨床研修 | 2年 | 医師法第16条の2で必修。ここまでは全科共通 |
| 4 | 皮膚科の専門研修 | 5年以上 | 主研修施設での計1年以上を含む |
| 5 | 専門医試験 | ― | 医師免許/5年以上引き続き日本皮膚科学会の正会員/所定の研修実績/前実績150単位以上/実際に皮膚科の診療に従事していること |
| 合計 | 入学から専門医試験まで | 13年 | 最短で31歳 |
医学部を出て医師免許を取るところまでは、どの科を選んでも同じです。分かれるのは、初期臨床研修2年を終えたあとの専門研修(専攻医)の年数。皮膚科はここが5年あります。
18歳で入学してまっすぐ進んだ場合、入学から専門医試験までは13年、年齢でいうと31歳です。
出典:日本皮膚科学会「日本皮膚科学会認定皮膚科専門医制度の手引き」/医師法第16条の2(臨床研修)/厚生労働省「医師国家試験の施行について」(令和8年7月1日告示)をもとに太宰府アカデミー集計
専門研修5年は、基本領域のなかで最も長い期間です
1つめの「早く専門医になれるのか」の答えは、逆です。
日本皮膚科学会が公表している研修制度のFAQに、そのものずばりの問答があります。「皮膚科の研修期間が、他科と比較して長い理由は何ですか?」という質問に対して、「皮膚科の研修期間は5年間となっており、基本領域学会の中でも最長の研修期間です」と答えています。理由は「皮膚科は全身疾患であり、専門性も高く学ぶべきことが多くある」からだ、と書かれています。
専門医試験を受けるための要件も、あわせて確認しておきます。医師免許があること、5年間以上引き続いて日本皮膚科学会の正会員であること、所定の研修実績を修了していること、前実績単位を150単位以上取得していること、そして実際に皮膚科の診療に従事していること。研修のうち主研修施設での計1年以上が必要という条件も付きます。
★初期臨床研修が算定されるかは、2つの資料で書きぶりが違います
ここは、進路を決める前に必ず自分で確かめてほしいところです。
日本皮膚科学会の「専門医制度の手引き」には、「日本皮膚科学会に入会した後の初期研修の期間は、皮膚科専門医研修期間に算定されます」と書かれています(ただし主研修施設での1年には含められない、という但し書きつき)。
一方、同じ学会の研修プログラム委員会が2017年9月に出したFAQには、「内科や外科では、初期臨床研修の症例実績を認められると聞きました。皮膚科はどうですか?」という質問に対して、「皮膚科では認められません」とあります。
2つの資料で、初期研修の扱いの書きぶりが違います。片方が2017年のもので、制度が新しくなる時期の説明だという事情はありそうですが、どちらが今の運用なのかは、この記事では断定できません。入会と研修プログラムの登録の前に、必ず学会に直接ご確認ください。ここが変わると、専門医になる年齢が2年ずれます。
出典:日本皮膚科学会「日本皮膚科学会認定皮膚科専門医制度の手引き」/同 研修プログラム委員会「新研修制度に関するFAQ 第1版」(2017年9月1日)
皮膚科医は10,043人|病院勤務の57.2%が女性です
次に、実際にどれくらいの人がこの科にいるのかを見ます。
| 項目 | 数値 | 出どころ |
|---|---|---|
| 皮膚科医の数 | 10,043人(医師全体の3.0%) | 医師・歯科医師・薬剤師統計(令和6年) |
| 平均年齢 | 51.4歳 | 同上 |
| うち病院勤務 | 3,907人(38.9%) | 同上 |
| 病院勤務医の女性比率 | 57.2%(医師全体は24.4%) | 同上 |
| 1日あたりの推計外来患者数 | 皮膚の疾患 293.9千人(傷病別で4位) | 患者調査(令和5年) |
| 年1,860時間超の時間外労働 | 4人/1,602人=0.2%(産婦人科は7.0%) | 医師の働き方改革の準備状況調査(令和4年) |
皮膚科を主たる診療科とする医師は10,043人で、医師全体(347,772人)の3.0%。平均年齢は51.4歳です。
目を引くのは女性比率で、病院に勤めている皮膚科医の57.2%が女性です。医師全体の女性比率が24.4%ですから、かなり違います。女性が過半数を占める診療科は、皮膚科と乳腺外科の2つだけでした。「女性でも続けやすいと聞いた」という生徒の印象は、この数字とは合っています。
もう1つ。10,043人のうち病院勤務は3,907人(38.9%)で、残りは診療所などです。病院で働く割合がここまで低い科は多くありません。皮膚科の働き方を考えるときは、この点も見ておくと良いと思います。
出典:厚生労働省「令和6(2024)年 医師・歯科医師・薬剤師統計」(2025年12月23日公表・2024年12月31日現在)/厚生労働省「患者調査」(令和5年)/厚生労働省医政局「医師の働き方改革の施行に向けた準備状況調査」(令和4年3〜4月調査)をもとに太宰府アカデミー集計
専攻医は2026年度に259人|2023年度より89人減りました
3つめの「人気が高くて増えているのか」。これも、数字はそう言っていません。

| 年度 | 皮膚科を選んだ専攻医 | 前年差 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2018年度 | 271人 | ― | |
| 2019年度 | 321人 | +50人 | |
| 2020年度 | 304人 | -17人 | |
| 2021年度 | 303人 | -1人 | |
| 2022年度 | 326人 | +23人 | |
| 2023年度 | 348人 | +22人 | いちばん多い年 |
| 2024年度 | 297人 | -51人 | |
| 2025年度 | 308人 | +11人 | |
| 2026年度 | 259人 | -49人 | いちばん少ない年 |
皮膚科を選んだ専攻医は2018年度が271人、2023年度が348人でいちばん多く、2026年度は259人。前年から-49人で、2018年度と比べても-4.4%です。9年のあいだ、おおむね300人前後で動いていて、増え続けているわけではありません。
2026年度に全19領域で採用された専攻医は9,998人。皮膚科はそのうち2.6%です。
出典:厚生労働省 医道審議会 医師分科会 医師専門研修部会 資料1(令和8年7月15日)をもとに太宰府アカデミー集計
年による増減があるので、1年だけを見て判断しないでください。都市部の採用数に上限を設ける仕組み(シーリング)もあり、志望した人数がそのまま採用数になるわけでもありません。
「楽な科」なのか|労働時間と、地域の偏りは逆を向いています
2つめの「当直がないから楽なのか」。ここは、2つの数字が反対を向いています。
まず労働時間。年1,860時間を超える時間外労働をしている医師の割合は、皮膚科は1,602人中4人で0.2%。産婦人科の7.0%と比べると28.2分の1です。長時間労働という面では、たしかに負担が軽いほうに入ります。
一方で、こちらの数字があります。

| 診療科 | 0.6未満だった区域 | 108区域に占める割合 |
|---|---|---|
| 放射線科 | 92区域 | 85.2% |
| 救急科 | 91区域 | 84.3% |
| 麻酔科 | 89区域 | 82.4% |
| 形成外科 | 83区域 | 76.9% |
| 皮膚科 | 73区域 | 67.6% |
| 全診療科 | 40区域 | 37.0% |
医師少数区域とされる108の二次医療圏について、人口10万人あたりの医師数を全国平均と比べた比率を診療科ごとに数えたものです。皮膚科は73区域(67.6%)が全国平均の0.6未満で、しかも全国平均を超える(1.0以上の)区域は1つもありませんでした。全診療科でまとめると0.6未満は40区域(37.0%)ですから、差はかなりあります。
出典:厚生労働省 医師養成過程を通じた医師の偏在対策等に関する検討会の資料をもとに太宰府アカデミー集計(医師少数区域とされる二次医療圏108区域)
外来の患者数で見ると、「皮膚の疾患」は1日あたり293.9千人で、傷病別の4位です(1位は高血圧の602.9千人)。患者さんは多いのに、地方には医師が足りていない——データを見る限りでは、そういう形になっています。
どの大学を出ると皮膚科医になりやすいのか
受験生からよく聞かれるのがこれです。答えは「出身大学では決まりません」。
皮膚科の専門研修は、全国の基幹施設に置かれた研修プログラムで受けます。日本皮膚科学会は都道府県別の専門研修プログラムの一覧と、認定した主研修施設の一覧を公表しています。基幹となるのは大学病院が中心ですが、出身大学のプログラムに入らなければならない、という決まりはありません。
これは初期臨床研修と同じ構造です。医師免許を取った人は、出身大学と関係なく全国の病院に希望を出せます。医学部81校(国公立50校・私立31校)のどの大学を出ても、皮膚科に進む道のりは同じということになります。
ですから、大学選びの段階で効いてくるのは「皮膚科に強い大学かどうか」ではありません。その大学で6年ちょうどで卒業できるか、医師国家試験に受かるかのほうです。志望校を比べるときは、大学ごとの6年ストレート卒業率と国家試験の合格率を見ておいてください。どちらも文部科学省が大学別に公表しています。
太宰府アカデミーの視点|いま高校生が知っておくと役に立つこと
ここまでの数字を踏まえて、進路を考えるうえで見ておきたいポイントを3つ挙げます。
1つめ。皮膚科は「早く終わる科」ではありません。専門研修5年は基本領域で最も長く、入学から専門医試験まで13年です。学会が理由として挙げているのは「全身疾患であり、学ぶべきことが多い」。皮膚だけを診る科ではない、というのが制度の側の説明です。
2つめ。「楽そう」で選ぶと、根拠が1つしかないことになります。長時間労働の割合は低い一方で、地方では全国平均を超える区域が1つもない。どちらも同じ科の数字です。どの科も、良い面だけ・悪い面だけということはありません。数字は出しましたので、どう受け取るかは読者にお任せします。
3つめ。そのうえで、いま科を決める必要はまったくありません。科が決まるのは初期臨床研修が終わるとき、つまり最短でも26歳です。18歳の時点で決めた科に進む人のほうが少ないと思います。いま必要なのは、医学部に入ることと、入ってから6年間を通り抜けることです。科の話は、そのあとでいくらでも変えられます。
この記事を書こうと思ったのは、「皮膚科医 なるには」で検索したときに、研修年数を書いているページがほとんど無かったからです。5年という数字は、進路を考えるうえでいちばん先に知っておきたい情報だと思っています。
まとめ|皮膚科医になるまでの13年と、5つの数字
皮膚科医になる道のりを、国と学会の公表資料だけで確かめた結果をまとめます。
- 医学部6年+初期臨床研修2年+皮膚科の専門研修5年で、入学から13年。専門医試験にたどり着くのは最短31歳です
- 専門研修5年は「基本領域学会の中でも最長」と日本皮膚科学会が説明しています。理由は「全身疾患であり、学ぶべきことが多い」から
- 初期臨床研修が研修期間に算定されるかは、学会の2つの資料で書きぶりが違います。入会前に必ず学会にご確認ください
- 皮膚科医は10,043人。病院勤務医の57.2%が女性で、女性が過半数の科は皮膚科と乳腺外科だけです
- 専攻医は2026年度に259人(2023年度は348人)。長時間労働の割合は0.2%と低い一方、医師少数区域108のうち73区域で全国平均の0.6未満でした
いま高校生・受験生の方がやることは1つです。科ではなく、大学を決めてください。皮膚科に進めるかどうかは、どの医学部を出たかでは決まりません。決まるのは、医師免許を取ってから2年後です。
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では、本日の記事は以上です。
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後藤 登(Goto Noboru)
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