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アメリカの医師の年収 診療科別ランキング|脳神経外科は1億円超

2026年08月21日 更新

こんにちは、太宰府アカデミーで広報/完全個別指導コースを担当している後藤です。

前回、日本の診療科別・医師の年収ランキングを公的調査だけで作りました。今日はその続編、アメリカ版です。「アメリカの医者は年収1億円」——この半分本当で半分ざっくりすぎる話を、診療科別のランキングと「差し引くもの」まで含めて、数字で確かめます。

皆さん、こんなふうに思っていませんか?

− アメリカの医者って、みんな年収1億円なんでしょ?

− 日本の4倍稼げるなら、アメリカで医者になったほうが得じゃない?

− 向こうでも「儲かる科」は日本と同じなの?

一つずつ、数字で答えていきます!なお円換算はすべて1ドル=158円(2026年8月時点の実勢レート)です。為替が20円動くと円換算は13%変わるので、そこも頭に入れて読んでください。

結論:平均は$386,000=約6,100万円。ただし科の差は3.3倍、そして「差し引くもの」がある

まず全体像です。アメリカの医師の平均年収は$386,000=約6,100万円(Medscape 2026年報告。5,916人・29診療科の自己申告調査)。前年の$374,000から約3%伸びました。日本の勤務医の平均1,512.3万円(令和7年・雇われている医師のみ)と比べると約4.0倍です。

アメリカの医師の平均年収386000ドル約6100万円 専門医417000ドル プライマリケア298000ドル 日本の勤務医平均1512万円の約4倍
アメリカの医師の年収の全体像(出典:Medscape Physician Compensation Report 2026/2025。円換算は1ドル=158円・2026年8月時点)

ただし、この記事の結論は「アメリカはすごい」ではありません。①科による差が3.3倍もある②本人が約3,500万円の学費ローンを背負う③医療過誤保険や税を自分で持つ——この3つを差し引くと、手元の差は額面の差ほど開きません。順に見ていきます。

指標 金額 円換算(158円) 出典
米国医師の平均年収 $386,000 約6,100万円 Medscape 2026(前年$374,000)
専門医の平均 $417,000 約6,590万円 Medscape 2025
プライマリケア医の平均 $298,000 約4,710万円 Medscape 2025
(比較)日本の勤務医の平均 1,512.3万円 令和7年 賃金構造基本統計調査(雇われている医師のみ)

表の注意点を1つ。日本の1,512.3万円は国の統計(雇われている医師のみ)、米国の$386,000は民間の自己申告調査で、ものさしが違います。それでも「だいたい4倍」という距離感は、この2つが現状いちばん信頼できる数字どうしの比較です。ちなみにOECDの国際統計には、実は日本もアメリカも医師報酬のデータを提出していません。「OECDによると日本の医師の年収は世界◯位」という記事は、出典をよく確かめてください。

診療科別ランキング:脳神経外科は$749,140=約1.18億円

診療科別で最も規模の大きい調査が、Doximity社の2025年報告(約37,000人・2024年データ)です。トップ5がこちら。

アメリカで年収が高い診療科TOP5 脳神経外科749140ドル約1.18億円 胸部外科 整形外科 小児外科 形成外科 上位は外科系が独占
年収が高い診療科TOP5(出典:Doximity 2025 Physician Compensation Report・2024年データ・回答約37,000人。円換算は1ドル=158円)

1位は脳神経外科$749,140=約1.18億円。2位胸部外科、3位整形外科、4位小児外科、5位形成外科と、上位は外科系がほぼ独占です。Medscape 2026でも平均$500,000を超えた科は8つあり、整形外科・循環器内科・放射線科が上位でした。当塾で数字を確認できた35分類の全リストを載せます。

診療科 英語名 平均年収(ドル) 円換算(158円)
1 脳神経外科 Neurosurgery $749,140 約1.18億円
2 胸部外科 Thoracic Surgery $689,969 約1.09億円
3 整形外科 Orthopaedic Surgery $679,517 約1.07億円
4 小児外科 Pediatric Surgery $647,721 約1.02億円
5 形成外科 Plastic Surgery $621,445 約9,819万円
6 口腔外科 Oral & Maxillofacial Surgery $616,748 約9,745万円
7 放射線腫瘍科 Radiation Oncology $588,678 約9,301万円
8 循環器内科 Cardiology $587,360 約9,280万円
9 血管外科 Vascular Surgery $576,452 約9,108万円
10 IVR(画像下治療) Interventional Radiology $572,617 約9,047万円
11 放射線科 Radiology $571,749 約9,034万円
12 泌尿器科 Urology $559,474 約8,840万円
13 消化器内科 Gastroenterology $537,870 約8,498万円
14 耳鼻咽喉科 Otolaryngology $523,369 約8,269万円
15 麻酔科 Anesthesiology $523,277 約8,268万円
16 皮膚科 Dermatology $508,401 約8,033万円
17 腫瘍内科 Oncology $502,465 約7,939万円
18 眼科 Ophthalmology $477,232 約7,540万円
19 救急科 Emergency Medicine $411,133 約6,496万円
20 産婦人科 OB-GYN $389,566 約6,155万円
21 神経内科 Neurology $360,519 約5,696万円
22 精神科 Psychiatry $341,977 約5,403万円
23 一般内科 Internal Medicine $326,116 約5,153万円
24 感染症科 Infectious Disease $320,000 約5,056万円
25 家庭医療 Family Medicine $318,959 約5,040万円
26 老年医学 Geriatrics $291,968 約4,613万円
27 内分泌内科 Endocrinology $290,606 約4,592万円
28 小児神経 Child Neurology $289,738 約4,578万円
29 小児科 Pediatrics $265,230 約4,191万円
30 小児腎臓 Pediatric Nephrology $263,013 約4,156万円
31 臨床遺伝 Medical Genetics $259,564 約4,101万円
32 小児血液腫瘍 Pediatric Hematology & Oncology $255,733 約4,041万円
33 小児感染症 Pediatric Infectious Disease $248,322 約3,923万円
34 小児リウマチ Pediatric Rheumatology $231,574 約3,659万円
35 小児内分泌 Pediatric Endocrinology $230,426 約3,641万円

※呼吸器内科・腎臓内科など一部の中位の科は原典の公開範囲外で確認できなかったため、この表にはありません。「順」は表内の順位です。それでも傾向ははっきりしています。手技・手術の科ほど高く、外来・対話中心の科ほど低い。米国は診療の価格が公定ではなく、保険会社との契約や市場で決まる部分が大きいので、単価の差がそのまま年収の差になります。

下位10科のうち7つが「小児系」という現実

アメリカで年収が低い診療科 小児内分泌230426ドル 小児リウマチ 小児感染症 小児科265230ドル 下位10科のうち7つが小児系
年収が低い診療科(出典:Doximity 2025 Physician Compensation Report・2024年データ。円換算は1ドル=158円)

ランキングの下位側には、はっきりした特徴があります。下位10科のうち7つが小児系なんです。最下位の小児内分泌$230,426(約3,641万円)は、脳神経外科の3.3分の1。一般の小児科も$265,230(約4,191万円)で下から数えたほうが早い位置です。

診療科 平均年収(ドル) 円換算(158円)
老年医学 $291,968 約4,613万円
内分泌内科 $290,606 約4,592万円
小児神経 $289,738 約4,578万円
小児科 $265,230 約4,191万円
小児腎臓 $263,013 約4,156万円
臨床遺伝 $259,564 約4,101万円
小児血液腫瘍 $255,733 約4,041万円
小児感染症 $248,322 約3,923万円
小児リウマチ $231,574 約3,659万円
小児内分泌 $230,426 約3,641万円

「アメリカで小児科医が足りない」と言われる構造的な背景が、この表に出ています。同じ医師免許で年収が3倍違うなら、進路はお金に引っ張られる——これが市場で価格が決まる国の姿です。

ここで、日本版を読んでくれた方は気づくと思います。日本の勤務医の科による差は約1.4倍しかありませんでした。日本で小児科や産婦人科を選んでも、米国ほどの経済的なペナルティはない。日本の診療報酬制度(全国一律の公定価格)は、科の間の年収差を小さくする方向に働いています。これはアメリカと並べて初めて見える、日本の特徴です。

研修医の日米比較:給料2.5倍、ただし借金3,500万円を返しながら

研修医の日米比較 日本の初期研修1年目435万円に対しアメリカのレジデントは68166ドル約1077万円 ただし本人の学費ローン平均223130ドル約3525万円
研修医の日米比較(出典:AAMC 2025 Survey of Resident/Fellow Stipends and Benefits/日本は初期研修病院の募集情報の民間集計。円換算は1ドル=158円)

「アメリカは研修医ですら1,000万円もらえる」——これは事実です。レジデント1年目(PGY-1)の平均は$68,166=約1,077万円(AAMC 2025年調査・350施設)。日本の初期研修1年目の約435万円(民間集計)の約2.5倍です。

ただしセットで見るべき数字があります。米国の医学部卒業生は平均$223,130=約3,525万円の教育ローンを本人が背負って卒業します。アメリカの医学部は大学院なので、大学の学部4年を出てから医学部4年(4年間の総費用の中央値は公立で約4,704万円・私立で約6,449万円。学部4年分は別)。日本の私立医学部も高額ですが、多くは親が負担し、本人は借金ゼロで研修に入ります。1,000万円の給料から、月々のローン返済が始まるのが米国のレジデントです。

指標 日本 アメリカ
研修1年目の平均年収 約435万円(初期研修1年次) $68,166(約1,077万円・PGY-1)
研修3年目 専攻医(給与は勤務先による) $73,301(約1,158万円・PGY-3)
卒業時の教育ローン 学費は親負担が中心(本人の借金は少数派) 本人平均$223,130(約3,525万円)
研修給与の伸び(2024→2025) +2.2%(2021年以降で最低・インフレに負けている)

もう1つ大きな違いは、専門科を決めるタイミングです。日本は初期研修2年のあいだ科を決めなくてよく、専攻医として選ぶのは医師3年目。アメリカは医学部卒業時のマッチングで科まで決まります。マッチングの規模は44,344ポジション(2026年)で日本の約4.2倍。「医学部に入る=科を決める」ではないのは日米共通ですが、決める時期はアメリカのほうがずっと早いです。

額面から差し引くもの:医療過誤保険・税・学費

年収6,100万円の「裏側」でいちばん大きいのが、医療過誤保険(マルプラクティス保険)です。米国医師会(AMA)などの集計では、2025年は36の州で保険料が上がったと報告されています。科と州でこれだけ違います。

区分 年間保険料(米国) 円換算(158円)
全体の平均 約$7,500 約119万円
精神科 約$5,000 約79万円
産婦人科(平均) 約$46,000 約727万円
産婦人科(高い州) $60,000〜$100,000超 約948万〜1,580万円超
脳神経外科(訴訟の多い州) $150,000〜$200,000超 約2,370万〜3,160万円超
(例)マイアミ・デイド郡の産婦人科・一般外科 $243,988 約3,855万円

産婦人科は平均で年約727万円、高い州では年1,000万円超。フロリダ州マイアミ・デイド郡の産婦人科・一般外科では年$243,988=約3,855万円という数字も報告されています。日本の勤務医の医師賠償責任保険が年数万〜十数万円(しかも病院や医師会経由が多い)であることを考えると、ここだけで年収差の一部が消えます。これに連邦税+州税(州によって0%〜13%超)、公的皆保険がないための医療保険料が加わります。

ついでに面白いデータを1つ。Doximityの都市圏別の集計で、医師の年収が低い街には共通点があります。

都市圏 平均年収
高い1位 ロチェスター(ミネソタ州) $495,532(約7,829万円)
高い2位 セントルイス $484,883(約7,661万円)
高い3位 ロサンゼルス $470,198(約7,429万円)
低い1位 ダーラム=チャペルヒル(デューク大学など) $358,782(約5,669万円)
低い2位 ロチェスター(ニューヨーク州・大学町) $364,160(約5,754万円)
低い3位 アナーバー(ミシガン大学) $373,154(約5,896万円)
低い8位 ボストン(大学・大学病院の集積地) $390,799(約6,175万円)

低い側に並ぶのは、デューク大学のダーラム、ミシガン大学のアナーバー、そしてボストン——有名大学と大学病院の街です。アカデミックな職ほど給与が低いのは日米共通で、日本でも大学病院(学校法人)の勤務医平均が739.5万円と最も低い層でした(日本版参照)。研究や教育と、収入は別の通貨で払われる——どの国でも同じです。

日米比較の全体まとめ

医師の年収の日米比較まとめ 平均は日本1512万円アメリカ約6100万円で約4倍 科による差は日本1.4倍アメリカ3.3倍 医療過誤保険の差も大きい
日米比較のまとめ(出典:厚生労働省 令和7年賃金構造基本統計調査/Medscape 2026/Doximity 2025/AMA集計をもとに当塾作成)

ここまでを1つの表にまとめます。

項目 日本 アメリカ
平均年収 1,512.3万円(勤務医のみ・令和7年) $386,000=約6,100万円(約4.0倍)
診療科による差 約1.4倍(勤務医・2011年調査) 3.3倍($749,140〜$230,426)
医師になるまで 医学部6年+初期研修2年+専攻医3〜5年 学部4年+医学部4年+レジデンシー3〜7年
医学部の学費 国公立 約350万円/私立 約1,850万〜4,700万円台(6年・親負担が中心) 4年総費用の中央値:公立 約$297,745(約4,704万円)/私立 約$408,150(約6,449万円)+学部4年分。本人のローンが中心
医療過誤保険 勤務医は年数万〜十数万円が中心(病院・医師会経由) 全体平均 約$7,500(約119万円)。産婦人科は平均約$46,000(約727万円)、高い州では$100,000超
専門科を決める時期 医師3年目(専攻医) 医学部卒業時(マッチングで科まで決まる)
マッチングの規模 10,527ポジション(2025年度) 44,344ポジション(2026・日本の約4.2倍)

額面は約4倍。ただし科の差3.3倍・本人負担の学費ローン・保険と税を織り込むと、「手元に残る差」は場面によってかなり縮みます。逆に言えば、日本の医師の給与は「科の差が小さく、学費の借金を負わず、保険も軽い」形で設計されている——アメリカを見ると、日本の輪郭がはっきりします。

太宰府アカデミーの視点:受験生はこの数字をどう使うか

医学部を目指す皆さんとご家族に、3つだけ。

1つ目。「アメリカに行けば4倍」と単純化しない。為替158円での話で、150円なら約3.8倍に縮みます。しかも差し引くものが大きい。この記事の数字は「隣の芝生の実測値」として使ってください。医師としてアメリカで働く道(USMLE経由)は実際にありますが、それは年収のためというより、臨床や研究の環境を取りに行く選択です。

2つ目。日本の医学部の学費は、世界基準ではむしろ安い。米国は学部4年+医学部4年で、医学部4年だけで公立約4,704万円・私立約6,449万円(中央値)。日本の国公立医学部の6年約350万円は、米国公立の13分の1です。日本の私立の最高額クラス(4,000万円台後半)ですら米国私立の総費用を下回ります。「医学部は高い」の相場観は、国を並べると変わって見えます。

3つ目。科選びの経済的プレッシャーは、日本のほうが小さい。米国では小児系を選ぶと年収が半分〜3分の1になりますが、日本の勤務医の科の差は約1.4倍。つまり日本は、収入をあまり気にせず「やりたい科」を選びやすい制度の国です。将来どの大学の医学部に進んでも、この構造は変わりません。まずは医学部に入ること。科の話はそれからで間に合います。

よくある質問

Q1. 円安・円高でこの記事の数字はどれくらい変わりますか?

大きく変わります。この記事は1ドル=158円(2026年8月時点)で換算しました。150円なら平均$386,000は約5,790万円(日本の約3.8倍)、170円なら約6,560万円(約4.3倍)です。円換算の見出しだけを覚えず、ドルの数字とセットで覚えてください。

Q2. 日本の医学部からアメリカの医師になれますか?

なれます。日本の医学部を卒業してUSMLE(米国医師国家試験)に合格し、米国のレジデンシーにマッチする道です。ただし外国医学部卒(IMG)の2026年マッチ率は、米国籍で70.0%、ビザが必要な場合は54.4%と、米国の医学部卒(93.5%)より狭き門です。アメリカの医学部制度そのものはアメリカの医学部は何年?で詳しく書いています。

Q3. なぜアメリカは科の差がこんなに大きいのですか?

制度の違いです。日本は診療報酬が全国一律の公定価格で、どの科の処置にも国が決めた点数がつきます。米国は保険会社との契約や自由診療で価格が決まる部分が大きく、手技・手術の単価が高い科に収入が集中します。市場が価格を決める国では、科の差が拡大する——下位に小児系が並ぶのはその帰結です。

まとめ:額面4倍の裏まで見る

  • 米国医師の平均年収は$386,000=約6,100万円(Medscape 2026)。日本の勤務医平均1,512.3万円の約4.0倍(1ドル=158円)
  • 診療科別トップは脳神経外科$749,140=約1.18億円。上位は外科系が独占し、最高と最低の差は3.3倍(日本の勤務医は約1.4倍)
  • 下位10科のうち7つが小児系。市場が価格を決める国では科の差が開き、小児科医不足の構造要因になっている
  • レジデント1年目は約1,077万円だが、本人平均約3,525万円の学費ローンを返しながら。医療過誤保険は産婦人科で年700万円超の州もある
  • 医師の年収が低い街は大学と大学病院の街(ボストン・アナーバーなど)。アカデミアほど安いのは日米共通

この記事を書いたのは、「アメリカの医者は1億円」という話が、借金も保険も為替も抜きで受験生の耳に届いてしまうからです。数字は本当です。でも数字には裏面があります。表と裏をセットで渡すのが、進路に関わる者の仕事だと思っています。

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後藤 登(Goto Noboru)
仕事:総務・広報・完全個別指導コース担当
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