こんにちは、太宰府アカデミーで広報/完全個別指導コースを担当している後藤です。
検索窓に「眼科」と打つと、候補に「眼科 医者じゃない」と出てきます。実際にこの言葉で検索してこの記事に来る人が、年間で5,000人分以上表示されています。眼科を志望している生徒がこれを見たらどう思うだろう——と気になったのが、この記事を全面的に書き直した理由です。
先に言い切ります。眼科医は、医師国家試験に合格した歴とした医師です。そのうえで「眼科医」と「眼科専門医」は何が違うのか、数字はどうなっているのかを、国の統計と学会の一次資料で整理しました。
− 眼科って、医者じゃないの?
− 眼科医と眼科専門医って、何が違うの?
− これから目指す価値のある科なの?
順番にお答えします。
この記事の目次
結論|「眼科は医者じゃない」は誤解。医師13,436人の専門領域
なぜこんな検索が生まれるのか。おそらく、眼鏡店やコンタクトレンズ量販店の近くにある眼科を「検眼のための場所」と感じたり、視力検査を担当する視能訓練士(国家資格を持つ検査・訓練の専門職で、医師ではありません)と眼科医を混同したりするためだと思われます。
数字を見れば、誤解は解けます。厚生労働省が2年に1度集計している統計で、主たる診療科を「眼科」として届け出ている 医師は全国に13,436人。内科・整形外科・小児科・精神科・消化器内科・循環器内科に次いで7番目に大きい診療科です。白内障手術をはじめ年間数十万件規模の手術を担う、外科的な技術も要る専門領域で、「医者じゃない」どころか、医師の世界のメジャーな進路のひとつです。
眼科医と眼科専門医の違い|資格の段差はここにある
本題です。この2つの言葉の違いは、次のように整理できます。
- 眼科医=医師免許を持ち、眼科を主たる診療科として診療している医師。医師免許があれば、法律上はどの科を標榜することもできます
- 眼科専門医=医師免許を取った後、初期臨床研修2年+眼科の専門研修プログラム4年以上を修了し、専門医試験に合格した医師だけが名乗れる資格(日本眼科学会・日本専門医機構)
つまり「眼科医だが眼科専門医ではない」医師は制度上あり得ます。逆に言うと、眼科専門医という肩書きは、4年以上の研修と試験という関門を通った証明です。受診する側から見れば、クリニック選びのときに確認できる客観的な目印のひとつになります。

| 段階 | 年数 | 年齢の目安 | この段階で決まること |
|---|---|---|---|
| 医学部(医学科) | 6年 | 18→24歳 | 医師国家試験の受験資格 |
| 医師国家試験 | ― | 24歳の2月 | 医師免許(第120回の新卒合格率94.7%) |
| 初期臨床研修(必修) | 2年 | 24→26歳 | まだ科は決めない。全科を回る |
| 眼科の専門研修(専攻医) | 4年以上 | 26→30歳 | ここで眼科を選ぶ。他の多くの科(3年)より長め |
| 眼科専門医 | ― | 30歳ごろ〜 | 試験・審査を経て「眼科専門医」に |
年数で見ると、医学部6年→初期研修2年→専門研修4年以上で最短12年、現役合格なら30歳ごろに眼科専門医です。多くの基本領域の専門研修が3年のところ、眼科は4年と長め。手術手技の習得に時間がかかる科だからです。ちなみに入口となる第120回医師国家試験の新卒合格率は全国94.7%で、新卒100%を出したのは自治医科大学・北海道大学・京都大学の3校でした。
出典:医師法(初期臨床研修2年)/日本眼科学会「眼科専門医取得の手引き」(専門研修4年以上)。年齢は現役合格・留年なしの目安
なお、科を決めるタイミングは他の科と同じで医師免許を取った後の26歳ごろ。医学部受験の段階で「眼科向きの大学」を探す必要はなく、どの大学の医学部からでも同じルートです。
数字で見る「眼科」という科の実像
次に、眼科がどんな科なのかを統計で見ます。この表は志望する側にとっての「科のプロフィール」です。
| 指標 | 数字 | 何を意味するか |
|---|---|---|
| 主たる診療科を眼科とする医師 | 13,436人(全体の4.1%) | 診療科別で7番目の規模 |
| 働く場所 | 診療所など8,597人(64.0%)/病院4,839人 | 3人に2人が診療所=開業が主流 |
| 平均年齢 | 53.7歳 | 長く続けている医師が多い |
| 女性比率(病院勤務) | 42.9% | 女性の多い科の上位 |
| 年1,860時間超の長時間労働 | 0.6%(調査全体2.4%) | 集計20科で3番目に低い |
| シーリング(採用上限) | 対象:東京・愛知・京都・大阪・兵庫・岡山 | 都市部では枠の争いがある |
この表から読み取れる眼科の特徴は3つあります。①開業が主流——3人に2人が診療所で働いていて、病院中心の科(救急科は98%が病院勤務)とは働き方の形がまるで違います。②女性比率が高い——病院勤務医の42.9%が女性で、麻酔科・皮膚科と並ぶ上位です。③極端な長時間労働が少ない——年1,860時間超の医師の割合は0.6%と、集計20科のなかで皮膚科・放射線科に次いで低い水準です。
出典:厚生労働省「令和6(2024)年 医師・歯科医師・薬剤師統計」表4・表5/医政局「医師の働き方改革の施行に向けた準備状況調査」(令和4年・全病院対象)/医師専門研修部会 資料1(2026年7月15日)
ワークライフバランスを重視する医学生が増えるなか、こうした条件のそろった眼科は「殺到しているのでは」と思うかもしれません。実際の専攻医の数を見てみます。

| 年度 | 眼科の専攻医採用数 |
|---|---|
| 2018年度 | 328人 |
| 2019年度 | 334人 |
| 2020年度 | 344人 |
| 2021年度 | 329人 |
| 2022年度 | 343人 |
| 2023年度 | 310人 |
| 2024年度 | 331人 |
| 2025年度 | 347人 |
| 2026年度 | 341人(2018年度比+4.0%) |
意外なことに、眼科の専攻医採用数は9年間ほぼ横ばいです(2018年度328人→2026年度341人・+4.0%)。人気が崩れてもいなければ、殺到も起きていない。安定して選ばれ続けている科、というのが実数の姿です。
出典:厚生労働省 医道審議会 医師分科会 医師専門研修部会 資料1(2026年7月15日)をもとに太宰府アカデミー集計
ただしひとつ注意があります。眼科は専攻医の「シーリング」(都市部の採用上限)の対象で、2027年度は東京・愛知・京都・大阪・兵庫・岡山の6都府県に上限が置かれます。産婦人科や外科のような「上限なしの科」とは逆で、都市部で眼科の専攻医になるには枠の争いがあるということです。この点は、将来の研修地を考えるときに知っておいて損はありません。
眼科専門医を取るメリットと将来性
4年の研修と試験を経てまで専門医を取る意味はどこにあるのか。実務的には3つに集約されます。
①信頼の目印になる。先ほど書いたとおり、標榜は自由だからこそ、専門医資格が「体系的な研修を修了した」ことの客観的な証明になります。開業が主流の科では、患者さんがクリニックを選ぶ判断材料としても効きます。②手術・専門治療の土台になる。白内障・緑内障・網膜疾患などの手術手技は、専門研修プログラムの中で症例数を積んで身につけるのが標準ルートです。③高齢化で需要が伸びる領域である。白内障や緑内障、加齢黄斑変性といった眼科の主要疾患は加齢とともに増えるものが多く、高齢化が進む日本で診療需要の裏付けがはっきりしている科のひとつです。
一方で、シーリングの表が示すとおり都市部には眼科医が十分いると国が判断しているのも事実です。「需要は伸びるが、働く場所は選び方しだい」——ここまで含めて眼科の将来性だと捉えるのが、数字に忠実な見方だと思います。
太宰府アカデミーの視点|受験生がこの記事から持ち帰るべきこと
1つめ。「眼科 医者じゃない」のような検索の俗説は、数字で確かめる癖をつけてほしい。眼科医は7番目に大きい診療科を担う医師です。進路を検索で調べる時代だからこそ、検索候補に出る言葉と実像のずれを、統計で確かめられる人であってほしいと思います。
2つめ。科選びは医師になってから。いまは「6年で卒業して国試に通る」ことがすべて。眼科専門医への12年は、医学部をストレートで卒業できて初めて最短になります。そしてここは大学差が大きい——文部科学省の公表データでは、6年でストレートに医師になれる割合は国公立トップの金沢大学で97.4%、国家試験の合格率100%は三重大学・福井大学・金沢大学という結果でした。志望校を決める前に、大学ごとのストレート卒業率ランキングで自分の候補校の数字を確かめておくことをおすすめします。
3つめ。働き方のデータは、科どうしを並べて初めて意味が出る。眼科の0.6%という長時間労働率も、単独では評価できません。19の診療科を同じ物差しで並べた診療科別の働き方比較とあわせて読むと、自分がどんな医師人生を送りたいかを考える材料になるはずです。
まとめ|眼科医と眼科専門医の違い
- 「眼科は医者じゃない」は誤解。眼科は医師13,436人が主たる診療科とする、7番目に大きい専門領域
- 眼科医=眼科を診療する医師。眼科専門医=初期研修2年+専門研修4年以上+試験を経た資格
- 最短ルートは医学部6年+初期研修2年+専門研修4年=12年。現役合格なら30歳ごろ
- 専攻医採用は9年間ほぼ横ばい(328→341人)。ただし東京・愛知・京都・大阪・兵庫・岡山はシーリング対象
- 3人に2人が診療所勤務=開業が主流。女性比率42.9%・極端な長時間労働0.6%と、長く続けやすい条件がそろう
- 受験の段階でできるのは大学選び。6年で医師になれる割合は金沢大学97.4%(国公立1位)など大学差が大きいので、進級・国試のデータまで見て志望校を決める
「眼科 医者じゃない」という検索候補を、眼科を志す生徒には見てほしくない——でも見てしまうのが現実なら、検索した先にきちんとした数字の答えが出てくるようにしたい。そう思ってこの記事を書き直しました。
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本日の記事は以上です。
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◆筆者プロフィール
後藤 登(Goto Noboru)
仕事:総務・広報・完全個別指導コース担当
自己PR:高校・大学ボクシング部。釣りや登山が好き。新卒で当校に勤めて13年目。医学部受験の情報を調べて、ブログやInstagram、Twitterを更新しています。4年前から完全個別指導コースのコース担当。
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